漣「ッ!!」
俺はグラートをぶん殴ろうと地面を蹴って距離を詰める。
グラートは俺の拳を掴み、ニヤリと笑うと俺の腹を上空へと蹴った。
漣「グハッ…!!」
グラート「ありきたりな行動だ。追い詰められた偽善的な貧乏人の行動はいとも容易く予測可能である。」
…とても鋭い一撃…!!
俺は拳を引っ込め、一度後ろへと下がった。
グラート「もう終わりかね?」
陽奈「咲夜さんッ!!」
咲夜「ええ!!」
余裕綽綽のグラートを無数のナイフが取り囲む。
ナイフと共に陽奈の放った光弾も取り囲み、黒煙を巻き起こし、グラートを包み込む。
対して、グラートはというと、その黒煙を手でなぎ払い、一瞬で陽奈へと距離を詰め、拳を打ち込んだ。
咲夜「危ないッ!!」
グラートの拳は空をかく。
咲夜が能力を使い、陽奈を助けたのだ。咲夜の腕には陽奈が抱かれていた。
咲夜「…もう少し注意して欲しいわね…。」
陽奈「あ…あはは…。」
グラート「…時間操作か。全く煩わ…ッ!?」
霊夢「霊符『夢想封印』ッ!!」
色とりどりの弾幕がグラートを狙う。
グラートは急な弾幕に対応できず、被弾。博麗の巫女の弾幕は生半可なものじゃない。普通なら勝負あったと言ったところか。
だが、無情にも黒煙が消え去るとグラートはそこにいた。無傷で…だ。
咲夜「霊夢の弾幕が…あの至近距離でくらわないなんて…。」
グラート「絶望することはないさ。全ては予測通り。いきなり視界が明るくなったのには少し驚いたが…。」
漣「…予測だと…?」
…まさか…俺やレミリアのように視えているとでも言うのか…?
グラート「…君の考えはつまらない。我輩にそんな力があると思うか?」
漣「ッ!?」
その瞬間、顔面に衝撃が走る。
グラートだ。グラートの拳が俺の顔にめり込んだ。そして、俺は後方へと大きく飛んでいく。
俺は刀の剣先を床へとぶっ刺し、勢いを殺したが…口からの血の味や顔の痛みは相当なもの。…体術面では今まで以上に脅威かもしれない…。
グラート「…なんという野蛮な…。面白い。ゲームはこうでなくてはなッ!!」
漣「チッ…。」
プッと口から血を吐き出し、地面を蹴ってグラートにインファイトを仕掛けにいく。
グラートは涼しい顔で拳撃の初手をいなし、カウンターとばかりに俺を回し蹴りで蹴り飛ばした。
漣「ぐっ…!!」
グラート「ほう?今の我輩の蹴りを耐えたものは久しぶりだな。」
…まだ決定打を与えられていない。ルナサの神憑も慣れてないうちはそう何度も連発ができない。短剣が耐えられないらしい…。刀を使い慣れていないから…。
漣「…。」
グラート「睨めっこをしている時間はあるのか?ミスター氷川。」
…奴は先ほどから一切構えていない。構えていても小さめだ。完全にこちらをなめている…と言った感じ。子供相手にテーブルゲームで手加減をしている感じだ。
…そしてこの室内。今までの和の様式ではなく、どちらとも取れそうな桐の床。土よりも滑ってなかなか踏ん張れない。飛べばそれは問題ではなくなるが…。
漣「…何を企んでやがる…。」
グラート「…なにも?これはゲーム。革命前夜に遊戯を嗜んでいるだけなのだよ。ミスター氷川。故に我輩は遊びに全力は出さない。ウサギを狩るのに本気を出す獣とは違うからなァ…!!」
咲夜「私たちが子供扱いですか。」
陽奈「むぅ…!!ムカつく〜!!行くよッ!!咲夜さん!!」
咲夜「…はいはい。」
続いて、咲夜と陽奈がグラートを取り囲むように走り出す。それに援護する形で俺、霊夢、ルナサは弾幕を打ちこんでいく。
グラートは弾幕を避け、陽奈ではなく、咲夜を狙い、走る。
咲夜は扇状に配置したナイフをグラートに放った。
グラートはそれを飛んで避け、咲夜に足払いをかける。
足払いは空を切り、代わりに陽奈の銃弾が背後から飛んでいく。
グラートはそれすらも涼しげな顔で避け、左右で挟む咲夜、陽奈を見やる。
グラート「…煩わしい。」
漣「俺たちも行くぞっ!!」
俺と霊夢が前線に出る。
それに気づいたグラートはニヤリと笑い、此方へと向かってくる。
俺と霊夢は代わる代わる奴にインファイトを仕掛けていく。
グラートはそれを全て避けるか、相殺していたが、面倒に思ったのか、俺と霊夢の拳をガッチリと掴んだ。
霊夢・漣「ッ!?」
グラート「…武闘派の巫女と鬼人間神の攻撃。素晴らしかったぞ。だが、ただの人間を舐めないでいただこうか…。」
グラートが俺たちの耳元でそう言うと拳を離し、その剛腕を薙ぎ払うように振るった。
俺と霊夢は後方に飛んで避け、格闘から弾幕戦へと変える。
グラートは数の多い弾幕を全てはいなしきれず、何回か被弾しているように見えたが、服にシワひとつ、顔に傷一つつけられちゃいなかった。
漣「チッ…!!」
グラート「…質より量。程度の低い力だな。ただの人間にこれだけ寄ってたかって一撃も与えられていないとは…。」
漣「…ただの人間?…化け物が…。人間語ってんじゃねえよ。」
グラートは歯を剥き出しにし、眼孔を開き、狂気の笑みを浮かべていた。
グラート「…残念ながら。我輩には人以外の力はない。どの人類にも人権というのは発生する。貴様ら、妖魔、神が偉いというくだらない妄言を力を持たぬ人間はただ指を咥えて見てるというのは苦痛だよ…。まぁ、貴様ら、妖魔には分からぬだろうが。」
漣「…この郷にも人間はいる。俺の母さんだってそうだ!!もう死んだが…あの人は人間だ。この郷は皆を受け入れる郷。人間だろうが、神だろうが、妖怪だろうがッ!!何か一矢報いる力は持っている…。確かに自分は人よりも強いと粋がっている妖怪もいるにはいる!!だが、それが全てではないんだよッ!!俺たちは…常に人間と共にある。」
グラート「…くだらない。その自惚れが破壊の一途を辿るのだ。何故、人と妖魔が完全に対立しないと言える?何故、常に人間と共にあると言える?妖怪が人を虐殺したら?人が妖怪以上の力を持ったら?その近郊は完全に乱れるんだよ。そして、
グラートはそう言うと黙り、此方を冷ややかに見下しているかのように睨んだ。口角は密かに上がってはいるが、心の底からは笑っていない。奴の言葉は本心…となると、奴は人ながらに化け物になった…ということだろう。そこはどうでもいい。だが、奴がこの郷を狙う理由がわからない…。
漣「…まっ。やるしかない…か。」
迦具土「…しかし、迦具土の炎はまだ使いこなせていないだろう?ルナサも神憑の反動が大きく満足には戦えない。…それに今のお前たちでは奴に一撃も与えられなかった…。どうする気だ。」
漣「ルナサの神憑と霊夢の夢想天生は後に置いておいた方がいい。…お前はルナサを頼む。ある程度近くにいないと神憑は出来ないんだろう?」
フューリー「…俺たちもやらしてくれ。」
俺が迦具土と作戦を練っているとフューリーとラストがこっちへとやってきた。…先程までグラートとの戦いを避けていた彼らだったが、決心したのだろう。フューリーとラストは静かに燃えていた。
漣「あぁ。…一緒に戦おう。」
フューリー「…有り難く思う。」
グラート「作戦は決まったかな?」
俺たちは部屋の中央で退屈だと言わんばかりの表情をして待っているグラートを睨み付けた。グラートはフューリーとラストを見て少し驚いたような表情をしたが、すぐさまいつもの貼り付けたような笑みをした。
グラート「…フューリー、ラスト。君たちはもう少し賢いと思っていたのだが…。」
フューリー「へっ!!これも俺たちのプライドって奴でねぇ…!!アンタに救われた手前、大人しくしたいだが、アンタの人を物として扱う考えは納得できなくてなぁ……!!皮肉にもアンタから貰った力で…アンタを超えてやるよ…!!」
拳を強く握るフューリー。ラストはそれを後ろから見るだけだったが、同じ考えなのか、静かにグラートを睨んだ。
グラート「…威勢がいい。良いだろう。物に教えてやる。プライドをズタズタにして、その犬歯をへし折って反抗の意思を二度と持たぬよう、主従関係を叩き込んでやる。」
漣「…煉獄『輪廻転生乃炎』!!」
視界を覆う白銀の光。体を包み込んだそれを手で薙ぎ払い、臨戦態勢を取る。裏では陽奈と咲夜も構えている。グラートは狂気の笑みを示すと、地面を蹴って、とてつもない勢いでフューリーを殴りつけた。
フューリー「ぐっ…!!」
フューリーはわかりやすく、顔をしかめ、カウンターと言わんばかりに差し出した片腕と逆側でグラートを殴る。
グラートはそれを食らっても微動だにせず、拳を引っ込め、フューリーの頭に回し蹴りをかました。
フューリーはそれを避けることもガードすることも叶わず、なすがまま、右方向に飛ばされていき、それを受け止めにラストが飛んでいく。
標的は俺へと変わり、奴はまた拳を構え、地面を蹴り、此方へと飛んでいく。
俺はその拳を交わし、いつもの三段蹴りをかます。
が、初動をグラートに受け止められ、グルングルンと回転をつけ、奴は俺を投げ飛ばした。
漣「ぐっ…!!」
俺は壁に当たるスレスレで空中で勢いを殺し、また飛び出していく。…輪廻転生乃炎でもここまでの力の差があるか…。
俺が向かおうとすると咲夜のナイフが奴を取り囲んでいた。
だが、グラートは逃げ場のないナイフの牢獄を拳圧で吹き飛ばし、咲夜の顔面へと手を伸ばす。
陽奈「咲夜さんッ!!」
陽奈がそう叫んだ時には咲夜はグラートの真ん前にはおらず、少し離れたところでナイフを構えていた。
グラート「…時間操作。意外に煩わしい。」
グラートは手を引っ込め、ゆっくりと咲夜の方へと振り返った。
フューリー「グラァァァァァトォォォォォッ!!」
砂煙の中、フューリーが姿を現し、とてつもない勢いでグラートへと迫り、インファイトを仕掛けていく。
遅れて、ラストもグラートへと向かい、インファイトをかけていく。先程の霊夢と俺の状態。だが、兄弟ということもあり、統率が取れている。
霊夢「…漣さん。私たちも。」
漣「あぁ。」
…化け物め。拳や蹴りの速度は人の反応速度を優に超えている。一度見て躱しているのに、奴に一撃も擦りさえもしていない。だが、ラストとフューリーも体力は余裕ありそうではある。
グラート「…。」
フューリー「くそッ!!なんであたらねぇッ!!」
ラスト「…チッ!!」
グラート「…消えろ。」
グラートは低い声でそう言うとラストの頭を掴み、フューリーへとぶん投げた。
咄嗟のことに反応しきれなかったフューリーはラストと衝突し、その場に仰向けで倒れた。
グラート「さて…ん?」
漣「いくぞ…!!曲符『凶曲注意』ッ!!」
掌から何本も太いレーザーを射出する。
グラートはそれをいつも通り避けようとするが、それを見越してのこの技だ。
グラート「…なに?」
一度、グラートから外れた幾千もの光線が背後より奴に向かってくる。
それをグラートは避けるが、またその光線は奴を追いかける。
グラート「…仕方ない。」
グラートは避けるのをやめ、服を少し緩める。
勿論、追従していたレーザーは被弾する。
黒煙に遮られ、グラートがどうなっているかは此方からはわからない。
漣「…まさか…。」
グラート「良い攻撃だ。久しく燃える良い攻撃だ。」
黒煙が消えていく。確実に当たった。無傷じゃ済まないほどの質量に威力だった。…だが、奴は立っている。何故だ…。
グラート「…我輩の能力、紹介がまだだったなぁ…。我輩の能力は『喰らう』程度の能力。腕、足、背中、首筋などに生物の口を出現させ、相手の攻撃を喰らい、自身の力に変換する。更に顔についている口以外の口で食らった物質の質量、値段、性質をコピーし、使うことも可能だ。例えば…。」
グラートは腰の皮の鞘から黒いナイフを取り出して………それを自身の掌に突き刺した。
グラート「…痛みはない。このサバイバルナイフを喰らうことで身体能力は少し向上する。」
バキッ…バキッ…と音を立ててナイフを喰らっていく掌の口。そして、時間をかけて、すべてを飲み込むと奴は此方へと不敵な笑みをしていた。
グラート「…君たちが我輩に打ち込めば打ち込むほど我輩は強くなる。そして、君たちが我輩を倒せない理由が他にもある…。」
漣「…何…?」
グラート「…『変換』」
グラートがボソリと呟くとグラートの剛腕を突き破り、銀の刃がズラリと並んだ。
グラート「例えば、このように魚の背鰭のように生やすことができる。無論、切れ味は抜群だ。…これを踏まえた上でゲームを楽しもうではないか。」
グラートはニヤリと笑うと薙ぎ払うかのように腕を動かし、此方へと斬撃を飛ばした。
俺はそれを宵ノ明星で受け止めた。
次回は少し戻ってエレーナ戦かな。
では次回。ではでは〜。