サブタイも今回からこんな感じで変わってきます。ラフになったと思ってくれたらいいかと。
第201話『影』
終「最近、人里で広まってる噂、知ってます?」
天国行き、地獄行き…etc。
ぺったんぺったんと文書にハンコを押す映姫。その横にいるオレンジの羽織を着た男、橙紋終が盃を傾けながら、口を開いた。
映姫「…そんな暇、ないんですが?」
終「まぁ、聞いてけって。…そうさなぁ。」
——————薬屋の又郎って、知ってるかい?
映姫「薬屋の又郎?それ、永遠亭の働き兎じゃないんです?」
仕事をしながら、聞く映姫。それに対し、カラカラと笑い、酒を一口飲む終。朝から酒盛りとは、少し映姫も思うところはあったが、それでも彼の働きぶりと比例して、目を瞑ることとした。
終「何処からともなく現れて、必要なやつに必要なだけ売りつける。だが、効能もよく、安価らしい。羽振りのいい奴もいたもんだね。」
終は皮肉っぽく吐き捨てた。
映姫「なら、なんの問題も…」
終「それがどっこい。大ありなんだなぁ…これが。」
映姫は体躯に似合わぬ、高い椅子から仕事そっちのけで終の話に釘付けだった。とはいえ、仕事は終わっており、少し暇ができた…だけではあるが。
終「マント付きの黒い軍服。片腕をマントで隠し、黒の制帽を被り、歯はまるで鬼のようにギザギザとしている赤目の男。見た奴は口を揃えて、言うという。」
映姫「それが?」
終「…奴が訪れた場所には死体がポツリとあった。だが、可笑しいんだよ。その死体…魂までも…影だ。黒く何かに焼かれたように黒く染まっているんだが、腐卵臭はする。だが、焼けている臭いはしない。つまり、焼死ではないって判定された。」
徳利から朱色の大盃に酒を並々注ぐ終。その顔はいつもの笑顔はなく、真剣そのものだった。その垂れ出る妖力に映姫は生唾を飲んだ。圧倒的な圧力…いつものちゃらけている終ではない。
終「…これが玄霧の息がかかっているんなら…。」
ドンっと机を叩く映姫。
映姫「直ぐに漣さんに知らせてくださいッ!!」
…明らかに焦っていた。首筋からは汗が垂れ、落ち着きを失っていた。
終「…落ち着け。」
並々注がれた盃の酒を一気に飲み干し、妙に落ち着き払った低い声で言う終。ボキッ…ボキッ…と肩に手を当て、首を鳴らす様は何処か、先の戦いを見据えているようにも感じられた。
終「確証はねェ…。奴らがそれを直に見るまで、歯車は動かない、繋がり始めない。だから、焦るな。今は冷静に…見定めるべきだ。」
映姫「そ、そう…ですね…。」
…これが事件の…予兆である。
…ここは夕暮れ。段々と静寂に包まれる人里。不穏な影が人里の中心道を歩いて行く。
?「ヤァ。ご主人。今日も…どうだい?酒癖、治ってねえんだろ?」
男はある家へと入っていき、布団に寝転がるシワだらけの痩せこけた老人の枕元へと静かに座った。
里人1「おお…。マタさん…。ありがとうよぉ…。アンタはオラの恩人だ。」
?「良いって。俺ァ欲しいもんが手に入ればいいからよぅ…。」
艶やかな革の鞄から、いくつかの錠剤が入った瓶を取り出す男。主人…と言われた里人はそれを受け取り、笑顔でこの世をさった。
?「…クハハッ。馬鹿だねぇ…。欲しいもん…の正体も知らねえまま、このまがいもんを頬張り続けてたんだから。」
錠剤を一粒、指に取り、潰す男。すると錠剤からは紫色の液体が垂れ出て、醜悪なにおいがあたりに充満する。…すると錠剤は姿を変え、ダンゴムシのような蟲の死骸が男の指につままれていた。
漣「…おい。」
…件の男を発見した。慧音の言った通りだ。制帽に片腕を隠すようなマントがついた黒い軍服。鬼のようなギザギザとした歯。…証言通りだ。
?「…なにかな?」
漣「…お前は、何者だ。」
男は紅色の目を此方に向けながら、笑っていた。剣山のように、歯がギザギザとしている。心を読もうにも心が読めない。…ノイズのようなものに遮られて。
?「俺は薬屋の又郎…。」
漣「嘘だな。」
?「…へぇ。何故、嘘だと思う?俺は薬屋の又郎だ。ちゃんと周りにも認知されてるぜ?でも、お前は違うと言う。何故だ?」
漣「…偽名であることは割れている。確かな筋だ。」
…薬屋の又郎。そんな人物は存在しない。これがわかったのは、他でもない響奇の能力のおかげだ。薬屋の又郎の薬を一錠、人里のお年寄りからいただいておいた。それを響奇が触った結果、全てがわかった。と言ってもコイツの裏側に何が絡んでるか、わからないが。
?「…はぁ…。仕事には自信があったんだがな…。」
唾を持ち、顔を隠しながら、ため息をつく男。妙に高い声が俺は気になった。男はもう一度此方を見ると、何かを企んでいるかのようにニヤリと笑った。
?「答えよう?…俺の名はエリザベート。エリザベート・クレス。」
漣「…エリザベート。」
エリザベート「長いだろう?仕事で使う名前で、リザと名乗っている。そっちを使ってくれ。」
そう言うとエリザベート、もとい、リザはめいっぱい口角を上げ、掌を此方に向け、言った。
エリザベート「答えにたどり着いた…ご褒美だ。影は人には知られてはならない。」
漣「…輪廻転生乃炎。」
俺は白色の炎を纏って、一気に距離を詰める。
リザはニヤリと笑い、攻撃を仕掛けてくる。飛んでくる弾は小さく、早かった。
漣「くっ…。」
避けづらい。なにせ、全力を出せば、人里に被害を被りかねない。面倒なところで相手にした。
エリザベート「さぁ、さぁ!!俺の能力がわかっているんだロ?俺の名前も偽名だって…当てたんだからナァ?ヒャッハーッ!!」
鉄の弾丸。
だから、全てを溶かし、進む。
リザは、それでも笑みをたやさず、戦いを遊びのように楽しんでいる。
距離を詰め、殴りかかるが、まるで宙に浮いているかのようにゆらりゆらりと動きながら、避けていく。
エリザベート「可笑しいよ。可笑しいよナァ…?世の中にはカゲもヒカリも存在するのに、ヒカリばかりを人は求めちまう…。ヒカリがカゲを作んのニ…。」
漣「…何をッ!!」
エリザベート「…だって、現にお前も踊らされてる。百砲
まずいッ…!!
身体中から生えた銃が、俺の眼前で吠える。
その幾千の閃光を俺は印を結び、全て受け止める。
エリザベート「なかなかの度量で。」
漣「…ぐっ…。面倒な能力、使いやがって…。」
…明らかに体から出した。どれだけ仕込んでやがる…。
すると攻撃の手を止め、エリザベートはただ高笑いした。月光に照らされ、その異形がよく見えた。
エリザベート「どうダ?ヤミというのは絶好の隠れ家だ。カゲにとっては…ナァ?」
体の左半分が黒く染まっていた。その奥には光なんて差し込まないほどの漆黒。目だけが赤く光り、三日月のような形の口もしっかりと確認できた。
エリザベート「これはカゲの鎧。本当の姿は誰も知らない。百砲
左手に小銃を体から出し、俺に撃ってくるリザ。
俺はそれを右に走りながら躱し、リザへと距離を詰める。
漣「『叙情色の帯』ッ!!」
帯のようにレーザーを出し、射ち出される銃弾を打ち消しながら、リザへと距離を詰める。
それと同時に追いかけるような形で奴へと走って行く。
エリザベート「へぇッ!!思い切りだなぁッ!!」
漣「ここで終わらせるッ!!」
右手に力を込め、エリザベートにねじ込む。入った…が、まるで鉄を殴りつけている感覚だ。
エリザベート「何処殴ってるんダ?」
拳の先、リザの腹を見ると、銃口が上を向いた銃身の長い散弾銃が現れていた。
エリザベート「何を仕込んでるか…わからねェだろ?不意に殴りつけてきちゃ…ダメじゃねえか。」
漣「…。」
カゲに拳が囚われる。底無し沼に沈んでいくかのような感覚だった。
——————カチャッ…。
腹に銃がねじ込まれる。右手が拳銃と化し、今なお発砲しようと俺の急所を狙っていた。
エリザベート「…この距離だ。逃れることもかき消すこともできねェ…。俺の弾丸は俺の自信作でね。不死者でも死を体験することができる。これでオシマイだ。」
漣「…最期に聞く。お前は一体…何者だ。」
エリザベート「さっきも言っただろう?カゲだよ。ヒカリが作り出したカゲだ。オウマガトキに現れるカゲだよ。」
…嗚呼…。
やっぱり息がかかってたか。
エリザベート「…じゃあナ。友よ。」
漣「…。」
深夜の人里、虚空にバンッという音が響く。…後はエリザベートの高笑いが響き渡っていた。
最初なんで気合い入れさせていただきました。
では次回、ではでは。