?「ラァッ!!」
無茶苦茶な体術だ。だが、俺の体に与えられる拳は相当な重さ。ふむ…。何回も何回も殴りつけるラッシュ…。しかも、常人の拳では考えられぬほどの拳の硬さ…。鉄と対峙して、火花を散らすとは…。
月夜見「…ッ。煩わしい。」
剣を振るう。刃は風を切り、斜めに奴の体を裂こうとする。
鈍い金属音が聞こえた。
月夜見「…ッ!?」
?「…くくっ。そんな鈍じゃ、いくらやっても無駄だぜ。」
腹に奴の右拳が入る。ほぼゼロ距離だ。その拳は俺の体を貫いたように衝撃波が走り、後ろの倒壊した家の瓦礫を吹き飛ばした。
口から空気と共に血液が少量吐かれる。
月夜見「ぐっ…。」
言いようのない痛み、衝撃が体をめぐる。
…骨が騒いでいる。脳が揺れている。これが人の一撃だとでも言うのか…。
?「…先ずはその顔を崩壊させてやる。それが俺の能力なのさ。人の仲も、人の夢も、全て崩壊させる…。くくっ。楽しいだろ?」
月夜見「…いい、趣味だな…。」
?「へへ。そりゃ、どうも。早くしねえと…。うちの弟は病弱だもんでね。消えな。アンタは意外に良かったぜ。」
奴の右手が俺の体に添えられる。先程の一撃で視界が揺らぎ、膝をついた俺の負けだ。だが、甘いな。
月夜見「奥義『一葉突き』」
?「ぐっ…!!」
刃先は肉を裂き、奴の右肩を負傷させた。服を裂き、肉を裂き、奴の肩を串刺しにした。その瞬間、奴は怯み、俺はその隙に奴に足払いをかけ、首筋に両手で刀を突き刺した。勿論、首には刺していない。首筋近くの地面に刺しただけである。少し、首を切ったのか、血が垂れでているが、重症ではない。
月夜見「…油断したな。お前は意外に強かった。」
?「…へっ…。ほんっと、馬鹿だなぁ…。俺ァ。殺せよ。どうせ、出来やしねえけど、心臓を一突き…人想いにやれ。」
月夜見「…。」
月夜見は諦めたように大の字で地面に寝転がる男の胸に向けて、刃先を向け、勢いよく振り下ろした。
月夜見「…本当にいい趣味だ。人型の金属人形とは。」
男の体、特に肉が裂かれ、内側が見えている部分は赤ではなく、銀色に光り輝いていた。これならば、この男の異常な瞬発力も頷ける。
?「…人形なんかじゃねえよ。俺はれっきとした人間様さ。」
月夜見「…確かに。細かなところは肉のようだな。」
?「言い方が言い方だが…。ま、んなとこだ。」
心臓を狙った刀が弾かれた。…こういう金属系にはカッパやシャドなんかが得意としているが、俺はわからない。今、目の前の男は端正な顔つきをした美少年の生首が金属鎧にくっついているようなもの。
…月の英知や技術をもってしても悪趣味だ。と、少年は立ち上がり、服の砂や埃を払って此方を見た。太陽と見間違うかのように赤い目に俺が映る。朱色…とも言うな。見るものによっては綺麗だとも言うだろう。…残念ながら、俺にはそうは見えない。
月夜見「…貴様、名は…。」
?「ァン?…あぁ。言ってなかったか。俺はフューリー。さっきあの女が凍らせた二番隊の隊長だ。…ったく、なんで俺ばっかこんな木偶達しか使えねえんだろな。…弟には才があるというのに…。」
…フューリー…なる男は訝しげに爪を噛みながら、氷塊を睨んだ。ここまでの氷なら、もう中身の人間は終わっているだろう。心までもが凍りついている。
月夜見「…貴様らは一体、何がしたいというのだ。」
フューリー「…魔道具アインズ。通称、『No. 1』」
…あの小娘か。しかし、人型の魔道具といい、金属人間といい、趣味の悪い奴らだ。
フューリー「…そして、その対を成す存在、魔導器ツヴァイ。その二つが合わさったとき、人は宇宙を創造するほどの力を手に入れる。」
月夜見「…あの小娘と同じくらい力を持つ物があるのか?」
フューリー「…まさか。二つで一つなんだよ。それが共鳴し合うとあれより何倍も上の—————」
シャド「月夜見ッ!!」
…フューリーと話していると、甲高い声が戦地に響き渡った。そう、シャドである。子どものように喚き散らすその女の腕には華奢な体をした女とも言って良いほど白く細い少年が眠っていた。…ラスト…だったか。
フューリー「ラストッ!!」
シャド「この近く…私の診療所は多分使えないから、永遠亭まで送って!!早くしないと…!!」
…腐っても医者か。
月夜見「…護衛は俺がしよう。さっさと行くぞッ!!」
まだこいつらが俺たちを信用しているわけがない。無論、俺やシャドもだ。お互いにお互いを信用していないのに、助けるとは…。何かあったのか、それとも、医者としてのサガなのか。…霧雨魔理沙も起きていれば良いのだが…。
グラート「…ほう。これはまた…。」
…奴は船から見ていた。ラストが体が弱いのは知っている。グラートは不敵な笑みを浮かべた。
レジネス「…裏切り…か。」
グラート「くくっ。確かに。あそこまで喋られては我輩も困るが、何も裏切りと言うわけでも無い。現に、話されても我々は損はしないからな。この
レジネス「しかし、あのままにしておくわけにもいかないでしょ。…死屍累々にやらせますか。」
暗闇に人影が四つ現れた。レジネスとグラートは背後を見ると、そこには玄霧逢魔の姿もあった。それを見て、グラートはニヤリと笑った。なお、逢魔の顔には一切の表情の変化もなく、レジネスは信用していないのか、4人を睨みつけていた。
グラート「…頼めるかな?場合によっては…ラストとフューリーの処罰も辞さない。」
逢魔「…殺していいと?」
グラート「…できるならね。」
では次回。ではでは〜。