?「…んぐんぐ…。」
月の都、都心中。とある屋敷の茶室で男が一人、三色団子を食べていた。目、髪共々真っ赤に染まり、黒い袴はまるで闇のよう。男は興味のなさそうな目で三色団子を黙って食べていた。
?「…そろそろ終わるか…。俺が出る幕も無かったな…。」
依姫「…凰牙様。お師匠様は逢魔に勝てると思いますか?」
男…士道凰牙の後ろのふすまを開け、いつもとは違う白い袴に身を包み、束ねていた髪を解いた依姫が現れた。その声を聞き、凰牙の団子を食べる手が止まる。
凰牙「…心配要らねえ。今の逢魔ぐらいの雑魚なら、漣だって勝てるだろうよ。…俺の弟子をナメんな。」
依姫「ナメてはいません。私にとっても師ですから。ですが…。何か、嫌な予感がするのです。逢魔と彼がぶつかり合えば、幻想郷は…。」
凰牙「…茶をくれ。甘いものを食うと口が渇いて敵わねえ。」
はいはいと依姫は用意していたお盆の上の湯呑みを凰牙に渡した。凰牙はそれに口をつけ、深呼吸をした。
凰牙「…幻想郷は今度こそ終わる、か。まぁ、ギリギリになったら俺も出るさ。折角の俺のシマをぽっと出の屑に荒らされるわけにはいかねえ。それに一悶着終われば、俺だって下界に降りる予定だァ…。気に入っちまったモンは守ってやらねぇとな。」
依姫「…それは師匠のことですか?それとも幻想郷のことですか?」
凰牙「…ンア?幻想郷に決まってんだろ。幻想郷が無いと美味え団子が食えねえじゃねえか。それに、アンタも知ってんだろ。あのクソ坊主が簡単にやられるタマじゃねえってことをよ。」
依姫「…坊主…ですか。1万年以上生きてる人ですよ?それを坊主…って。」
凰牙「1万も100も似たようなモンだ。現に、不死身の俺からしちゃあ漣もまだまだクソ坊主…ってわけだ。何を根拠にかは知らねえが、アイツには女も男も寄っていく。人を惹きつける力ってのは本当に動く頭にしか無いんだろうよ。そして、アイツにはその才覚がある。皮肉なこって…。嘘に塗り固められたみてえな男が、幻想の神となるなんてな。」
依姫「ん?どういうことです?」
凰牙は湯呑みに口をつけ、湯気立つ緑茶を啜り、団子に口をつけた。
凰牙「…団子と茶、中々なバランスじゃねえか。苦い茶にちょっとだけ甘い団子。その苦さが団子の甘さを引き立てる。」
依姫「わかりやすく、話をすり替えないでください。」
凰牙「…すり替えるも何も、本人がいねえのにぺちゃくちゃ言えるかっての。ただ、一言言えるとしたら、アイツは神なんて大層なもんじゃ無いってことだ。鬼…が良くも悪くもお似合いってわけよ。嘘が嫌いな鬼が嘘つきになっちまってどうすんだって話だ。」
依姫「…ですが、師匠は星熊勇儀のような鬼とも面識がありますし、かなり気に入られております。嘘を嫌う鬼からしたらそんな人、見逃すのでしょうか。」
凰牙「…知るか。俺がわかるのはここまでだ。今のことは俺は知らん。俺が知っているのは運命が交わった日の話だけだ。全く、喧嘩は他所でしろっての。こんなとこででっかい組織、二つがぶつかり合っても無意味だろうが。」
依姫「…貴方一人で双方、沈みますものね。…師匠と同じ炎の使者なのになんでそんなにお強いんですか。」
凰牙「ア?んなもん、自分が生き残るために決まってんだろ。今更、愛する者を守る為だの、なんだの言っても反吐が出るぜ…。だが、弟子は守ってやる。それが師弟ってモンだろ。全く、絆なんて面倒なだけだぜ。…ん。この団子はいける。」
依姫はため息をついた。凰牙が出れば、漣の仕事は無くなるのだが、この男はそんな非常時にも関わらず、いつものように団子を食べている。豊姫とサグメは何がなんでも戦うと言った様子で軍を用意していたが、依姫としては姉の豊姫にもそんな無理をして欲しく無いのだ。
凰牙「…人ってのはな、守るモノがあればある程弱くなっちまう。だったら、守るモノがねえ大人が行ってやらねえといけねえかもな。」
依姫「…凰牙様。」
凰牙「…喧嘩は祭りだ。火事と喧嘩は幻想郷の華だ。…だったら、その華、俺もちょっと見るくらい、タダだろ。」
左近「…チッ!!嬢ちゃんら、ちと強えんじゃねえか!?」
霊華「当然ッ!!私たちの攻撃はお母さん直伝だものッ!!」
平均身長140の少女2人。対して、元々格闘術が不得意な左近相手には空中を縦横無尽に飛び回る2人は厄介以外の何者でも無かった。背の高い左近はすばしっこい2人にとって格好の的だった。
霊華が左近の顔を蹴り飛ばし、雷夢が左近の腹をぶん殴る。少女達の攻撃は1発1発の威力こそなかったが、手数が手数のため、左近を圧倒していた。
左近は先ほどフランを閉じ込めたように網状に手を展開し、2人を捕縛しようとする。
雷夢「だ、ダメですッ!!炎夢『夢想封印〜赤〜』!!」
圧倒的広範囲の捕縛の網は、空中から降り注ぐ弾幕の雨によって呆気なく焼け切れる。
左近「チッ!!」
霊華「余所見厳禁だよッ!!おっさんッ!!」
雷夢の攻撃に気を取られていた左近は霊華の蹴りを顔面にモロに受けてしまい、後方へと大きく吹き飛んだ。
紫「あれはどうなの?女の子としては…。」
霊夢「でも、間違いなく過去最高の博麗の巫女よ。1人ではダメ、2人でないと。霊華は、弾幕はまだまだだけど体術ではあの人に似てピカイチよ。」
紫「…対して雷夢は、体術ではまだまだだけど弾幕は彼を凌ぐかもしれないほどの天才。流石、博麗の巫女との子供ね。2人とも陽奈よりも潜在能力は高いわ。でも、まだ実戦経験は浅い。すぐに実戦投入は早かったんじゃないの?」
紫の問いに霊夢は笑ってしまった。紫はその霊夢を見て、紫は不思議に思いつつもふてくされてしまった。
紫「なによぅ。」
霊夢「あはは♪私が子供の時はそんなこと一言も言わなかったのに♪まっ、大丈夫よ。あの子たち、私に似てタフだから。」
紫の心配は無用であると言わんばかりに善戦していく2人。2人の息のあったコンビネーション攻撃は左近を確実に追い詰めていく。
左近「だが、わかったぞッ!!そっちの長髪の嬢ちゃんはあんま近づいてこないよな?つまり、嬢ちゃんは弾幕専門ってことか?」
雷夢「ふえぇ…?」
左近「ぶっ殺してやるッ!!どうせ、お仲間もあと1分ももたないんだよッ!!お前らも吸収して、俺の糧にしてやる!!」
左近は足を伸ばし、2人を薙ぎ払うように蹴りを繰り出してくる。
2人は空を飛んで、弾幕の雨を降らせた。
左近は腕を伸ばして弾幕を薙ぎ払っていった。
左近「そんなもの、簡単に落とせるぜェッ!!嬢ちゃんら、覚悟しやがれッ!!」
霊華「雷夢ッ!!私らの本気、見せてやるよッ!!」
雷夢「う、うんっ!!」
左近「捕縛してやらぁッ!!」
また投網状に広がった腕が2人に襲いかかる。勝ちを確信したのか、左近は狂ったように笑いながら、2人を捕縛しようと手を広げる。
左近「勝ったァ…!!」
雷夢・霊華「双霊符『W夢想封印』!!」
2人の夢想封印が左近にヒットする。単純に霊夢の夢想封印の威力の2倍かに思えるが、合っているようで違う。弾幕の密度は2倍だが、威力は倍を優に超えている。
左近「嘘…だろッ…!!」
霊華「私らの勝ちだァァァァッ!!」
左近の居た場所は弾幕による色とりどりな小爆発を迎え、2人の巫女は一戦終えて地面へと降り立った。
霊夢「やるじゃない。2人とも。」
霊華「あったりまえだよ!!だって、お母さんの子どもだもんっ♪」
頑張った2人の元へ、霊夢は紫と共にゆっくりと飛んで行った。2人の頑張りように霊夢は満足げな笑みを浮かべ、ドヤ顔をする霊華の頭を優しく撫でた。
霊夢「ライちゃんも頑張ったね。」
雷夢「えっと…うんっ!!」
何故かヒョコヒョコと頭を動かしている雷夢の頭も優しく撫でる霊夢。紫はその様子をとても微笑ましく思っていた。
陽奈「イテテ…。あれ?終わってる…。」
咲夜「…なんともない?陽奈。」
陽奈「はい。でも、服が…。」
左近が爆散したことにより、中に取り込まれていた陽奈と咲夜が解放された。だが、胃酸によりか服はもはや布切れという他なかった。
雷夢「…あれが?」
霊夢「そっ。アンタらのお姉ちゃん。長女の陽奈。」
陽奈「ほお〜。咲夜さん、意外と良いものをもってますなぁ〜。フランちゃんはパッドとか言ってましたけどぉ?」
咲夜「パ、パッドじゃないしッ!!それに、ジロジロ見ないの!!」
陽奈「痛ッ。殴ることないじゃないですかぁ〜。」
…見ないうちにキャラが変わったなぁと思った霊夢だった。そんな会話の後、霊夢は陽奈に2人を見せるのだが、それはまた別の話。
ラグナログ「…アイツら、緊張感無いなぁ…。」
右近「あ、兄者…。う、嘘だろ…。」
そして、こちらはラグナログ対右近。こちらも佳境に差し掛かっており、右近は左近が負けたことにかなりのショックを受けていた。
ラグナログ「さてと、こっちも終わらせるか?」
刀を振るい、右近の頭にヒットさせていくラグナログ。右近はもう戦意喪失状態であり、その大ぶりな一撃を避けるそぶりも見せなかった。なすすべなく、地面へと叩き落とされた。
ラグナログ「チッ…。くっだらねえな。兄ちゃんが死んだら、そんなに嫌かよ。良いご身分だねぇ。家族がいるってのは。」
右近「ハァ…ハァ…。」
地面に打ち付けられ、大きな窪みを生み出した右近は力なく窪みの中で仰向けになっていた。ラグナログはゆっくりと近づき、その首に剣先を突きつけた。
ラグナログ「終わりだよ。終焉『慈悲無き刃』」
そして、光の刃はその首を貫き、右近の体と頭を分けた。右近はピクリとも動かない。ラグナログは楽しめなかったことに対して、舌打ちをして、その場を後にしたのだった。
漸く佳境に入ってきました。
次回はレン対漣ですね。もうすぐ終わると思います。
では次回。ではでは〜。