…良い晴れの日…とも呼べない空の下。少し小雨が先生譲りの古い傘の隙間から俺の体を少しずつ濡らす。だが、それでも飛ばす、一段一段上がっていく。飛ぶことだけが全てではないと霊華と雷夢に教えるためだ。
漣「…着いたか。博麗神社。」
少し雨に濡れているが、それでも狛犬は吠えている。流石にあうんは室内か。飼い主代わりの雷夢は良識である。…まぁ、当然か。
懐から黒い皮財布を取り出し、一文を取り出し、賽銭箱に投げ入れ、雨に濡れた本坪鈴の縄を両手で握り、鈴を鳴らす。そのあと、ニ礼ニ拍手一礼だ。…神が神頼みして何になるかはわからないが、家族の安寧と健康でも願っておこうか。
霊夢「いらっしゃい!!」
鈴の音につられて霊夢、霊華、雷夢の三人がやってくる。俺は霊夢に着てきたロングコートを預け、室内へと上がる。もう早いんじゃないかと思うが、室内にはデカデカと中心に炬燵が置かれていた。
霊夢「ちょっと早かったかなぁ。もうすぐ冬だし、もう良いかなとも思ったのだけれど。」
漣「いや、良いさ。ただ、少しびっくりしただけで。」
魔理沙「よー。久しぶりだな。漣。」
…我が物顔で炬燵に居座る魔法使いと…狛犬の姿も早すぎるかもしれない。というか。
漣「この雨の中、そんな薄着でよく来れたな。」
魔理沙「雨つっても、本降りじゃなかっただろ?ほら、ちょうど今みたいな。」
ふと言われ、外に耳を向けるとザーザーと雨が地に打ち付けている音が聞こえた。誰が何と言おうと豪雨だ。俺のボロ傘なんか、こん中に飛び込んで行ったら壊れちまうほど。
あうん「すごい雨ですね。」
魔理沙「はぁ…。炬燵はぬくぬくで良いねぇ。外は結構寒かったぜ…。お前も…あぁ。お前は暑さやらなんやら感じないんだったな。便利なこって…。」
漣「感じないわけじゃない。ただ、常人より鈍いだけだ。」
そりゃ、火達磨にでもなりゃ、暑さを感じるし、吹雪降る山頂にでも居れば冷たさだって感じる。夏や冬の寒暖に強いだけで…。
霊夢「結構、降ってきたわねぇ。」
霊華「母さん?今日、お布団何人分敷くの?」
霊夢「そうね。一応、6人分敷いといて。最悪、アンタら私の隣でもいいでしょ。」
霊夢の指示に霊華が元気よく返事をして、奥の畳の間に一枚一枚布団を敷いていく。…そうか。悪天候で時間帯はわかりづらかったが、夕方か。
霊夢「どうせ。この馬鹿も泊まっていくから。」
魔理沙「ハハッ。だってよ、漣。」
霊夢「アンタよ。」
魔理沙「私かよッ!!」
魔理沙には悪いが、ここにいる皆んな笑っている。爆笑だ。
漣「ハハハッ…。嗚呼…笑った。で、お前、泊まってくのか?俺は泊まっていくが。」
魔理沙「勿論だぜ。」
霊夢「…はぁ…。」
腐れ縁…とも言い切れない。魔理沙の屈託のない笑顔で…対する霊夢は頭を抱えている。友達ってのも難しいものだ。
漣「…疲れてるな。霊夢。」
霊夢「いつものことよ。コイツの相手は疲れる。」
炬燵に座り、足を温めていると、後ろから俺を抱き、肩に顎を乗せる霊夢。頭をポンポンと優しく頭を叩いてやると、柔らかな笑みを浮かべた。満足しているようだ。
霊夢「…落ち着く。トクッ…トクッ…って漣さんの鼓動が聞こえる。」
漣「…膝においで。少し休ませてあげる。」
霊夢「そんな…悪いよ。漣さんもここまで来て疲れてるだろうし。」
漣「大丈夫。俺は散歩の一環だ。良いからおいで。」
霊夢を優しく離し、炬燵から出て胡座を掻いた膝を叩く。来いと言う意思表示だ。霊夢は少し躊躇いつつも、ゆっくりと仰向けに倒れ、俺の膝に頭を乗せた。柔らかな黒髪が膝の上で感じられた。
魔理沙「ハハッ。旦那の前では…鬼巫女も形無しだな。」
霊夢「…。」
漣「ハハッ。そうは言わないでやってくれ。人は誰しも甘えたい時だってある。」
罰の悪そうな顔で横になる霊夢。もろに甘えている姿を友人に見せたくはないようだ。…まぁ、そこで半ば羨ましそうに見ているスキマ妖怪も見えるが、気にしないでおこうか。
雷夢「あっ…。」
霊華「ダメだよ。雷夢。今は母さんの父さんなんだから。」
…今は雷夢は末っ子だからな。甘えたいのだろう。ただ姉がそれを我慢させようとしている。雷夢も姉になるのだ。今は…少し我慢してもらおう。
霊夢「…雷ちゃんにも甘えさせてあげて。」
漣「自分を犠牲にするのは立派だが、俺から見たらお前も雷夢も変わらない歳だ。千、万のうちの5、10なんてちっぽけなもの。だから、今はお前が甘えていろ。雷夢には…あとでいくらでも。」
…子を犠牲にというのも少し考えようだが…今日は雷夢と寝てやるか。甘えん坊め。幼いながらに稀代の博麗の器。…あまり難しく考えないよう、後で言い聞かせてやるか。
霊夢「…ふわぁぁ…。」
漣「…眠いか?」
霊夢「んっ…。少し…眠るね…。」
それだけ言うと彼女は静かに目を閉じた。やはり疲れていたのだろう。博麗神社にも久しく来てなかったが、霊夢は一人で双子を相手にしていたのだ。俺も数週間に一度、見には来るし、雷夢に関してはウチに出来るだけ泊まらせているからと思っていたが…。
魔理沙「…こうやって見たら可愛いんだけどなぁ…。」
漣「…手ェ出すなよ?俺のものだ。」
魔理沙「出すかよ。私は…。」
漣「…シャドか?」
魔理沙「…。」
おや、普通に否定するかとも思ったが、意外な反応だ。しおらしい。炬燵の影に隠れて小さくなっているかのように見えた。
魔理沙「…アイツのことなんかどうでも良いさ。性別が変わって、ガラリと考え方も変わりやがった。ラストに対してもまるで母親みたいに…。」
漣「変わってなどいないさ。昔からアイツは優しい奴だ。」
魔理沙「…そうなんだろうな。」
…何か思うところがあるんだろうか。とはいえ、このままここに霊夢を寝かせておくのもアレだ。魔理沙の話は後として、ここは畳の間に寝かせよう。布団は敷いてあるらしいから。
終わり方がぁぁ…。
では次回。ではでは〜。