今回も逢魔回です。本当はもっと後の方に書こっかなと思っていたのですが、結局ネタが無くて…。メルランのエロ回も用意してるんだけどね。
…世の中には二種類の人間がいる。
人を強いと言う人間と…人を弱いと言う人間だ。
又は、月を美とする人間と醜とする人間だ。
特に今宵のような赤き月の夜は。美醜をとやかく言うなにもわからない阿呆が至る所に住んでいる。…僕は美醜など興味はない。あるとするならそう…あの月の真ん中にまるでもたれるように座る一人の美女だ。
?「あら?このような深い夜にお一人?」
逢魔「…いいえ。人探しを。」
?「会話になってないわ。でも…人探し…ねぇ…。」
音もなく、一瞬にして僕の真ん前にやってくる彼女。真紅の瞳と艶やかな金髪に夜よりも深く…暗いドレスが特徴的であった。彼女の胸元には赤い薔薇のコサージュ。そして、明らかに荒れた山道にも関わらず、素足の彼女。…美醜の価値観のない僕にもわかる。彼女こそが生ける美術品だと。
?「うーん…やっぱり、ここには人は居ないわ。この山の中に住んでいるのは私だけですもの。後は住んでいる廃墟しかないけれど…。」
逢魔「そう。君です。僕の探し人は。」
彼女がハッと驚いた顔になり、柔らかな笑みを浮かべた。翼は規則的にバサッバサッと静かに動いていた。
?「私を…?おかしな人ね。私は貴方と住む場所が違うわ。貴方は半分混ざり物ですもの。それに貴方はだぁれ?貴方の名前も…歳も…好きなお紅茶の味も知らないわ。それなのに私を探している?ふふっ…。ほんと、おかしい。」
まるでその声は鈴のように凛と澄んでいた。音楽にしてクラシックのような心地よさ。川のせせらぎとはよく言ったものだ。
夜空をまるで自室かのようにしている。ベットに座り、足を伸ばして自由にしているような姿だ。だが、そこらの雌とはわけが違う。位が違う。…これを上品さというのだろうか。何故だか、彼女をこの手に必ず入れたいと思う。
逢魔「…僕は玄霧逢魔。歳はわからない。1000を超えたあたりから数えていない。好きな紅茶はダージリン。」
?「あら!!ダージリンなのっ!?私も好きよ、香りがいいもの。…えと、そうね…。貴方ばかり自己紹介してもアレだし、私もするとするわ。私はベルベットローズ・スカーレット。歳は5000歳くらいかしら。長い間、夜にしたこの世界で住んでいるからわからないの。見ての通り、吸血鬼よ。半妖さん。」
逢魔「では、ベルベットローズさん。」
ベル「ベルでいいわ。長いもの。」
…彼女、ベルベットローズ・スカーレット、ベルこそが僕の探し求めていた玄霧組最大の兵器。どんな能力も彼女には劣る。戦闘スキルであの男を凌駕するかは知らないが、能力では上のはずだ。
逢魔「…長いのはお嫌いですか?」
ベル「うーんと…好きではないわ。だって、お紅茶が冷めてしまうもの。ちゃんと待てるいい子なのだけれど、時間ってわからないのよ。自分でこの世界を止めてしまってから。」
逢魔「…時間を…止めた?」
ベル「ええ。正確には時間の流れを…かしら。もう何年と動かしてないわ。ほら、人も…空気も…水も…この葉から落ちる露さえも、何年と動いてないわ。この国はまるで私の庭みたい。」
…流れ…か。
時を止めるなんてありふれた能力だ。だが、彼女の場合は違う。まるで十六夜咲夜の上位互換。流れを操ると言ったところか。
ベル「で?異国の殿方は私に何の用?見ての通りのおてんばよ?誰も私がしたことは気づかないもの。」
逢魔「…僕には愉快な仇が居ます。油と水のように混ざらず、黒と白のように真反対な男。いけすかない…殺さなければならない男が一人。君には僕たちの一味に入り、その手伝いをしてもらいたい。」
ベル「…あら、真剣な目。でも、ごめんなさいね。私、もう人妻なの。旦那がいる。ここにおいてはいけないわ。」
逢魔「…その旦那すらも止めてしまったのに…ですか?」
ベル「…いいえ。殺したわ。だって…スカーレットの血は継がれるもの。子種を私に宿した男、弱い男はいらないの。私は気高い吸血鬼の末裔、だけど…戦いは嫌いなの。汚れるもの。」
…美醜の良し悪しはわからない。音楽も、絵画も、彫刻も…僕にはわからない。全て、一太刀、何かを入れれば壊れてしまう。世界観が。だが、彼女は違う。赤い月光の色鮮やかな光が彼女の揺れる金色の髪を、黒いドレスを、白い肌を際立てる。…どうしてか、きっとそんなものに意味なんてないのだが、僕は何故か縋っている。
ベル「ふふっ。やっぱり闇ね。心が黒く染まっているわ。きっとくだらないことで悩んでいるのね。」
逢魔「…くだらない?…確かに。」
妙に納得がいく。自分ながらに、彼女の言葉に引き込まれていく。
逢魔「君は…なんなんですか?吸血鬼の姫。」
ベル「…ええ。吸血鬼の姫、正当なるスカーレット家の直系、そして、貴方のよく知る彼女らの直接的な祖先に値する。」
逢魔「…頭の中を覗いたのか…。」
ベル「うふふ。そんな芸当、私には不可能。でも、貴方の反応から察するに、そういう人もいるのかもってね。スカーレットの名を知っているようだから。」
…不気味だ。僕でさえ、彼女の底知れない闇に引き込まれる。これが真の夜の帝王。…いいや、夜の女帝か。レミリア・スカーレットと同じ、闇を率いる力。
ベル「マスクで隠れていい顔が見えないわ。…でも、良い。貴方の心が見えるから。恐ろしいわね。おぞましいわね。そこのない闇、深い深い…深淵、それが貴方。一緒に行っても良いけれど、貴方なら一人で出来るでしょ。私が居なくても。」
逢魔「…くくくッ…ハッハッハッ!!そんな出来た人間じゃ無いさッ!!永遠の命と、圧倒的な力を持った悪鬼羅刹…。炎で顔の右側を焼かれた怪物。…そう呼ばれたよ。でも、僕は人の意見に興味を抱かない。抱くのは憐みさ。喜怒哀楽、全てこの力のために置いてきた。心から笑わない。」
ベル「…なら、私に執着する必要ないじゃ無い。私が居なくても貴方は…。」
逢魔「なぁに…。単なる欲求さ。貴女のような輝きは絶対に衰えさせてはならない。」
ベル「へぇ…。欲求ね。でも、貴方はなにが欲しいの?この体かしら、それとも力かしら。数々の男と恋仲になったけれど、皆低俗ばかりだった。美しいから、とても色っぽいから、使いやすいからなど十人十色。ローズ、薔薇にはトゲがあるの。絶対に折れないトゲが。」
…さぁ、僕はなにを熱くなっているのか。
そこまでして、力を、この女を手に入れたいのか。否、と言いたいところだが、このままではかの幻想神には勝つことが難しい。
逢魔「…吸血鬼の姫、此度、貴女には我々の玄霧組の為に働いて貰いたくこの時代まで来た。貴女の魅力などこれっぽちも興味はないっ!!…ただ、貴女の毒牙にかからぬよう、僕は耐えた。それだけだ。」
ベル「…?…ふふっ。面白い人。良いわ。逢魔さん。貴方に着いていく。この場所を捨てるのは惜しいけれど…貴方にはそれだけの価値がある。それに会いたいものね。フランドールとレミリアに。」
…全てを見ていた。この夜から。
彼女は寂しげに笑った。ルビーのような瞳が月明かりに照らされ、赤く光った。そして、彼女と僕は畜生界へと赴いた。
…世の中には二つの人間がいる。
『欲しいものを欲しい』と言える人間と言えない人間。
そして、全てを見ようとする人間と全てから目を背ける人間だ。
無いに等しかった…w
そろそろ正邪の話も書きますね。メルランのやつも…。で、出来れば200話超えて異変編に行きたいんですね〜…。ネタ無いけど…。
では次回。ではではー。