ニンジャ・ストライクス・タイマニン(旧題:灰と翠のデザイア) 作:触手の悪魔
時は近未来。古来よりの相互不可侵の掟が人間の堕落により破られ、魔界より来た異形たちが人間と結託して悪を成し世を腐らせていく時代。
人知を超えた力を持つ彼らに対抗する為人々は異能の力を持つ忍びの集団『対魔忍』を組織し、彼らの力を以て魔族に立ち向かい人の世の平和を守ろうとした。
対魔忍と魔族の永劫とも思える戦いは今日も続く。ある時は薄暗いスラムで、またある時は煌びやかなネオンの影で続いていく。
そして今日この日、霧のような雨が降り注ぐ東京の片隅にある路地裏でも争いはまた繰り広げられていた。
「駄目だ止められねえ!ぐあああああああああ!!」
「火が、火が迫ってくる!助けてくれえ!」
「やめろー!やめろぉぉぉぉ!!」
路地裏で次々と薄汚い血を垂れ流し死んでいくのは武装したヤクザたち。そして幾人か混じるオークなどの魔族の傭兵。自動小銃まで混じった火器で武装している彼らの武装度は高い。しかしにも拘らずわずか数名の相手に圧倒されている。
「思い知れ悪党ども――――はあっ!」
「あははっ!いいざまねえっ!豚の丸焼きになるがいいわ!」
一見競泳水着やレオタードにも見える露出度の高い衣装に身を包んだ少女たちは対魔忍。人間たちの代表として魔族や堕落した軍人にも対抗しうる力を持った彼らは、まだ10代であろう若さにもかかわらず圧倒的な戦闘能力を持っている。幾ら魔族が混じっているといってもヤクザの戦力は常識の範囲内。その驚異的な力に対抗しうるはずもなかった。
リーダー格の少女が長刀での斬撃を繰り出しヤクザを三枚におろし、派手な髪色の少女が火遁の術でオークを臭気を放つ丸焼きに変える。最早虐殺と言っていいくらいの戦力差が彼我の間には存在した。
「こ、これが本物の対魔忍……!おい、お前逃げるまでの時間を稼げ!」
「お、俺ですか!」
「そうだ!お前もくずれといえど対魔忍だろうが!さっさと行ってこい!」
路地裏の奥で震えるヤクザ若頭は自分のボディガード代わりに使っていた男を突き飛ばす。まだ若いその男は驚きと恐怖の入り混じった顔をしながらも若頭の前に立つ。いや立たされた。
確かに男は対魔忍ではあった。しかし高校一年時に魔族との繋がりが露見し家は取り潰し。彼自身も流れに流れて
こんな裏稼業にいついてきた。故に彼はせいぜい5,6人のギャングを相手にとれる程度の半端者の戦士であり、おそらく自分より年下とはいえ本物の対魔忍にはかなうべくもない。
(俺は死ぬのか……まだ何者でもなく、何も得ていないのに)
「ハァーッ!ハァーッ!」
荒い息遣いで彼は獲物の刀を構える。ピンボールのように壁を反射し迫りくるのは人影。死が、死が彼に迫ってくる。
しゅたり、と猫のように音もたてずに着地したのは先程ヤクザたちを蹂躙していた二人と同じ対魔忍の少女。流麗な着地は確かな技量を感じさせた。
「……お覚悟を」
獲物の槍を構える対魔忍は美しく魅力的な少女だった。派手な装いの仲間とは裏腹に少女のスーツは競泳水着に似た紺と白の落ち着いた色合いの物。しかしその薄布と金属製の装甲を以てしても隠し切れない柔らかな果実のような豊満な胸と尻がしっかりと主張し、身体の成熟とミスマッチな低い身長がそれらをより盛り立てている。さらに長く金糸のような金髪を落ち着いた色のリボンでポニーテールにまとめあげ、なびかせる様はまさに戦乙女の様。そして顔の作りも小顔で整っており、なかでも眼鏡の奥に見いだせるエメラルドのような鮮やかな緑の目が一層綺麗だった。
(……冗談だろ。こんな、極上の女に俺は殺されるのか?抱くんじゃなくて?)
絶望にえづきながらも男の下半身はしっかりと己の欲を主張している。戦場の殺伐たる光景と相反した対魔忍の美しさに間近になった死によって激しく励起しつつあった生殖本能がドクン、と男の中で脈打つ。彼はこの対魔忍を抱きたいと感じたのだ。
成程、彼のような職業の人間が対魔忍を抱く機会は決して夢物語とは言えない。若い女の対魔忍は負けても殺される事なく犯されることが多いし、かつては対魔忍の頂点に立つ、井河アサギといった彼からすれば文字通り殿上人たる者たちもオークやならず者たちの凌辱の憂き目にあったという。
しかしこの場で男が対魔忍の少女を抱けることはないだろう。最早彼にできることは時代劇のやられ役のように威勢よく切りかかり死ぬだけ。一山いくらのモブの身にある現実はそれだけだった。
「う…うおおおおおおおおおおお!」
「せやあっ!」
「アバーッ!」
事実雄たけびを上げ切りかかった男の斬撃はあっさりといなされ帰す刃でその臓腑を深くえぐられた。俗に剣で槍を相手取るには相手の三倍の技量が必要と言われている。しかし対魔忍と男の戦力にはそれ以上の差があった。
薄汚い稼業で汚れたやや奇妙な悲鳴を上げて男はあっさりと膝から崩れ落ち、薄汚い稼業で汚れた、薄汚い血を路地裏に垂れ流す。
「うあああああああ!ぐげぇっ!」
若頭の悲鳴を聞きながら男は自分の躰から抜け出ていく熱と冷たい雨に意識を向ける。ああ、死ぬのだなとまがりながりにも忍びとしての鍛錬を受けたからか自然に受け入れられていた。その心は
(ああ……くだらない人生だった)
男は自らの惨めな生を回想しようてやめた。物心ついた時から特にほしい物もなくただいつか自身の身に劇的な変化が起こることを夢見て流されるだけの人生。回想するほどの価値がある物などなかった。
(ああでも…少しだけ最後に綺麗な物が見れた…なら悪く)
そこで彼は気づいた。違う。まだ死ぬには早い。
まだ己の中に火は、欲望の火は残っている。欲しい物が出来たのだ。
(そ、そうだ俺は、俺は欲しいと思った。生まれて初めて、確かに欲しいものがあった)
それは先程彼を殺した対魔忍の少女。如何なる心の動きによってかは知らない。だが彼は確かにあの豊かな乳房を、流れる髪を、どこか愁いを帯びた顔を確かにものにしたいと感じたのだ。
それはマグマのような衝動だった。衝動は死につつある彼の体を爆発的な衝動が突き動かす。それは歪んだ情欲ではあるが今この瞬間、確かに彼の体を猛烈な勢いで駆け巡るエネルギーの奔流となって彼の心身に『変化』を引き起こしていった。
(俺は初めて思った。お前が、欲しいと!!!)
「イヤーッ!!」
「っ!?」
先程までひかれたカエルのようにして倒れていたはずの男は突如として数メートル垂直に跳躍し、空中でムーンサルトめいて一回転。廃コンテナの上に降り立った。
同時に男の姿は劇的なまでに変わりゆく。肩やひざに真鍮色に輝く装甲が生成されると装甲の周囲から灰色の装束が生成され身を覆っていく。そして顔には鋼鉄製の面頬。そこからも灰色が広がり男の頭部を覆っていく。まるで忍者のように。
驚愕する対魔忍を後目に宙を見上げる男の目は彼女たちを見ていない。彼が見ているのは御彼岸の彼方。熱い雨雲をスクリーンめいて彼の目にしか映ることのない超常の光景であった。
ザリザリザリとTVのノイズめいた音の響きと縁取りを0と1のみに覆われ狭まった彼の視界に映るのは、一様に謹厳たるアトモスフィアの忍装束に身を包み、様相の異なる忍装束の者たちと戦う者達。
ある者はバリアのような物を展開し自身と仲間を守り、またある者は鋼鉄化させた身で敵のスリケン攻撃をしのぎ、そして一際強大な首魁たる者(彼にはなぜかその名が『イージス・ニンジャ』と分かった)は祝福を施された盾であらゆる攻撃を反射し敵を殺害せしめた。
まるでプロモーションビデオのようなその光景の後に彼の目にサプリミナルめいて映し出されるのは――――ムテキ
―――憤怒の護り――――イージスと言った真鍮色の文字。次々と繰り返し流れていく文字を一通り目にした時彼は理解した。死にゆく自身に起きたこの変化は何か、この力は何のためにあるのかを。
しつこく振り続ける雨と、厚い雲の彼方に輝く星がごく薄くだが見えた。彼は薄く笑う。
「イヤーッ!」
今度は先程とは逆に回転ジャンプで対魔忍の前に降り立つ。彼の情欲の的となる対魔忍の少女の他に異変を察知して来た仲間の二人もいる。仲間はなく敵対魔忍は三人。先程までは絶望的な戦況ではあったが今の、かつてやがて来ることを望んでいた変革を得た彼にとってはそう難しい敵ではない。
「ドーモ。対魔忍の皆さん」
彼は挨拶の為に手を合わせる。何故ならそれは彼のニンジャソウルの示す礼儀作法。あの世とこの世、さらには世界の壁すら隔てて流れ着いたニンジャソウルの示す作法だった。
「グラオシルトです」
先程までどこにでもいるモブであった男はもういない。今ここにいるのはイージス・ニンジャクランのニンジャソウルの憑依者、恐るべきニンジャであるグラオシルトであった。
…………最初に餌食になったのはリーダーの京子だった。私が倒したはずの男が復活し、グラオシルトと名乗ったのを見ると三角跳びからの袈裟懸けの斬撃でグラオシルトを切ろうとした。そこまではよかった、と思う。
「イヤーッ!」
「ぐあっ!?」
グラオシルトがシャウトを放つと同盾のように構えた左腕が真鍮色に輝いた。その瞬間に中空から繰り出された京子の退魔刀による斬撃は見えない壁に当たったかのように斬撃を京子に跳ね返した。跳ね返った衝撃に身を撃たれて宙を舞う京子に向けてグラオシルトは前蹴りを放ち、壁にめり込ませた。
赤子の手をひねる様な圧倒的な強さに私たちは絶句した。それが命取りになるとも知らずに。
「う、嘘でしょ京子が一撃でやられるなんて……ひっ!」
グラオシルトは速かった。ほのかが立ち直り火遁の術を放つ前に彼女の彼女の前に一息で到達。
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「きゃあああああああああっ!」
「イヤーッ!」
「がぁっ……ひぎぃ!」
ほのかも京子のようにすぐにやられた。パンチ数発で体を折り、怯んだ所を一本背負いで叩きつけられた。あまりの衝撃にほのかも白目をむき気絶した。
二人とも対魔忍スーツの優れた防御力のおかげか死んでいないのは不幸中の幸い――――いや幸いと言えるのだろうか。敗北した対魔忍がどのような扱いを受けるのかを考えると
「イヤーッ!」
「ああっ!……やあ…」
グラオシルトは先程の意趣返しのように私の槍を容易に弾き飛ばす。その決断的な力強い動きは先程とは全く違う。彼の身に一体何が起こったのか。
「こ、来ないで……」
「……」
グラオシルトは無言でにじり寄る。そして私の胸に手を伸ばして私を――――――
「ひぎっ!あぎいいい!?」
走馬灯めいた回想から『源口翠』は呼び戻される。先程と同じ路地裏で彼女は犯されていた。残りの仲間二人は厳重に拘束され冷たいところで寝ている。あの怪我と拘束ではたとえ彼女たちが一流の対魔忍でも脱出できないだろう。さらに言えば翠にはこの状況から抜け出すあらゆる強さがなかった。
「嫌っ嫌あああああ!」
涙ながらに叫ぶ翠を後ろから犯し続けるのはグラオシルト。扇情的な対魔忍スーツの股間をずらし剥き出しにされた秘所には、皮肉にも彼女の獲物であった槍めいてグラオシルトの逸物が突き刺さっている。激しく動く逸物の隙間からは先走りと破瓜の血が溢れ、ただでさえ薄汚いアスファルトをさらに穢していく。おおブッダよ。何という殺伐とした光景であろうか!
「ハァーッ!ハァーッ!」
息遣いも荒く翠を押さえつけ犯すグラオシルトは飢えた野犬めいてその瑞々しい処女地を蹂躙していく。彼の目にはかつてなかったほどの荒々しい欲望。ニンジャとなった事でブーストされたそれは彼の全てである。それほどまでに歪な憧れを抱いた翠の躰は気持ち良かった。
「ありがとうよ‥。俺の為に今まで処女でいてくれて……!」
「そ、そんなの違います!あなたの為じゃ…んああ!」
グラオシルトとて女を抱いたことはある。しかしそれは手慣れた商売女のみであり、今泣きながら陵辱されている翠のような瑞々しさはない。初物を蹂躙する邪悪な悦びと禁忌を犯す背徳感がないまぜになり、燃料を注がれた動力機関のように彼の動きを加速させていく。
「あひいいいいいいいいい!そこは弱いのっ!摘ままないで!」
「うるさいっ…そのまま穴を締めていろ……!」
まるで蠢く蟲のように対魔忍スーツのの内側をグラオシルトの指がはい回る。そして目的の桜色の突起、翠の乳首に行き当たると繊細な指の動きで弄繰り回す。無論その動きの中で翠の豊満な乳房を始めとした体の各部をまさぐるのを辞めない。いやらしい虫のような動きでその滑らかな肌をはい回る。
そしてとうとう翠の対魔忍スーツが耐えきれず破れる。勢いよく飛び出した量の乳房がビーチボールのようにたゆん、と揺れた。
「あああ…恥ずかしいよぉ」
翠は顔を抑えようとするが腕を拘束され慈悲ある動きを許さない。まるで生きているかのように乳房が誘うように揺れてますますグラオシルトの情欲を誘う。猛る叫びを抑えるかのようにうめき声を抑えた彼は執拗なまでにそのたわわな胸を揉みしだく。
「んうっ!ひあっ!あんっ!やああああああ!」
劣情を抑えきれなくなったのか胸への責めをグラオシルトは続ける。乳房をこね回してその弾力ある感触を楽しんだ。
「あ…へひ……ひ、ううう……」
最早翠は何もできずなすがままだ。涙に濡れつつも嗚咽をこらえていく。その顔が赤いのは羞恥によるものか、それとも別のなにかか。
「あぎいいいいい!!?」
女性的な尻をがっちりとつかむとグラオシルトはより深く自身の物をねじ込んでいく。衝撃と奥不覚を内側から焼く熱に翠はさらに悲鳴を上げるが彼女を助ける者はいない。ただ彼女はグラオシルの獣欲によって貪られるだけの哀れな子羊だ。グラオシルトは極上の美体を貪り最早果てる寸前。ならば彼がこの凌辱の最後に味わう美酒は決まっている。
「へひっ!や、やだ中はやめて!中に出すのはやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「いや!出させてもらうっ!うおっうおおおおおおお!」
それでも乳房を揺らし上半身をのけぞらせながら翠は中出しの中止を哀願する。だが目を血走らせるグラオシルトはためらわない。熱き熱情を今翠へと発射する!
「ああああああああああああああああああ!!」
「んあああああああああっ!!!できちゃうっ無理やりなのに赤ちゃんできちゃううううう!!!」
深く濃く翠を中からもグラオシルトが征服する。悪しきニンジャに可憐なる正義のヒロインが屈服されるその光景は本来ありうべからざる光景。ブッダはもしかしなくても……寝ているのだろう。
完膚なきまでに叩きのめされ種付けされた翠は崩れ落ちる。その秘所からは大量の白濁液が流れ出て路地裏を雨や血と共にコーティングしていく。
「うおおおおおおお!おおおおおおおお!!!」
「…………」
獣めいた叫び声をあげるグラオシルトをよそに翠は放心したかのように無言。先程の彼とは裏腹に対魔忍スーツを破壊され裸身を地に晒す彼女の姿は惨め極まりない物。そんな自身の現状をはかなんだのか、翠の目から一滴の涙
が零れ落ちる。
透明な少女の涙は、薄汚い路地裏の中で唯一美しかった。
まるで霧のような雨が今日も東京では降り続いている。黒く汚れた街を洗い流すかのような雨はもう二日も続いたであろうか。陰鬱である雨天も彼には、グラオシルトにとっては己の上昇を祝うかのような好天に感じられる。あの日からもう半年が過ぎていた。
((いいぜいいぜ……自分で言うのも何だが俺は気前の良い真の男よ。奴隷の一人の個人所有くらい許しちゃる!!))
酒を煽り鷹揚に彼をほめたたえた親分はそういった。グラオシルトが捕獲したリーダー格の対魔忍の少女に奉仕させながら上機嫌で翠の個人所有を認めた。あの夜以来若頭の死亡やあの時起きた一連の事件による情勢の変動、そして何よりも彼自身の圧倒的なカラテにより今グラオシルトと名乗る男の地位は劇的に上がった。今となっては実働部隊のトップに数えられるほどだ。
彼が今住むのはかつての荒れ果てた安アパートとは大違いのそれなりにグレードの高いマンション。家具に関しても彼はさほど興味のなかったが質の良い物を翠の為仕入れており、ハンガーにかけられたスーツも仕立ての良いイタリア製の物。それはこの半年で彼が勝ち得た貴重な財産だった。
だがグラオシルトがそうした物には頓着しない。彼が常に気にかけるのは彼が得た物の中で最も大切な珠玉の珠であった。
「ん……」
グラオシルトは楽器の調子を確かめるようにして傍らに横たわる女の裸身をついと撫でる。ベッドのシーツに身を絡ませた女の顔は伏せておりグラオシルトからは見えない。だがその仕草から羞恥心と、そしてはかとない不安が感じられた。
「怖いか?」
「……」
女の、翠の不安をグラオシルトは容易く言い当てる。半年にわたる強制的な同棲生活の結果翠の心情はグラオシルトにとって手に取るようにして分かるものだ。
「安心しろよ。俺はあんなことはお前にしない。例えお前が俺を裏切っても殺そうとしてもな」
「あうう……」
グラオシルトは翠の身を起こすと片手で顔を撫でながらもう片方の手で胸乳を撫でるように揉む。その手つきと言葉は存外に優しい。
彼が言うのは「提携先」の企業が余興のつもりで彼らに見せた捕獲された対魔忍たちの凌辱ショー。オークや触手生物に犯され聞くに堪えない淫語を叫び、アへ顔を晒していた対魔忍の少女達の顔は見るに堪えず、翠が気分を悪くするのみならずグラオシルトも内心舌打ちした。何故かは知らないが不愉快だったからだ。
「第一にだ…俺の持っているものでお前よりも価値がある物はない。なのにお前を捨てる事があるか?あるわけないだろう」
そう言ってグラオシルトは翠を抱き寄せる。彼の翠への執着は色あせる事のない。あの衝動が爆発した日から、幾多の血に手を染めてもそれだけは変わらない。
「んう…い、いえそれもあるんですがその…私妊娠しないのかなって」
「妊娠、か」
グラオシルトは考え込む。成程あのショーで見た少女たちの一人はどう考えても妊娠中の膨らんだ腹をしていた。おそらくそれを見て翠は己の身に不安を感じたのだろう。
この半年間グラオシルトは幾度なく翠を抱いてきた。現に今も翠の下腹は愛液とグラオシルトの出した胤で濡れている。妊娠の可能性については十分すぎるほどにあった。
「それは、ないだろうな」
だがグラオシルトはどこか残念そうに翠の言葉を否定する。
「本能的にだが分かるんだ。俺はこの力を得た代償に人ではない何かになった。姿かたちならオークなどよりもよほど人に近いだろう。だがそれ以上に何とは言い表せないが……0と1程に違う決定的な断絶が人間とある。だからお前と子をなすことはない。俺には、わかるんだ」
その背には哀愁のような物が感じられた。グラオシルトはもはや人間ではない。闇夜を駆ける半神存在たるニンジャだ。だから人間である対魔忍と子を成すことは出来ない。それは満ち足りた彼の生活にある唯一と言っていい瑕疵であった。
「さてと……時間だ。そろそろ出かけてくる」
「また、抗争ですか?」
「そうだ。マフィア崩れどもだが武力は厄介だ。それにどうやら俺の同類もいるらしい」
名残惜しそうに翠から離れスーツを着込み身支度を整えるグラオシルトの顔は最早哀愁ではなく戦意と殺意に満ちている。いつものように戦い、殺し、奪いに行くのだ。
「だが俺は勝つ。お前に全てを与えるその日まで俺は戦い続ける。さっき言ったようにお前が俺を憎悪しようとも、殺そうとしてもだ」
「……お気をつけて」
「イヤーッ!」
複雑そうな表情の翠を後目にグラオシルトは窓を開けたドアから一気に跳躍し、夜の魔都東京に飛び立っていく。
彼は己のエゴの火が消えぬ限り戦い続ける。それは血と汚濁に濡れた道だとしても彼はあの時歪極まりない一目ぼれをした女に彼女が望まなくても捧げ続けるのだ。
それは彼が赤黒の死神と対峙する日まで続く。その日まで、そしてその日の後にグラオシルトが翠に何をもたらすか。
そういった灰色と翠色で彩られし血と情欲の物語を語るのは今ではない。だがいつか語られる日が来るだろう。
それは、遠くない日のはずだ。
・登場人物
グラオシルト
イージス・ニンジャクランのニンジャソウル憑依者。一応対魔忍の家系で生まれ育ったためある程度のカラテはあるが固有の術がなく、また実家の謀反もあった為落ちぶれ裏社会の一員に身をやつしていた。しかし源口翠に一目ぼれし、ニンジャソウルの力を覚醒させたことから人生は一変。闇を駆けるニンジャとしての人生を歩みだした。尚憑依ソウルの格はクランの首魁たるイージス・ニンジャと同様のジツが使える事から最低でもグレーター級(中忍)以上だと思われる。
源口翠
グラオシルトに敗北し囚われた対魔忍。金髪ポニーテール、巨乳、低身長、眼鏡とやや属性過多の気がある対魔忍。組長付きのオイランや組の共有財産となった二人と違いグラオシルトの戦友財産となった。予想より手厚い扱いのせいか、それとも対魔忍故の性的快楽への弱さのせいかグラオシルトにいくばくか心を許しているようだ。