フューリー「…。」
右近「…。」
睨み合いの状態が続く。フューリーも右近も先ほどから、表情を一切変えておらず、何も話さず、睨んでいた。
フューリー「…へっ。汚れ仕事ばかりの烏合の衆どもが…。聞きしに勝るカスっぷりだな。プレジデントグラートの意に背くなんて。」
右近「…殺しても差し支えない。それもまた王の司令。」
左近「…人工的に作られた君たちは、幾らでも変わりがいるのさ。ここで殺し、余計な記憶を排除してから、もう一度、駒にする。…それもまた、王の命なのさ。」
…ただ煽り合うだけ。横では月夜見と蛇、鎌を持った男が戦う金属音や風切音が聞こえ、足の運びによる砂埃が舞っていた。
フューリー「…貴様らも兄弟などでは無いのだろうが。偽物どもが。」
右近「…何?」
フューリーの煽りについに右近は青筋を立てた。左近も顔は笑顔であるが、目は笑っていなかった。フューリーは少し口角を上げ、密かにほくそ笑んだ。
フューリー「…貴様らは元は一人の妖魔なんだろ?それを自身の妖力で二人に分けた。お互いが共に戦うのは、元は一人の妖魔だからだろ?だから、異様なまでに息が合う。なぁ?左近。」
左近「…日斬『風雷斬』ッ!!」
稲光の如き、轟音と速度と共に刀がフューリーの頸を横一線に斬ろうとする。
すんでの所、フューリーは横薙ぎの刃を仰け反って避け、その反動で後ろへとバク転する。
青々とした丈の短い草の地面に足をつき、大きく戦闘態勢に入る。
左近の放つ刃は手を緩めず、その目からは怒気のようなものが感じられた。二、三と規則性を持たず、肉を断とうとする刀の刃をフューリーは避けることしかできず、地面を左へと転がり、月夜見らにも当たらず、距離を取ることにした。
が、左近はその隻腕のアドバンテージを感じさせないほど、早く、強い突きを打ち込み、フューリーの眉間に当てた。
フューリー「…ッ!!」
突然の攻撃により、フューリーは少し怯んだのか、足元がおぼつかず、徐々に後ろへと下がっていく。
プライドを傷つけられた左近がそんな格好の獲物を逃すわけがない。
勢いよく、頸を切ろうと横薙ぎの刃を振るった。
フューリー「負けるわけ…ねぇだろッ!!」
左近「なっ!?」
フューリーはその横薙ぎの刃を右手で掴んだ。掴まれた鋼鉄の刀は掴まれた瞬間、砂のようになり、刀全てがボロクズと化した。
左近「チッ!!」
フューリー「…ありとあらゆるものを崩す俺に無策に突っ込みすぎたな。」
下がっていく左近の左頬に右拳のねじ込むフューリー。
反撃を予測していなかった左近はそれによって怯み、尻もちをつく左近。右近は動いておらず、声を荒げるのみだった。右近とフューリーの能力の相性は悪かったからだ。
右近「兄者ッ!!」
左近「チッ…。ぬかった…!!」
フューリー「終わりだ。」
…どう見てもフューリーの優勢であった。フューリーは永遠亭にいる弟を守らなければならない。だが、フューリーは手加減する気は無かった。そんな状況であるにも関わらず、鋭い拳をくらい、口から血が垂れている満身創痍では無いが、重傷である左近はニヤリと笑った。
左近「くくっ。最悪だ。最悪すぎて笑えてくるぜ…。」
右近「…まさか、兄者!!」
左近「…一人に戻ろうか。右近。俺たちは…もう、兄弟ではいられない。」
二人の体がまるで泥のように崩れて、混ざり合う。人型ではなくなったそれは、またもや人の形を形成し、その泥は徐々に人へとなっていった。
フューリー「…ッ。なんだよ。これ…。本当にあいつらなのか…?」
フューリーは驚きを隠せなかった。感じる妖力は二人分などではない。10人…いや、100人分とでも言っていい。…いや、増えているのではない。戻っているのだ。今の奴は最早、玄霧逢魔も、フューリーも軽く超えているだろう。
?「待たせたな。クソガキ。」
褐色肌で長い黒髪の大男。崩したはずの刀を帯刀し、その細い四肢からは腕っ節の強さは到底、見えなかった。
フューリー「貴様は…何者だッ!!」
?「…ん?そうだな。絆と言っておこうか。そうだ。俺の名は絆だ。」
絆…と名乗った男は首を鳴らしながら、フューリーへとゆっくり歩いてきた。フューリーにとっては不思議だった。心の底から俺は死ぬと思っていたからだ。
フューリー「…クソガァァァッ!!」
叫ぶことで恐怖で動かない足を無理やり動かし、絆へとパンチを入れた。
フューリー「…なっ!?」
当たった。当たったが、手応えが無かった。
絆「…じゃあな。幹部様。」
お返しと言わんばかりにフューリーの腹へと絆は蹴りを決めた。たった一撃でフューリーの骨が悲鳴を上げた。
空中へと蹴り飛ばされたフューリーの口からは大量の血が吐き出された。
絆はフューリーの後頭部を右手で掴み、地面へと勢いを殺さずに下ろした。…いや、勢いとしては落としたと言ってもいい。
フューリー「…うっ…うぅ…。」
絆「終わりだ。」
フューリーの体はたった二発で満身創痍であった。鼻や目、口からは血が流れ出ている。絆は最早、笑いすら溢さない。ただ、目の前の敵を殺すだけであった。
絆「…?」
…とどめを刺そうとしたその時、後頭部あたりに熱い衝撃を感じた絆は後ろへと振り返った。
ラスト「…兄さんに手を出すなッ!!」
シャド「…どこの誰だか知らないけど、お仕置きしてあげなきゃね…。」
絆「…覚えている。覚えているぞ。サンドラ。お前とは戦ったことがなかったな。」
口角を少し歪ませ、鼻で笑う絆。シャドもラストも目の前の敵に青筋を立てて、鋭い目で睨んでいた。
シャド「…サンドラ?…あぁ。死屍累々の誰かか。こんなところまでなんのよう?」
絆「…関係あるかよ。今の俺は戦いたいだけだ。…用など二の次。今の俺は自分の強さをォッ…。自分の強さを感じたいだけだァ…!!」
絆は腕を広げ、感傷に浸り、高笑いをしていた。
絆「さぁ!!かかってこい!!お前達を俺に見せてみろッ!!」
シャド、ラストはその言葉に触発されるが如く、地面を蹴り、絆へと立ち向かっていった。
では次回。ではでは。