漣「…雪か。」
妖怪の山、山道。俺は考え事をするとき、手当たり次第に散歩をするのだが、いつのまにかこんなところに来てしまったようだ。木々は白く染まり、何処か新鮮な気がする。
?「あっ!!お前ッ!!」
漣「…チルノ。」
少し山道を進むと開けたところにチルノと…確か、レティ・ホワイトロックだったか。その二人が遊んでいるのか、切り株に腰掛けていた。
漣「奇遇だな。」
レティ「あら、そうね。そういえば…あの可愛い奥様はお家かしら?」
漣「あぁ。」
…何処かふわふわとしている。レティと話すと…なんか狂うな。それに…。
チルノ「むぅ〜…!!」
レティ「あら、チルノ。どうしたの。」
偉くチルノにも恨まれているようだ。恨めしそうな顔で此方を睨んでくる。
チルノ「おいっ!!お前っ!!あたいと勝負しろっ!!」
漣「…はぁ?」
突拍子もなく、そう言われたら、誰でも同じ反応をするだろう。ビシッと指を指し、俺を完全に敵視しているチルノ。…決着は既に着いている筈だが…。
レティ「…あのね。チルノ。多分、それは無理だわ。」
チルノ「あたいはさいきょーなんだ!!だから、レンにも勝つっ!!」
レティ「ていっ。」
チルノ「あうっ…!!」
戦えと言って話を聞かないチルノの頭にレティがチョップを入れた。チルノは頭を抑えて、今にも泣きそうな表情をしていた。
チルノ「うぅ〜…。なにするのさ、レティ〜…!!」
レティ「聞き分けのない子ね。後で遊んであげるから少し待ってなさい。」
チルノ「ほんとっ!?じゃー、待つ!!」
遊ぶと言う言葉に一変して、半泣き顔から花のような笑顔に変わるチルノ。こう見ると妖精とはいえ、見た目相応の歳なのだと思う。
レティ「…さて、何しに来たのかしら。」
漣「ただの気まぐれだよ。」
間違ってはいない。積もった雪に足跡をつけつつ、行く宛もなく、放浪していたわけだ。そこでレティとチルノがいるのを見つけた。簡単な話、彼女らがいるから此処ら一帯が雪景色なのか、はたまた、此処ら一帯が雪景色だから、雪女と氷精が此処にいるのか…。
レティ「少し期待したわ。前のあの話、覚えていてくれたかと思ったのだけれど。」
漣「覚えているさ。でも、此処にいるなんてわかんなかったからな。」
神出鬼没とはまさにこのことだ。雪隠れ…とも言うかもしれない。
レティ「お化けじゃないのだけれど。」
漣「まぁ、妖怪だから似たようなものさ。」
レティは再び切り株に、俺は横倒れになった丸太に腰をかけた。
レティ「今年の冬は涼しいから良いわねぇ。」
そう言いながら柔らかな笑みを浮かべるレティ。彼女の涼しいは普通の人間レベルなら寒いになるのだろう。
漣「気温の変化なんて些細なことだ。」
レティ「貴方にとってはね。さて、せっかく来てくれたんだし、何かもてなしたいところだけど。何も無いのよねぇ〜。」
漣「良いよ。急に来たのはこっちだし。」
なんの約束もしてないんだ。なくて当然だ。顎に指を当て、考える仕草をするレティ。…どこか既視感…いや、気のせいか。
漣「…。」
レティ「なにか、物思いにふけってるようだけど。」
漣「…いや、なに。昔、お前に似たような人にあった気がして…。」
…誰だろうか。父さんと歩く…薄水色の髪の女性は。記憶の奥で何か…。あったこともない人が俺に話しかけている。
レティ「大丈夫?」
覗き込むように俺の顔を見るレティ。…気のせいだ。気のせいに違いないな。
漣「…大丈夫だ。」
レティ「きっとそれはお母様ね。貴方の。」
漣「…違うよ。俺が小さいときに母親は死んだんだ。姿形も記憶に残らないほど、小さいときに。」
…気の毒そうな表情をするレティを俺は気にするなと笑った。昔のことなんて覚えてなくて良い。過去を振り返らなくても、生きることはできるんだ。
チルノ「おーい!!もうあたい待てないぞー!!早くしろよ〜!!レティー!!」
レティ「はいはい。ちょっと待ててね。」
チルノは少し向こうで不服そうに声を上げる。レティはそれに対し、落ち着き払った優しげな声で微笑み、まるで妹をなだめる姉…或いは子と母のようにチルノに言った。
漣「…お前たちは家族みたいだな。」
レティ「そう見えるようでそうじゃないの。似た力を持った…妖怪と妖精よ。」
漣「また来て良いか。」
レティ「ええ、勿論。」
次来るときはもう少し早く来よう。まだ冬は長い。少しでも…彼女に愛を教えられたのなら、それで…俺は良い。
月秀「…貴女が俺に会いたいとは。変わったこともあるもんだな。」
月の都、月夜見邸地下牢。新たな月夜見となった月秀は地下牢の主に呼ばれ、やってきた。月秀は内心、穏やかではなかった。その者がしたことについて彼は半信半疑だったからだ。
?「…殿下。先刻、流弦の声を耳にしましたが。」
月秀「伯父貴は来てくださった。襲名の日にな。奥方様もいらっしゃった。だが、貴女に会わせるわけにはいかなかった。伯父貴から見れば、貴女はまだ…犯罪者だからな。」
月秀の持つランタンに照らされて、そのものの姿が見える。薄水色の…結われた三つ編みの女が足枷をつけられ、白い装束を身につけ、座っていた。
?「嗚呼、あの子は無事なのですね…!!誠に…一眼でも見ておきたかった…!!」
月秀「言っておくが貴女を俺は完全に信用していない。月の賢者として偽り、剰え先先代との子を授かる所業。影の噂では玄霧を仕付けたのも貴女とか。」
?「懐かしい名です。玄霧逢魔。もっと両親に恵まれていれば、彼は氷川漣と友人になれた。すみません。もう寝ます。牢の外に今夜の文を
…ピシャリと時が止まったかのように地下牢を静かになった。月秀は文を拾い、読み込んでその紙をグシャリと握りつぶした。その顔は偉く穏やかだった。
月秀「…伯父貴。誠に申し訳ありません。俺は貴方に隠し事を作ってしまいました。」
そうボソリと呟き、月秀は地下牢を後にするのだった。
だいぶお待たせしました。もう随分とネタが…。
クリスマスか、年末までには200話を書きたいんですよねぇ…。頑張ってみます。
では次回。ではでは〜。