※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第203話『彼岸』

…此処は…。

夕暮れのように赤い空、それが反射したように橙の川、そしてポツポツと積まれた石に此処まで来る道中、咲いていた曼珠沙華。

 

漣「…嗚呼、そうか。俺は死んだのか。」

 

死を経験するのは初めてだ。不死者だったから。死ぬとはこう言う感覚なのか。何もかもどうでもいい、ある意味満たされた状態。心の中の空白が全て埋められた状態。…それが『死』

 

?「…こら。そんな紛い物に満たされちゃダメだよ。漣。」

 

漣「…小町。」

 

小町に頭を小突かれ、覚醒する。彼女は道標であり、彼岸の船頭だ。そうだ。ここに来た以上、彼女に会わなければならない。

 

小町「…クックックッ。映姫様ならこの先さね。アンタ、本当に死んじまったんだねェ…。こんな大物、乗せていくのは博麗の巫女以来か。さ、乗りな。六文なんて、今は要らない。話をつけてからきっちり払ってくれたらいいからさ。」

 

そう言うと木の船に乗り込む彼女。ニカッと笑うその顔は少女の笑顔そのもので、キラキラと輝いていた。ここが彼の世でなければ、また酒を飲みながら、話せただろうに…。

足元に気をつけつつ、川に浮かぶ小舟に乗り込む。これで正真正銘、帰ることが許されない片道切符を握らされたわけだ。

 

小町「…話してくるだけだろう?」

 

漣「…さぁな。」

 

そうなるかどうかは…閻魔様の御心次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢「ハァァッ!!」

 

凰牙「あまいッ!!」

 

木刀を踏み込み、切りかかってくるは魂魄妖夢。修行場所として選んだ白玉楼の場所を熟知している剣術指南役。とは言うが、一撃がまだ浅い。こうして、簡単に木刀で受け止められてしまう。

 

妖夢「くっ…。」

 

刀を跳ね上げた勢いで、受け身を取り損ね、尻から落ちる妖夢。

 

凰牙「どうした?来ねェのか?それじゃ、天神鬼炎丸は愚か、その次にも行けねえぞ。」

 

妖夢「…イテテ。」

 

フラン「ねぇ、先生。天神鬼炎丸ってなぁに?」

 

縁側で修行の様子を見るフランドール。そして、博麗霊夢とルナサ・プリズムリバー。この四人は自ら、俺に修行つけて欲しいと頼み込んできた。だが、勿論、差はある。遺伝子というどうしようもない差だ。

 

凰牙「天神鬼炎丸は所謂、型の名だ。俺が編み出した型ではあるが、一時的に自らの体を死へと誘う。そして、その限界の所へと止まり、刀に炎をつけるイメージで全身の筋肉を膨張させ、体温を上げる。そして、前者の状態とイメージ…死ぬというイメージを保ったまま、相手の能力を貫通した一撃を放てると言ったものだ。」

 

…失敗すれば、紙すら切れぬ鈍と化してしまうが。

フランドールは頭にハテナを浮かべている。難しかったようだ。

 

凰牙「…まぁ、五体満足で放つ全力集中、火事場の一撃だ。これこそが最強の矛。漣ですら、完全には覚えられていない。」

 

霊夢「当たり前です。死んだことのない人間が…死ぬイメージなんて…。」

 

凰牙「…死ぬというのは、二つの捉え方ができる。魂の解放か、或いは、喪失感か。それをイメージする。自分は何が出来て、何をすれば満たされて、何を失いたくないか。そこで、心の炎を刀に灯す。それがお前らの鬼炎丸となる。」

 

…死ぬイメージができない?

違う。人は誰しも死ぬイメージを持っている。生まれた瞬間、死ぬと言うことがわかっているから、死なないように自身を保守している。

 

フラン「じゃあさ、じゃあさ!!もっと上…ってなに?」

 

凰牙「…あぁ?お前らにはまだ遠いよ。」

 

俺は刀を構える。

 

それに応える形で妖夢もまた刀を構える。

 

凰牙「その刀、一太刀を意識しろ。木刀の先までお前だ。」

 

刀を打つ。

 

妖夢の連撃のような太刀筋をそれぞれに対応する形で俺は刀を撥ねる、打つ、叩く…。

 

呼吸を込め、切り掛かってくる妖夢を俺はただ見定め、斬りかかる。

 

木刀同士がかち合う。妖夢の横薙ぎの、斜めの、縦の剣戟を全て撥ね除ける。

 

妖夢「くっ…。」

 

有効な手を知ってか、後ろへ飛びよけ、もう一度走って斬りかかってくる妖夢。的確な判断、流石だ。

 

凰牙「だが…ッ!!」

 

跳躍し、縦の剣戟を俺は避け、妖夢の腹に木刀を打ち込む。

 

妖夢「ごふッ…!!」

 

めり込む木刀。そのまま勢いよく飛んでいく妖夢。桜の木とぶつかり、のびる。

 

凰牙「…剣術指南役…か。流石に腕が立つ。だが、まだ一撃が浅い。」

 

妖夢「うぅ…。まだまだです!!」

 

凰牙「息巻くのはいいが、俺はそうはいかん。お前達と違ってただの人間だ。休息も大事だ。」

 

だいぶ疲れた。縁側に座って、予め用意しておいた団子を一本とり、齧る。…思うところはあるが、こうして修行していると奴を思い出すな。本当に死んだのか?…疑わしいが、迦具土も居ない以上、わからない。

 

ルナサ「…後どれくらい、剣を打ち続ければ良いんですか。」

 

凰牙「…少なくとも100回以上。俺とお前ら全員は、組手をする。」

 

ルナサ「そんな…。一刻も早く、仇を討ちたいのに…。」

 

…全員、顔をしかめる。

思うところはあるだろう。だが、まだ弱い。このまま行っても半分は犬死にするのがオチだ。

 

凰牙「…焦るな。焦って意味はない。」

 

霊夢「もっと手っ取り早い方法はないんですか!!」

 

凰牙「だーかーらー!!焦んなつってんの。馬鹿どもが。」

 

思わず声を荒げる。俺は何度も言われるのは嫌いだ。一度で聞かないやつは放っておく。というわけでもないが何度も言われるのは面倒で嫌いだ。

 

凰牙「…俺たちはエリザベートよりも巨大な存在と戦うことになる。今、焦って道を踏み外せば、何もできない。復讐なんで以ての外だ。」

 

フラン「…でも、もっと強くなりたいし、漣兄様と…もっとお話ししたかったよ…。」

 

凰牙「はぁ…。」

 

フランドールが涙声で言う。

吸血鬼とはいえ、子どもは子どもだ。仕方ない…か。と言っていても始まらない。

 

フラン「わぷっ…。」

 

乱暴ではあるが、頭を撫でてやる。驚いたように此方を見るフランドール。

 

凰牙「…また遊べるさ。また話せるさ。アレがただで終わるとは思わねェ。」

 

霊夢「何を根拠に…。」

 

凰牙「『勘』」

 

俺は団子の串を皿に置き、また修行へと戻っていった。

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