※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第158話『偽物と本物と悪魔と』

…時間は夕刻。黄昏時。

ここは閻魔の住まい。彼岸である。

魂達を裁く、管理する場所である。故に閻魔の仕事は実に重大であり、閻魔は慎重にならなければならない。

 

映姫「…今回の一件で来た魂は500以上…。しかも、全て幻想郷の方々です…。地上で…何かが起こっている…。」

 

ラグナログ「…閻魔様は呑気で良いね。地上で何が起こってるかも知らないで。」

 

閻魔の仕事場に男の皮肉じみた声が響く。そこには橙色の着物を着た黄色の髪を束ねている男が机に座っていた。

 

映姫「こら。御行儀が悪いですよ。何度も言ってるでしょうに…。」

 

ラグナログ「へいへい。じゃあ、こっちも言わせてもらうが…。ラグナログは偽名だ。俺の名前は橙紋終だ。覚えとけよ。」

 

映姫「…面倒です。貴方がそう名乗ったのですから、ラグナログで良いじゃないですか。」

 

映姫がラグナログ…もとい、橙紋終を睨みつけた。終は八重歯を見せ、ニヤリと笑った。部屋の淡い光に特徴的な終の目の虹彩がきらりと光った。

 

終「それに、何年も生きたジジイが今さら名前を世に出せるかよ。」

 

映姫「…能力まで偽るとは…。」

 

終「俺の力は醜いんでな。お子ちゃまが見たら、失神しちまう。弾幕勝負の無かった時代の俺たち、三柱はどれも今の時代には刺激が強すぎるからな…。特に…神喰らい…。」

 

映姫「…それはそうと。終、仕事です。」

 

…ビシッと笏を終に向かって突き出す映姫。つり目気味の顔から一変して、仕事と聞いた途端、終の顔は気怠げに眠たげになった。

 

映姫「…幻想郷を救うのを手伝ってください。上司命令ですよ。」

 

終「…ハァ…。かったるいねえ…。言っとくが、加減も弾幕もしねえからな。俺は俺のやり方でやる。浄瑠璃の鏡で見て、失禁すんなよ?」

 

映姫「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ラストなる小僧はシャドが永遠亭で見ている。小一時間ほど、彼をここに運んできて経っただろうか。人里の方は博麗の巫女とその娘らに任せている…が、やけに静かなのが気になるとか…。今、カラスらに偵察させるのは愚策だ。時間をかけて、奴らの動向と目的を探らねばならない。

 

月夜見「…故にお前に話を聞きにきたわけだが…。」

 

フューリー「さぁね。目的なんて、俺らには話されなかったさ。ただ…No. 1とやらを探している。そのNo. 1は誰かにかくまれており、No. 1とは魔力エネルギーの集合体…という情報しかねえな。」

 

月夜見「ふむ…。」

 

…世界を滅ぼしかねない魔力エネルギーの集合体。それがNo. 1なのはシャドの力によってわかっていたことだが…。問題はそれをどう使うのか。外界の者どもはそれを近代兵器に応用する知恵でも持っているのか…。全く持って意味不明だ。

 

フューリー「…チッ。薬臭え。なんだ、ここ。風情ある宿かと思えば、診療所。こんなの俺らの国には無かったぜ。」

 

月夜見「…お前達の国…?」

 

フューリー「…嫌なとこだよ。金持ちが権力を握り、金無しは道具のように使われる。地面を滑る金属製の箱や蒸気を動力源とする黒い蛇が空気を汚し、灰色の空を作り出した。移動に困ることはないが、毒を生み出す。ラスト…弟はそれを吸い、持病が悪化した。体をあまり動かすなと口煩く言っているが、厳しくしすぎたのか、最近では感情あまり出さなくなっていてな。全く…情けねえ兄貴だぜ。俺は。」

 

…情けない、か。

俺には兄も弟も居なかったが、和泉が恋仲になる前はまるで妹のように接していた。ほっとけば、なにしでかすか、わかったもんじゃなかったからな。だが、勿論、比喩的な表現のため、こいつの言うことは理解不能である。

 

月夜見「…情けないか。だが、ラストとやらはそうは思っていなさそうだが…。」

 

フューリー「ふんっ。知るかよ。ただ、アイツに謝らなきゃな。ここまでついて来させて悪かったってな。」

 

…その時、フューリーはとても優しげな顔をしていた。同時に悲しげにも感じた。まだ、シリウスとやらの真意はわからない。だが、もしかするとこの二人は付き従っているだけなのかもしれない。

 

フューリー「…生まれた時はお互い、普通の人間だったってのに…。神様ってのは不平等だね。」

 

月夜見「貴様らは機械ではないのか?」

 

フューリー「…半分当たりで半分ハズレだよ。俺らは人造能力者。人の手によって戦う術を手に入れた元常人さ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャド「…平熱まで下がったか。」

 

病状は一変して、今は安定している。辛そうに吐いていた息も安定し、スヤスヤと心地良さそうに眠るその姿は年相応のように見えた。

 

シャド「…もっと早く気づけばよかった。」

 

少年の柔らかな髪を一撫でした。メディとはまた違った髪質だ。手入れはしっかりしているようでいい匂いが鼻を刺激した。これは…薔薇?

 

ラスト「…んっ…。何してるの…?」

 

シャド「…起こしちゃった?」

 

まだ寝ぼけ眼を擦るその姿は少し可愛げがあった。声もか細く、その見た目から男と言われなければ、少女と見間違うほどだった。色は私より白く、そして食べているのか心配なほど華奢だった。

 

シャド「…もう、辛くない?」

 

ラストはコクリと頷いた。本人の様子からして、もう大丈夫だろう。一応は絶対安静だが…。

 

ラスト「…お姉さん、優しくなったね。」

 

シャド「…そりゃ、あの時は敵だったし…。今は敵とはいえ、私の患者だもん。少しは優しくしないと…。」

 

病は気からとも言う。だからではないが、精神的な疲れは癒すのに苦労する。優しくすることで気もほぐれ、回復へと向かうだろう。

 

ラスト「…兄さんは…。」

 

シャド「受付で待ってる。」

 

実際には見ていない。うどんげが言っていた。

 

ラスト「…兄さんには迷惑ばっかり…かけてるな…。僕の身体が弱いばかりに…。」

 

シャド「…そっか。」

 

落ち込んだ。沈んだ顔は辛気臭くて嫌いだ。戦っていた時はあんなに凛々しかったのに、今ではしおらしくなってしまっている。

 

ラスト「…僕には何もできない。能力もまともに使えないし…。こんな身体じゃ兄さんの役にも…。」

 

…目尻に涙を浮かべるラスト。能力を持ったとは言え、子どもは子ども。実質、見た目よりも歳は若いだろう。

 

シャド「兄さんのこと、好き?」

 

ラスト「…好きだよ。」

 

シャド「きっと、兄さんもラストのこと、好きだよ。好きだから、守りたいんだ。お互い。」

 

…ふと、幽香の顔が頭に浮かんだ。口うるさいなと思う時はあるけれど、時折、胸が暖かくなる。母親のような、姉のような…。私やメディと比べると大人だなとも思う。本物の姉妹じゃないし、家族でもないけど…それ以上の繋がりってのがあるんだろうな。

 

ラスト「…僕は兄さんにもっと頼って欲しいんだ。苦労をかけたく…ないんだ。」

 

シャド「…そんなに気を張らなくても良いよ。アンタ達はアンタ達にしか出来ない形で、支え合えば良いんだよ。」

 

ラスト「…そっか。そうだね。」

 

その華奢な体を私はギュッと抱きしめた。仕事でうまくいかなかった時、メディと幽香はこうやって慰めてくれる。抱きしめながら、髪を優しくゆっくりと撫でてくれる。…真似事ではあるが、私はこれで生きて来られている。白いシーツと私に似合わない白衣に窓から差し込む木漏れ日が反射して、キラキラと光っていた。

 

ラスト「…お姉さん、良い匂いするね。」

 

シャド「こーら。医者にセクハラしないで。」

 

ラスト「…抱きついてきたのはお姉さんなのに…。」

 

長い髪を束ねたせいか、窓から吹く風が頸へと当たる。少しくすぐったいが、髪が揺れた方が面倒だったと思う。今はどうでも良いや。時間をかけてでも良い。少しずつ、彼の心を溶かしていこう。…それが今の私の最適解だ。




凰牙先生は強いですが、こっから凰牙先生より強い人が出ます。凰牙先生が最強なら、その人物(今回チラッと出てるけど…。)は無敵です。凰牙先生より強いとは言いましたが、そんなに差があるわけじゃないです。…今のところは…。

こういうの、インフレにならないようにする方法あるのかな…?誰か教えてくれたら嬉しいです。

では次回。ではでは。
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