漣「…さて。」
一難去った堯黒院。さっきの様子が一変して、静けさだけが満ちている。俺たちは袿姫に連れられ、逢魔の部屋の奥、拷問部屋へとやってきた。フランのいたところとはまた別だ。
?「…うっ…。」
袿姫「…あれが驪駒早鬼です。」
…酷い状態だ。木製の椅子に座らされ、体の至る所に有刺鉄線が巻かれ、体からは血が流れている。目を背けたくなる…。
早鬼「…誰…だ…?」
頭からも血を流していて、ボロボロだ。声も少し掠れている。結構長い時間、拉致られていたみたいだ。
漣「…麗奈。頼む。」
麗奈「癒符『不死鳥の燈』」
緑色の炎が麗奈の体から出る。その炎が傷だらけの早鬼を包み込み、じわじわと傷を消していった。
シャド「…そんなこともできるのか。」
麗奈「少し疲れちゃいますけどね。シャド姉には劣ります。」
シャド「しゃ、シャド姉?」
麗奈「あっ…。すみません。お嫌いでしたか…?少し親しみやすくなるかと…。」
シャド「い、いや…。ムズムズするっていうか…まぁ、嫌じゃないからいいよ。」
…麗奈とも久々に話し合いたいが、今はそれどころじゃない。俺は彼女の近くへと歩み寄り、椅子に手足を縛られた有刺鉄線を解いていく。さっきの炎で鉄の棘はいくつか砕けていた。
早鬼「…あっ。…サンキュー。アンタ、名前は?」
木の椅子から立ち上がり、身体中を確認しながら、俺に笑いかける早鬼。八重歯を見せるその姿に彼女の人の良さというか、単純さ?が滲み出ていた。
漣「…氷川漣だ。」
早鬼「…漣。そうか、お前が…。此処に来たってことは、玄霧逢魔…倒したってことだね?やるじゃん。…てことは、アレ…探しに来たのか?」
早鬼が隣の牢を指さす。そこには少ししかない光で下に体育座りで座る金髪の少女がいた。…そうか、アレが…。
早鬼「鬼傑組組長、吉弔八千慧。玄霧に良いように使われちまったみたいだ。…そんなタマじゃないのにな。」
八千慧「…その玄霧に挑んで、殺されかけた貴女に言われたくはありません。あれは私の意思です。玄霧逢魔を欺く為、貴方達を罠に嵌めた。それが、ざまあない…。」
八千慧はため息をついた。尻尾が感情の起伏を表しているかのように揺れる。…何を思っているのかはわからないが、俺たちを見て哀しそうな表情を示していた。
八千慧「…謝って済ませるつもりはありません。ご容赦とも言いません。煮るなり焼くなり好きにしてください。」
フラン「漣兄様が決めれば?」
漣「…え?俺が?」
横に居たフランがそう言った。その言葉にそこにいるみんなが俺の方を向く。八千慧も頭を下げ、わなわなと震えていた。…頭を下げるのが嫌なのか。
八千慧「…。」
漣「…一度死んで、俺は親父に学んだことがある。」
八千慧「…え?き、急になんですか?」
漣「…親父は、我を貫き通す男だ。生涯で一人の女性を選び、一人で死んだ。俺は何人もの女性と子どもを持って今を生きている。…俺は我を貫かず、優柔不断に物事を進めてしまう。…彼女らを支える側だったはずが、道を作るために彼女らを踏み台にしてしまう…ただの馬鹿だ。」
霊夢「漣さんっ!?」
…何が言いたげな霊夢をルナサが静止する。俺は構わず、言葉を紡ぎ続ける。八千慧は、そんな俺の方を見て…黙っている。
漣「…そんな俺でも護りたいものが出来た。それだけは、俺は迷わない。…お前がどうして、そんなに人を見下しているのかは知らない。わからない。だから、そんなお前に一つだけ罰と言っていいのかはわからねえが、一つだけある。」
八千慧「…なんなりと申し付けください。」
…八千慧め。娼婦じみたことをさせられると思ってやがるな…。まぁ、近ず遠からずって感じだが…。
漣「…俺のものになれ。八千慧。」
八千慧「…はぁッ!?」
俺の言葉に八千慧は数秒、固まった。…そして、真っ赤な顔になって、凄い勢いで鉄格子により、がしゃんと掴んでくる。
八千慧「あ、貴方ッ!!ば、ばっかじゃないのッ!?なななッ!!なんで、そんなはなしになるのよッ!?」
漣「ん?何か問題あるか?」
八千慧「問題ありまくりよッ!!私は貴方の家族を騙したのよ!?そんな…しかも、筋モノの女を家族に入れるって言うのッ!?」
俺はうなづくと八千慧はため息をついた。…その八千慧の様子に早鬼が腹を抱えて笑っていた。
八千慧「な、なんですかッ!?馬鹿ペガサスッ!!」
早鬼「ハッハッハッ!!酷いなぁ…!!だが、いい話じゃないか!!お前、ずっと男に飢えてたわけだし…。」
八千慧「はぁ!?誰がそんなことを…。貴女だって、いい人居ないでしょうがッ!!」
早鬼「私には神子様がいるからなっ!!」
…言い合いで俺たちが蚊帳の外だな…。
というか、何故、八千慧は牢獄で早鬼は外なのだろうか。いや、縛られていた…ってのはあると思うけれど。
早鬼「で、どうすんだ?その男との婚約。」
八千慧「こ、婚約!?ま、まだそこまでは言ってないでしょ…!?」
早鬼「似たようなもんだろが。どうせ、そこまでいくんだろ?頼むよ。兄さん。コイツ、家事とかちゃんとできる良い女だからさ!!な?」
八千慧「こ、こらっ!!私はまだ良いとは!!」
漣「あぁ。良いぜ。」
八千慧「勝手に決めるなぁ〜!!」
…こうして、黄昏異変が集結を迎えた。
なんだかんだ言って、八千慧も満更ではなさそう…ではなかったが、暫くはウチに暮らすつもりだ。組みを立て直すのに時間を要するらしい。…ふふ。また楽しくなりそうだ。
てな訳で、黄昏異変集結です。
八千慧さん、好きなんですよね…。結構、鬼形獣は魅力的なキャラが多くて…。漣ファミリーの中では苦労者ですね。八千慧さんは。
次回からは日常回です。では次回。ではでは〜!!