漣「グハッ…!!」
…胸に激痛が走る。口からあったかい何かが…。なんだ?これ。それが何かわかるのにそう時間を要しなかった。明らかに…血液だ。誰のものでもない俺のものだ。胸を…貫かれた…。
霊夢「漣さんッ!?」
陽奈「お父さんッ!?」
みんなが俺の元に駆け寄ってくる。長い戦いで体力を消耗していたのだろう。再生がやけに遅い。体が言うことを聞かない。
シャド「チッ…!!」
月夜見「…外道がッ!!」
後ろに振り返る。と、同時に体が仰向けで倒れる。視界が空を向く。そこには…奴がいた。奴の体からはまるで細長い触手のような何かが無数に出ていた。それはそれぞれ意思を持つかのように蠢いていた。
逢魔「…なるほど。流石の幻想神でも疲労の末に背後から一撃、致命傷レベルの攻撃を喰らうのは予測不可能ということですか。いい研究結果です。」
リリア「あらあら。ほんと、いい趣味してるわね。あの人。」
…確かに。ちょっと気を抜いていたかもしれない。血を失いすぎたわけじゃないからまだ動けるし、奴の趣味かは知らないが、心臓を貫かれたわけじゃないから、まだ頭は動く。…ということは体が言うことを聞かないのは疲労の影響か。
漣「…。」
逢魔「さて、君にはいろんなことが出来そうですが、まずはNo. 1を貰い受けましょうか。」
漣「…へっ。あの子はリリカとメルランが守ってるよ。簡単には渡せない…。」
逢魔はそれを聞いて引き裂かんばかりにニィッと広げた口が元に戻り、相手を見下すような目つきに変わった。
逢魔「…本当に、君は立場がわかっていないようだ。今の君なら赤子の手を折るよりも簡単に殺せますよ。なんせ、動けないんですからね。」
漣「…それはどうかな…。俺はまだ戦える…ッ!!」
…まだ完全に傷は癒えてないが、仕方ない。立ち上がろうと俺は体を起こすが、俺の意に反し、体は重力に従い、前へと倒れていく。
漣「…何…ッ。」
逢魔「…流石の幻想神も疲労には勝てないってことですよ。地獄でゆっくり、眠りなさい。」
またあの触手が狙いを定め、俺の背中を狙い忍び寄る。だが…。
逢魔「何ッ!!」
霊夢「…火球…。」
…その触手は空からやってきた謎の火球に弾かれた。その火球が着弾した場所は黒煙と砂埃が舞い、草に着火したのか火が立ち上っている。…多分だが、俺は会いたくなかった相手だ。
?「…全く、飛んだ暴走機関車だぜ。」
霊夢「…傘に乗ってる?」
逢魔「…貴様は…。」
…緋色の畳まれた傘に乗り、真っ赤な髪と漆黒の羽織りを着ている男。羽織りからは右肩を出し、まるで火消しのようだった。目を閉じた男はニヤリと笑い、目を開けた。
?「…もう終わっちまったのか。それとも、今始まったばかりなのか?」
逢魔「…最強の男、士道凰牙ッ!!」
…それを聞いて、凰牙は気怠そうに逢魔と俺達を見た。そして、此方に歩いてやってくると、俺の首を持ち、上へと上げた。
漣「ッ!!ガ…ッ…!!」
霊夢「ちょっとッ!!漣さんは…ッ!!」
凰牙「…怪我なんかで死んじまう奴を俺の弟子とは認めねえぞ。クソ坊主。こんな血だらけになっちまうなんて、ほんっとだらしねえな。だから、太陽になんかならねえ方がよかったんだ。」
凰牙の表情は気怠そうに俺を睨んでいた。霊夢が説き伏せ、彼は俺を空中で乱暴に離した。俺の体は重力に従い、そのまま地面に勢いよく落ちていった。
凰牙「…さて。次はお前だな。俺の喧嘩相手ェ…。」
逢魔「…これはこれは。此処で貴方のような有名人に会えるとは。史上最強の剣士、士道凰牙。貴方にはこの幻想郷中の誰も勝つことが不可能と言うほどの化け物。その剣技は繊細で洗練されたものであり、戦いを祭りと言うほど、豪快なものを好むと聞いてます。」
凰牙は、肩に巨大な唐傘を持ち、ニヤリと笑った。逢魔も笑っているが、その額や顔からは汗が流れ出ている。
…正直言って会いたくなかった。凰牙…いや、先生には。
凰牙「…もう最強じゃねえよ。世代交代ってのは、どの世界でも起こることだ。もう俺は最強じゃねえ…。ただの強え男だ…ッ。」
そう言うと先生は少し姿勢を低くし、空の逢魔に向かって唐傘をぶん投げる。
逢魔「ふんっ!!こんなものッ!!我が鋼鉄よりも硬い繊維で打ち砕いてあげましょうッ!!」
凰牙「…着火。」
先生の一声で唐傘は炎上し、まるで生きているかのように繊維の間を縫って通り、逢魔本体に着弾する。空中で大爆発する火球。それはまるで花火のようだった。
凰牙「…おいおいッ!!こんな簡単にくたばるたまじゃねえだろォッ!!クソ野郎ッ!!」
先生の元になんの変哲もない唐傘が空中から飛来し、ゆっくりと落ちてくる。爆散した煙で見えないが、先生がニヤニヤしている以上、逢魔は死んでいないのだろう。その証拠に爆発した黒煙の中からあの黒色の糸が先生めがけて、飛び出した。
凰牙「…チッ。炎操術『星空桜吹雪』」
先生が豪快に舞いを披露する。唐傘を回し、そして、その唐傘を頭上の糸へとまるで竹とんぼのように頭上へと飛ばす。その傘は黒煙を吹き飛ばし、逢魔の姿を見せると唐傘は回りながら、周りに炎の桜を展開していく。その炎の桜は黒い糸を弾き、先生を守るように円を描いていた。
逢魔「ぐっ…!!」
凰牙「…おいおい。傘の下に入らなきゃ、被弾しちまうぜェ?」
傘の影になってこちらからはしっかりは見えないが、桜吹雪というほど弾幕はきめ細かく、おそらく避けにくいだろう。…全く、この人は敵にしたくない相手だ。
逢魔「極刑『最果ての牢獄』ッ!!」
対して、逢魔は大爆発し、その桜吹雪から無理やり避けた。爆風により、ゆっくりではあるが、傘はゆらゆらと師匠の元へ帰ってきた。極光が晴れ、逢魔が姿を現すと、奴は何事も無かったかのように平然としていたが、その体の傷は隠し切れていなかった。
逢魔「…流石ですね…。僕の『ダメージを吸収する』程度の能力も根をあげるほどのパワー…。流石です。」
凰牙「…俺は嫌いだね。いくつも能力を持って、最強名乗って何が楽しいんだ。俺は不老不死になるまで、この火炎を操る程度の能力一つでやってきたんだよ。テメェみたいに幾つもいくつも持ってる奴はな…。能力に体を蝕まれて死ぬんだぜ?」
逢魔「…最強を求めて何が悪いんですか?人が死なないことを望んで何が悪いんですか?…現に貴方だってそうでしょう?不老不死になった…。貴方も蝕まれて死ぬんです。自分で言ってて虚しいだけですよ?」
凰牙「…俺はなりたくて不死になったんじゃない。」
先生が右手をナイフのような形にし、自分の前の空間を切るように下へとゆっくりと下げる。と、その空間に切れ目が入り、先生はそこへと右腕を突っ込んだ。先生が腕を引き抜くと空間から火花が散り、先生の手には刀が握られていた。黒と赤の鞘のついた刀だった。
凰牙「…刀には鞘がなきゃいけないわけじゃない。人に恋が必要なわけでもない。必要なのはやり遂げるという意思だ。コイツと一緒に居られるという覚悟だ。…紅蓮刀『
先生が剣を抜刀する。…なんと、先生の刀には…刃が無かった。
逢魔「…おや?そんな刀で僕に何をするというのですか?」
凰牙「…良く見ろ。火炎の刃を。」
すると先生の剣から火花が散り、柄から炎が噴出した。そして、それは刃を形作った。
逢魔「…そんなものでッ!!」
逢魔が先生を殴ろうと拳を振るう。だが、その拳は先生にはたどり着かず、その数センチ先で何かに阻まれたように静止した。
逢魔「なっ!?」
凰牙「…圧倒的な熱は時に時空をも歪める。お前の攻撃は俺には通じねえぞ。」
そして、先生はほぼノーモーションで逢魔の体を縦に切った。逢魔はその衝撃で後ろに飛んで行った。
逢魔「くそッ!!」
逢魔は地面に繊維を伸ばし、そのスピードを緩和させ、立ち止まった。そして、先生に向かって地面を蹴りとんでもないスピードで殴りかかっていく。
凰牙「…終わりだ。」
先生は足を後ろに引き、刀を鞘に納め、居合の構えをし、目を閉じた。逢魔は勢いを殺さず、そのまま無防備の先生を殴ろうと飛びかかってきた。
凰牙「…朱点居合『緋月』」
逢魔「なっ!?」
…目を開けた時にはもう遅かった。先生の体は逢魔の後方にあり、逢魔は横一線に切られていた。
シャド「…おい。今の一撃、見えたか?」
月夜見「…いや。なんというスピードだ。」
逢魔「…がはッ…!!」
逢魔は口から大量の血を吐き出し、その場にドサリと倒れた。先生は刀を鞘に納め、逢魔を見下すように見ると此方へ歩いてきた。
リリア「…これは撤退ね。帰るわよ?貴方達。」
俺たちが見た時にはもう逢魔の体は何処へと消えていた。先生は俺の体を担ぎつつ、ここまでの経緯を事細かに絞り出された。
…全く、この人とは会いたくなかったんだが…。
凰牙「…何事も派手なのが良い。だが、目立つのはやめとけよ。」
漣「…わかりましたよ。」
…その返事が気に入らなかったのか、先生にぶん殴られたのはまた別の話だ。
凰牙先生は間違いなく最強キャラです。
凰牙先生の話は後ほど。
ここで虚無異変を一度終了という形にさせていただきます。逢魔よりも強い凰牙先生が出てきて、逢魔がこてんぱんにされたということで節目となったと感じたからです。ここからは少し日常編を挟みつつ、予定しているコラボの件について話し合いをしていきたいと思ってます。その間にもコラボについては募集しておりますので、ぜひということで。
では次回。
ではでは。