漣「ハァァッ!!」
レン「ダァァッ!!」
…シャド、月夜見が新たな力に目覚め、死屍累々軍と戦い始めている頃。お互いの想いをぶつけ合った漣達はまた戦いを始めた。
漣の右拳をレンは手で跳ね除け、左足を軸に右足で漣の横腹を蹴ろうとする。
漣はレンの蹴りをしゃがんで躱し、瞬時に立ち上がって、レンの頬を右拳で殴った。
レン「ぐっ!!…チッ…!!」
元々出ていたのか、さっきの拳をもろにくらって口の中を切ったのか、レンは口から地面に血をプッ…と吐き出した。
漣「…くくっ…。思っていることは一緒か?」
レン「あぁ…。お前は俺を消し去るつもりだろうが、お前に俺が殺せるかな?」
二人は平野に立ち尽くし、笑った。まるで旧知の友のように…。
先程までの激しい戦いが嘘のようだった。
漣「…もはや、俺を殺すのに容赦はないッ!!」
漣は地面を蹴って、レンに向かって走る。そして、右、右、左と3連キックをお見舞いする。
対するレンは全て涼しげな顔で避け、漣の左足を持つとグルングルンと回し、小さな岩山に投げつける。
漣「チッ!!」
漣の体が宙を舞う。岩壁にぶつかる寸前、漣はバク宙の要領でぐるりと回転し、足を使って岩肌を蹴り、勢いをつけて、殴りかかった。
レンはその攻撃を左手で防御をし、右手のアッパーで漣の腹を打ち抜き、漣を宙へと打ち上げた。
漣「ガッ…!!」
レン「おいおい…。まだ手加減している気か?お前の相棒とやらはもう本気を出したようだぜ?」
漣を追いかけながら、レンはそう言いながら、空を飛んだ。速度を上げて、漣の上を取るとその背中に肘打ちを決める。
漣「ぐわぁぁぁッ!!」
上空から一気に急降下し、雲をも突っ切り地面に叩き落とされた漣。地面は浅くではあるが円形に窪み、所々、亀裂が入っている。
レン「…ふふっ。おいおい。これっぽちじゃちっとも満足できねえぜ?」
漣「…イテテテ…ッ。さてと…そろそろ本気出すかッ!!」
漣は起き上がり、首をコキリコキリと鳴らし、右肩を回した。勿論、左肩も同様だ。そして、砂埃を払い…笑った。鏡写しのようにレンも笑った。…少しだけ二人の場所に静寂が訪れた。
漣「…さぁ!!行くぞッ!!」
レン「チッ…!!本気と言いつつ、姿は変わらんのか?」
漣は姿を変えずにリミッターを外し、魔力、妖力、霊力を最大限まで上げる。レンはその様子に訝しげに思い、右目をピクピクとさせながら、怒りの表情で漣を見た。
漣「…あぁ。本気が良かったら、お前が出させてみろ。」
レン「…その天狗の鼻…。へし折ってやるよッ!!」
レンは漣の挑発に乗り、また殴り合いを始めた。だが、次は話が違う。レンのラッシュを漣が拳と拳で相殺する。
そして、レンの拳を一撃避け、隙ができた瞬間に腹に一撃をたたき込んだ。
レン「ぐっ…!!な、なるほど…?確かに…少しだけ強くなったじゃないかッ!!」
漣「…消えろ。数奇『たった二十一の星の宇宙』」
上空に巨大なサイコロを生み出し、各面々から弾幕を打ち出す漣。その質量と密度にレンは…
レン「ぐっ…ぐわぁぁぁッ!!」
…飲み込まれていった。
漣「…。」
漣は冷ややかな目でレンの居た場所を見た。先程の弾幕で発生した黒煙と砂埃が視界を遮った。砂埃が晴れるとそこにボロボロのレンが横たわっていた。赤いロングコートは焼け焦げ、あちらこちらが破けている。
レン「…くくっ。」
漣「…そろそろ、お互い本気で行くか?」
レン「…意地きたねえぜ。テメェ、本気で俺を殺しに来てやがる。」
レンは砂埃を払い、着ていたコートを脱ぐ。その下は筋肉質な体とその上に着られた薄いノースリーブの真っ赤なシャツだった。多少ついている筋肉が生地が薄いため、しっかりと見えている。
レン「…肩が凝ってしまった。身体中が痛えじゃねえか。いきなり肉弾戦から弾幕に切り替えたから、少し油断したぜ…。」
レンは肩や首などの関節をコキッコキッと鳴らし、不敵な笑みで笑った後、目を閉じた。
レン「…本気で…殺す気でやってやるさッ!!鬼の本気…見せてやろうッ!!紅蓮『鬼神の業火』…!!」
レンの周りを青紫色の炎が包む。それをレンが手で払い除けると髪は少し青みかがり、額の右あたりに一角が現れた。漣の使う『鬼神の業火』とは違い、目の下に涙が出たような黒いヒビがあり、目は赤くなっている。
レン「…これが真の鬼神の姿。貴様が俺に勝つにはこれ以上の力を見せないと…勝てないぞ?」
漣(奴の自信はただのハッタリではないな。このピリピリと刺激する感じ…。只者ではないのは分かっていたが、これが俺自身の力…というのか…。)
漣は静かに構える。さっきまでの遊びの表情とは違い、相手を見定めるような目だ。
レン「…『ありとあらゆるものを視る』程度の能力。そんなもん使って楽しいかぁ?紅蓮『酒呑ノ雨』」
レンが空に打ち出した赤い炎の弾幕が上で四散し、雨の如く降り注ぐ。雨というよりは流星群と呼ぶべきだろうか。漣はそれをステップやバク転などで避け、なんとか間合いに入ろうとする。
だが、レンを舐めていた。レンはパワーアップしただけあってそのスピードも威力も桁違いに上がっており、いきなり横に現れたレンはそのまま、拳圧を叩き込んでくる。
勿論、一挙一動は漣には筒抜けなので、避けることも可能なのだが、少しでも動けば、上から降り続ける弾幕に当たってしまう。なので、漣は手をクロスして、その拳をすべて受け切ろうとするが…。
漣「チッ…!!腕がヒリヒリしがやる…!!」
レン「鬼の体術は天下一品ッ!!全て受け切ろうなんざ、無理な話だぜッ!!」
レンの拳が漣の顔面に伸びる。
漣はそれを避け、腹に一撃入れるが、軽い軽いと言わんばかりに、左足で天へと蹴り飛ばされる。
漣が反応をする前に鬼の筋力でレンは跳び上がり、漣の後頭部にかかと落としをヒットさせる。
また、地面に打ちつけられる前にダメージを少しでも防ごうとぐるりと空中で回転し、着地する漣。
レン「さっきのはこうやってやったんだよな?…数奇『たった二十一の星の宇宙』!!」
漣「…なるほどねッ!!」
降り注ぐ弾幕を全て躱し、レンの真ん前までスライディングで滑り込み、腹に一撃入れる漣。地面に砂埃が立ち、擦れてできた跡が地面にできた。
漣「近くに滑り込んで一撃殴ってもガードされるか…。」
レン「テメェはなんにも使ってねえからな…。さぁ…。本気を出す気になったか?この瞬間を楽しみたいんだろう?」
わかりやすく、漣を挑発するように言うレン。二人とも傷だらけだが、レンの体は先程のスペルで強化されているため、漣の方が重傷である。頭から血がダラリと流れ、口元からも血が流れている。少しでも気を抜くと倒れてしまいそうだと漣は危惧していた。
漣「…そうだな。少し本気を出すか。紅蓮『輪廻転生之炎』ッ!!」
漣の体を白い炎が包んだ。一点の曇りもない、すべてを浄化する天上の炎。その炎は地面の草を燃やさず、圧倒的な熱気を示していた。
…そして、漣はその白き炎を手で払う。火に包まれた漣は髪が真白に神々しく光り、見るものすべてを魅了した。レンはその姿にニヤリと笑い、スッと構える。二人の熱気が周りで戦っていたものたちにも通じた。
漣「…俺は幻想神、氷川漣ッ!!貴様を焼き殺すものだッ!!」
レン「…やれるモンなら…。」
レンが勢いよく、地面を蹴る。その勢いを殺さずに漣の腹に拳を叩き込んだ。
レン「…やってみろよ…。」
レンはニヤリと笑った。拳が漣の腹に入ったからだ。漣の顔はレンには影になって見えない。レンは思った。確実に手応えがあったのに、何故かダメージの入っている感じがしなかったからだ。
漣「…痒い。」
レン「何ッ!?」
漣は腹に入ったレンの拳を、腕を掴む。そして、左手をレンの腹にお返しと言わんばかりに放った。
レン「ガッ…!!」
漣はレンの怯んだ隙に、ラッシュをかけた。レンはまさになす術無し。殴ろうとしても、腕を出す前に殴られる。蹴ろうとしても足を出す前に蹴られる。そして、漣はレンの腹に回し蹴りを入れ、後ろに大きく吹き飛ばした。
レン「ぐわぁぁぁッ!!」
レンの筋肉質な体が後ろの岩壁に叩きつけられ、その体の形に岩壁は窪み、周りにはヒビが入った。レンは大量の血を吐き、膝から地面に崩れ落ちた。膝と両手で倒れそうな体をレンは支えた。
レン「ハァ…ハァ…ハァ…ぐっ…!!」
レンは激痛で動かない体を必死の思いで支えた。その端正な顔は額、鼻、口元からの血で汚れ、筋肉質な腕からも足からも流血している。対する漣は、そこまで激しい傷はないものの、さっきまでのお互いのぶつかり合いにより、口元や額からの少しだけ流血していた。だが、動けないほどでもないのか、漣はレンのいるところへ歩いて行く。
レン「…こ、これが…テメェの…。」
漣「…本気じゃあない。俺たちにはまだ刀がある。それを差し引いてもこれは本気の力じゃない。まさに鬼同士の喧嘩だ。殴り合いのな。」
レン「へへッ…。よく…言うぜッ…。鬼の…威厳なんてッ…ねぇ…くせに…よぅ…ッ。」
漣「…。」
漣は尚も立ち上がるレンに哀れみの表情を向けた。レンはボロボロの体で息を切らしながらも、ニヤリと笑い、漣を見た。
漣「…俺は過去の俺とも戦った。今更、そんな力が俺に通用すると思うなよ?」
レン「…やってみなくちゃ、わかんねえだろ?…お前に勝ってルナサを頂く。その為なら、妖魔の刀だろうが、なんだろうが使ってやるよ…ッ!!」
レンは背中の紫電一閃に手をかけた。そして、その刀を鞘から抜く。
漣「ッ!?」
漣(なんだこれはッ!!…瘴気の暴風がとんでもない勢いで放出されている…ッ!!)
紫電一閃から圧倒的な力が地上に溢れ出た。まるでそれは紫色の雪崩のようだった。そして、そのえげつないエネルギー粒子が自然に流れ出る。その粒子が全て流れきったときには、レンは今までのレンではなかった。
レン「…鬼の圧倒的なパワー…見せてやるッ!!」
最終話に漣対レンは畳み掛けるかも。
だって、まだ出してないのいるもんね。しょうがないね。
では次回。
ではでは〜!!