戀真「俺の能力を戦いに活かすなら、過去への攻撃が出来ると思う。」
漣・麗奈「「過去への攻撃?」」
先程の一家団欒から数時間後、場所を外へと変え、父さんに修行をつけてもらうことにした。父さんは強くない…らしい。
戀真「そうだ!!俺は弱い!!能力が無ければ直ぐに死んでいた!!」
漣「…そんな声を張って言うことじゃねえよ。」
ガッハッハッと豪快に笑う父さん。
それに対して、苦笑いをする母さんと麗奈。…こうやって4人でいるだけで楽しいのは、現世で一度も揃ったことがなかったから…だろう。
少し感慨深い。
戀真「さて!!…過去への攻撃。俺はこれを『時空突破』と呼ぶ。」
漣「…時空…突破…。」
戀真「あぁ。時間と空間には俺たちには見えない障壁がある。いくつもあるその障壁が一方方向に進むことで時間という誰にもあるサイクルを生み出す。時空突破とは、その障壁を歪め、過去、コンマ何秒という攻撃の前の動作をしている敵に拳や弾幕を当てるというもの。サイクルの一部を歪めることで攻撃を届かせるというものだ。」
時空を歪める…。
サイクルを操る程度の能力の異形さたるや。そんなことも出来るのか…。はっきり言って、空間を歪めるといえば、咲夜のように膨張させたり、陽奈のように空間そのものを操ったり…。
戀真「…それが自在になれば、相手の意表をつくことも容易い。どれほど強い相手でも、意識の上のたった数秒に攻撃されることは予測できづらい。そこまで把握しているのは…余程の変わり者か、或いは、能力を知っているか…の二択だ。」
漣「…それが有れば、玄霧逢魔に勝てる。」
戀真「可能性はある。ただ、この力を頻繁に使うには、相当な集中力が必要だ。お前達に出来るかな?」
麗奈「…出来るわ。」
父さんがニヤリと笑う。
修行の始まりだ。
麗奈「頼むよ?龍忌、神虎。」
龍忌「くっ…。いくら我々でも、
神虎「要らんこと言ってないでやるぞー。『呼び水』」
刀に水を纏わせる神虎。刀を振り上げながら、俺に向かって走ってくる。
目前で下ろされたそれを俺は宵ノ明星で弾き上げる。
神虎「流石…。幻想郷の名を冠した神様なだけあるな…。兄さん。」
漣「ありがとう。君も、水を扱う剣士なんて初めて見たよ。」
神虎「水を操るなんて、ありふれた能力でさァ…。俺はアンタの時空突破っつー技が早く見てェな。水操術『打ち水・隼歩』」
神虎が剣を空中で弧を描くように振るう。すると空中で弧状に静止した水が十羽の鳥となり、羽ばたきながら羽を打ち出してくる。それが、避けにくいったらありゃしない。高密度の弾幕と同じだ。
漣「語符『千と一夜を越え処刑』」
千個の弾幕で相殺し、その煙を目眩しにして、神虎へと向かっていく。
龍忌「呪戒『死に給えと嘆く老犬』」
漣「ぐっ…!!」
なんだ…ッ!!
向かおうと地面を蹴ったら、脳を揺さぶるような爆音が響いて…!!
龍忌「そこですッ!!」
黒煙の反対側、神虎の居た方向から、龍忌が槍を放ってくる。
俺は耳がもげそうなほどの爆音に耐えつつも、刀を振るって、横突きの槍を弾き飛ばす。
漣「んなのありかよ…!!」
龍忌「姉さんと兄さんを成長させるため!!この狗神龍忌!!全身全霊をかけますッ!!」
神虎「…水操術『水飛沫・翅魚』!!」
鳥の次は…魚?
水で出来た魚が空で魚群を作り、俺に向かって泳いでくる。
漣「…チッ!!」
麗奈「一撃『春一番』ッ!!」
その魚を横から全て人差しで消し去る光の矢が放たれた。麗奈である。
神虎「さっすが、姉さん。」
麗奈「お兄ちゃん、集中して!!弾幕は私が全部、撃ち落とすから!!」
漣「わかった!!」
…頼もしくなった。
弓術は難しい。一矢に魂を込め、そして放つ。俺は選ばなかった。だが、麗奈は選んだ。…撃ち落とす…か。自信があるということは普段から使いこなせている…ということだ。…答えねばならない。
神虎「龍忌っ!!俺は姉さんの矢を止めるッ!!お前は兄さんを頼んだ!!」
龍忌「了解ッ!!呪戒『餓狼顎』ッ!!』
龍忌が印を結び、地面に槍を刺す。すると彼女の周りから、二体の首だけのオオカミが現れ、俺に向かって飛んでくる。
俺はそれを避けながら、彼女をじっと見つめる。
オオカミはなおも俺に食らいつこうと、縦横無尽に駆け巡り、時には地面の砂利を喰らいながら、俺を攻めていた。
麗奈「…一撃『幽玄彼岸』ッ!!」
神虎「おっと!!させるかッ!!水操術『水飛沫・番犬』!!」
向こうも向こうでやばそうだ。
オオカミを撃ち落とそうと弓を構える麗奈。
それを水で出来た二匹の犬を繰り出しつつ、数本のレーザーを出鱈目に打ち出す神虎。
矢とレーザーが相殺し、犬は麗奈の近くまで行くが、麗奈が懐から出し、飛ばしたナイフによって、水へと戻っていった。
神虎「対魔の印が刻まれてらぁ…。俺の化水式神は使えないってか。」
麗奈「貴方達とどれだけ一緒にいたと思っているの?それに備え有れば憂いなしよ。」
…向こうは向こうで頑張っている。こっちはこっちで…!?
漣「ぐっ!!」
蹴り飛ばされたッ…!!
なんとか地面に剣を突き刺して、勢いを殺すが…少しよそ見しすぎたか…!!
龍忌「…呪いは十人十色。攻撃やデバフも有れば、バフもあるのです。兄さん、これで満足いただけるでしょうか。この『凶戦士の呪い』は。」
漣「…なるほど…。だから、さっきより痛かったのか…。」
…厄介だ。世の中にはこれほどに能力を使いこなしている奴がいるのか…。能力については熟知したつもりではあったが…。まだまだだな…。
龍忌「行きますッ!!」
漣「…ッ!!」
速いッ…!!
砂煙すら立たない速度…!!とてもさっきまでと同一人物とは…思えないッ!!一挙一動は見えてはいるが、脳が反応できない。
龍忌の蹴りを防ごうと脳は思っているのに体が追いついていない。
龍忌はバク転や側転などを駆使しながら、俺に蹴りを入れていく。
俺はそれを手をクロスして受けるしかなかった。が、着実にダメージは入っていた。
漣「…?」
その瞬間だった。
一瞬だけ、先程まで天狗をも超えた速度だった龍忌がスローモーションに見えた。…違う。巻き戻って…いる?
龍忌「決めますッ!!呪戒『餓狼顎』ッ!!」
また先程のオオカミを繰り出す龍忌。
オオカミも龍忌と同じくらいの常軌を逸した速度で動き始める。とてもじゃないが、避けられない。だが、何故だろうか。
天狗をも超えた速度を持つオオカミ達が一瞬だけ、何かに遮られたかのように進むのをやめる。進む、止まる、また前へ進む…の繰り返し。まるで世界がパラパラ漫画のように見えた。
俺はそこに拳を打ってみる。
すると何かにコツンっと当たった。もちろん、虚空だ。何もない。
次は思いっきり打ち込んでみた。
すると右方向から俺を見つめ、涎を垂らしている餓狼が…爆ぜた。勿論、弾幕なんて使ってない。
龍忌「ッ!?」
…そして、世界は戻る。
その間に俺はもう一匹も倒しておいた。これが、空間を曲げる感覚か…。なんとも奇妙だ。表現しづらいが、一番近いのは片栗粉をギュッと握った時のような感覚だ。なんとも言い難い気持ち悪さが後を引く感覚…。
父さんがあまり使いたくないというのもわかる気がする。
龍忌「…それが、時空突破…。」
戀真「あぁ。」
俺たちの様子を映姫の家の縁側から見ていた父さんがやってくる。麗奈や神虎も俺のところに集まってきた。
戀真「…なにものにも例え難い感覚を手にしただろう?何が見えた?」
漣「…まるで視界が本のように。1頁、1頁…めくれていくように見えた。」
戀真「外の世界で言うコマ送りって奴だ。そう、それが時空突破。…だが、もう少し使いこなさないと話にならない。今は脳の反応速度が周りの変化を捉えられていないだけで使いまくれば、慣れていくだろうな。」
…使いこなせていない…か。
確かにな。これでは折角の驚異的な力も弱点になってしまう。…うん。
漣「神虎、龍忌、そして、麗奈。もう少し付き合ってくれ。」
神虎「わぁったよ。」
麗奈「うんっ!!」
龍忌「…御意。」
そして、俺は臨戦態勢を取った。
切り札『時空突破』を掴むために…!!
『時空突破』
相手と相手の放つ技をコンマ何秒と言った僅かな前の時間へと巻き戻す力。仮に未来で自分がやられてしまってもこれを使えばその未来すら変えられる。禁忌の一つである。
時間と空間をコマ送りのように感じるようになり、たった数秒を数日にも感じられる。相手は攻撃をしている最中なので、その攻撃を時空突破した状態で相殺しても時空突破が継続している間は気づかず、攻撃をされても時空突破を解除するまで気づかない。
その間は相手にとっては瞬きをするよりも早く感じ、何をされたか、認識するまでに時間がかかる。
他にも時空突破内では脳が認識していないため、能力を切っている状態にあり、例えばカウンターや、そもそもダメージを受けないと言った能力者に例外なくダメージを与えることができる…言わばチートと言っていい。
ただ連発することは飢えるよりも辛く、どれだけ鍛えてもせいぜい5回、5、6秒と言ったところである。それだけ集中力を要し、集中力が無いものが使用すると死を早めるだけである。というかそもそも、サイクルを操る能力がないと使えない。