※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

169 / 262
第135話『メイド長と鬼と太陽の子と』

…少し遡ってシャドが覚醒する少し前。ここでもまた幹部たちと幻想郷軍の戦いが始まっていた。

 

陽奈「よしッ!!これで全部かな…っと♪」

 

金の髪を揺らめかせ、岩に隠れて敵に光弾を撃ち込む陽奈。勿論、陽奈だけではない。

 

ルナサ「陽奈。見ないうちに強くなっちゃって…。」

 

陽奈「あっ。お母さんっ!!」

 

岩陰から陽奈は飛び出て、やってきたルナサに抱きついた。ルナサは久しぶりの陽奈の頭を優しく撫でた。その様子を咲夜、フランは優しげな笑みで見ていた。…だが、その瞬間は突然訪れた。

 

?「…おやおや。いいご身分だねぇ。」

 

咲夜「…何方でしょうか。」

 

…姿が見えない。咲夜は周囲を警戒し、走ってきた陽奈が咲夜と背中合わせになり、銃を構える。フランはレーヴァを構えているが、どこから声が聞こえたかわからず、キョロキョロと周りを見渡している。

 

?「キシシッ…!!嬢ちゃんたち…?そんなに殺気振りまいちゃあ…ダメじゃないの…。」

 

?「…既に貴様らは袋の鼠。降伏すればその命だけは助けよう。」

 

こちらからは逆光で見えにくい岩山の上に、無数の人影が見えた。その中でも真ん中にいる二人の人物が特段、妖力が高く見えた。

 

?「まだ祭りは終わってねぇ〜の。おかわりはいくらでもやるさ。この左近様がな。」

 

?「…玄霧様のためッ!!貴様らを断罪する。」

 

?「マスタースパーク!!」

 

無数の人影を大きな光の束が飲み込んだ。やってきた魔理沙のマスパで岩山の頭頂部は完全に崩壊。大きな轟音と悲鳴が辺りに響きつつも魔理沙は四人のところへと降り立った。

 

魔理沙「大丈夫か!!」

 

独断専行。それが霧雨魔理沙である。咲夜とルナサは半ば呆れながら魔理沙を見た。陽奈とフランは目をキラキラとさせていた。

 

咲夜「まだ何もしてないわよ。…全く。」

 

魔理沙「ありゃ?そうだったのか。」

 

陽奈「まりちゃん、かっこいい〜♪」

 

陽奈は魔理沙を煽るように魔理沙に肘を当てる。魔理沙がむすっとしてそっぽを向いてしまったので、陽奈が子どものように抱きついてきた。

 

陽奈「まりちゃん、許してよ〜!!」

 

魔理沙「まりちゃん言うなッ!!」

 

これが日常茶飯事である。咲夜はため息をつき、ルナサは魔理沙に謝っている。…カオスである。

 

左近「…すごいなぁ。10万はいた仲間たちが一人残らず、焼き消されちまった。」

 

魔理沙「まっ。そう簡単にやられちゃくれねえか。」

 

魔理沙は帽子を治し、ニヤリと悪戯に笑った。咲夜、ルナサ、陽奈は相手を睨みつけ、フランはレーヴァを構えている。黒煙から出てきたのは、褐色の肌。ニィッと三日月型に広がる口。発色の良い橙の短髪に不気味なほど高い身長。右手に持ったキセル。そして、特徴的なのは…左手がなかったことだ。

 

魔理沙「…テメェ、その腕は…。」

 

左近「…ン?アンタら、玄霧様の資料にあった子たちだな。この左手か。気になるか?」

 

左近はキセルを口元に持っていき、吸うと左手を見ながら笑った。

 

左近「…俺たちの左手と右手はなくなっちまった。マァ、どうでも良いさ。ナァ?右近。」

 

左近は砂埃の中から出てきた少年に声をかけた。少年は男と姿形は同じで違うのは身長が男より小さいところだった。男たちはお揃いの藤色の着物を着ていて、下駄を履いていた。右近は左近とは違い、笑ってはおらず、むすっとしていた。

 

右近「兄者、口が軽いぞ。あまり話しすぎると玄霧様にご迷惑だ。」

 

左近「あぁ。すまねぇ。でも、こんだけ可愛い子たちに囲まれりゃ、お喋りにもなるだろ?」

 

右近と左近はどうやら兄弟らしい。左近はキセルをしまい、背に背負っている琵琶の持ち手の部分を開け、刀を取り出し、その刃を長い舌で舐め、ニヤリと笑った。

 

左近「…だが、こんだけの相手なら、俺の現世刀も唸るぜ。嬢ちゃんら、悪りィが最初っから本気でいかせてもらうっ!!日斬『打ち上げ花火』!!」

 

左近がスペルを出す。すると、左近の周りに弾幕が放たれ、それが徐々に四散し、数が増え、密度が増す。だが、次の瞬間!!その弾幕は全てなくなった。

 

左近「…へぇ〜。確かぁ…陽奈ちゃんだったかぁ?そして、紅魔館のメイド長、咲夜ちゃん。…なるほど?あの数を一瞬で消すのはお手の物ってわけだ。」

 

右近「…兄者、あの3人は俺がもらって良いか?俺も暴れ足りない。」

 

左近「…良いけど…テメェの能力で頭かち割るなよ?見たところ、小せえ子供もいるようだしよ。」

 

右近「承った。」

 

右近の前にいるのは、フラン、魔理沙、ルナサの3人だった。まずはフランがレーヴァを持ち、炎の弾幕を右近に撃つ。右近は手をクロスするように左腕を動かし、その弾幕を受け切った。ルナサは後方支援、魔理沙はマスパを打ち込むが、右近は何故か何もせず、そこから動くことはない。

 

魔理沙「おいおい。もうやられちまったか?」

 

右近「…無様。敵の能力も見抜けぬのか。」

 

砂埃が晴れる。すると、そこにいたのは、手がまるで岩石のように硬くなった右近だった。

 

フラン「えっ!?」

 

魔理沙「…コイツは…私らじゃちょっと難しいかもなぁ…。」

 

フランと魔理沙は驚いていた。それもそのはずだ。魔理沙のマスパを直でくらって立っていられる者は限られる。そして、更に言えば、奴は弾幕を撃つタイプではなく、鬼のように肉弾戦を好むタイプだろう。

 

右近「…行くぞッ!!人災『破滅の地流弾』!!」

 

右近が下に手を置くと右近からまるで波のように密度の高い弾幕が押し寄せてきた。魔理沙がマスパで薙ぎ払おうとするが波が高くなるとそれは鉄壁のようになり、魔理沙のマスパが通じなかった。3人は波の弾幕をなんとか避けきり、波の発生源である右近の元へと飛んだ。

 

右近「…至近距離になれば、俺が不利になるとでも思ったか?」

 

魔理沙「へっ。くらえッ!!魔砲『ファイナルマスタースパーク』!!」

 

右近の右から、先程のマスパよりも威力のあるレーザーを発射する魔理沙。そして、なすすべなく、右近はそのレーザーに飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左近「ありゃりゃ。油断しやがってからに…。マァ、良いさ。俺は俺で働くだけよ。」

 

左近は陽奈と咲夜に向かって口が裂けるくらいにニィッと笑い、刀を構えた。陽奈は銃を構え、咲夜はナイフを構え、二人とも左近を睨みつけた。

 

左近「…おいおい。怖い顔しないでおくれよ。可愛い顔が台無しじゃあネェか。俺ァよ。何も殺し合いしてェわけじゃあねぇんだよ。」

 

咲夜「…偉くお喋りですね。」

 

陽奈「…今更そんなの、信じられるわけないでしょ?」

 

咲夜と陽奈は不敵に笑った。左近は先ほどからニタニタと笑ってはいたが、二人の言葉を聞き、大きく高笑いをした。

 

左近「威勢の良いこって。マァ、こんなことして信じられるわけねぇわなぁ。でも…悪いのはテメェら、幻想郷の民だ。玄霧様はァ…嘆いてらっしゃるのよォ。テメェらは均衡関係なく仲良くしやがる。その仲良しごっこの犠牲になった奴らのことを覚えてるのか?俺ァよ。そんな玄霧様のでっかい野望に心打たれたんだよ。さて、おしゃべりもここまでにして…。遊ぶとすっかぁ?」

 

左近は右手に掴んだ現世刀の剣先を咲夜たちに向けた。

 

左近「…闇斬『宵の水平線』」

 

左近はその刀をゆっくりと下に斬るように下ろす。すると、左近の刀に斬られたかのように地面が真っ直ぐに割れ、咲夜と陽奈を分断するように素早く、まるで火山の噴火のようにその亀裂から光が天空へと上がった。咲夜と陽奈はそれを躱し、左近にナイフと弾丸を打ち込んだ。

 

左近はその弾丸とナイフを刀で斬り、二人と並行に走り出した。

 

左近「この程度じゃあ満足してくれねえかァ?日斬『空白の風』!!」

 

咲夜「ッ!?」

 

次は横方向に刃を走らせ、見えない斬波を飛ばす左近。

 

咲夜はそれを避けようとするが、斬波は無情にも咲夜の左肩を斬り、鮮血を空に飛ばした。

 

陽奈「咲夜さんッ!!」

 

左近「おっと、嬢ちゃん。よそ見しちゃあいけねえなぁ?」

 

陽奈は姿勢を崩し、地面に倒れた咲夜に向かおうと走るが、その進行方向を左近が妨げた。

 

左近「…なぁ?嬢ちゃん。降参しちゃあくれねえか。そうしちゃあ、俺も弟もテメェらを殺しはしねぇからよ。アンタがどんだけすげぇ奴かはわかってるつもりだ。嬢ちゃんの妖力がどれほどのものか、うちの現世刀が震えてやがる。だからよぅ…。」

 

陽奈「…ふふっ。だって、満足してないんだもん…ッ!!」

 

左近の諭すような声に陽奈は笑って見せた。咲夜にはその表情はさながら、漣のように見えた。陽奈の答えに左近は目を閉じ、高らかに笑った。

 

左近「キシャシャシャッ!!おっもしれぇ!!さっすが、幻想神の長女だ…。敵同士じゃなかったら、惚れてたぜ?」

 

陽奈「あら♪嬉しい♪でも…お忘れじゃないかしら。」

 

左近「何が?」

 

陽奈「この戦いは、初めから2対1なの。」

 

左近が後ろを向いた時にはもう遅かった。背中に刺さる銀の刃、認識した途端にそこからとんでもない激痛が走り出した。それに悶える左近。それを見て、陽奈は咲夜のもとへと駆け寄った。

 

陽奈「咲夜さんッ!!大丈夫ですか!!」

 

咲夜「ええ。こんなの擦り傷よ。」

 

咲夜は心配する陽奈を見て優しく微笑んだ。ホッと胸を撫で下ろす陽奈。二人はハイタッチをすると、また、左近の方を見て臨戦態勢を組んだ。

 

左近「ハァ…ハァ…。綺麗な顔して、えっげつねえことする女だな…ッ!!」

 

咲夜「貴方に褒められても嬉しくないわ。」

 

左近「…可愛い嬢ちゃんに殺されるなら本望かもしれねえけどよ…。それで弟と玄霧様の野望が消えちまったら、兄貴として見せる顔がねえんだわ。だから、ちと本気出すわ。消えちまいなッ!!闇斬『餓狼の牙』!!」

 

左近は現世刀を反動をつけ、横一線を引く。すると、その刃はまるで獣の口のように上下に鋭い牙のようなものが現れ、大口を開けて陽奈と咲夜を飲み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右近「…これが貴様らの本気か?」

 

魔理沙「ッ!?」

 

魔理沙の最大打点、ファイナルマスタースパークを受け切った右近は魔理沙の頭をその左手で掴み、地面へと叩きつけた。

 

魔理沙「ガッ!!」

 

右近「…兄者は傷つけるなと言っていたが、あれは兄者が優しいからのこと。俺は貴様らを砕き、殺す。…優しくないのでなッ!!」

 

フラン「魔理沙を傷つけるなぁぁッ!!」

 

魔理沙を傷つけられたことに怒ったフランが右近にラッシュをかける。だが、右近にはダメージは通っておらず、魔理沙を離さずに吸血鬼であるフランのラッシュを涼しげな顔で受けていた。

 

魔理沙「フ…ラン…ッ…。」

 

魔理沙は頭から血を出し、意識が朦朧としていた。ルナサも弾幕を放つが、右近はどんどんと体を硬くしていき、それは岩石を上回っているため、殴っているフランの拳からは血が滲み出ていた。

 

右近「…やめておけ。それ以上殴れば、貴様の骨は跡形もなく消え去るぞ。この娘の命、見捨てれば貴様らの命までは取らぬ。さぁ、早く立ち去れッ!!」

 

魔理沙「ガァァァッ!!」

 

魔理沙の頭は右近の手によって地面を凹ませていた。大きな外傷と大量の出血により、もはや右近とフランたちの声も聞き取れなかった。…薄れゆく意識の中、魔理沙はある親友の名を呼ぶのだった。




なんで彼女が出てこないのみたいなことを思った人もいると思います。
…安心してください。次回、出ます。
では次回。ではでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。