まぁ、その話は後々。
第142話『先生と漣と来たる平穏な日々と』
…眠い。
傷だらけの体はあの後、布団の間に体を挟んで休んだら回復したが、何せ、疲労は直ぐには回復しない。フカフカの布団で…泥のように眠りたい。そう思って帰路につき、俺は眠った。だが、今朝は寝足りない。眠い目を擦りつつ、俺はリビングへと足を運んだ。
漣「…おや。」
?「あっ!!」
…そこにいたのは、艶やかな茶色気味の髪を後ろで結んだポニーテールの小さな巫女だった。背丈は俺の腰ほどまでで、それ以外は霊夢に似ている。ほんっと、元気だな。フローリングをそんな勢いよく走ったら、転ぶぞ?全く…。
漣「…お前は霊夢に似ているな。…確か、霊華だったか。」
霊華「もう、娘の名前を忘れるなんて、最低ねっ!!」
…この子はとても素直だな。甘え方も知っている。俺は彼女の苦言を気にせず、頭を優しく撫でた。プクッと膨らむほっぺたと頭を撫でたときの満足げな顔がどこか、小動物を彷彿とさせる…。あれか、ハムスター…とかいう奴か。
漣「ちっちゃい博麗の巫女か。で?巫女様は何をお求めで?」
霊華「もっとなでなで!!」
漣「はいはい。」
…さらさらしていて、ほのかに霊夢と同じ匂いがする。やはり霊夢の子だなと痛感した。因みにこの場には霊夢、霊華とその妹の雷夢、ルナサと紫苑、寝ぼけ気味の響奇を抱いている蛮奇がいる。俺は霊華を抱き上げ、ソファに座るとその膝に霊華を乗っけた。
漣「ふぅ…。」
…外は生憎の雨模様だ。荒れている。庭の花壇には恵みだが、育ち盛りの子どもたちは外で遊べなくて困っているだろう。こうして、家族でいる時が一番の幸せだ。
ルナサ「…そういえば、凰牙さんは?」
漣「あぁ。…どうせ、美味い団子の店でも探してのらりくらりとしているよ。あの人は団子には目がないから。」
…何処までも自由な人だ。ド派手な自由人であれで意外に責任感が強い。だが、彼は守る、守られるという言葉が好きじゃない。そこは自分勝手というか…なんというか…。
霊夢「…魔理沙は…。」
漣「…鈴仙からの連絡によれば、まだ意識不明の重体らしい。フランとアリス、シャドが代わる代わる面倒を見ているらしいけど…。」
霊夢の顔がわかりやすく暗くなった。そりゃそうだ。親友が意識不明の重体なんて聞いたら、そりゃ落ち込むよな。俺は少しでも気休めになればいいと霊夢の頭を優しく撫でた。撫でられたことに一瞬、彼女は驚いたがすぐに柔らかな笑顔を見せてくれた。やっぱり、笑っていた方が可愛い。
漣「…そうだ。笑ってくれ。お前が笑顔で彼女を迎えてやれば、今のこの不安感だって帳消しになるだろ?だから、笑って回復した時に迎えてやれ。」
霊夢「…うん。そうね。辛いのは今だけだものね。」
…こういう振り切れるところも彼女の魅力だ。こうやって霊夢にばかり構っていると膝の上の霊華がうるさくなでなでを要望するので、仕方なく撫でてやる。こういう時、こういう元気な奴に元気を貰えるんだよな。
…ん?霊夢の後ろになんかピョコピョコしてる…。あほ毛?
霊夢「…ん?あぁ。ライちゃん。お父さんだよ?」
雷夢「…おとう…さん?」
霊夢に隠れていた小さな少女、雷夢が俺の元へとトコトコと歩いてきた。不思議そうな顔で俺の顔を見る雷夢。霊華よりも俺の遺伝子が強いのか、髪の色が少し赤めで、目も赤かった。
漣「…うん。お父さんだよ。雷夢。」
雷夢「お父さん…。え、えっと…。わ、私も…その…。」
…霊華よりは人馴れしていないのか、俺と目線を合わせず、もじもじとしている。やはり、会っていきなりお父さんだよってのは、無理がありすぎたか…?
漣「…ん?」
雷夢「…わ、私も…その…なでなで…して欲しい…です…。」
…なんだ。そんなことか。
俺は彼女の頭に手を当て、霊華や霊夢にしてあげたように優しく撫でる。心なしか、髪質は雷夢の方が柔らかく感じた。雷夢は目を細め、とても満足げに見えた。
雷夢「…お父さんっ!!」
漣「うわっ!!」
一気に信用されたのか、霊華が乗り、空いているスペースに雷夢が飛びついてきた。勿論、めちゃくちゃ軽い。そして、俺の上で双子2人がキャッキャッキャッキャッと遊んでいる姿はとても微笑ましい。…本当、頑張って良かったと思った俺だった。
逢魔「…士道凰牙。想像以上ですね。」
暗い暗い部屋の中。広い広い部屋の中にピアノの凛と澄んだ音だけが鳴り響いていた。逢魔はソファの背もたれに出来るだけもたれかかり、ゆっくりと呼吸をした。
逢魔「…僕を笑いにでもきたんですか。」
?「それは心外だ。吾輩の鍵盤の音は心地よいだろう?」
逢魔「…いいえ。耳障りです。」
逢魔は寝ぼけ眼でその音の方を見る。逢魔の周りにはひざまづいたリリア、ライトシープ、右近、左近の姿があった。だが、ひざまづいている方向には逢魔ではなく、そのピアノの音の方向に向いていた。
逢魔「…とはいえ、貴方とは対等にやり合いたい。今回のことで怒っているのはわかっていますが…。」
?「…怒っている?吾輩がか。…冗談を。吾輩が本当に怒ったならば、この幻想郷全てを売地にすることも可能だ。全ては金と権威で解決するのだよ。ミスター逢魔。」
逢魔「…貴方らしい考えだ。ですが、此処ではそのコインやドル札はただの金属や紙ですよ。だから、その考えは捨てた方がいい。」
逢魔がニヤリと笑い、指摘する。すると先ほどまで凛と澄んだ音を奏でていたピアノが雑音にしか聞こえない不協和音を奏でた。
?「…陳腐だな。ミスター逢魔。無いのなら、作ればいいでは無いか。」
逢魔「…と、言うと?」
?「例えば、君はなぞられたストーリーを定型的に楽しむのに耐えられるか?犯人や手口の分かっているミステリーを十回、二十回と読むのに耐えられるか?…出来ないだろう?」
男はピアノを鳴らすのをやめ、逢魔のいる所へコツコツと歩いていった。窓の光に姿が見える。男は黒…いや、漆黒と言うにふさわしいスーツに身を包み、キチッと剃り上げたオールバックの黒髪をしている男。その姿は非常にスマートだった。男は逢魔の前に座り、リリアの出した紅茶を一口啜った。
?「…我々のような知能を持った人間にとってなんの変化もないストーリーなどとてもつまらない。そうだろう?ミスター逢魔。…ならば、我々の血が煮え滾る、面白いストーリーとはなんだ。」
よく通る低い声。男は逢魔とは違い、背筋もピンッと伸びていた。逢魔は男の方を向くように猫背になり、ニヤリと笑った。
逢魔「…つまり、貴方ならば、我々のストーリーを面白く出来ると?」
?「その通りだよッ!!ミスター逢魔ッ!!…我々の利害は元々一致している。それに、私が確認したいのはNo. 1の所在のみだ。彼女の体にはこの国を滅ぼすほどの恐ろしい魔力が込められている。」
逢魔「…魔力爆弾『No. 1』、彼女が人としての生きる意味を見出してしまえば、死ぬことを恐れてしまえば、我々の計画は破綻してしまう。」
?「その通り。アレが爆発しなければ、この不条理な幻想郷は終わらないのだよ。例え、それが此処では無くても、我々はNo. 1を捕らえなければならない。…面白いじゃないか。ミスター逢魔。想像してみてくれよ。人々の怒号や絶叫、慟哭が響き渡る幻想郷を。…素晴らしいじゃないか。」
逢魔「…同感です。プレジデントグラート。」
グラート「…くく。」
久しぶりに少し短め。
次回はシャド回か…先生を出そうか…それとも漣を出そうか…どうしよっかな。エロ回でもいいなと思ってます。
コラボ回なんですが、転箸笑さんの東方変人譚と予定をしています。読ませていただきましたが、謎めいた感じが好きな方は好きかもしれません。僕は結構「ん?」ってなったり…w
ほんと、自分の理解力の無さが悲しい。
では次回。ではでは〜。