〜同刻、尭黒院『蟒蛇の間』〜
?「アンタ、強いなぁ…。ウチも本気出さんと、殺されちゃうなぁ…。」
厳秋「能天気な。貴女ほどの人が簡単に死ぬわけない。」
?「死ぬよ?…でも、ウチ、強いから。簡単には死なんかも。構ってや。のう?空蛇はん。」
厳秋の斬撃が白髪の女性にかかる。
女性はそれを軽々と受け止め、厳秋の腹に蹴りを入れる。
?「ウチはアンタや凰牙はんみたいなバケモンとちゃうでなぁ…。能力もそんな使い勝手ええもんじゃないし。折角やから、遊んでいってや。なっ?」
厳秋「…謙遜なさる。少なくとも俺と貴女はいい勝負をする。犬走楓。」
犬走楓…。そう呼ばれた女性はニコッと笑う。少しほのかに黒みがかった白髪もその上に生えている犬耳も白狼天狗のように見えた。ただ端正な顔の裏で左目に開眼はしているが、切り傷があった。
楓「謙遜?ややなぁ…。そんなもん、ハナからしてへんわ。ウチは強いで?」
厳秋「…俺も…。負けることは赦されていない。だが、これほど滾る戦いは…ない…っ!!」
…厳秋と楓。その挙動はまるで鏡写しだ。得物の長さは厳秋の方がだいぶと長い。その差、およそ50センチほど。つまり、それだけリーチに差があるということだ。
そして、厳秋が仕掛ける。横振りの大きな一閃、飛ぶ斬撃が楓の首を刈ろうと走る。
楓「…そんな本気出さんでも。ちょっと、力抜いた方が楽とちゃう?御光『朱花』」
…厳秋は目を疑った。
相殺したその大振りの一閃は先ほど自身が繰り出したものと同じ。
生じた黒い煙を目眩しとして、そのまま楓は突っ切ってくる。
厳秋も相手の背後まで行き、背後から斬りつけるが、それに反応した楓が刃でガードする。
厳秋「…矢張り、俺の思う通りだ。」
楓「イッパシの剣士なら、相手の技を盗めて当然。ウチの能力は…。」
〜尭黒院『幻影の間』〜
ここでも戦いが始まっていた。
エリザベート「さぁ、影奴隷たちよ。貴様らのなすべきことをなセッ!!此処を文字通り、地獄に変えてやれッ!!」
…銃砲五式『
一人を二人に、二人を四人に、四人を八人に変えていく…エリザベートの厄介さを体現する技。言わば、無敵の影奴隷。痛覚はなく、全ての奴隷の強さがエリザベートと同じなのだ。普通ならば、此処で絶望する。
ただ此処にいるのは…。
シャド「氷結魔法『
シャドが地面に手を当て、部屋を凍らせる。現れた氷柱や凍った足元になす術なく、分身達は進むことを遮られる。
魔理沙「魔符『スターダストレヴァリエ』ッ!!」
龍忌「呪術『混沌の嘶き』」
高密度の弾幕が動けない分身を消し去っていく。
エリザベートは悔しがるどころか、笑っていた。
エリザベート「良いねェ…。銃砲
魔理沙「恋符『マスタースパーク』ッ!!」
レーザーと光弾の衝突。室内に黒煙が広がった。
シャド「馬鹿ッ!!前が見えないじゃないッ!!」
魔理沙「馬鹿ってなんだよッ!!」
龍忌「御安心を。シャド様、霧雨様。出番だ。雲外。」
雲外「へへっ…。了解…。」
胡座をかいた男…牛鬼雲外が立ち上がる。
エリザベートは雲外に向かって無差別に鉄の弾丸を撃つ。
それが雲外に全てぶち当たる。
肉体と弾丸が当たり火花が散る。
魔理沙「おい!?死んだんじゃ…!!」
龍忌「…御安心を。彼は…外部からの攻撃は…。」
雲外「此処はオレ様に任せて、先を急げ。こんなネズミ花火、まだ蚊に刺された方が痛えよ。」
腕をクロスしてニヤリと笑う雲外。酷く焼け上がった皮膚に血よりも赤い目。黒と紫のメッシュの髪…少し長い。そして、極め付けは200はある背。とてつもない体躯。…偉く屈強な男だ。
エリザベート「逃すかよッ!!」
雲外「…此処で女を守るのがオレ様の騎士道だぜ!!行くぞッ!!『無益蒼天』、オレ様の相棒ッ!!」
エリザベート「デケェ…!!両手剣か?」
雲外「いいや?片手さッ!!」
雲外が力一杯振るう。
剛腕に血管が浮き出るほどとてつもない一閃がエリザベートを襲う。
エリザベートはそれを跳んで避け、頭上から弾丸をがむしゃらに打ちまくる。
エリザベート「ヒャハハッ!!蜂の巣にしてやるぜッ!!ア?ならねぇんだったか?」
シュタッと雲外の後ろに着地するエリザベート。
雲外はそこに向き直し、大剣『無益蒼天』を引きずる形でエリザベートへ走っていく。
…畳の上なのに火花が散っていた。
雲外「死ぬほど痛えが、死なねえ…よッ!!『爆裂空震』!!」
無益蒼天をもう一度、横振りに振るう雲外。
エリザベートが避けようと動くが、虚空の爆風で飛ばされ、背中を壁で強打する。
エリザベート「ッ…てェェ…ッ。テメェ…空間でも切ったのか…?」
雲外「敵に能力は教えたくねえが、まぁ!優しいオレ様だから?教えてやるぜッ!!オレの能力は、『揺らす』程度の能力。今のはほんのお遊びさ。」
エリザベート「へぇ…。オレ相手にはもってこい…だなッ!!」
〜尭黒院『刀神の間』〜
流弦「ッ…!!」
春國「…ッ!!」
剣同士のぶつかり合い。此処では純粋な剣術の試合。
春國「…良い…良いぞ…!!…貴様のような…武士を…探していた…。」
流弦「…侍…。名義などどうでもいいが、此処は勝たせてもらう。嫁の手前、巫山戯た真似は…できぬ。」
和泉「無論、私も戦います。」
双刀の剣士vs最強の二人。
赤磐雄町と夕隠れが2本の刀を押さえ込む。
がむしゃら…ではなく、三人ともかなりの腕だ。
和泉が速度を上げ、春國を切りつけまくる。インファイト…だ。
それに対して、舞踊でも舞うように相殺していく。
和泉には無いパワーは流弦が補う。重力を操り、相手の動きを遅くしていく。
が、その枷すら関係なく、俊敏にかつ的確に打ち込んでいく。
流弦「…また、俺の能力の届かぬところか…。」
春國「この程度…枷にもならない…。『九重彼岸』」
まさに花が開いたよう。
春國の背中から九つの刃が飛び出て、和泉を急襲する。取り囲んだと思えば、そのまま生物の触手のように包み込んだ。
和泉「くっ…。」
流弦「和泉ッ!!」
避けはしたが、着地を失敗し、足を捻る和泉。それを抱き止める流弦。足は赤く腫れていた。
春國「…女子…か。酷く…か弱い…。故に…私は…わからぬ…。愛だとか…そんなもの…。」
流弦「…皮肉だな。まるで昔の俺のようだ。だが、今は…。」
剣先を春國に向け、言う。その顔は無論、笑っていなかった。
流弦「無性に…気分が悪い。」
流弦の髪が揺らいでいた。