※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第217話『空白』

逢魔「つくづく難儀だなぁ…。こんな郷になんの魅力がある。」

 

黒煙が室内に舞う。

 

それを突っ切るように何かが逢魔の頬を掠める。…矢だ。炎で形作られた矢だった。

 

?「…当たらなかったか。流石に煙が邪魔だったけど…当たると思ったんだけどなぁ…。」

 

逢魔「…氷川漣の妹ですか。」

 

麗奈「ええ。貴方には兄さんが世話になったわ。…此処に兄さんは来ない。私が貴方を倒すから。」

 

両親から貰った紅色の着物に袖を通した氷川漣そっくりの少女。氷川麗奈が逢魔の前で対峙しようとしていた。

 

その横に霊夢と妖夢が立つ。

 

逢魔は心底面倒そうな顔を3人を見た。

 

逢魔「…雑魚が。3人集まっても何にもならない。最初から、君たちは嵌められていた。この尭黒院に集まった以上、僕たちの勝利は確実だ。」

 

麗奈「どうでも良いよ。そんなこと。…私は貴方には負けない。純真『鳳・矢羽々鶴飾り』」

 

麗奈の肩甲骨あたりから燃える翼が生える。その翼は炎球を作り出し、逢魔を追撃する。

 

逢魔はそれを透明な糸のようなもので弾き、一瞬にして麗奈の前まで走っていく。

 

逢魔「宵乃刻『断(たち)』」

 

逢魔は麗奈の首に合わせ、手刀を放つ。

 

それを横から走ってきた妖夢の刀が止め、その隙に霊夢が逢魔を蹴り飛ばす。

 

逢魔「…ッ…!!」

 

妖夢「餓王剣『餓鬼十王の報い』!!」

 

上段下段に弾幕が配置され、中央を妖夢の横薙ぎ一閃が覆う。

 

逢魔「『結』」

 

逢魔が印を結び、弾幕を全て防ぐ程度の強固な結界を生み出す。

 

そこを後ろから霊夢のホーミングアミュレットが襲いかかる。

 

逢魔はそれを上に跳んで避け、霊夢の前へと跳んで移動し、霊夢の顔に拳を打つ。

 

霊夢はそれをしゃがんで躱し、逢魔の腹をお祓い棒で払う。

 

逢魔「く…。」

 

麗奈「一心『重刑の矢』」

 

麗奈が弓を引き絞り、放つ。その矢が影分身の如く、面積を広げ、逢魔に襲いかかる。

 

霊夢に気を取られていた逢魔はそれをまともに受け、背中から黒煙をあげる。

 

続いて、霊夢。逢魔の腹に拳をねじ込み、インファイトをしていく。

 

逢魔はそれを迎撃することなく、サンドバックの如く殴られまくる。

 

逢魔「…『ルトゥール』」

 

霊夢「ッ!?」

 

その声に霊夢は攻撃をやめ、そこから後ろに跳び避ける。

 

光のようなものが霊夢の前で爆ぜ、その向こうには無傷の逢魔が立っていた。

 

逢魔「…当たらない…か。その勘、攻撃、素晴らしいものだ。」

 

霊夢「…くっ。」

 

逢魔「…正義面の屑が。貴様ら、薄汚れた偽善者が世界をダメにする。圧倒的な強さの前には、それを唱えることも叶わない…。だから、人は強くなる。だから人は救いを求める。…僕にはそれが叶わなかった。」

 

霊夢の拳を、足を避けながら、逢魔は感傷に浸り、悲観したかのような暗い声を出した。それでも霊夢の攻撃を避けられるほどの力。霊夢が焦っていることもあるだろう…。逢魔の言葉を止めることはできない。

 

逢魔「…そうやって足掻けば良いさ。だが、どう頑張ったって、君たちが負ければ、この世界は終わる。君たちが負ければ、君たちは終わる。結局、史実は勝者に甘く、敗者に厳しいのだから。」

 

霊夢「負けなければ良いだけだッ!!アンタなんかに、負けない!!」

 

逢魔「…絶対に負けないと?…くだらないな。此処で死ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜『蟒蛇の間』〜

 

剣撃に次ぐ剣撃。仄暗い室内に響き渡る。

 

厳秋「くっ…。幻想神が強くなったとは…聞いていたが…此処までとは…。」

 

…玄霧組最強の剣士、空蛇厳秋は焦っていた。楓との戦いで気づいておらず、幻想神、氷川漣の介入を許してしまった。

 

それだけならここまで焦ってはいない。聞いていた話とは違い、格段に強くなっている。

 

漣「…退いてくれ。俺は逢魔に用がある。」

 

厳秋「俺は玄霧逢魔の最後の砦。此処まで強くなった者をみすみす若にぶつけるわけにはいかない!!」

 

厳秋の剣が漣を斬る。

 

…と思ったら、漣の拳が腹へと入る。

 

厳秋「ぐっ…!!」

 

厳秋の頭がフルで回転する。…そうか、コイツは…。攻撃を避けているわけでも、カウンターをしているわけでもない。

 

厳秋「貴様は…時間を巻き戻しているとでも言うのか…!!」

 

漣「大当たり。」

 

漣の蹴りが厳秋の首を蹴り飛ばす。

 

厳秋はそれをもろにくらうが、能力を使い、漣の後ろへと移動した。

 

漣「アンタの能力も面倒じゃないか。」

 

厳秋「貴様ほどではない…!!『厳罰』ッ!!」

 

厳秋の厳罰が漣の左肩を落とす。

 

地面に血が散り、落とされた左腕が落ちる。

 

が、次の瞬間、厳秋の腹に漣の左拳が捩じ込まれた。

 

厳秋の考えは正解に辿り着く。コイツはなんと遠いところにいるんだ…。厳秋は思った。

 

漣「…もう終わりか?」

 

厳秋「…これ以上、戦っても無意味か。」

 

厳秋は身の危険を感じ、そこから去る。…厳秋は思った。あの時の士道凰牙よりも今の氷川漣の方が危険である…と。

 

氷川漣という男は…存在自体が聞いていたものより曖(・)昧(・)に(・)感じたからだ。

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