…やっと、いろんなことが終わり、暇ができた。思ったよりも死屍累々達の損害は少なく、ホッとした。まだ、ミツヒデは目覚めてないらしい。思ったよりも汚染の侵攻が進んでいるようだ。俺はそれを確認に永遠亭に足を運んだ。今はその帰りだ。
漣「足、痛くないか?雷夢。」
雷夢「…うん。痛くないよ。」
前述した通り、暇ができたため、雷夢と一緒に出かけている。霊夢曰く、雷夢は俺と同じく、奇術的な戦い方で戦う遠距離の戦い方が得意なようで、それで学ばせる為に今日一日、俺の近くに置いといてくれとのこと。霊夢は霊華と一緒に修行しているようだ。霊夢は巫女ではなく、仙人、そして、神に近い存在へとなる為に、そして、霊華を歴とした次代の博麗の巫女へとさせる為らしい。
…雷夢と手を繋いで歩いているが、この子は危なっかしい子だ。少しでも目を離すと迷子になってすすり泣いている。我が子と思えば可愛いが、もし、目を離した隙にこの子が悪い男に誘拐でもされたら…。俺は霊夢に八つ裂きにされてしまうぞ…。
雷夢「…あれ?あそこ…。」
漣「…ん?」
雷夢は町外れの廃寺を指さした。…この子はほんと、いろんなものに目がいくな。霊夢から好奇心旺盛な子だからと、飛ぶのではなく、歩いての散歩をしていたが、不思議な子だと言うことに気づいた。なんというか、そういうフェロモン的なものが彼女から出ているのか、歩いているだけで彼女は動物に好かれやすいのだ。小さな鳥や虫が彼女の頭頂部のあほ毛に止まっていることもしばしば…。しかも、雷夢は極度の虫嫌いな為、蛾、蝶、蜻蛉すらも彼女には天敵らしく、見つけた瞬間、悲鳴と共に蹲って半泣きになっている雷夢。
…可愛らしいといえば可愛らしいが、本人にとっては悪い状態になってしまっているな…。虫が何もしないでやって来るわけだし…。
漣「…やっぱりかなり老朽化してるな…。」
木でできた柱は虫食いの跡がひどく、少しでも小突けば、倒れてしまいそうだ。長い草が寺内の至るところに生えており、地面が露出している場所がある。小石や床であったであろう木片が地面に突き刺さっているところがあり、足元がおぼつかない。
漣「…おい。こんなところに何が…?」
雷夢「…お家に帰りたいの。あの子も一緒に…。」
雷夢に連れられ、寺のあったさらに奥へと足を進めていく。もう、そこは草が人の侵入を拒むかのように生茂り、人里からも遠く離れている。まだ昼も終えていないので、少しの空腹感を覚える時間帯ではあるが、俺の右手を引っ張る雷夢と共に道無き道を突き進んでいく。
もはや、そこは人の住む場所ではなく、ちょっとした森のようだった。草も先ほどまで俺の足元付近までのまだ短めな草だったが、ここまで来ると5歳の雷夢はすっぽりと生まれてしまう。だが、少女の探検はまだ続く。この子は耳がとてつもなく良い。恐らく、猫か、犬の声でも聞いたのだろう。
…しかし、どこまで行くんだ?
開拓されていない森の中は、暗くはないが決して遊びで来て良い場所ではない。雷夢は俺の手を決して離さず、背の高い草をかき分け、なにか、目的地があるかのように一心不乱に歩いていく。先ほど廃寺から随分と歩いた。体力に余裕はあるが、まだ小さい雷夢はどうなんだろうか…。
漣「…雷夢、一体この先に何が…。」
雷夢「着いたよ。お父さん。」
雷夢の足が止まり、雷夢がそう言った。着いた場所は少し開けた場所だった。草の高さも控えめで、川のせせらぎが聞こえる。それでもそこは人が住むには劣悪な環境だった。
雷夢「ほら、あの子だよ。」
雷夢が指差す方向を見る。そこには…。
?「…もうたべられましぇ〜ん…。むにゃむにゃ…。」
?「…は〜るでしゅよ〜…。」
…2人いるんですが?
片方はリリーホワイトか。春告精だったか。春ですよ〜って言って飛び回ってる奴。で、片方は…なんだ?ツノが一つに、腰下まで伸びたくるくるヘアー…。こんな奴、見たことない。てか、こんな固そうな木の下で寝て、背中が痛くならないのだろうか。
漣「…一体誰だ?あの子は…。」
雷夢「…昔っから博麗神社にいる狛犬ちゃん。気配が感じないと思ったら、こんなところにいたの。」
…狛犬ちゃん…って。
狛犬は普通、動かないだろ…。
そんなことを考えている合間に雷夢がその狛犬ちゃんの元へと駆け寄り、満足げな顔で眠っている少女の体を揺すり始めた。長くなりそうだ…。俺は近くの木にもたれて、その様子を見ていることにした。
雷夢「起きてよぉ…。」
?「むにゃむにゃ…。」
…ほんと、長くなりそうだ。
漣「で?なんなんだ?一体。」
…まだ寝ぼけ気味の少女2人を前屈みになって、聞く。2人とも眠たげにまぶたを擦っている。
リリー「…お兄さん…誰ですか〜?」
リリーが答える。春告精というほどふわふわとした印象だ。対して、狛犬ちゃんはまだこっくりこっくりと眠ろうとしていた。
漣「俺は氷川漣だ。で?お前らはこんなところでなにやってんだ?」
リリー「私は春を伝えにきたんです。そしたら、ここでこの子が寝ていたもので…。」
?「ふわぁぁ…。なんの話ですか〜…?」
…まだ寝ぼけているのか。
というか、今気づいたらコイツ、髪長いな。陽奈と同じくらいあるぞ。そんなんでこんなとこで寝てたら、髪に葉っぱがつくだろ。
雷夢「大丈夫?あうんちゃん。」
あうん「あら〜。雷夢ちゃんじゃないですか。どうしたんですか?こんなところで。」
雷夢「それはこっちの台詞だよ…。」
…やっぱり、雷夢とあうん?は知り合いらしい。そしてそのあうんが言うには、博麗神社から家出してきた時、この廃寺を見つけたらしい。外も暗くなってたから、寝床として寺に行ったと。日が昇ってきたところで、この奥はどうなっているんだろうと疑問に思ったあうんは、探索に出かけた。ここまで来た時に少し開けたこの場所と春の陽だまりの中、うとうととしてきたあうんはここで眠ることにした…と。
リリー「それで、私はここで寝ているあうんちゃんを見つけて、横で一緒にお昼寝することにしたんです〜。」
漣「そうか。…で、あうんは何で博麗神社を家出したんだ?」
あうん「…実は、霊夢さんが私を構わなくなっちゃったんです。霊華ちゃんと雷夢ちゃんばっかり…。仕方ないと思っていても、頭を撫でられないのは寂しくて…。」
あうんの声は寂しげだった。笑っているが、泣きそうな声をしていた。俺はそんなことないと声をかけようとした。だが、その声は幼い声に遮られた。
雷夢「…そんなことないよ。」
あうん「え?」
雷夢「そんなことない。あうんちゃんが居なくなって、お母さん、ちょっとだけ暗くなったもん。多分、あうんちゃんがお母さんも大好きなんだよ。だから、帰ろう?」
あうん「…うぅ…うわぁぁぁん!!」
あうんが泣き叫びながら、雷夢に抱きついた。雷夢は優しげな笑みを浮かべ、あうんの念願であった頭を撫でる。数十分ほど、その状態が続き、あうんが泣き止んだ。2人、手を繋いで仲良く先程の荒道を歩く。そういえば…昼がまだだったな。
雷夢「うぅ…。お父さん…。お腹減っちゃった。」
あうん「はっ!?そういえば、私も…。」
リリー「リリーもですー。」
3人とも満場一致でご飯に行くことにした。はぁ…。もう、腹と背中がくっつきそうだ。
リリー「リリーは桜餅が良いです!!」
あうん「私はお肉が食べたいです!!」
雷夢「私は…え〜とえ〜と…。」
…ちびっ子達がワイワイガヤガヤと自身の食べたいやつを言っていく。桜餅…は無理だったが、みんなで定食屋に食べに行った。最初はリリーはちょっとしょぼんとしていたが、お肉を食べる時の顔が幸せそうだったからまあ良いか。腹も満たしたところでみんなで博麗神社に帰ろうか。俺は生姜焼きを食べて、汚れた3人の口元を拭ってやりながらそう思ったのだった。
では次回。
ではでは〜。