※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第133話『シャドと過去と真実と』

…ある所にある町がありました。その町は欧風な町で、そして、大きな町で毎日朝から晩まで活気に溢れていました。ただ、その町はただの町ではありませんでした。人々はその町を『魔術師の町(ウィザード・タウン)』と呼んだ。サンドラはそこで生まれ育った。別段裕福でもなく、貧困でもないごく普通の家庭に生まれた。

 

…サンドラ・アルカディア。神に見放された少女。悪魔に育てられた少女。サンドラは、幼くして母を亡くし、それによって狂った父の元で暮らしていた。それを遺憾に思った創造神は彼女を魔界に連れて行き、均衡を乱した父魔術師の命火を刈り取った。魔術師の掟は絶対だ。『魔術師同士の争いを町内でしてはならない。』

それを乱したのがサンドラの父だ。娘に永遠の呪いをかけた。それが均衡を乱す結果になった。…父としては、母に似た一人娘が許せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライトシープ「…それがサンドラ。君の生い立ちです。永遠の生と力の封印。その器も呪いのひとつです。君は…驚いたでしょう?自慢のスタイルも艶やかな黒い長髪も…。呪いによって男の体になり、最初は慣れない男口調。しだいにそれは定着し、本当の君すら忘れてしまった。」

 

ライトシープは静かな口調でニヤリと笑いながら話した。暗い顔をするシャド。そして、固唾を飲みながら話を聞くレミリアと幽香。

 

レミリア「…その話に偽りは…?」

 

ライトシープ「…君は真実として捉えるでしょうね?スカーレット家は完全なる悪魔だ。悪逆非道にして、不埒な奴らですよ。君のお父様が我々人間にした所業。そして、アルカディアは代々、スカーレットに仕えてきた。それの末裔がサンドラ。…君だよ。」

 

幽香は拳を固く握った。それが嘘であれ、本当であれ、シャドの性格上、幽香には聞いて欲しくないはずだ。…ましてや、メディスンには…。

 

レミリア「…貴様が我々を憎む理由は?」

 

ライトシープ「…私は君たちに家を…家族を焼かれた。…焼き殺された。」

 

レミリア「…あれは聖戦などと下らぬことを持ち込んだ貴様ら人間が悪いのだ。それで逆恨みとは…貴様は愚かだな。」

 

レミリアはライトシープの言葉を鼻で笑った。ライトシープはそのレミリアの行動にわかりやすく怒りを露わにした。

 

ライトシープ「…私の家族は…まるで人間が蟻を踏み潰すように呆気なく…殺されたんだッ…!!許さん…!!絶対に…ッ!!」

 

レミリア「…痛いところを突かれて本性が出たかッ!!」

 

ライトシープ「変身『タイプ猛獣王(ライオン)』」

 

ライトシープは光り輝き、今度は四足歩行で地を優雅に佇む、金色の立て髪の王と化した。天を煽るような目で空に吠えるその姿はまさに猛獣の王。黒い瞳の奥はメラメラと燃えていた。

 

レミリア「ふんッ!!そんな巨大でどうやって動くッ!!…神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

レミリアは紅魔の王に相応しく、カリスマ的に…いや、狂気的に笑い、低空飛行で羽をはためかせ、獣とすれ違う直前で槍を薙ぎ払うように使った。対するライトシープはその銀色の輝く爪で夜の王の一撃に対抗した。

 

レミリア「…ほう?」

 

ライトシープ「…クックック…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…レミリアとライトシープの戦いの中、シャドもまた葛藤していた。

 

幽香「…なぁに、アンタに似つかない顔してんのよ。…あのこと、気にしてんの?」

 

シャド「…俺が…女を辞めたのは…漣にあって間もない頃だったんだ。紫ちゃんに…愛されたくて…でも…女じゃ…見向きもされないなって…。」

 

シャドの顔から光が消えた。いつものようにちゃらけている彼ではない。器の自分と本当の自分。その二つの姿で戦っているのだ。

 

幽香「…そんな下らないことで…。女が女を好きになっちゃいけないなんて…誰が決めたの?…それとも、メディスンのこと?」

 

…あのドSの幽香のとても優しげな声にシャドは翼の動きを止めた。悪魔と呼ばれたアルカディア家。黒魔術に手を染めて、自分の口調も改めて…恋焦がれた。…大っ嫌いな親父の器に詰められて、苛立っていたというのに…。

 

幽香「…だから、どうしたの?…幻想郷が無くなればッ!!メディスンだって…ただじゃ済まないッ!!」

 

シャド「ンなこと、言われなくてもわかってるよッ!!…だけど…怖いもんは…怖いんだよ…ッ!!」

 

…パンッと乾いた破裂音がした。

普通なら破裂音では済まないのだろうが、シャドにはそれで済んだ。叩いた方も痛い。幽香の目には涙を浮かべていた。

 

幽香「…数百年…好きな人のために気持ちを押し殺してきた奴だっているんだからッ!!アンタの力でアンタの友達っての、守ってみなさいよッ!!」

 

そして、幽香はライトシープの元へと走って行った。赤く腫れる頰をなぞってみる。ヒリヒリと痛みが走り、暑くなっていた。

 

ライトシープ「…ハッハッハッ!!紅魔の王と宣っておきながら、この程度ですか?なんという弱者ッ!!」

 

レミリア「…チッ!!」

 

レミリアは空を飛びながら、弾幕を打ちまくる。対するライトシープは地面を駆け回り、その速さで翻弄していく。レミリアは接近し、槍での攻撃に切り替える。だが、ライトシープも負けてはいない。あの吸血鬼相手に力負けしていないのだ。レミリアの槍の攻撃をライトシープは右の爪で受け止め、レミリアの腹に拳で攻撃した。猫パンチとは到底言えっこないその威力は空からレミリアを突き落とし、地面に打ち付ける威力だった。

 

レミリア「かはッ…!!」

 

ライトシープ「…さっきまでの威勢はどうしました?」

 

幽香「チッ…!!レミリア・スカーレットッ!!早く立ちなさいッ!!」

 

突然やってきた幽香をライトシープは睨みつけた。レミリアはライトシープの踏みつけてくる足を跳ね除け、幽香のところへと飛んでいった。

 

レミリア「…シャドは…?」

 

幽香「…大丈夫。アイツなら、すぐに殻をやぶってここまでやってくるわ。それが…シャド。」

 

レミリアと幽香はライトシープが飛んでいった方を睨み、構える。金色の獅子は高らかに吠え、歯と闘争本能を剥き出しにして、幽香達を睨んだ。

グルルと唸るネコ科の猛獣は、二人の少女に襲い掛かろうと青々と繁く大地を蹴り、その筋肉質な4本の足で駆ける。レミリアはまた低空飛行で接近してくる猛獣とすれ違い様の攻防戦をする。岩を砕く爪と槍。二つの当たる衝撃波が何度も何度も地面すれすれの場所で発生する。幽香はライトシープがレミリアと戦っている間にライトシープの死角に入ろうとするが、すばしっこい二人だ。なかなか隙が窺えない。

 

幽香「キャッ…!!」

 

レミリア「ぐっ…!!」

 

ライトシープの猫パンチがレミリアと幽香の腹に入り、二人を前方に大きく吹き飛ばした。

 

ライトシープ「ハッハッハッ!!スカーレット家よッ!!これが、中世に名を残す悪逆非道の最凶の一族の末裔かッ!!私はまだ本気ではないぞッ!!」

 

ライオンは獲物を捕らえ逃がさない。

倒れる二人の周りをグルグルと回り、ゆっくりと隙を窺っている。

 

ライトシープ「これぞ…自然の摂理…。」

 

シャド「おいゴルァッ!!」

 

…絶体絶命の中、真っ黒の男が高らかに吠える。獅子は少女達から男に狙いを変えた。シャドは辛そうに右目を押さえていた。髪も最初より伸び、肩までかかっていた。見るものには男性としても捉えられ、またあるものには女性にも捉えられる中性的な見た目だった。羽も前よりも大きくなり、それは片翼となっていた。

 

ライトシープ「…タイムリミットが近づいてますねぇ?…嫌なんでしょう?今までの自分からかけ離れていくのが…。」

 

シャド「へっ…!!…オトコだろうが、オンナだろうが…俺は俺なんだよ…ッ!!呪いだの…なんだの…どうでもいいッ!!貴様を殺すだけの力が…貴様らを殺すだけの力が…友達とこの郷を守るだけの力が…ッ!!得られるのであれば…俺はッ!!…悪魔にだって魂を売るね。」

 

その声も男性の低い声と女性の声が混じったような声になっていた。だが、発せられる力はシャドのどの形態よりも強く、大きかった。空が曇りだし、風が吹き荒れる。妙なことに雲があるのはシャド達の上空だけであった。

 

シャド「…ハァァァァァッ!!」

 

シャドの体にヒビが入り、そこから眩いばかりの光が出た。薄灰色の空をも照らすほどの光。そして、それはシャドの体を包み、姿形を隠す。その圧倒的な力の差にライトシープはニヤリと笑い、幽香とレミリアは驚愕した。

 

レミリア(パチェ以上の魔力…。これがアイツの本気…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…数分経っただろう。光と暴風は次第に止み、包んでいたその姿を示す。そこにいたのはシャドであってシャドではなかった。

…肩にかかるヘーゼルカラーの緩やかに巻かれた髪、女性らしい柔らかなライン。胸部は自己主張しすぎず、控えめでもない。それに比べて腹や腰回りは細い。四肢は細く、右肩からは黒い翼が出ている。着ているものも、黒と白のセーラー服っぽい服で、高い身長だけはそのままである。

…そう、これこそが…。

 

ライトシープ「…聞きしに勝る魔力ですね…。サンドラ…。」

 

シャド「…サンドラ?誰だ?それは…。」

 

ライトシープの声にシャドは目を開けた。右目は血のように赤く、左目は透き通る青色をしていた。シャドの声は、凛としていて落ち着いた声だった。

 

ライトシープ「…君でしょう?口調まで戻って…。」

 

シャド「…私はシャド。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

ライトシープ「今まで自分の存在をも認めなかったくせに…。次は取り繕う気ですか?自分という存在を…。」

 

シャド「…変だな。はらわたが煮え繰り返っているはずなのに、私はやけに穏やかだ…。だけど、お前をぶっ殺すのは変わらない。」

 

シャドはレイピアを抜き、その先端を獅子に向けた。女性も男性も好むその顔は目の前の敵を相手にニヤリと笑っていた。

 

シャド「…さぁ!!稀代の女王の力、見せてやるッ!!」




レイピアだから騎士みたいな格好でも良かったけどね。
一応は魔術師兼悪魔みたいな種族ですから。魔法で永遠の命を手に入れた的な奴だから。…呪いだけど…。
では次回!!
ではでは〜!!
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