※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第163話『怨恨と炎天と決戦と』

逢魔「愚かな正義を掲げた者ほど先に死ぬ…。」

 

…早いッ。

空から落ちてくる幾千もの糸束の針。

 

俺は降り注ぐそれを時には後ろへと飛び、時には横に転がり、回避する。が、回避しているだけでは…。

 

漣「『叙情色の帯』」

 

俺は後ろへ大きく飛び、突き出した左掌から伸縮自在のレーザーを繰り出す。先程まで俺のいた場所は地面に大きく穴が空いていた。

 

逢魔「こんなもの。…何!?」

 

レーザーは帯状に変化し、奴の体に幾重にも絡みつき、黒煙を上げた。

 

俺が着地すると、少し髪の乱れた逢魔が空に浮かんでおり、俺をキッと睨みつけた。

 

逢魔「…まさか…この僕が…君みたいな低俗の攻撃をくらうとは…。生きては返さないぞ…。氷川漣ッ!!」

 

奴が右腕を突き出す。すると、先程の赤い糸の束が風を切る勢いで此方へと飛んでくる。

 

俺はその糸束の下をスライディングで避け、奴の至近距離まで走っていく。

 

近寄って来たのを嫌がったのか、左手からも糸束を生み出し、地面にバチンと叩きつけた後、鞭のように此方へと上から落としてきた。

 

俺はそれを横に転がって回避し、一気に奴へと距離を詰めると少し浮かんで、奴の頭に横から蹴りをかました。

 

奴は勢い良く横方向へと飛んでいったが、鋼鉄より硬い筋繊維を地面へと突き立て、勢いを殺し、静止した。

 

直後、奴は弾幕を四方八方へと展開し、俺にそれを放ってくる。

 

それを視た俺は、弾幕を的確にいなし、奴にレーザー砲を打ち込んだ。

 

逢魔「ぐっ…!!何故だッ!!僕にお前なんかの攻撃が当たることなど…考えられないッ!!」

 

漣「…俺の視た未来は覆らない。」

 

逢魔「…たかが…視るだけのこと!!視えないほどの質量で攻撃すれば良いッ!!」

 

直後、奴は天へと叫び、多く細かな繊維をガムシャラに動かす。

 

不規則な触手のように動く糸束を俺は全て避け、奴の腹に右拳をねじ込んだ。

 

逢魔「ガハッ…!!」

 

突然の衝撃に怯んだ逢魔に対し、インファイトを仕掛ける。

 

いつものスタイルではなく、一切の攻撃を許さないよう的確に…そして、鋭く、早い拳や蹴りを打ち込むスタイルだ。無論、逢魔のような剛力剛腕の筋力強化型のパワータイプには良く効く。

 

逢魔「こんなもの…ッ!!」

 

逢魔は筋繊維を体に纏わせ、俺の攻撃に対し、俺の手の2倍ほどの拳で相殺してくる。纏った鎧のお陰で2倍以上の体格差が出来てしまったが、関係ない。

 

逢魔「クックックッ…!!体力勝負なら僕の勝ちだ…!!」

 

漣「あぁ。そうだな。体力勝負なら…なッ!!」

 

逢魔は口が引き裂けんばかりニヤリと笑うとその剛腕を俺へと突き出してくる。

 

俺はその剛腕を避け、その太い筋繊維に囲まれた腕を肩に担ぎ、大きくぶん投げた。

 

逢魔「なっ!?」

 

投げられることは予想していなかったのか、玄霧逢魔は地面へ衝突し、大きな砂埃を上げた。

 

漣「…。」

 

…先生との修行は無駄では無かったようだ。数百年前の…全盛期の頃の感覚が少し戻ったような気がする。こうやって、手をグーパーするだけでも、何処か前の俺にはない何かが今の俺にはある気がする。…いや、無くなったのか…?甘さ、慢心というものが…。

 

逢魔「馬鹿なッ!!この僕が…ッ!!この…玄霧逢魔がッ!!」

 

傷だらけの玄霧逢魔がゆっくりと立ち上がる。先程までの余裕綽綽の奴が嘘のようで、奴は満身創痍とまでは行かないが、肩で息をするくらいに、ボロボロであった。

 

逢魔「…何を…したァ…ッ…!!何故…短期間で…これほどまで…!!」

 

漣「…何もしてないさ。何かをしなきゃならなかったのはお前の方だ。」

 

逢魔「…勝手に僕の…心を視たのか…ッ…!!」

 

俺は無言で頷いた。奴の心の中は正に暗黒以外の何物でもなかった。何度も何度もプライド、威厳を捨てて、一人の男に従い続けている真面目な男、相対的にある一人の男を付き従わせている慈愛に満ちた男の姿がそこには映っていた。

 

漣「…お前は、本当はこんなことしたくはないのだろう?なのに、何故、戦っている。」

 

逢魔「…馬鹿か…君は…。僕にそんな戯言が通用するわけがないだろう…ッ!!考えればわかるだろう…!!君は正義、僕は悪…ッ!!だからこそ、戦い、だからこそ敵対するッ!!闇と光は決して交わり合わないものだッ!!…舌先三寸で僕に正義を語るくらいなら…潔く死ねッ!!」

 

漣「…ッ!?」

 

…胸を貫かれた。奴の筋繊維に…だ。針状に編み込まれたその筋繊維が、俺の反応速度を超え、胸を貫かれた。

 

逢魔「…くくっ…。やはり、舌先三寸だったか。アンタの作るは空論なんだよ。実現不可能な非現実的な論理をッ!!自分の都合の良いように解釈しているだけッ!!そんな奴は早死にするのがオチである…ッ!!」

 

漣「…さて、早死にするのは…。」

 

逢魔「ッ!?…何故だ…。心臓はとうに串刺しにしているはず…ッ!!」

 

漣「…どちらかなッ!!」

 

その直後、逢魔の顔は爆炎に包まれた。奴は目の前の陽炎に視界を遮られ、背後から迫る俺に気付かなかった。陽炎…というか、分身のようなものだな…。立体映像…とも言っていいかもしれない。

 

逢魔「ッ…!!何故だッ!!手応えはあった!!それなのに何故ッ!!」

 

またもや、奴の剛腕が俺の顔へと迫る。だが、その剛腕は俺の顔を突き抜け、空をかいた。

 

奴自身は驚愕の表情を隠せないようで、俺はそんな奴にカウンターと言わんばかりに右拳を頬へと突き出した。

 

ぐにゃりと湾曲する逢魔。その瞬間、俺や逢魔を含めた全ての時間が遅延された気がした。そして、その遅延が終わった次の瞬間、奴は大きく右方向へと吹き飛んでいった。

 

漣「…光があるから闇がある。だが、正義があるから悪があるわけではない。…そもそも、俺は正義でも何でもない。ただ、守りたいもののために戦うだけだッ!!」

 

逢魔「…それを戯言だと言っているんだッ!!…そんなことが確立すれば、僕の今までの成果が無駄になる…ッ!!それを肯定するわけにはいかないんだよッ!!」

 

玄霧逢魔が糸束をぐにゃりと束ね、なにかを溜めているような姿へとなった。その証拠にエネルギーが捻られ、束ねられた糸束の中心へと集められる。洒落にならないくらいのエネルギーだ。

 

逢魔「…僕は僕だッ!!何者の理想にも真実にも染まらないッ!!玄霧逢魔として、アイツらの長として恥じぬためにッ!!僕の全身全霊…食らってみろッ!!」

 

…俺は掌を奴の方向へと向け、奴に対抗できる最大限のパワーを手の中心に込める。奴は煤だらけ、汗だらけ、傷だらけに対し、俺は全く持って無傷に近い。アイツのアレを食らえば、終わるだろう。それだけの自信があるから、あれほどまで顕著に弱点を曝け出しているのだ。

 

逢魔「くらえッ!!黄昏『滅殺逢魔砲・零』ッ!!」

 

漣「煉獄『日輪砲』ッ!!」

 

周囲の瓦礫を破壊しながら、此方へと一心に進む黒いレーザー砲。対するは迦具土の炎と自前の炎を一点に集中させ、白色のレーザーへと変える秘奥義。ギリギリ…というわけではないが、これを使えば打ってる間は動けない。正に諸刃の剣と言っていい。レーザー砲の大きさはほぼ互角。だが、若干此方が押され気味だ…!!

 

逢魔「ハッハッハッ!!これで終わりだァァァッ!!」

 

奴のエネルギー砲が少し大きくなり、勢いを増す。

 

…ッ…!!やむおえないか…!!

 

漣「煉獄『輪廻転生乃炎』ッ!!」

 

自前の炎を使っているのだ。勢いをつけるのであれば、火力をあげればいいだけのことだッ!!

 

狙い通り、レーザー砲は逢魔のエネルギー砲を軽く超えるほどの質量になった。正に太陽と月のような差である。

 

逢魔「ハッ…!?嘘だろ…。僕が…こんな…こんなァァァッ!?」

 

漣「消えろッ!!玄霧逢魔ァァァッ!!」

 

過去の戦いを今こそ清算する。

その決意とともに白い極光は黒い悪魔を跡形もなく包み込み、光が去ったそこには悪魔の姿は一切なく、綺麗に消し去られた瓦礫の山と円形に窪んだ地面が残っているのみだった。

 

漣「…。」

 

…玄霧逢魔。恐ろしい敵だった。先生や嘴なる謎の生命体は奴をいとも簡単にいなしていたが、奴が弱いわけでは決してない。ただあの人たちが化け物なだけなのだ。そして、あの船の中にいるのはそんな化け物たちとも互角に渡り合えるほどの力を隠している男…グラート。

 

…いざとなれば…いや、あれは…。

 

まぁ、良い。今はとりあえず、ルナサ達に会いたい。




では次回。ではでは〜。
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