映姫「…大丈夫ですか?顔色が優れませんが…。」
漣「…。」
…俺は今、映姫の家に居候させて貰っている。
彼岸と向こうの時間軸が違うのか、朝だったり、夜だったり…。全く、気が狂ってしまう。
漣「大丈夫だよ。ありがとう。」
映姫「…そうですか。」
俺の周りを歩く映姫。
頭でも撫でたくなって撫でるが、子供扱いするなと前に怒られてしまった。
漣「…俺は…本当に死んだのか?」
小町はこれを紛い物と言っていた。死神ならではの何かがあるのか…。
映姫「…楽にしてください。お茶、淹れてきますから。」
漣「…ありがとう。」
それだけ言うと映姫は部屋の奥へと消えていった。
…映姫の家、初めて来たが、やはり片付いている。几帳面に整えられた本棚。ちゃぶ台の真ん中には編まれた小さな籠にお茶菓子が並んでいる。ストーブ…か。室内はとても暖かい。
映姫「お待たせしました。」
漣「ありがとう。」
お盆の上に緑と白の湯呑みを置いて、持ってきてくれた映姫。緑色の水面には浮かない顔の男の顔が映っていた。
映姫「…先ほどの件ですが…。確かに、完全に死んだわけではありません。そもそも…貴方の不死身には理由があるのです。」
漣「…理由…だと?」
映姫「ええ。…お入りください。」
…ガラガラと入り口の引き戸が開かれる。ギィ…ギィ…と廊下の軋む音が聞こえる。音的に3人…いるな。
そして、音が近づき、部屋の前で止まる。襖が…徐々に開いていく瞬間、俺は目を疑った。
漣「…な…な、んで…なんで…。」
声が出ない。
頬から汗がたらり…と垂れる。
?「久しぶりだな。漣。」
漣「…と、父さん…?父さんなのか!!」
黒い髪…その毛先は青く。
漆黒の瞳は優しげに俺を見る。顎に生えた整えられた髭と着崩された紅色の着物。…間違いない。氷川戀真…父さんだ。
?「…あらあら。大きくなりましたね。漣。」
漣「母さんっ!!」
?「お兄ちゃん!!久しぶりだね!!」
漣「麗奈?…麗奈じゃないか!!」
父さんに続いて、入ってきたのは奏母さんと、妹、麗奈だ。藍色の着物を身につけて、桜の花の髪留めをつけた艶やかな黒髪。間違いない…。母さんだ。写真でしか見たことがなかったが…!!
戀真「ガッハッハッ!!いい男になったな!!漣ッ!!」
漣「…声がでかいよ。人ん家だぜ。」
戀真「そうか、そうだったな。だが、俺ァ嬉しい。あの、弱虫が、今や幻想の神ってか。終から聞いた時にゃ驚いたぜ。」
…そっか。父さんはこんな感じだったっけ。
俺の知っている父さんはよく酒を飲んでは、落胆していつつも俺たちには優しくしてくれていると言った印象だった。…次の戦争で命を落とす前は。
漣「で。なんで、母さんと父さんが?…それに麗奈も。」
奏「…それは。戀真さん。」
戀真「…お前達の身体について。そして、玄霧逢魔について話がある。」
先程まで柔和な笑みを浮かべていた父さんだったが、頭を掻いて、座布団にどかっと座って胡座をかく。
戀真「映姫、少し借りるぞ。」
映姫「迷惑な話ですね。まぁ、良いですけれど。」
ジトーと俺たちを見る映姫だったが、また奥へと消えていった。
戀真「…さて。」
父さんが切り出す。
母さんと麗奈も座布団に正座をして座る。
戀真「…悪かったな。お前らより先に逝っちまって。」
漣「仕方ないよ。人が死ぬのは自然の摂理だ。…こんなにも生きて死んでない俺たちが可笑しいんだよ。」
戀真「…普通の人…ならな。」
…普通の人?
父さんと母さんの顔が暗くなる。俺と麗奈は見合わせるが、麗奈もピンとはきていないようだ。
戀真「俺の能力、知らせる前に逝っちまった。知らなくても無理はない。」
麗奈「お父さん、能力なんて持ってたの?」
戀真「…俺の能力は『サイクルを操る』程度の能力。世の中をぐるぐると循環するもの全てに作用し、自分の思い通り、止めたり、逆流…つまり、『巻き戻す』ことだってできる。」
…話を聞く限りはどう考えても万能だ。
人が生きて、成長して、死んで、輪廻転生して…という、サイクルを崩し、不死にでも、居なかったことにでも出来るということだ。
戀真「お前達には時が来るまで黙っているつもりだった。この力は俺が封印したかったからだ。…しかし、お前達にも継承してしまった。そして、漣。お前は無意識にそれを使っている。当てはまることだって、あるだろう?」
漣「は?あれは炎を操る程度の能力の応用じゃあ…。」
奏「まだ貴方が小さくて、私が生きてる時。冬になって散った桜の木を貴方が触った時、一気に息を取り戻したかのように芽吹きだしたんです。…それだけではない。傷ついた鳥を貴方が手に持っただけで、傷が全て完治し、元気に飛び立っていった。」
…それだって、炎でも出来ないことはない。
周りを温め、桜の開花条件を満たせば、桜は開花するし、鳥の傷も不死鳥と同じ、回復の炎を使える俺ならば不可能ではない…はずだ。
戀真「お前が何を考えていようが、それは一瞬のことだった。瞬きをするよりも短い…。俺の能力はサイクル…流れの前提条件を狂わす能力だ。よく、ある話をだろ?
とある惑星に一つの草が生えていた。それは成長を続け、森林となり、やがて豊かな自然を作り出した。…しかし、そこに別の…例えば、人がその草を一枚摘むとする。そうすると、順調にいけば自然となる筈が一変して荒廃した砂地へとなる。その『草』が前提条件であり、『成長』が流れだとすると、長い年月をかけた集落も壊そうと思えば、元から何も無かったように側からは思われる。
…謂わば、人の常識すらも変えてしまう能力だ。」
父さんは少し俯き加減で苦笑いをしながら話していた。父さんも嫌悪するほど、恐ろしい能力か…。それを俺と麗奈は遺伝しているということか。
麗奈「要はお父さんは私たちにその能力を使って、不老不死にしたってことね。」
戀真「…あぁ。本当に辛いのは死ぬことではなく、生き続けること。それを承知でお前達に施した。
…お前達二人には幸せに生きて欲しかった。俺たちのような周りに左右されない生き方で、色んな人と出会って…。お前達の意思など関係なく…。本当に悪かった。」
…父さんは俺たちに頭を下げる。
俺たちは目を見やるが、勿論、怒ってはいない。だが、俺の方は内心複雑だ。…明らかに驕っていた。不死身であることを良いことに相手を挑発したり、相手の実力を見たいがために手を抜いて戦ったり…。
後者についてはやめられないかもしれないが、それでも不死身じゃなかったらなどと考えると…嫌でも全身が震える。
戀真「望むなら、お前達を普通の半人半妖にも戻せる。天寿を全うできるように。…不死身をやめられるんだ。だから…。」
麗奈「…私は、今のままでいい。」
麗奈がそう言う。
麗奈「私は父さん達のせいで不老不死になったわけじゃないし、それにこの体にも色々と感謝してるから。父さん達が気に病むこともないわ。」
漣「俺もだよ。父さん達には逆に感謝してもしきれない。…この力のおかげで俺にも家族ができたから…。」
…便乗したみたいになっちまった。
だが、本心だ。麗奈のおかげでケジメがついた。俺もこれから背負っていこう。
戀真「…本当によくできた奴らだ…。」
…父さんは目に涙を浮かべ、母さんに至っては泣いてしまっていた。何も人ん家で泣かなくても良いだろうに…。
ここ一、二話は漣サイドの話をしていきます。
漣の修行風景ですね。一応、他の漫画からのインスパイアです。パクリじゃないです。リスペクトです。
では次回、ではでは〜。