今日は朝から夜まで空いている。依頼もなければ、コンサートもない。雨も降ってるし、外にもいけない。…退屈だ。せっかく、3人とも休みなのにな。まぁ、読み進めていた本でも読むか…。
リリカ「ありゃ?ねーねー!!お兄さん!!何読んでるの?」
漣「…ん?」
何故か風呂上がりのリリカが俺の横にぴょこっと現れた。お風呂の熱気とシャンプーの香りが…じゃなくてっ!!
…朝にシャワー浴びる感じだったのか…。赤い薄めのTシャツにホットパンツなので、幼女体系であるリリカにも多少の色気がある。…うん。俺の悪い癖だな。そんなキラキラした目で…見ないでください…。
漣「…パチュリーのところで借りてきた小説だよ。リリカにはちょっと難しいかもな。」
リリカ「むぅ〜。何よそれぇ。いっくら、おつむの弱い私でも読むことはできますっ!!」
…本当かね…。この前、響奇の宿題の漢字を10分の9問間違ってなかったか?まぁ、メルランも怪しかったが…。あと、ソファの上は危ないから暴れるんじゃありません。コイツのことだ。少し経てば、おねむになるだろう。
リリカ「ねーねー。久しぶりにお兄さんのお膝、行っていい?」
漣「…フランや雷夢とかならいいが…お前はなぁ…。」
リリカ「重くないもんっ!!えーい!!」
漣「…はぁ…。」
人の話を聞かずに俺の膝の上に飛び乗ってくるリリカ。痛くはないが、小説が見えない…。そして、この目線はヤバイ…。リリカもルナサも髪の毛が短いので…うなじが…。
リリカ「お兄さん?聞いてるの?」
漣「…なんの話だ?」
リリカ「んーとね。アリスさんとこで食べたケーキが…。」
…長くなりそうだ。リリカは…なんというか、彼女…というよりは我が子のようで、天真爛漫なその様子が時々、心配になる。コンサートが近づくと少々鬱気味になるルナサや少し空回りしてしまうメルランとは違い、いつも通りのその様子に2人の姉も癒されるのだろう。今も俺の膝の上に座りながら、バタバタと落ち着きなく、足を動かしているその姿も危なっかしくもあるが、守ってやりたいという感情が出てしまう。…その少女を女性にしてしまったのは他でもないこの俺だが…。
リリカ「あー!!また上の空…!!」
漣「…耳元で叫ばないの。ケーキが美味かったんだろ?」
リリカ「そーそー!!それでねー…。」
…これが姉妹一の音楽の天才なんだからびっくりだよな…。なんでも、弾けるんだっけ?どの子にも言えるが、コンサートの時の変貌ぶりと言ったら…。可愛いが美しいになるんだからな。お世辞じゃねえぜ?
リリカ「もうすぐ梅雨なんだって!!」
話を聞きながら(時々聞き流し)、本を読んでいるとそんな言葉が聞こえてきた。梅雨か…。俺は嫌いだな。ジメジメするし…紫陽花は好きだけどね。
漣「…もうそんな季節か。」
リリカ「早いよね〜。カタツムリがいっぱい居てさ!!」
漣「リリカ。そろそろだから、どいてくれ。」
そろそろってなぁに?と小首を傾げ、渋々ではあるが、どいてくれるリリカ。俺はソファから腰を上げ、キッチンのオーブンに歩いて行く。その後ろから子犬のようにリリカがついてきた。オーブンを開けると甘い芳醇な香りがしてきた。起きる時間が思ったより早かったので、昼前ではあるが、作ってみた。リリカはそれを見た瞬間、目を輝かせて、文字通り滝のように涎を垂らしていた。
漣「…食べたい?」
リリカ「えっ!?いいの!?」
…流石にワンホールのアップルパイは食いきれん。甘すぎる…。
漣「いいよ。じゃ、食べよっか。」
リリカ「うんっ!!」
元気よくリリカはうなずいた。切り分けた甘い果実の匂いが室内に漂った。少女はそれを味わうことを心待ちにしている。…目にわかるくらいキラキラと目を輝かせて、小躍りしている。心の奥で温かいものが湧いてくる。…ほんっと、おかしな子だ。故に心惹かれたのだがな…。
漣「じゃあ…頂くか。」
リリカ「うん!!」
甘めのアップルパイには…苦めの紅茶がいいかな。
奏「甘いものがお好きなんですか…?」
戀真「寄った茶屋がたまたま汁粉の美味ぇ店だっただけだ。」
…甘い匂いは吐き気がする。だが、ここの汁粉は時折貪りたくなる。何も考えず、ただ貪りたくなる。
戀真「テメェは好きなのか?甘ぇもん。」
奏「はいっ!!とっても…。」
うっとりとした奏の顔に心臓を掴まれたような感覚を覚えた。女性らしい奥ゆかしい顔も良いが、時折見せる少女のような悪戯な笑みも可愛らしい。故に俺はコイツにどんだけ惚れてんのが馬鹿みてえにわかる。
戀真「ほんっとテメェは見れば見るほど良い女だ。」
奏「ふふ♪褒めても何も出ませんよ?」
戀真「何言ってんだ。出すのは俺だろ?」
奏「そのような低俗な話はこの場でしない方が…。」
正面に居る彼女の顎に手を当て、口吸いをした。前世ではキスと呼ぶものだ。柔らかな彼女の唇から餡子の甘い香りが立ち込める。こういう風情のある茶屋でやるのも意外に良いな。
奏「ぷはっ…。もぅ。急ですね。」
戀真「…身構えられちゃあいい味しねえだろ。身構えんのは夜這いの時ぐらいにしてくれや。」
奏「むっ…。良いのですか?戀真さんの子を授かって…。」
戀真「逆に俺以外の子供を授かったら許さねえ。」
周りに客もいないのをいいことに俺たちはそんな話をしていた。前に橋で会った時よりは同じ屋根の下で暮らしていることも相まって、お互いかなり信頼していた。男女が同じ屋根の下で何もないはずがないなんて言うが、ありゃ嘘だな。まぁ、俺がヘタレなんと奏が純粋すぎるのが原因か…。
戀真「俺がテメェを襲うときにゃ、テメェの隣に立つに相応しい男になってるさ。」
奏「…今は相応しくないのですか?私はそうは思いませんが…。」
きょとんとした顔も様になる奏に俺は微笑みかけた。奏は俺の顔を見た途端、着物で口元を隠し、目を晒して顔を赤くしている。晒した目が時折、こちらを見るその姿を愛くるしいと思った。
戀真「…例えるならテメェは月だ。ふとしたときに消えちまいやがるが、絶対に俺から目を見放さずに見てくれている。」
奏「…見ていない時もあると思いますよ?」
戀真「そりゃ、月だって陰ることがあるだろう?だが、それで良いんだよ。求めているものは求めている時こそ、光るんだ。そして、俺は水面。ゆらゆらと揺らめき、お前をその身に投影する。お前が何処に行こうが、見つける。それが隣に立つ男ってもんよ。」
奏「ふふっ。本当に面白い方ですね。」
上品に笑うその顔に俺の心は踊った。水面は彼女の瑠璃色の方が似合っているのかもしれないが、夜の闇に染まった水面の方が月は映える。赤色の茶碗に揺らめく水面は俺の意に応えるかのように真っ黒だった。その碗を喉に流した。
戀真「俺は決めたぜ。奏。」
奏「何をです?」
戀真「息子なら『レン』、娘なら『レナ』…ってのはどうだ?」
奏「…もうっ。まだ私、処女ですよ。」
静かな茶屋に2人の男女の笑い声が響き渡った。この時の俺はまだ知らない。この日、彼女を『女』にし、そして、双子の兄妹を孕ませることになろうとは…。
もうすぐ一周年ですねぇ。飽き性の僕がよく続けましたよ。1話とか、黒歴史ですね…。今もそこまで上手くないけど…。
一周年…多分、過去編かな?では次回。ではでは。