—————俺は外の人間だった。
あそこは地獄だ。家柄や勉学の優劣によって人生が決まる。ブラックも入った奴が悪いの一点張りだ。俺たちはそんなことより金がなけりゃ、飯が食えねえって言う状態だって言うのに、俺たちの正義はなによりも認められなきゃいけないってのに…。
幼い頃、俺は虐められていた。…なぁに。その理由は単なるものだ。そう…簡単な…例えば、気に入らないから殴られる…だとか、ちょうどいいからパシられる…とか。そんな感じ。無慈悲だろ?そんなもんだよ。
…中学、高校とそんな毎日が続いた。バイトしたら金巻き上げられるし、好きな奴が出来たら、すぐに告白させられ、結果振られる。まぁ、それはどうでも良いんだよ。一番辛かったのは、信じてた奴らに裏切られたことだ。親も教師も…腐ってる。大人は腐ってる。偽善という刃を振りかざし、実子でも見捨てるという選択肢をいとも簡単に下す。
今ならわかる。俺が鬱陶しかったんだろ?…わかってるよ。
遠い遠い箱庭でテメェらの望み通り、殺される。どっちに転んでも俺は死ぬ。腐った世の中を浄化の炎で制裁する力。玄霧様は…俺にそんな力を…くれたのに…。
鏡一郎「…くれたんだ。戦う力を…ッ!!」
月夜見「…何?」
鏡一郎は首に突きつけられた刃を握り、首から離した。刃を直に触れた為、掌からは血が流れている。
鏡一郎「俺はそんじょそこらの小物じゃねえッ!!ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなッ!!俺は死なねえッ!!こんな簡単に死ぬたまじゃねえんだよッ!!」
月夜見「…さっきから何を言っているんだ?」
鏡一郎「…刀を握れェッ!!ここで決着をつけてやるッ!!」
鏡一郎はデュベルの長い持ち手を持ち、ぐるんぐるんと回しながら、月夜見から離れていく。月夜見は一呼吸置き、腰に携えた『酔狂満月』の持ち手に手をかける。
月夜見「…それが貴様の決断か。ならばッ!!」
鏡一郎「…ここでテメェを殺して俺は生きるッ!!俺の鎌の錆になりやがれェッ!!」
鏡一郎は月夜見に向かってデュベルを思いっきり振るう。
その刃と月夜見の剣が火花を散らす。ブルンッという風切音はどちらのものかわからない。
鏡一郎の鎌は居合で弾かれたのには怯まず、鏡一郎はすかさず鎌を持ち替え、二手三手と斬りかかる。
それを月夜見の剣は全ての手をガードする。だが、鏡一郎の力はかなり強いのか、月夜見の踏ん張る足が徐々に後退していった。
月夜見「ッ…!!これほどまで…高めるかッ!!」
鏡一郎「俺は屑野郎さッ!!だからッ!!最後まで屑で生きてやるッ!!屑は屑なりのやり方ってのがッ!!あるんだよッ!!」
月夜見の頭上より、鎌の刃が振り下ろされる。
それを月夜見は後ろに飛んで避け、地面を蹴り、勢いよく前進する。そして、鏡一郎の腹を切り裂いたッ!!
月夜見「…これで終いだ。」
鏡一郎「…がはッ…!!」
ドロッと月夜見の口から血が溢れ、血溜まりになった。そして、力なく地面に伏せた。
月夜見「…屑は屑で死ぬ…か。その心だけは本物だったかもな。」
既に息を引き取った鏡一郎の体を月夜見は悲しげに見ていた。そして、月夜見はその場を去った。まだ、天狗たちが戦っていたからだ。…誰もいなくなったそこには、一輪の花だけが静かに揺れていた。
ライトシープ「稀代の女王だと?…笑わせるッ!!この獅子の力で噛みちぎってくれるわッ!!」
シャド「やれるモンならやってみなよ。私は逃げも隠れもしないから。」
獅子がシャドに向かって走る。猛獣の牙が少女の首に近づいていく。
シャド「…残念。」
…獅子の体はシャドの氷の力に凍結した。まるで槍のような氷山が獅子の体を一刀両断していた。
ライトシープ「がはッ…!!か、体が凍って…動けない!?」
シャド「そりゃそうだろ?お前の生体エネルギーを消滅させるほどの冷気を出すなんて簡単な話だ。さぁ、徐々に凍りついていく恐怖に恐れ慄くが良い。」
ライトシープ「…ッ!!」
ライトシープは最期の足掻きと言わんばかりに口から炎を吐き出し、自身の体の氷を溶かしきった。それをみてシャドは涼しげな顔で空へと飛んで行った。
ライトシープ「ガァァァッ!!」
シャド「無理にでも抜け出した…か。名刀『鴉』、氷雪魔法『
誰もが驚嘆した。レミリア、幽香にも何が起こったかわからなかった。ただ、それは事実だった。シャドは鴉を冷静に鞘に収め、地へと降り立った。
レミリア「な、何が起こったの…?」
幽香「あのライトシープが…何もされていないのに、凍りついてる…?」
そこにあったのは、先ほどまで殺意の限り、走っていた猛獣が周りの草木と共に凍りついていた。その様子を見つつ、レミリアと幽香にシャドが近寄った。
幽香「…本当にシャドなの?」
シャド「…まぁ、そう呼んでくれたら良い。今更、『サンドラ』とか、昔の名前、使われても面倒なだけだ。」
レミリア「ふむ。…本当に女だったとは…。だが、アルカディアという名前は聞いたことはないぞ?お前は一体…。」
レミリアの疑問にシャドは微笑み、日の光を見てからレミリアに言った。
シャド「私はアンタたちの知っている悪魔王…いや、悪魔女王、シャド。それ以外の何者でもない。…ってね♪」
レミリア「しかし…。」
レミリアはシャドの胸部と自身の胸部を見比べ、落胆した。
レミリア「…負けた。元男に…。」
シャド「元はこっちなんだけど…。」
レミリア「うるさいッ!!お前はなぜ、元男なのにそんなにあるんだッ!!身長も胸もッ!!」
シャド「…だから、もともと女だったって…。」
ミツヒデ「…くそッ…!!」
到着したミツヒデはその惨状に驚愕した。地面の短い草は全て色素が無くなったかのように灰色に染まり、森を覆い尽くす木々は黒色に染まっていた。太い大きな樹木でも汚染の力には勝てず、中心から力なく折れていた。鼻を抑えたくなるような異臭の中、その生命に絶命の令を下す汚染の中心にミツヒデは見つけた。追って、妖夢もそこに来た。
妖夢「な、なんですか!?こ、これは…。そして、この異臭は…。」
ミツヒデ「…貴君の仲間も取り残されているようだ。」
ミツヒデが指を指した方向には早苗と鈴仙が大きな岩の上に立っていた。汚染はそれを川の流れを遮る岩のように避けていた。だが、結界は少しヒビ割れ、その限界は刻一刻と迫っていた。妖夢とミツヒデは汚染されていない岩の上を飛び跳ね、その場所へと向かった。
妖夢「鈴仙さん!!早苗さん!!無事ですかー!!」
鈴仙「妖夢っ!!」
合流を喜ぶ妖夢たち。ミツヒデはその様子を見てはいなかった。視線の先には汚染の中心、自身の力を抑えきれず、うずくまる少女の姿があった。
華奈「…あれはなんだ。あそこまで強大な力はそれほど多くないぞ?」
ミツヒデ「…汚染。瘴気を自身の体から生み出し、周りの生命活動を停止させ、腐敗、酸化させる。」
華奈「…人間に害は…。」
ミツヒデ「…この惨状を見てわからぬのか?あるにはあるが、力の強いものならその侵攻を遅らせることができる。侵攻はより強い力を嫌うからな。」
そうこう言っているうちに異臭はより強く、腐敗はより強くなる。もはや、そこは森と言うにはお粗末で、腐海という名がふさわしいほどだった。
…そんなもの、ミツヒデにはなんの意味もない。彼の目には灰色と化した腐った森よりも、絶命した自然よりも…その発端、中心で苦しみの中、狂気の中でうずくまる少女しか見えていなかった。蛇たちは笑顔で食事をするが、少女の顔は表情の判別がつかない。真っ暗なモヤモヤが少女を少女ではない何かに見せている。
ミツヒデ「…ッ…。」
華奈「おいッ!!死ぬぞッ!!戻れッ!!」
ミツヒデはその制止の声も聞かず、足を進める。ミツヒデに周りの声は聞こえない。だが、ミツヒデは狂ってしまってはいない。至って正常であり、その心は冷静だった。
結界から外れるミツヒデの足。腐海に踏み入れた右足にピクリと痛みが走るのが伝わる。彼のわりと白めの肌が徐々に紫色に浸食される。悪寒と痛みで普通なら頭がおかしくなりそうだ。だが、ミツヒデは苦痛に顔を歪めつつも、首から汗を垂らしつつも足を運ぶのをやめない。そして、その痛みは歩を進めるごとに強く、激しくなっていく。
ミツヒデ「…ハァ…ハァ…ッ…お嬢…ハァッ…!!」
…そして、ミツヒデは元凶である少女の元へと辿り着いた。浸食は体中を蝕み、紫色のあざが体の大半を占めていた。浸食が進んでいる証拠だ。最早、呼吸もまともに出来ず、体の自由も意識を保つのでやっとの状態だった。ミツヒデの腕がうずくまり、震えるクロの華奢な肩を掴んだ。
ミツヒデ「…もう…ッ…大丈夫…だッ…!!お嬢…ッ…!!」
クロ「…ワタシハダレ?ワタシハダレ?ワタシハ…。」
ミツヒデ「…狂気。その身に…巣食う…狂気…。」
クロの意思が削がれたのか、ミツヒデの体の侵食が止み、多少は自由が効くようになったようだ。ミツヒデが冷静な判断をしている。震える彼女の体をミツヒデは情熱的、かつ優しく抱きしめる。それにクロも気がついたのか、正気に戻り、その名を呼んだ。
クロ「…ミツヒデ?」
ミツヒデ「…よく頑張った。一人で…。」
ミツヒデは微笑みも泣きもせず、目を閉じてクロのその光り輝く艶やかな銀の髪をゆっくりゆっくりと撫でた。その様子は夜叉ではなく、かつての剣道場の厳しくも優しいミツヒデ、そのものだった。
クロ「…なん…でッ!!いくら、ミツヒデだって長時間、この汚染の力を受ければ…ッ!!」
ミツヒデ「…久方ぶりに…しっかりと話すな…。食事の時も、普段一緒にいるのに…まともに話したことはなかった…。」
クロ「ダメッ!!もう話さないで…。」
ミツヒデ「…始めは小さな子どもだったのに…蛇と娘を混ぜた…異色の存在だったのに…。これほどまでに立派になって…。もう女児では無いな…。立派な…女…せぃ…。」
クロ「ミツヒデッ!!」
…ミツヒデは力なく倒れた。
書こうか迷ったのですが、ここからは一部の方にお礼と謝罪をさせて貰います。
〜ここから先は読まなくてもいいです。一部の方のみのメッセージとなります。〜
日々、誤字報告や感想、アドバイスなどをありがとうございます。僕の知識が曖昧であり、また、ネタ切れで名前が浮かばない時に名をもらったりして助かってます。これからも感想やアドバイスなど、どしどし募集してますので、些細なことでいいので、ぜひ書いて頂ければと考えております。そして、その際なのですが、僕は出来るだけ皆さんのコメントに返信をさせて頂きたいと考えております。ですが、その際、少しイラッとするような返信をする時があるかも知れません。現に一部の方に少し失礼な返信をしてしまいました。失礼致しました。それにより、感想を書く意が削がれたのか、はたまた、書くよりも誤字報告をする方が早いと思ったのかはわかりませんが、此方の不備もありますので、定型文になってしまいますが、謝罪させていただきます。誠に申し訳ございませんでした。これからも是非、御感想を頂ければ日々の励みになりますので是非よろしくお願いいたします。
それでは次回。
ではでは。