魔理沙「くそッ!!漣のいないこの時に…!!」
月夜見「人里だッ!!早くいくぞッ!!」
…胸のあたりが騒つく。月夜見から聞いて、急いで支度をしたけど、レンレンの居ない今、どれほどの実力かわからない敵にどれほど出来るだろうか。ルナサや博麗、魔理沙達と共に向かっているが、果たして…。
月夜見「…シャド。」
シャド「…なに。」
落ち着いた低い声。私は自身の中で葛藤していたこともあり、少々不機嫌に答えた。
月夜見「…今の貴様は充分な力を持っている。だが、まだくだらぬことで迷っているようだな。」
シャド「くだらないって…!!」
この男、本当に嫌な奴だ。心が荒んでいるのか、こいつになに言われても皮肉に聞こえる。…私は勝つんだ。漣に。
漣『…俺はもっと強くならなきゃいけない。だから、先生に修行をつけてもらう。』
…もっと強くならなきゃいけない…か。いつ戻ってくるかは知らない。恐らく、ルナサや迦具土なら知っているだろうが、聞かない。面倒だからとか、そんな理由じゃない。ただただ、ムカついたからだ。
月夜見「…すぐ頭に血が上るのがお前の悪いところだな。」
シャド「…なんだってぇ…?」
あったまきた!!今度宴会でこいつの酒、全部飲み干してやるぅ…!!
月夜見「…さて、和泉が先についていると思うのだが…。」
人里まではもう少し。もうすぐ着く…っ!?
月夜見「むっ…!!」
シャド「きゃっ!!」
魔理沙「んだぁ!?」
耳を劈く轟音。目が痛くなる閃光が人里へと走り、落ちた所には視界を遮る砂埃で人里が隠されていた。私たちは急いでそこへいく。
霊夢「…なに…これ…。」
…地面がえぐれ、周りの家は倒壊していた。幸い、閃光は寺子屋や定食屋などがある商店街などの中心地を大きく外れており、死傷者も少なかった。
慧音「はっ!!」
?「くくっ…!!良いねぇ!!偉大な偉大な大先生ッ!!」
船が降りた辺り、人里外れではあるが人里に近い荒野とかした場所で慧音と謎の赤毛混じりの茶髪の男が戦っていた。月夜見はそこへと走り、男の拳を自らの刀で受け止めた。
慧音「すまない!!正直、劣勢だった!!」
月夜見「構わん!!」
?「…へぇ…。アンタが月夜見…。ヤダねぇ!!変な偽善で前に出ちまって。」
男は一度後ろに飛び、月夜見達から遠ざかった。私たちも月夜見達の元へと行った。たどり着いて漸く気付いたのだが、相手は1人ではなく、男に似た黒毛混じりの青髪の男が腕を組んで立っており、その後ろには何万人もの人だかりが出来ていた。どこか、死屍累々を彷彿とさせていた。
?「…増えた。」
?「気にすんな。ラスト。どうせ、増えたところで敵じゃねえ。ただの偽善者だ。」
月夜見「…何者だ。貴様ら。」
月夜見が鋭い眼光で見定める。先程、慧音と戦っていた少年は姿勢を低くし、ニィッと口角を上げ、八重歯を見せて笑った。ラスト…と呼ばれた少年は首元に巻かれた布のようなもので口元を隠し、スッと立っていた。
?「何者かって?気にすんなよ。わからねえぐらいすぐテメェらは死んじまうんだからさッ!!」
またもや、茶髪の少年は凄まじい速度で拳を月夜見に叩き込んだ。
月夜見は少年の攻撃を全て剣で受け止め、隙が生じた瞬間、少年の腹を蹴り上げ、少年を上空へと上げた。
?「グハッ…!!」
月夜見「…舐めるな。小僧。差し詰め、氷川漣の居ない時を狙ってきたのだろうが、我々を舐めていたな。」
ラスト「…皆んな、行って。」
ラストの声に先ほどまで後ろで待機していた塊が統率の取れた動きで此方へと向かってきた。…でも、舐めてたね。
シャド「…氷結魔法『
発生する氷塊。私が居たのが運の尽きだった。何万もの群勢は突如発生した氷塊に飲まれ、消え失せた。
ラスト「…消えちゃった。」
ラストのか細い声が響いた。…あんまり冷気だしたら、体が凍えちゃうからこんな大技、ポンポン出せない。それを察した霊夢達に救助と避難誘導を任せてるからいいものの、こんなの諸刃の剣だ。
魔理沙「おい!!避難誘導、終わったぞッ!!」
シャド「だったら手伝いなさい。火力馬鹿。」
魔理沙「んだとッ!!テメェも似たような感じじゃねえか!!」
あぁ…うるさいうるさい…。冷気使ったらあのかき氷かき込んだ時みたいな感じで頭キィーンってなるんだから、大声やめてよね…。何度言ったら気が済むのよ…。馬鹿。
ラスト「…使えないなぁ。」
魔理沙「…テメェらは一体、なにがしたいんだ。」
地面へと降りた魔理沙がラストに落ち着いた声で聞いた。こいつは刺激しちゃダメだ。あの赤毛の男よりもヤバい感じがする。
ラスト「…なにがしたい?さぁ…。」
魔理沙「はぁ…?」
ラスト「…邪魔だよ。…消えて。」
言い終わるや否や、ラストの姿が消えた。ラストが消えた数秒後、私と魔理沙は蹴り飛ばされていた。痛くない…。と思うや否や、痛みと何者かに蹴られた感覚が一気押し寄せた。…これは僅か1秒にも満たない時間の出来事である。
魔理沙「ガハッ…!!」
ラスト「…弱い。」
魔理沙は人間だ。こんな一撃何発も食らったら、体も残らない。私は弾幕をがむしゃらに打ちまくった。とにかく、魔理沙を救出する時間が欲しい。…だが、それは夢現に終わった。私は前から来る弾幕に被弾したのだ。…そう、他でもない私の弾幕に。
シャド「くっ…!!」
ラスト「…やっぱ馬鹿だね。お姉さん。」
ラストの手が私の頬へと伸びる。…いつの間にこっちに来た?離したのはそんな微々たる距離じゃない。2人の姿が見えなくなるくらいのところに落ちたはずだ。落ちてすぐとなると勿論、そんなに時間は経っていない。…私たちが相手してるのは化け物なんて言葉では形容できない…。異次元めいた何かだった。
シャド「冷た…!!」
なんて冷たい手なんだ…。まるで氷だ。しかも、こいつ、驚くほど色白だ。赤い部分が全く持って、無い。目も透明に近い…白。なんだこいつ、本当に人間か…?
ラスト「…君が言わないでよ。ビックリするほど冷たいのに…。」
シャド「…殺すの?」
…当然か。どうせ、魔理沙を殺してこっちに来たんだろ。こんな顔して血も涙もない。あどけない少年の顔だったが、そう思った。
ラスト「…殺すのなんて、マスターには言われてない。僕たちはこの郷のエネルギーが欲しいだけ。隠してるんでしょ?No. 1を。」
…No. 1。かつて、漣や私たちと戦った玄霧逢魔達、死屍累々の求めていた物だった。ユウと読んでいるその少女の本質は少女と言うには危険すぎる魔力の塊。言わば、爆弾である。今は、リリカ達が匿っているが、漣の残した鬼神結界により、その子のいる漣の家は敵意を持つものには見えなくしていた。恐らく、あの魔力は求める者にとってはかなり魅力的なはずだ。幻想郷なら軽く消えてしまうほどの威力と量を持つ魔力兵器No. 1。それを手にしてしまえば、恐らく世界の秩序すらねじ曲げるほどの力を持つことになる。
シャド「…知らないよ。No. 1なんて。」
ラスト「…嘘つき。」
シャド「…嘘なんてついてないよ。」
悔しいが、ここで歯向かっても勝てない。てか、微妙に私の体の上に馬乗りになって、動けなくしているのだ。…くそ、スカート履いてくるんじゃ無かった。多分、今の私は間抜けだ。そんな重くないはずなのに、体が動かない。
シャド「…てか、どいてよ。動けないでしょ。アンタ、戦いたいんじゃないの?」
ラスト「…退く訳ない。それに僕は戦いもそんな好きじゃない。歯向かうから撃退しただけ。金髪の子は寝てるだけ。」
シャド「あっ、そう。」
…なんだこの時間。
ラスト「お姉さん、すごいね。あんだけいっぱい居たのに、すぐにやっちゃって。」
シャド「無表情で言われても嬉しかないよ。てか、重い。アンタ、彼女、居ないでしょ。女の扱い方、雑だもん。」
ラスト「…彼女どころか、お母さんすら覚えてない。どうでもいいから…。」
…そんな話、人は無表情で言えないよ。でも、わかる。私もお母さん、知らないから。あのクソ親父のせいで顔も声も姿形も塗りつぶされてしまった。気がつけば、ラストの手が私の胸へと添えられていた。
ラスト「…ここはあったかい。」
シャド「…変態。」
ぶん殴ってやろうかしら。この男。一応、女の子なんですが…!!
ラスト「お姉さん、表情、コロコロ変わって面白いな。」
シャド「…アンタ、本当になんなの?」
ラスト「…ぼく…は…。」
その時だった。ラストの体が私に重なるように倒れた。
シャド「ちょ…ちょっと!!重いでしょッ!!」
私の胸の谷間にラストの顔がすっぽり入った。振り解こうとするが、さっきまでの異常な冷たさが強烈な熱さに変わっているのを感じた。…熱だ。興奮したときのとか、そんなチャチなものじゃない。ハァ…ハァ…としんどそうに息を吐くラスト。病持ちなら言いなさいよッ!!
シャド「…チッ!!」
応急措置として、体に少し冷気を纏わせた。シャドである自分より医者である自分が動きだしたのだ。…目の前の命を救いたい。こいつは紛れもない悪人ではなく、善人でもない。ただの少年なんだ。詳しい話は後で聞く。…今はとりあえず…生きろッ!!
終わり方ね。
あんまりダラダラと戦闘を垂れ流してもと思い、早めに切り上げました。勿論、もう片方はもっと続きますが…。
では次回!!ではでは!!