正邪「おーい!!こんなとこでへばっちまってたら、置いてっちまうぞッ!!ばーか!!」
漣「おいおい。そんなに焦ったらこけるぞ。ったく…。」
…今日は晴天。雨は最近、降っていないのでツルッと滑ることはないだろうが行く場所が行く場所なので念の為。そう、絶好のデート日和である。秋…と言えば芽吹く紅葉の季節だ。前に一人で来た時はかなり色づいていて、とても綺麗だったので、暇そうにしていた正邪を連れてきた。
最初はしょうがないから行ってやると言っていた正邪だったが、今ではしっかりとおめかしをして、子どものようにはしゃぎ回っている。おめかしと言っても、黒のパーカーに紺のミニスカ、それと…同じく黒のパンプスという感じだ。
正邪「早く行かないと日が暮れちゃうじゃねえかッ!!このノロマッ!!」(早くしないと一緒にいる時間が減っちゃうじゃんか…。もっと一緒に居たいのに…。)
…俺が心の声が聞こえると知ってもなお、筒抜けの彼女の心情。あまり取り繕うのは苦手なようだ。それも可愛らしいから良いんだけど…。憎まれ口を叩きながらも、八重歯を見せ、笑う彼女。連れてきてよかった。
漣「わかったから!!山道をそんなに走っていくなっ!!危ないだろ?」
正邪「へへっ。知らねえよ。こんな場所選ぶテメェが悪いんだろ?素直に人里を行けば良いのにさ。」(うぅ〜!!こんなこと言いたいわけじゃねえのに…!!なんで会話すりゃ良いかわっかんね…!!)
…確かに人里を通ってそのまま人が通るルートを辿れば、ここまで危険を犯さずに山頂まで行ける。だが、正邪はあの異変以降、天狗たちや人々からあまり良い印象を受けてないのだ。だから、人目を避けて、行かなければならない。少しでも何かあれば、俺がサグメに殺されかねん。
漣「ったく。」
正邪「…ふ、ふえぇぇぇ!?」
漣「なんだ?」
正邪「なんだ…ってッ!!テメェ、手!!手!!」
…手って…。握っているだけだが…。
危なっかしいのでせめてと思い、手をギュッと握っている。思ったより正邪の手は小さい。だが、それよりも反応が過度だ。
正邪「なに勝手に握ってんだよッ!!馬鹿ッ!!」(2回目だけど慣れねぇ…!!ゴツゴツしてて…なんつうか…落ちつかねぇ…!!)
漣「手でも繋いでおかないと、お前は危なっかしいからな。」
正邪「心配しなくても大丈夫だって。…ったく。過保護め。」
漣「過保護にでもしないと、お前はすぐ無茶するからな。」
正直、手ぐらいでこんなにも騒がれては俺も恥ずかしくなってくる。他の子たちは成り行きでデートやらなにやらをしてしまったが、こうして見るとこれが普通の反応なのかもしれない。…やたらと過度な気もするが…。
正邪「うぃ〜…。結構、沢まで行ったらさみぃな。ある程度厚着してきたが、下がさみぃ。」
漣「そりゃ、この時期にそんだけ脚出してたら、寒いだろ。」
正邪「見るなよ。変態。」
横で手を握りながら、八重歯を見せて不敵に笑う正邪。
漣「そりゃ見るだろ。可愛いし。」
正邪「は…ハァァッ!?」
…普通に服装を褒めただけだが…。パーカーやミニスカはどことなくラフさを感じさせるが、いつもサンダルの彼女がパンプスを履いている(しょうがなくでも楽しそうにおしゃれしている)のを見て、可愛いと思った。ただ、俺が…だが。
正邪「べ、別に…嬉しかねえよッ!!」(可愛いって…言われた…。頑張って選んだ甲斐があったぁぁぁ…!!よっしゃァァァ…!!)
漣「くくっ…。」
正邪「なっ!?わ、笑うなッ!!馬鹿ッ!!」
この能力、意外に楽しいな。
読まれてる側は嫌かもしれないが、読んでる側はすごく楽しい。まぁ、嫌がれば切れば良いだけだし、それに正邪はわかりやすいから意外と一緒に居れて楽しい。
漣「ほら、置いてくぞ?」
正邪「はんっ!!誰が置いてかれるかよッ!!」
時刻は正午。ある程度人目につかず、そして、絶景の場所。玄武の沢の雫に光が反射し、輝く場所。そのなだらかな岩の上にマットを引き、家出る前にささっと作った弁当箱を取り出し、中身のサンドウィッチを正邪にやる。
正邪「んだよ、これ。こんな犬の餌が私の昼飯かよ。」
漣「嫌なら、食わなくても良いぞ?」
正邪「やだね。もう食っちまったしっ!!」
…なんだかんだ言って、満足そうな顔で食べている。相当、お腹が空いていたのだろう。心の中から満足している。
正邪「マズっ。すっごくまずい。やっぱ、私が作った方がまだマシだねっ。」
漣「ほお?そうか。なら作ってもらおうか?」
正邪「えっ……。わ、わかったよ。今度作ってやるよッ!!」(どうしよう…。料理なんてしたことねぇよ…。サグメに教えて貰っとかねぇ…と。)
…やったことねえのに大口叩いたのかよ…。全く。
漣「…?」
正邪「…ずっと向こうにいたからさ。こんなんに余裕割く時間もなかった。」
…こんなん…紅葉のことか。
向こうっていうのはシリウスやら死屍累々やらで…。そう、彼女は事件の渦中の人間だったわけだ。だから、こんなん割く時間はなかった。
漣「良いじゃないか。これからはそんなこと考える余裕の方がねえ。好きな時に好きなものを見て、好きなことをして過ごせば良い。何かあっても俺がいる。」
石から出ている自分の足をプランプランと動かしながら、そんなことを言う正邪。その頬はほのかに赤く色づいていた。
正邪「…ふんっ。守られたきゃないね。これから私を殺しに来る奴らの方を逆に殺してやるよ!!」
漣「その域だ。」
…元気そうでよかった。
漣「…楽しいか?」
正邪「普通だ。」
素直じゃない彼女を連れて、河川の砂利道を行く。綺麗な紅葉と落ち着いた沢の空気が心を癒していく。ここまで空気が澄んでいる場所は幻想郷でもそう多くはない。
漣「気持ちいいな。」
正邪「ふんっ。」
そっぽむいているようだが、心の中では喜んでいるようだ。正邪はなんというか…子猫みたいだな。人に懐くよりも家に懐く。でも、人を癒す不思議な力がある。
漣「次はどこにいく?」
正邪「…テメェで決めやがれ。」
漣「おや?ついて来てくれるのか?」
正邪「…そ、そりゃあ…デート…だもん…。」
漣「ん?…くっくく…ははははっ!!」
正邪「なっ!?わ、笑うなッ!!」
急に素直にしおらしくなったと思ったら…。
漣「くくくっ…。そうか、デートだと思ってくれてたのか!!嬉しいぞ!!」
正邪「このヤロー…っ!!もう置いてってやるッ!!」
漣「あーっ!!こら!!走るなって!!」
この後は結局、追いかけっこになった。家に帰ったらもう夕暮れ時だった。二人とも疲れ果てて眠ってしまったのだった。
終わり方雑いのは許してくれぇ…。