トバリシティのホテルに滞在をはじめて1ヶ月。そろそろホテルの朝食にも飽きてきた青年は、次の目的地をどこにしようかと考えていた。
部屋のソファーに腰掛ける青年の傍らには、アカネとベッドに座っていた。最近、と言うよりここのところずっとボールの外に出ているアカネ。そのお腹はいよいよ臨月まで膨らんでいた。
「なぁ、なんで最近うちのこと外に出してるん?」
ふと、気になったアカネが青年に尋ねる。別に臨月の自分を気を使いながら抱かなくても、言い方は悪いが好き放題に出来る女の子は他にも沢山いる。それなのに、なぜ自分はこうしてボールから出されているのか。復讐の機会を伺うアカネにとっては、願ってもないことであったが、それと同時に不思議でもあった。
「実験ですかね……」
「実験?」
「えぇ、モンスターボールの中と外の時間の流れの違いを調べる実験。確かアカネさんを妊娠させてから、確かもうすぐ一年経ちますよね。けど、まだ生まれてないってちょっと不思議じゃないですか?」
「い、言われてみれば……」
アカネはむむむ……と唸る。モンスターボールの中では眠っているような安らかな感覚が続くため、ボールから出されてみれば丸一日経過していた、なんてことはしょっちゅうある。そのため、時間の感覚が少しずつ麻痺していたアカネは、改めて一年という時間が経過しようとしていることに気がついた。
そう言えば初めの数週間は毎日のように報道されていたトレーナー連続失踪事件に関するニュースも最近は、めっきり見かけなくなっている。世間はもはや自分達のことを忘れているのかもしれない、アカネは寂しさとともに世間の薄情さを感じていた。
「ほんで、それがなんの実験になんの?」
「ボールの中では恐らく時間の流れがとてもゆっくりなんですよ。ほら、ポケモンでもボールの中で知らないうちに死んでいたり、出産していた、なんてこと聞いたことないでしょ?」
「じゃあ、ボールの中にいる限りは年取らんってことなん?」
「そうとも言えないんですよね。ボールから久しぶりに出てきた時ってお腹すいてたりトイレ行きたくなるらしいじゃないですか」
「それはまぁ……そやな」
アカネは自分の経験に基づいて素直に頷く。なお、この間ボールから出された途端、しつこくGスポットを攻められるような体位で抱かれたために大量のおしっこを漏らしてしまった記憶を思い出しかけたが、アカネは慌てて首を振ることで再び羞恥心に苛まれることを回避した。
「ということはボールの中で代謝が行われてるってことで……でも瀕死状態のポケモンをずっと連れて歩いても死んだりしないし……生命維持装置的な役割があるって感じなのかな……?」
何やらブツブツと一人の世界に没頭し始めた青年。しばらく会話は無理そうだと、アカネはテレビの電源を入れた。途端に部屋の中に明るいBGMと楽しそうな芸人の話し声が流れる。
番組はちょうどCMに差し掛かった所らしく、画面が切り替わってしまった。ジョウト地方では、中々見ることのないいわゆるローカルなCMに、アカネは新鮮さを覚えた。
アカネはその中であるCMが気になった。「せかいに へいわを ギンガ団」とテロップの入った企業のCMである。営利目的ではないのか、ろくに商品の説明もせず、宇宙がどうだとか、エネルギーがどうだとかを三十秒間ひたすら話し続けていた。
「なんやこれ……胡散臭いなぁ」
アカネは眉をひそめ、テレビから視線を逸らす。すると青年もいつの間にかテレビ画面に視線を注いでいたことに気づいた。
「確かに胡散臭いですね。そう言えば、ゲームコーナーに行く途中に何度かそれっぽい人達を見かけたな……」
「そういえばあんたって昼間なにしてんの?」
「え、最近は基本デパートの隣のゲームコーナー行ってスロット打ってますね」
「パチンカスかいな……ますます最低やな」
「昨日あげたステーキもそれで勝ったお金からですからね。そう言うならしばらくアカネさんには僕のタンパク質をご飯にしてもらいましょうか」
青年のタンパク質、という言葉にみるみるアカネの顔色が変わる。
「う、うそや!うそやて!毎日うちのご主人様はお金稼いできてくれてありがたいなぁ!せやから……堪忍して!」
「仕方ないですね……出産前のデリケートな時期ですから、特別ですよ」
どうやら許されたと、アカネはホッと溜め息をつく。一年も一緒に居るとアカネの性格からして、たとえ自分を誘拐した犯人に対してもつい軽口を叩いてしまう。
そんなアカネに時折お灸を据えるかのように、青年は思いつきで様々な変態プレイをさせていた。ザーメンのたっぷり入ったジョッキを一気飲みさせられ、その後しばらく息を吐く度に香るザーメンの強烈な匂いに悩まされたのは、アカネの中でも記憶に新しい。
「で、話を戻しますけど。どうやらこの街にギンガ団の本社があるみたいなんですよ。ほら、あそこ」
青年はそう言って窓の外を指さした。ホテルのガラス張りの大きな窓からは、並び立つ建物の向こうに威圧感のある大きなビルが見える。
「へぇ、あれが……」
「ちょっと興味あるんで行ってみたいですよね。アカネさんは……あんまり詳しくなさそうだし」
「わ、悪かったなぁ!」
ムッとしたアカネの声に耳も貸さず、青年はリュックサックをゴソゴソと漁り、一つのモンスターボールを取り出した。部屋の真ん中へと放り投げると、光に包まれたあとナタネが現れる。
「あ、あへぇ……っ♡」
しかし、そのナタネは裸の至る所に卑猥な落書きをされ、お尻に刺さった太いバイブの震えに合わせてカエルのような姿勢でビクビクと床の上を跳ねていた。
「なんや……これ……!」
「あー……そうだった。一昨日アナルで何回イケるか試した後そのままボールに戻したんだった……」
驚くアカネをよそに、青年はポリポリと頭をかきながら床の上でうつ伏せになったナタネの尻をペシペシと叩く。
「ナタネさーん。起きてください、ちょっと聞きたいことあるんですけど」
「んひっ、ぁ、あぁ……っ、イクッ、イクッ……!」
「もう、しょうがないなぁ」
トリップしたまま戻ってこないナタネに、青年は溜め息をついた。そして、彼女のアナルに深く刺さったままのバイブをズルズルと引き抜いていく。
「かはっ!?あひっ、め、めくれちゃうぅっっ……!」
凶悪なイボイボのついたバイブが、ゴリゴリとナタネのアナルを刺激しながら抜けていく。ナタネははぁっ、はぁっと荒い息を漏らし、目を見開きながら、その刺激に耐える。
ようやく最後まで引き抜かれたバイブからは、もわっとナタネの体内温度によって湯気立ち、彼女の肛門もだらしなく開いたままになっていた。
「あ、あへぇ……♡」
開きっぱなしのアナルに入ってくる冷たい空気ももはや快感になってしまったナタネ。だらしなく舌を突き出し、ビクビクと小さく絶頂を繰り返す。
「えげつないな……」
「もう、いい加減にしてください。一昨日も散々イキまくってたのに……」
改めて第三者視点での変態プレイを目の当たりに、思わずアカネが呟く。そんな彼女をよそに青年は、ナタネの両脇に腕を通すとズルズルと引きずるように、浴室へと消えていった。
その後、「冷たっ!」や「ご、ゴシゴシしないでぇっ」とナタネの声がしばらくの間浴室から聞こえ続けていたが、十五分ほどしてようやくバスローブを着たナタネが浴室から出てきた。
正気に戻ったらしく、どこかさっぱりした表情のナタネと、目が合ったアカネはどこか気まずさを感じて視線を逸らす。向こうも同じ気持ちらしく、ナタネは先ほどアカネの前で自分が何をしていたのか思い出したのか顔を真っ赤にして床に視線を落としていた。
「さて、ナタネさんがさっぱりした所で、ようやく本題に入りましょうか。ナタネさん、適当な所に座ってください」
ナタネに続いて浴室から出てきた青年が口を開く。ナタネは無言のまま、素直にベッドの上のアカネから少し離れた場所に腰をおろした。
「ナタネさん、ギンガ団って知ってます?」
「ギンガ団……?あぁ、あの宇宙エネルギーがどうとか言ってる団体ね。確かハクタイシティに支社があったわよ」
「へぇ。どういう組織か、とかは分かりますか?」
「うーん……普通の会社、ではなさそうだけど。何か変な格好でうろついてるし、言ってることはちょっと宗教じみてたし。ただ、これといった実害は無かったから様子を見守るって感じだったかな」
「なるほど……」
ナタネの回答に青年は顎に手を当てて考え込む。しばらくの逡巡の後、青年が顔をあげた。
「なら、ハクタイシティに行ってみましょうか。ギンガ団の支社とやらを見に行きたいですし」
「なんでなん?それもあんたのいう研究か?」
「まぁ、そんなところです。ナタネさん、案内してもらえますか?」
「いいけど……折角ハクタイに帰るならちょっと街の様子も確認させてよ、もう半年も帰ってないんだから」
「いいですよ。ただ、くれぐれも騒がないように。もし騒いだら……」
「な、何よ」
「すぐにボールに戻してボールごとギャラドスの餌にしますからね」
「……!」
想像できたのか、アカネとナタネの二人ともが顔を真っ青にする。それと同時にアカネは、この間青年が言っていた「人はポケモンと違って賢い分言うことを聞かせられる」というセリフを理解した。
「わ、分かった……絶対騒がないって約束する……」
ナタネの声にアカネもガクガクと首を縦に振る。「冗談ですよ」と青年は笑ったが、全く彼女達は笑えなかった。
翌朝。ホテルをチェックアウトした青年は久しぶりにリュックを背負って外に出た。昨日の晩のうちに捕まえた女性達を交代で風呂に入らせ、夕食も取らせてある。今後によっては、しばらくはボールから出せないかもしれない。青年は今夜の性欲発散はどうしようかと考えながら、トバリの街を歩く。
途中、件のギンガ団らしき二人組が街を歩いているのを見かけた、男女ともに青く染めたおかっぱ頭と、白い制服がよく言えば印象的、悪くいえば浮いている。あまりジロジロと見ては絡まれるかもしれないと、青年は足早にその場を離れた。
街の外れまで歩き、ムクホークを取り出す。
「ムクホーク、ハクタイシティまで行って」
頷くムクホークの背中に乗り、久しぶりに空へと舞い上がる。いつの間にか秋が深まってきたのか、上空はかなり肌寒く感じた。
ハクタイシティに行く途中には、高くそびえるテンガン山がある。さすがにその上を飛ぶというのは、ムクホークの体力的にも青年の防寒対策的にも無謀であった。そのため、大きく迂回せざるを得ず、ハクタイシティへと到着する頃には昼過ぎになっていた。
ハクタイの町に降り立った青年はムクホークをボールに戻すと、キョロキョロとナタネのいうギンガ団の支社を探しながら、町を散策する。
「おっと、いけない。忘れてた……」
途中ナタネとの約束を思い出し、青年は慌てて近くの建物の陰へと移動した。リュックサックからナタネの入ったボールを取り出し、目の前に投げる。
「ん……あ、ハクタイについたんだね」
全裸であることを忘れ、顔を輝かせるナタネに青年はリュックから紙袋を取り出して、彼女に突きつけた。
「これは……?」
「変装してください、さすがに全裸で町を出歩きたくはないでしょ?」
「あ、当たり前でしょ!?……って、この格好!」
青年から紙袋を受け取り、中を開けたナタネが驚いた声を上げる。
そこに入っていたのは、あろうことかギンガ団の制服であった。しかも青いおかっぱヘアーのカツラまで入っている。
「こ、これを着ろっていうの……?」
「この格好が一番って。聞いた感じでは、ギンガ団に好き好んで話しかける住民もいないみたいですし、ナタネさんだとバレることもないでしょう」
「だ、だからってこの格好は……」
奇抜な髪型と服装に、ナタネが嫌そうな表情を浮かべる。
「なら、Bパターンのポケモンのお面とスリングショットのセットで行きましょうか」
そう言って青年が取り出したのは、ピカチュウの顔が描かれたお面と、ほとんど肌が晒されることになるようなV字型の水着であった。
「い、いやよ!こんなド変態な格好で町を歩くのは!あたし、これでもハクタイシティのジムリーダーなのよ!?」
「ならいつまでも全裸でいないではやく着替えてください。僕はギンガ団でも変態仮面でもどっちでもいいんですよ」
「くっ……わ、分かったから!」
ナタネは悔しそうな声で頷くと、いやいやと言った感じでギンガ団のコスチュームに身を包んだ。もともと茶色いショートヘアだったこともあり、カツラを被っても違和感はない。
「き、着替えた……」
「よく似合ってますよ」
「こんなの似合いたくないよ!……というかこんな服どこで手に入れたの?」
「この間、ギンガ団の下っ端っぽい子を捕まえてたんですよ。スロットで負けた日の帰りに突っかかってきたんで。むしゃくしゃしてつい」
「もうどっちが悪者か分からないね」
ナタネは大きく溜め息をつく。自分がジムリーダーをしている町に、こんな悪党を招き入れて良いのかと不安になったが、実際ナタネもギンガ団については前々から怪しいと思っていた。その活動目的も、町でよく聞く怪しげな勧誘にも、どこか正常でない何かを感じていたのだ。
経緯はどうあれ、彼らについて調べる良いチャンスである。ナタネは大人しく青年を案内することにした。
少し距離を開けたナタネに続いて、青年はギンガ団の支社へと向かう。
「あ、あの人は……」
「誰ですか?」
「すぐ近くで自転車屋さんをやってるおじさんだよ」
ナタネは、ふとギンガ団のビルの前に立つ中年男性を指さした。困り果てた表情を浮かべ、ビルを見上げるハゲ頭の男性。
「やぁおじさん、どうかしたの?」
つい、いつものように声を掛けてしまったナタネに、顔を上げたおじさんが驚いた表情を見せて、後ろずさる。
「ぎ、ギンガ団……!何の用だ……それよりもわたしのピッピを返せ!」
「あ……え、えっと!」
自分の今の姿を思い出したナタネが、どうしようかと焦っていると彼女とおじさんとの間にすっと青年が割り込んだ。
「どうかされたんですか?ずっとビルの方を見てたみたいですが」
「き、君は……?」
「通りすがりのトレーナーです。たまたまそこでギンガ団に入った知り合いに会ったので、これからビルを見学させて貰うんですよ」
「そ、そうか……実はわたしのピッピがギンガ団に連れ去られたまま帰ってこなくてね……何やら月のエネルギーがどうとか言ってたんだが、わたしにはさっぱりで……」
困り果てた様子のおじさん。青年の袖がくいと引かれ、振り返るとナタネが何か言いたそうにこちらを見上げていた。
「ね、ねぇ!おじさんのこと助けてあげてよ」
「え?なんで僕がそんなこと」
「お願い!……ホントはあたしが助けてあげたいんだけど……君なら何とかできるでしょ!」
ヒソヒソと話す二人。ナタネの表情からは自分が何も出来ない歯がゆさとその原因を作った青年に頼まざるを得ない悔しさが滲んでいた。
「……分かりました。その代わり今度また僕のお願いも聞いてくださいね?」
「……分かったよ!」
渋々頷くナタネに、青年はニッコリと笑みを浮かべおじさんの方に向き直った。
「もしビルの中にピッピがいたら何とか解放してもらえないか聞いてみましょうか?」
「ほ、ほんとかい!?」
「えぇ、ただ見ての通り僕は普通のトレーナーですので、あまり期待しないでくださいね」
「そ、それでもいい!ぜひ頼むよ!もし、取り返してくれたらそれ相応のお礼はさせてもらうから!」
青年の手を掴み、ブンブンと手を振ってくるおじさん。そのすがりつくような表情にこれ以上NOとは言えず、青年は曖昧な笑みを浮かべるのだった。