…煩わしい。
何がかと言うと二点。佐久間鏡一郎の鎌による乱雑な攻撃。縦にも横にも…はたまた、斜めにも切りかかってくる。少しでも手を緩めれば、肉体など簡単に裂けてしまう。全て、刀で弾いてはいるが、非常に煩わしい。
そして、もう一点。ライトシープの強靭なまでの回復スピードである。先程、蛇の頭から尻尾まで切り裂いてやったが、鏡一郎の鎌に手間取っている隙に完全に回復されてしまった。簡単な傷は簡単に回復されてしまう。
鏡一郎「ヒャーハッハッ!!考え事してる暇、あんのかよッ!!」
乱雑に鎌を振り回してくる鏡一郎。それを俺は刀でガードした。
乱暴に…かつ、力の限り、不規則に振るわれる鎌。このままでは拉致があかない。
俺は一度後ろに飛んで避ける。
月夜見「…ッ!?」
ライトシープ「クックックッ!!背中がお留守ですよ!!」
…ライトシープが後ろから飛びかかってくるのを音で察し、俺は体を捻り、刀の刃で蛇の牙をガードした。
包丁程度はある大きさの牙に火花をあげ、刃を滑らせる。
月夜見「ハッ!!」
ライトシープ「ギャッ!!」
俺はその反動を使い、蛇の頭に横から蹴りを加える。
狙い通り、蛇は竹林側へと飛んでいった。
鏡一郎「チッ!!どーこ見てんだ!!」
鎌『デュベル』による大振りの横薙ぎの攻撃。俺は咄嗟にそれを刀でガードした。今までよりも大きな金属音が右側から聞こえた。刀で受け流した衝撃を身体で感じる…。先程の乱雑な攻撃よりも力が乗っている。くらっていては危なかった…。
鏡一郎「ギャハハハッ!!刀がガチガチ震えてやがる…!!俺の力の方が上みたいだッ!!」
月夜見「…。」
…押されている。事実だ。
踏ん張っている足元で踵側の土が少し盛り上がっている。刀を持っている両腕の筋肉が膨張し、腕の血管が浮き出ている。
鏡一郎「勝ち、確ッ!!だぁ…!!」
月夜見「…愚か。」
鏡一郎「ガッ…!!」
俺は鎌を弾き返し、そのまま勢いを殺さず、刃を奴の腹へと当てた。切ってはいないが、少しだけ奴の服を裂いた。腹には跡がついていることだろう。
先程まで優勢だと思っていた鏡一郎はなぜ弾かれたのかがわからず、手を白黒させ、言葉が口から出ないほど驚いていた。
鏡一郎「…ケッ!!突き飛ばしただけかい?そんなことで俺が…!!」
月夜見「…いつも。羽織は傷付けまいとしていた。」
鏡一郎「あん?」
鏡一郎は何を言っているのかわからないと言った表情をしている。が、俺は構わず、話を続ける。戦場で隙だらけなのだが、生憎、この男にはそんな知性はないようだ。
月夜見「和泉と契りを交わした際、天魔の御殿にて、彼女の幼少の時のものを貰った。たった一つの代物である。」
鏡一郎「ハッ。なら、その大事なしろもんを傷物にするだけだァッ!!」
話を聞かない阿呆が地面を蹴り、勢いよく俺を斬るため、鎌を構えて、飛びかかってくる。
俺は着物の襟元に手をかけ、ガバッと着物を脱ぐ。…所謂、諸肌脱ぎと言われるものだ。下には何も着ていないため、竹林を吹く風が心地よい。
鏡一郎「ありがとよッ!!肉を切りやすくしてくれてなぁッ!!」
月夜見「…奥義…。」
無論、脱いだだけではない。
緊張している体にドッと血を流すよう胸いっぱいに息を吸い、そして吐く。そして、軸をしっかり保ち、足腰に力を入れる。
鏡一郎「死ねぇぇ!!」
月夜見「『桜華一閃』!!」
鞘から刀を一息に引き抜き、地面を力強く蹴る。
鏡一郎「なぁ…ッ!?」
余裕そうな奴の顔が一変し、玉のような汗をかき、驚いている。今までと速さが桁違いなのだ。
そして、奴が間合いに入ったところで、横薙ぎの一閃を描いた。奴から舞う血飛沫はまるで穏やかに吹く風に乗った桜の花びらのようだった。
鏡一郎「…ぐっ…ァ…な…ぜ…ッ…。」
鏡一郎が俺の背後でバッタリと倒れた。俺は奴の方へと向き、腰の鞘に刀を入れ、フッと息を漏らした。
ライトシープ「…シュルルル…。貴方、一体何を?」
…よく帰ってきたものだ。あの迷いの竹林を…。
俺は倒れた鏡一郎の向こう側で悠然ととぐろを巻く蛇を見据えた。
ライトシープ「…私が見ていた限りでは、鏡一郎と貴方は五分五分だったはず…。」
月夜見「…加減で勝って嬉しいか?俺は本気を出したまでのこと。」
ライトシープ「…上裸になっただけでしょうに。ですが、それは己の首を締めると言うことを思い知らせてあげましょうッ!!」
ライトシープが口から緑色の散弾を吐き散らかした。
その散弾が地面に当たった瞬間、地面の草は紫色へと変色していった。俺はその散弾を時には地面に転がって、時には飛んで避けた。
ライトシープ「近づいてみなさい?貴方の体もボロクズになって終わるッ!!」
散弾を巻き散らかす蛇に俺は近づいていく。が、裂くつもりは毛頭無い。奴の攻撃は鏡一郎より弱いが早い。飛びかかりも、この散弾も早い。今の俺には速さが足りない。…恥は承知だ。忘れたものは仕方ない。
月夜見「奥義『性別超越の技』」
俺の体から煙が出てくる。普段なら、別に技として叫ばなくてもいいのだが、そこは良い。男の時なら羽織を脱ぐのだが…女の時は来ていて良いかもしれない。
ライトシープ「死になさい!!グルシャァァァァ!!」
ライトシープが飛びかかり攻撃の体勢に入り、俺に牙を剥き出しにして飛びかかってくる。
煙の中で俺の体は小柄になる。筋力は男の時に劣るが、瞬発力はこちらの方が上である。
月夜見「…奥義『桜華一閃・迅』!!」
速さだけに特化した斬技で向かってくる奴の体を先ずは一閃する。
ライトシープ「グルァァァッ!!」
再び、回復を開始するライトシープ。小さな肉塊が徐々に形を持っていく様は気分がいいとは到底、言えない。これだけなら、女になる必要はない。…が、これだけではない。
月夜見「…死に晒せよ。奥義『桜華一閃・千年風』!!」
俺は回復を試みている奴の周りを吹き荒れる風の如き速さで何度も何度も切り刻む。しなやかで…かつ、迅速な剣撃が奴の回復しようとする細胞を切り裂き、回復されるよりも先に攻撃すると言う技。奴の弱点は…。
月夜見「そこだ!!」
ライトシープ「ギャッ…!!グリュァァァァァッ!!」
…奴の弱点は、回復時にしか極小の心臓である。そこを捉え、一瞬で突く。そうなれば、奴になす術はない。叩く口も体力もない。回復しようとした奴の成れの果ては黒く変色し、風に吹かれ、何処かへ行った。…偉く呆気なかったな。
月夜見「…ヘックチ!!」
…まずい。肌を晒しすぎた。
今日も今日とてパクリスペクト…。
オマージュです。オマージュってことにしといてください。では次回。ではでは。