神虎「…やるじゃねえか。」
春國「…私は…主人様の刃だ…。それが…簡単に砕けては…あの方の背中を…預かることができぬ…。」
脇差『
春國「…一刀、500年。もう一刀、1000年。死してなお、豪亡きにして、制空の覇者と化す…。」
神虎「…『呼び水』、水操術『月海クジラ』!!」
クジラの潮吹きのように地面のぬかるみの水が吹き上がる。
それを二刀で切り裂き、壊す春國。
春國「…私の能力は…『凡ゆる物を刃と化す』程度の能力。…岩、風、水、更には…細胞に至るまで…。」
神虎「へぇ…。意外とお優しいことで。それを知られることで自分が不利になったとは思わないのかい?」
春國「…私は…制空の覇者だ…。『刃武装・飛翔』」
そう言うと春國の身体が異形のものへと変わる。黒い刃の張り巡らされた鎧。黒光りする身体はまるで空を制覇する鷹のよう。そこから見せる赤く光る目は神虎の姿をしかと捕らえていた。
神虎「へぇ…。大層なもん生やして…そんな巨大で何する気だ?俺にとっちゃあ…的がデカくなっただけだぜ?」
春國「…貴様には…これで十分だ…。」
そう言うと、空へと翼を羽ばたかせ、飛ぶ黒鳥。
神虎は再び、呼び水を行い、剣へと水を纏わせる。
神虎「水操術『打ち水・音速』」
天空へと突き、纏わせた水を発射する。
春國はそれを諸共せず、ただ天空で羽ばたき、静止するだけ。
春國「…その程度か…。」
神虎「…チッ…。デカブツめ…。」
春國「次は…私の番だ…。」
巨大鳥は吠える。
そして、神虎を掴むまいと足を伸ばし、神虎を捕縛した。
そのまま勢いよく自分のテリトリー、空へと上がる。
神虎「チッ…!!」
とてつもない勢いで空へと持っていかれる神虎。
春國は元いたところに静止し、神虎を睨んだ。
春國「…私と…貴様は…実力がありすぎる…。大人しく立ち去れ…。私は…弱い物いじめはしたくない…。」
神虎「くくっ…。俺もさ…。おい、狗神ッ!!」
龍忌「呪戒『呪符縛り』」
龍忌の放った帯状の弾幕が巨鳥を捕縛する。
被弾した瞬間、神虎を離す巨鳥。
当の神虎はというと、地面に水を噴射し、勢いを和らげ、着陸した。
龍忌「…最初から私に頼る気だったな?」
神虎「手前しか頼れる奴がいねえからな。姉さん方に頼ると手前が怒るだろ?それに雲外に言って、俺が生き残れるかは賭けだしな。」
神虎の横に狗神龍忌が立つ。すらっとした姿、右腕から右胸、左肩にかけて呪いの文字が連なった白布が巻かれている。…女性だった。
紅い布を束ね、長い髪を束ね、結ぶ龍忌。
龍忌「貴様が私の兄では無かったら、落としていた。」
神虎「兄貴つっても、一緒に拾われただけだがな。」
エリザベート「はるちゃん。大丈夫かい?」
春國「…その姿で…私をはるちゃんと…呼ぶな…。そんな趣味はない。」
エリザベート「ごめんよ。」
春國も元の姿へと戻り、二刀を握る。
お互い、向かい合わせで睨みつけている。…エリザベートだけは笑っていた。
龍忌「…宿儺神槍。」
三叉の槍。
龍忌の呼びかけに答え、滑車から飛んでくる。龍忌は刃の布を巻き取り、構えた。
神虎「女が…。怪我すんなよ。」
龍忌「私は戦士だ。…奴らを殺すまで噛みついてやる。」
龍忌の白と紺のオッドアイが二人を睨んだ。
エリザベート「…クハハッ…。美しい兄妹愛って?馬鹿げてるねェ…。」
春國「…ただ…強者たれ…。私は強者と…戦いたい…。」
エリザベートと春國も構える。
エリザベートは身体からいくつも砲手を生やし、狙う。身体はあるのかないのか…わからない。ただ右半身がリボルバーのような銃口がいくつも出てきていた。
エリザベート「さぁ!!弾け飛べッ!!」
龍忌「呪戒『封呪の言』」
エリザベート「…ありゃ?」
…砲手から光弾が出ない。
龍忌の目が淡く光る。龍忌の技、封呪の言の効力である。これは一定時間、相手の能力を封じる技。エリザベートの攻撃を使えなくし、戦う力を封じた。
エリザベート「…面白い能力だねェ…。こりゃ、俺は戦えなさそうだ。」
春國「私が…二人…お相手しよう。」
神虎「『呼び水』…水操術『打ち水・二頭』」
二股に分かれる水の斬波。
それを切り裂き、向かってくる春國。
神虎に近づき、切ろうと天ノ空を振るうが、宿儺神槍に弾かれる。
春國「くっ…。」
飛んでいく宿儺神槍と天ノ空。地面に突き刺さるが、取りに行く時間はない。
龍忌はその一瞬を狙い、春國の腹に小さな弾幕を打ち込む。
その弾幕は被弾することなく、刃に引き裂かれた。
龍忌「…呪戒『五寸の釘打ち』」
春國の体と龍忌の体を貫くように五寸釘が打たれる。
…が、どちらにもダメージは無い。虚仮威しかに思われたが、春國は顔を顰めていた。
龍忌「…これで私たちが戦うことに意味が働かなくなる。」
春國「…同士討ちの呪いか。」
龍忌「そうだ。私につけた傷はお前にも反映される。私が死ねば、お前も死ぬ。これでお前には私は斬れない。」
春國「…元より、私は差し違えても…お前たちを止める気だ…。」
龍忌「この呪いには…もう一つ意味がある。」
…龍忌がニヤリと笑う。
特徴的な目周りの痣以外は整っていて、所謂、クールビューティーといった印象だ。
龍忌「この呪いは私が貴様に仕掛けなければ貴様は動くことができない仕様でね。お前がいくら私に殺意を持っていようと無意味なんだよ。」
春國「…くっ…。」
エリザベート「…一時撤退だ。帰ろうか。はるちゃん。」
エリザベートは諦めたように笑う。
春國も刀を仕舞い、振り向いた。
春國「…姑息な手を。私は…お前達と…本気でやり合いたいと言うのに…。」
エリザベート「まぁ良いじゃないか…。あの子の攻撃は若に似ているよ。」
そんな話をしながら、二人は丸い黒い球へと入っていった。
龍忌「…お嬢。終わりました。」
神虎「ちぇっ…。結局、おいしいところは手前かよ…。」
龍忌と神虎が戻っていく。
そこにはお嬢、氷川麗奈の姿があった。
麗奈「ありがと!!神虎、龍忌。…でも、龍忌、女の子なんだから、あんな自分に傷をつけなきゃいけないなんて脅し文句、ダメだよ?」
龍忌「…私は女である前にお嬢の右腕です。この刺青がお嬢の家臣である証拠。」
そう言うと龍忌は着物を着崩し、右肩を見せる。白く柔らかな背中には朱雀を模様した刺青があった。
龍忌「…我々、4本柱はお嬢様方を守る者。贅沢は言えません。お嬢様方の為なら、私は女を捨てます。」
麗奈「ダメだって!!…どうしてもって言うならこの戦いが終わるまで!!終わったら、綺麗な服、着させるからね!!」
麗奈の目はキラキラと輝いている。そんな目をされては忠誠心だけの龍忌に断ることはできない。
龍忌「…ぐっ…。私は…そのようなお洒落などは…。わかり…ました…。」
…一行と共に荷車はいく。
他でもない彼岸を目指して。
思ったより、長くなりました。
では次回。ではでは〜。