※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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ちょっとね。
最近忙しくてね。他のに手が付けられんのですわ。
…助けて。


第捌話『時と空間と姉妹と』

鈍ってきた。ヨウムさんの動きが鈍ってきた。先程のお腹への一撃で少し彼女の動きが、呼吸が少しずつずれてきた。

だが、油断はできない。咲夜さんも重々承知なようで、ナイフを巻きつつ、後ろへ下がった。私は咲夜さんに向かっていくヨウムさんに銃口を向ける。挟み撃ちをしたいところだが、それはヨウムさんもわかっているようで、咲夜さんから一度離れた。

下手に攻撃すれば、それは此方にとってかえって不利になる。咲夜さんもそれをわかっているようで、先ほどよりも用心深く、ヨウムさんを睨んでいる。そして、再度、ヨウムさんは構えた。

 

ヨウム「『人宙禽天墜』!!」

 

宙で形作った飛ぶ斬撃は高密度かつ迅速に飛んでくる。私は目に見える全ての斬撃を空間ごと別の場所に転移させたが、咲夜さんは避けきれず、少しスカートが切れてしまった。

だが、決定打にはなっていないようで、咲夜さんはナイフを配置し、飛ばす。私はそれに合わせて、弾幕を配置。ヨウムさんを撹乱するように飛ばす。隙が出来た一瞬が勝負。時間にして、僅かに1秒と満たない瞬間、咲夜さんがヨウムさんの背後を取る。

 

それに合わせ、ヨウムさんは刀を振るい、咲夜さんに当てようとする。

 

咲夜さんはそれを受け止めた。

 

…完璧な隙ができた。私は空に跳躍し、ヨウムさんの頭上に位置した時、私は銃口を向け、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…フランドール・スカーレット。聞きしに勝る力だ。吸血鬼の炎の大剣が私を掻き切ろうと振るわれる。

私はそれを易々と避け、少しずつ接近していく。おかしい。ここまで簡単に進むとは思えない。念のため、結界の準備だけでもしておこう。お母さんと一緒でこれは勘だ。ただの勘…確証はないが、自分を信じるしかない。

と、十分に接近したところで大剣は消え、殴りへと攻撃が変化した。

 

霊華「おわっ!?」

 

威力は先程の姉より弱い。だが、私の結界を作るタイミングが僅かにずれ、空中で拳の衝撃により、体が揺れた。ダメージはないが、衝撃が防ぎ切れなかったのは確かだ。最早、本気もやむおえない。

私の隣を炎が上から下へと振り下ろされる。熱は多少、緩和されており、少ししか感じない。とはいえ、熱気は想像以上のもの。

彼女自身、大剣では埒が開かないと思ったのか、炎の大剣を再び消し、拳での格闘戦へと変化する。

 

霊華「しょうがないッ!!付き合ってやるわよッ!!」

 

嗚呼、どうして妹とはこんなにもじゃじゃ馬なのか。私は抑えていた霊力を解放した。これが私の本気ではない。これが私の素なのだ。

空中で蹴りがぶつかり合い、大気が、地球が揺れた。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷夢「…うぅぅ…。」

 

弾幕を張るが、避けられる。れみりあさんの能力はなんだっけ…。お父さんと同じ?…でも、目が光っていない。しかも、攻撃はどれも重い。骨までは至ってないが、まともに食らえば、打たれ弱い私では終わってしまう。

 

霊華「雷夢ッ!!」

 

雷夢「お姉ちゃん!?」

 

れみりあ「あら。遅かったわね。」

 

時間にして、僅か数分程度だったが、やはり、わかっているようだった。

 

れみりあ「アレは中々いい子だったでしょ?自慢の妹なの。」

 

霊華「ええ。すぐに満足してくれて…。」

 

流石はお姉ちゃんだ。こんなに容易く、吸血鬼を下したということなのか。

 

霊華「話は後で!!すぐに終わらせるよッ!!」

 

雷夢「うんっ!!」

 

お姉ちゃんの時折、見せる笑顔は太陽のように暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逢魔「氷川漣ッ!!君は実に勇敢だ。とはいえ、勇気と無謀は違う。故に忠告しておきましょう。君の力はあまりに非力だッ!!」

 

重い拳が腹に直撃する。その体躯は巨大であるが、その速さは見切れぬほどだった。玄霧逢魔の体は筋繊維で膨張しており、俺はその拳を手をクロスして防御するが、骨の軋む嫌な音が聞こえる。

 

漣「チッ!!」

 

まだ動けるッ!!

俺は奴の腹に三段蹴りをかます。だが、緻密に編み込まれた筋繊維は予想以上に硬く、鋼鉄にも近い何かになっていた。

これ以上の肉弾戦は逆に俺が参る。俺は後ろへ飛び、弾幕を打ち込む。逢魔は筋繊維をいくつかほどき、剣の突きのように鋭く、弾幕を全て消し飛ばす。

 

漣「なっ!?」

 

そこからは一瞬だった。気がつけば、先ほどまで空中に居た玄霧逢魔が俺の目の前に現れ、俺の体を言いようのない衝撃が襲った。腹に…何か、暖かい奇妙な感覚が襲う。ドロっと口から飛び出した赤い液体に嫌悪感を覚え、その次の瞬間、声も出せないほどの痛みを感じた。

先ほど、弾幕を打ち消した筋繊維が太く、一本に編まれ、それが俺の腹部を貫いていたのだ。

 

逢魔「不死とはいえ、出血多量で意識が朦朧とするのはもうわかっています。…君は僕にすら勝てない。プレジデントグラートに指一本触れられない。」

 

漣「…ぷれじ…でんと…だと…!?」

 

痛みで頭がおかしくなる。逢魔は俺の腹部から巨大な糸の剣を抜き取り、解け、左手へと形を変えた。そして、左手は俺の首を持ち、地面へと押しつけた。

 

逢魔「彼は大食らいだ。なんでも食べる。そして、食べたものの質量や強度、値段などで身体能力を向上させる。…と、知らされていますが、本当の恐怖はそれだけに止まらない。」

 

…コイツは何を…言っているんだ…?

眠気が脳を襲う。はぁ…はぁ…と口から漏れる。だが、僅かに残った心がその眠気から俺を突き放し、俺は解かれ、防御力の高い奴の体に一撃、拳を入れた。油断していたのか、奴は後方へと大きく弾かれた。

 

逢魔「…がはっ!?何故だ!!確かに入ったはず…!!」

 

漣「…残念ながら、俺は諦めが悪くてね…!!」

 

強がるがもう動けない。再生にも時間はかかる。少しでも話をして、稼がないと…。

 

逢魔「…生まれたばかりの小鹿…ですか。」

 

逢魔はニヤリと笑い、俺の近くまでゆっくりと歩いてくる。その過程で、筋繊維を凝縮させ、またあの巨大な体躯へと姿を変える。病弱に見えるような細い下半身と筋骨隆々の上半身が実にアンバランスで恐怖を掻き立てた。

 

漣「…テメェの目的はなんだッ!!何故、再び、幻想郷を狙うッ!!」

 

逢魔「…まだ計画の途中でしょう?我々、死屍累々は一つの弱小組織に過ぎない。我々には理解あるスポンサーがついているのですよ。その組織のボス…プレジデントがNo. 1の中にある膨大なる魔力エネルギーを求めているんです。この郷は彼の力を試すにうってつけの場所だとプレゼンしたんです。」

 

醜く歪む笑みに無性に腹が立った。奴にとっての犠牲は研究に過ぎない。解かれた筋繊維が首へと差し迫る。俺はそれを熱気で燃やし、かろうじて動けるようになった体を気持ちで無理やり動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界…。別空間に奴らが転移させられた。その綻びを探しているとき、ある男が俺に話しかけてきた。

 

?「もし、そこの方。何か、探し物ですか?」

 

その男は非常に柔和な笑みを浮かべていた。見た目からして、よく出来た異国の人間なのだろう。…だが、怪しさは隠せていない。俺が何者かをわかっていると見て良いようだ。だが、此方も怪しみながらも笑いかけた。

 

凰牙「ええ。実は彼女の連れが何者かに誘拐されたようで…。」

 

初対面の人間にこんな話は普通しない。だが、この金髪の紳士は今回の件に絡んでいる。そう、直感は正しかったようだが、柔和な笑みは少しも歪まない。

 

?「おやおや、それは大変ですね。」

 

凰牙「…ええ。何か、おかしなことがあれば…。」

 

?「そういえば…。」

 

男はあからさまに指を指し示す。俺はその方向を向く。すると、わかりやすく、障壁が見えた。だが、それは凡人には見えていないのか、そこを素通りするものが多い。

 

?「アレはおかしなものに入りますか?」

 

低いよく通る良い声が俺の耳に響く。男は似つかわしくない爽やかな笑みを示し、俺に笑いかけた。まるで、旧知の友と久方ぶりに会うようだった。

 

凰牙「有難うございます。」

 

此方も敵意ではなく、好意を示した。もうコイツには取り繕う理由はないのだが、あっちがそうするならば、此方も考えがある。その為にこの茶番を終わらせてはいけない。そう思うのだ。

 

俺はその障壁の前に立つと左手でそれを燃やし、割る。バリンと音を立て、人が一人入れるくらいの穴ができた。

 

?「僭越ながら、私も御同行いたしましょう。多少のお力添えは出来るかと存じ上げます。」

 

男は俺達と別れる気はないようだ。とはいえ、ここでわかりやすく突っぱねるのも変だ。どこまでわかっているかはわからないが、俺は奴に気付かせてはいけない。そう思い、俺は頷いた。




では次回。ではでは〜。
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