※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第169話『飛ぶ城と王と戦火の花火と』

魔理沙「…ッ!?おいおいッ!!」

 

霊夢「…あれが…。」

 

人里覆う巨大な影。空を浮遊する巨大なそれに全員が顔を上げた。

 

漣「…輝針城…なのか…?」

 

…逆さまな和風の城…のように見えて、その姿は異質だった。侵入者を拒むかのように天守閣に絡みつく無数の触手。その触手から此方を見る幾千もの瞳。入り口付近には薔薇のトゲが行く手を遮り、その城はまるで生きているかのように鼓動していた。

 

輝針城の出現を受け、ほぼ全員で飛んでやってきた。流石に奴らは歓迎する気はなく、銃弾が駆け巡る。それを弾幕や斬撃で撃ち落とし、強引にでも進んでいく。…ある意味、地上よりも激しかった。

 

シャド「ああ!!もうッ!!鬱陶しいわねッ!!」

 

月夜見「…しかし、良い趣味している…。まるで化け物だ。この城は…。」

 

…全くだ。近づけば近づくほどその異形さに嫌悪感が走る。無数の瞳が不規則にぎょろぎょろと動いているが、その瞳は人の目そのもの。血管は浮き出ており、近づけば心音のようなものも聞こえる。その心音とともに触手も脈動している。…ただ一言、気味が悪い。

 

魔理沙「マスタースパークッ!!」

 

魔理沙のマスタースパークが生物のような逆さ城の壁に穴を開ける。人が2、3人入れるくらいのそこそこのサイズの穴だったが、丈夫な造りになっているようで流石に砕け散りはしなかった。

 

ルナサ「…なに…これ?」

 

中に入るとそこは紅魔館と同じ、いや、それ以上に広く、無数の入り組んだ廊下やふすま、螺旋状の階段があった。室内は思ったよりも整備されており、木を基調として使われている。だが、外装と同じく、触手が辺りに自生しており、室内は禍々しさに満ちていた。

 

迦具土「…中は妖力で満ちている…。少し息苦しさを覚えるところを見ると邪気というしかないな。」

 

漣「…いくぞッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリード「…グラート様。氷川漣達が城内にて潜入した模様でございます。フューリー、ラストの姿も確認されております。」

 

一方、輝針城城内天守閣玉座。鎮座するグラートの前にグリード、エレーナが膝をつき、平伏していた。真紅の玉座に座るグラートは足を組み、ニヤリと笑っていた。ほのかに照らされた室内と上下キッチリ揃えられた黒スーツの服装が相まって、グラートの陰湿さを高めていた。

 

グラート「…放っておけ。どうせ、奴らは我輩らシリウスには到底敵わない。阿呆のように暴れていれば、自分の首を絞めることとなる。それに…。」

 

グラートは玉座の背後にある脈動している赤い塊を見て、さらに口角を上げた。その塊は周期的に脈動し、辺りに心音のようなものがこだましていた。

 

グラート「…この魔力エネルギーの塊、No. 1が死ななければ我輩は無敵だ。」

 

赤い塊の中には見慣れた少女の寝顔があった。

 

グリード「…膨大な魔力エネルギー。感情に比例して増減する。故に痛み、苦しみを与え、その魔力エネルギーをこの肉塊を通して城内に流し、それをグラート様が喰らう。…流石です。」

 

エレーナ「でもぉ♡そんなまわりくどいこと、しなくて良いのではぁ?」

 

グラート「それでは奴らが我輩を倒す理由にならない。奴らを激怒させ、エネルギーを外へと流させる。そうなれば、相乗効果で我輩は…。」

 

グラートの高笑いが室内にこだまする。エレーナとグリードもそれに釣られる形で笑い、静寂だけが満ちた室内が一瞬にして笑い声で満ち満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、輝針城城内地下牢にて。

地下でなく、最上階に位置するのだが、光がほんの少ししか差し込まず、湿気もひどく、鉄の檻はぬるぬるしている。人が生きるには劣悪な環境だった。

 

サグメが放り込まれて数時間経つが、出られる気配はない。食糧は余り物を食わされ、手錠こそされていないが、足枷が鎖で石の床に繋がれ、動くにも動けなかった。

 

?「…なんでアンタがここにいるんだよ…。」

 

暗闇から声が聞こえる。女の声だ。サグメはあたりを見渡した。ほんの少しだけ差し込んだ日の光に照らされて、一人…見覚えのある少女が此方を睨んでいた。黒髪に赤と白が混じったメッシュの少女…鬼人正邪だ。

 

サグメは声を上げようとして止める。サグメの能力がそういう能力だからだ。…決して、人の運命に介入してはいけない。舌禍の女神。

 

正邪「…なんも言わねえか。いや、言えねえんだよな。…まっ、今更、アンタと話すことなんざなにもねえしな。アンタの顔も見たくねえ。」

 

正邪のトゲのある声が室内に響き渡る。喋れないサグメはさておいて、他の気配があるのに正邪の声に同調するものはいなかった。

 

正邪「…まぁ良い。独り言だと思って聞け。…ヘマしちまった。油断して捕まってこのザマだ。しかも、氷川漣達を焚きつけるための人質に…。あのお人好し、絶対、私を助けにくるぜ。私なんか一銭にもなりゃしねえ。ほんっと馬鹿だ。」

 

サグメ「…。」

 

正邪「助けになんて来なきゃ良いんだよ。少なくともアイツらには勝てねえ。弱えんだよ。あのお人好し。人なんて守ってるから弱えんだ。…馬鹿野郎め。人なんか、ただの踏み台にしちまえばいい。」

 

…サグメは声を出せなかった。本当は否定したい。だが、サグメが否定すれば、正邪の言うとおりにしかならない。サグメにとっては正邪は真実なのだ。正邪は本心は言っていないのに、サグメにとっては本当になってしまうのだ。

 

正邪「…天邪鬼が二人…。これ以上面倒なことはねえな。」

 

…そして、牢獄は揺れだした。




では次回。ではでは。
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