ニンジャ・ストライクス・タイマニン(旧題:灰と翠のデザイア) 作:触手の悪魔
カワイソウなのが抜けるんだよね
──────その時代を如何なる時代かと問われれば、多くの人々は『退廃』の時代と答える事だろう。
21世紀も半ばを過ぎた近未来、米中2大大国の衝突に端を発する社会不安に追い打ちをかけるように、これまで人界と距離を保ってきた魔界より来た魔族が密かに侵攻を始め、さらにそれらの動きに便乗する悪人が跳梁跋扈するこの時代は経済・技術的発展とは裏腹に人類黄昏の時代と言える時代である。
そんな黄昏の時代に人知を超えた力を持つ彼ら魔族に対抗する為日本政府は異能の力を持つ忍びの集団対魔忍、これまで血族単位で魔族と戦ってきた彼らを近代的な組織に再編成し、ハイテク装備を供給する事で危機に対処しようとした。
異能の力を以て魔に対処せんとする政府の処置は一定の成功を収めた。
井河アサギを筆頭とする対魔忍は人界の理を逸した異能と幼い頃よりの鍛錬で練り上げられた技を併せ持ち、魔族掃討において長年成果を上げ続けた。
それらの働きによって不安定であった日本という国は表面上は平和を取り戻したといっていい。
────―しかし、その裏には多数の対魔忍の屍があることを忘れてはならない。
ある者はもたらされた情報の誤りにより、またある者は堕落した者達の罠にかかり、さらに派閥抗争に端を発する内乱により多くの対魔忍が散っていった。
その中には死ぬ事無く囚われの身となり、心身を辱められつくした非道に遭った女対魔忍(一部男)も多く含まれている。
そして今宵も新たに犠牲の列に加えられる対魔忍が現れようとしていた。
対魔忍と同様にこの世の理を逸した半神めいた存在、『ニンジャ』のカラテによって。
幾たびの危機を乗り越えて発展を続ける超巨大都市東京。
人類史上類を見ないメガロポリスとして発展した東京も当然ながらその全域が反映し人の絶えない場所ではない。
21世紀初頭より比較的人口の少ない山岳部においては地方同然に寂れている場所も多かった。
そんな寂れた東京山岳部の一角にあるAトンネルと称される廃トンネルは荒廃の極みだ。
今世紀初頭には使われなくなり、至る所にひび割れが走り名もなき植物が多数繁茂するこのトンネルはインターネットでも有名な心霊スポットの一つであり、落書きも「淫売の息子」「オーク野郎」「マストダイ」など下劣な物が多数。
如何にオカルトに興味があろうともまともな人間は近づくことはそうそうないスポットであった。
そんな危険なスポットを一人の少女が歩いていた。
少女の恰好は一見すると競泳水着やレオタードに似た肌にフィットした生地を身にまとい、各所に金属の補強を付けているのが一層に奇妙に感じられる実に痴女的な格好だ。
その上に少女の勝気さと同時に面倒見の良さをうかがわせる男女問わず人を引きつけそうな顔立ちと健康的に引き締まりながらも女性を主張する質量感のある胸や腰から臀部へのラインは魅力的その物。
男の情欲を掻き立て、場合によっては凶行に走らせる可能性も充分に考えられるほどだ。
しかしその格好の由来を知る者は彼女に対して手を出す事はしないだろう。
彼女は日本政府おかかえの忍者エージェント対魔忍の一人である。
一見痴女とも見える格好はその実先端技術の粋を凝らした業物であり、各国の特殊部隊に匹敵するほどの性能を誇る。
現にこの少女、
並みの男では銃器で武装しても到底かなわない彼女はボディラインを露出した格好で歩いていても大半の場合は安全である。
(見た所不審なゴミなどの痕跡はなし。
ここも……違ったかな)
そう考える美羽の今回の任務は単独調査だ。
ここ数か月大々的に活動しているとある大手ヤクザが行っている人身売買事業。
独自調査の結果東京の地下にある東京キングダムへ至る毛色の中でも人目につかない経路を輸送に利用しているとの推測が立てられ、複数の対魔忍が候補となった経路を調査する任務に就いている。
美羽もその一人として本命とは言い難い路線である物のこのAトンネルの調査に投入されていた。
(……いや待てよ此処のタイヤ跡まだ新しいぞ!? これ下手をしなくても昨日今日の?)
暗視スコープを手にした美羽はタイヤ跡を見つけて立ち止まる。
暗闇に隠れ目立たない物のまだくっきりと過積載トラックのタイヤ跡が残っている事からしてもかなり新しい物だ。
この辺りを走るはずもない不審なトラックの痕跡。
調査任務に対しても手を抜かず真摯であった美羽の勤勉さのもたらした成果である。
(ここまで新しいなら、今すぐ報告すれば運ばれた人も助けられるかもしれない。
あの地獄みたいな東京キングダムに運ばれる前に────―!)
そう考え通信機に手を伸ばす美羽。
けれどもしなやかな手が通信機を掴むその瞬間、目前の壁が吹き飛んだ。
「うっ……あああっ!?」
爆炎の勢いにより吹き飛ばされる美羽。
とっさに受け身をとった事もあり軽傷であったがアンブッシュめいた突然の衝撃に体をこわばらせる。
一体何が?
「あっくぅ……一体何が?
まさか読まれていたってこと……?」
美羽は不運であったが、その要因は主に三つに分けられた。
第一に痕跡がまだ新しく、迅速な連絡を行えば被害者の救助が可能と考え焦っていた事。
第二に彼女の推測の通りトラックがこのトンネルの壁中に隠された拠点から商品を積み込み出発したのは数時間前であるが、ある筋から対魔忍の接近を知ったヤクザが証拠隠滅の為壁中の施設に爆薬を仕掛けていた事。
そして第三に、対魔忍に備えてヤクザが雇った闇の始末人が密かに控えていた事。
「その通りだ。
世の中には勤勉さと若さが実際命取りになる事もあるという事をお前に教えてあげよう。ウフフ」
「っ!送りオオカミがいたのか……!」
何とか立ち上がった美羽の前に降り立つのは濃紺に白いラインが幾つも入った装束に身を包んだ浅黒い肌の男。
ガスマスクに似た面頬と腕部に何らかの黒漆塗りされた機構を装着した男は美羽の前で手を合わせる。
「ドーモ。シンスレッドです。
悪くない体と顔だ。長く可愛がってあげよう」
「くっふざけるなっ!
アタシは対魔忍なんだっ誰がお前なんかに屈するかぁ!」
「威勢が良くて可愛いね!イヤーッ!」
悠然としたシンスレッドに対して威勢よく刀で切りかかる美羽。
けれど彼女の抵抗は長く続かなかった。
美羽が爆発で負傷し機先を制されていたのもある。
シンスレッドの装備した機構から発射される糸(美羽が知るはずもない事だがシンスレッドに憑依したカイコ・ニンジャクランのニンジャソウルがもたらしたものである)が極めて強靭かつ伸縮性に富んだものであり、巧妙に美羽を絡めとったのもある。
だがそれ以上にいまだ未熟な美羽とニンジャであるシンスレッドでは、力量に差がありすぎた。
そうしてシンスレッドのカラテに圧された美羽は、援軍が間に合う事もなく捕獲され彼の隠れ家に運ばれた。
美羽が純潔を散らされたのは、その日の未明の事だった。
アタシは腕っぷしには自信があったし、先祖代々受け継いできたこの対魔忍て稼業にも誇りがあった。
私のこの手で弱き人々を守るのだ! ってね。
それは五車学園のみんなもそうだったし、アタシもよくこれから未来を良くしていこうってよく話していた。
でもアタシには危機感が足りなかったのかもしれない。
対魔忍の戦死者は内乱の犠牲者から任務中の
女の対魔忍ならそういう目に遭う事もあるっていう事も知ってた。
凄い優秀だった先生や先輩が任務で辱められて、表街道を歩けなくなった時は流石に怖かった。
けどアタシはまさか自分がそんなことになるなんて思っていなかった。
危機感が足りなかったんだろうな。
だから私はこのシンスレッドっていうニンジャ野郎に囚われ犯され続けているのかもしれない。
最近対魔忍とは別口のニンジャを名乗る手練れが裏社会で増えているとは聞いていた。
奴らは魔族かそれ以上に血も涙もない奴らで共感性の欠けたサイコパス。
その上に極めて高い戦闘技術を持っている最悪な奴らだとも。
「やめろっ痛ああっやだっあああやめろォ!」
「処女を犯す。
破瓜の血を見ると実際カワイソウで興奮するなァ」
「痛いィっ!動くなぁ中で動かないでっ」
シンスレッドはその例にもれずクソ野郎だった。
あの糸でアタシの両腕を拘束すると抵抗できないアタシに太く反り返った物をねじ込んで処女を奪った。
何度も何度も下腹が膨れ上がるほどに貫いて、たっぷりと白濁した物を吐き出してアタシをあざ笑っていた。
「畜生このクソ野郎……許さない、絶対に殺してやる……!」
「残念だな。お前如きに俺は殺せないよ。まぁ見ていろ。
車に轢かれた猫めいて従順になるようにお前を犯し続けてやる。
でもお前を助ける者はいないんだ。いいよね」
ニィーッと醜悪に笑ったシンスレッドはアタシを犯し続けた。
何度も何度も毎日アタシの中に吐き出して、その間も体を弄び続けた。
短いうちにアタシの身体でアイツに弄繰り回されていないところはほとんどなくなって、それは精液を付けられていない場所も同じだ。
「綺麗な髪っていい。
精液をべっっっとりとこすりつけると何というか幽玄? だ」
無理やりに胸の間に物をねじ込まれて擦られて、お腹が破ける程にいきり立った物を入れられ上下左右に動かされる無理やりの行為。
無駄に体格のいいアイツに気絶するまで犯され眠り、なんかのカプセルに放り込まれて休息をとったらまた犯される。
そんな事を繰り返しているうちにここがどういう物件か分かってきた。
この建物はどうやらアイツ等裏のクズが共同で借りている物件らしく、性奴隷をそれぞれ一人から数人程監禁しているらしい。
共同で出資し設備を維持しているらしいが、ヤクザの幹部や闇企業の社長だけじゃなくあいつと同じニンジャもいるようだ。
いずれにせよ、ふざけた話だ。
どうにかして一人でも助けるか脱出して仲間に伝えたいところだけど拘束され犯されるだけのアタシにはどうする事も出来ない。
ただでさえ犯され続けて体が痛んでいるうえに、何かの薬のせいで体がうまく動かないうえに元から大きい方だった胸や尻が一回り大きくなっている。
どうにもできずにアタシは毎日犯され、一方的に遊ばれていた。
「ん~っ! んんっ!!」
「耐えろ耐えろ。世界新記録を出したくないのか!」
ある時はアイツの物を喉奥にねじ込まれ何秒耐えられるかを図られた。
「見ろこの画像を。
お前の中が俺の形になっているだろう。感動的だ」
またある時は透過装置で描いた私の中の断面図に、アイツの物が奥深くまでねじ込まれるのを見せつけられながら犯された。
「さてと。そろそろアレをやるか。お気に入りの、アレを」
「ひっ……! やだやだやだやめろっやめてええっ!」
でも一番つらかったのは、あいつの糸で視界をふさがれ何が起きているのか分からない状態で犯され続ける事。
ただでさえ恐怖でしかないレイプがさらに辛くなる悍ましい行いに心底アタシは恐怖した。
「分かるよ。人間分からないことが一番怖いからな。
ホラー映画も1一回目と2回目じゃ実際怖さが違う。わかるよ」
アイツはもっともらしくうなづきながら泣き叫ぶアタシの顔を掴んだ。
カイコのような糸で目をふさがれる。
その時の喜悦に満ちた表情は今でも忘れられない。
「だから、いいんじゃないか!」
「やだ……やだよぉ……!」
アイツはアタシの身体だけでなく、尊厳をも凌辱し尽くした。
その時アタシの心は折れていたんだと思う。
駆られて貪られるだけの可愛いうさぎちゃん。
アイツはそう思っていただろうし事実そうだった。
アタシはこれからあいつに嬲られ続ける。
それがいつまで続くのかはわからないが、少なくともロクな終わりは迎えられない。
壊れかけた心でそう感じていた。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
ほぼ壊れかけたアタシの心に、強烈なシャウトが響いた。
続いて人体か何かが扉に叩きつけられる。
その衝撃はもうろうとしていたアタシの意識を痛烈にノックした。
「サヨナラ!」
「……え? 何、これ……うわっ!」
扉の向こう側から聞こえた強烈な断末魔に爆発音。
朦朧とする意識を何とか集中すると扉がそのまま倒れ込んできた。
分厚い鉄板の扉に当たる事は流石になかったけど蝶番が完膚なきまでに壊れているのを見てアタシはぞっとする。
一体外にいる誰かは、どれだけの衝撃を扉に与えたんだ?
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「アバーッ!」
外ではどうやら戦闘が起きているらしい。
裂帛の掛け声と金属音や打撃音が鳴り響くまさに戦場。
掛け声の中にシンスレッドの声もあるあたり、対魔忍の援軍かはわからないけど何者かがここを襲撃しに来たようだ。
(これならなんとか逃げられるかな? でも……)
シンスレッドの奴もこの事は予想外だったのかアタシの拘束は緩く、これなら扉の避けた金属部分を利用して糸を斬れそうだ。
でもアタシはこの行動があいつらニンジャにまた痛めつけられるきっかけになるんじゃないかって恐れていた。
痛めつけられた心身が行動を拒んでいた。
震える体に心。
アタシは萎えそうな心身を必死に奮い立たせる。
(それでもいかなきゃ。
アタシは対魔忍、正義の味方なんだから……!)
それでもやはりアタシは自分のこれまでの生き方を捨てきれない。
今は千載一遇のチャンスだ。
仮に襲撃に来たのが他の魔族や裏社会の勢力でも、隙をついて脱出するか、そうでなくても他に捕まっている人を一人でも助けられるかもしれない。
だからアタシは肚を決めて糸を引き裂いて脱出することにした。
「ううう生臭。体中が痛いアイツ良くもここまでしてくれたな……」
我ながら惨めな有様だ。
体中に精液がこびりついているし手荒く扱われたからか手足がうまく動かない。
その上股の間からはアイツの精液が垂れてくるしでもう泣きそう。
そんなボロボロの身体を押して何とか部屋の外に出た。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「あ……」
部屋の外は倉庫のような広い空間。
そこで起きていたのはシンスレッドや他のニンジャが目にもとまらぬ速さで繰り広げられる死闘。
そしてその中心にいたのは──────―赤黒い死神だった。
赤黒い死神はシンスレッドや他の奴らのように赤黒い忍者装束を着ているが、それ以外のなにもかもが違った。
動きが違う。雰囲気が違う。力強さが違う。何よりも放たれるすさまじい憎悪が違い過ぎた。
面頬の深く刻み込まれた「忍」「殺」の漢字が何よりも雄弁にその殺意を語っている。
「イヤーッ!」「グワーッ! 放せ! ヤ、ヤメロ―ッ! ヤメローッ!」
「イイイヤアアアアーッ!」「アバババーッ!!」
死神は戦っていたニンジャの一人(梟の面をしたニンジャだ)の顔を鷲掴みにし持ち上げると親の仇めいた勢いでアスファルトの大地へ叩きつけてそのまま踏みつける!
受け身をとる事等欠片も出来ない顔面衝突で砕かれ、最早虫めいて痙攣するのみ。
そこへ容赦ないストンピングを死神は繰出した!
「イヤーッ!」「サ……ヨナラ!」
「アイエエエ……! バカな何でこんなことをする。
こっこんな事が許されると思っているのかニンジャスレイヤー!?」
(あのニンジャ、ニンジャスレイヤーっていうのか。
ニンジャ、スレイヤー。ニンジャを殺す者……!)
息をのむアタシの前でニンジャスレイヤーは残身を決めた。
残り一人となったシンスレッドはわなわなと身を震わせてニンジャスレイヤーを詰るが、その無様さはアタシを苛んでいたあの邪悪存在とは思えない程だ。
ああそういうものかとふいにアタシは理解する。
熱したナイフをバターに当てれば簡単に切れるように、物理法則のように当然に、半神たるニンジャをニンジャスレイヤーニンジャを殺す。
ただ単にそういう者なのだと。
「俺は……俺たちはただ単に海外と奴隷を売り買いしっ見目の良い奴を囲って毎日犯していただけたぞ!?
女子供なんて10人も殺していない俺達をこんなっカワイソウだと「黙れ」アイエッ!?」
ニンジャスレイヤーの目線は妄言を叫ぶシンスレッドでなくアタシに注がれている。
精液濡れでまともに立てない惨めな姿。
そんな姿を見たニンジャスレイヤーの目には、シンスレッド浮かべる悪意とは全く違う、確かな怒りがあったとアタシは感じた。
「お前が何を言おうと
罪科の軽重などどうでもよい。
抵抗しようが、逃げようが、泣き叫ぼうがお前はここで殺す。それだけだ」
ニンジャスレイヤーはまっすぐにシンスレッドを見つめる。
その目には極大の殺意!
「ニンジャ殺すべし。慈悲はない」
「アアアッ……アアアアアアアアッ!!」
カラテを構えるニンジャスレイヤー。
対して狂乱するシンスレッドはカイコめいた糸を全力で発射する。
それはアタシも囚われた回避困難な一撃。
だけどニンジャスレイヤーは、両腕にまとった炎でいとも簡単に糸を焼き切った。
「ナン、デ!?」
「────―カラテだ! イヤーッ!」
「アバーッ!」
ニンジャスレイヤーはそのままシンスレッドを一度殴る!
シンスレッドの首が180度回転して恐怖に歪む、半場焼け崩れた顔がアタシからも見えた。
「イヤーッ!」「アババーッ!」
そのままシンスレッドの頭を押さえたニンジャスレイヤーは先程とは反対側の腕でシンスレッドを殴る!
壮絶な一撃にシンスレッドの胴体が180度逆回転、その首をねじ切った!
「サヨナラ!」
シンスレッドは爆発四散した。
後に残るのは僅かな灰燼のみ。
多くの人々を苦しめ、アタシを汚し続けた邪悪の最後はそんなものだった。
あまりにも現実感がない一方的な処刑。
そのある種神話的である光景をアタシは涙を流しながら見ていた。
「うう……」
アタシが呆然としているとうめき声が聞こえた。
慌てて振り返ると其処にいたのは倒れ込んだアタシと同世代の女の子。
恐らく同じように戦闘で拘束が壊れて這い出してきたんだろう。
「おいしっかりしろ! 君大丈夫か!? この指は何本に見える?」
「うあ……三本?」
「よし頭は大丈夫だな! 頑張れよもう少しで助かるからな!」
そうしてアタシは対魔忍の本隊が来るまで同じように攫われた人たちを介抱していた。
もうその時にはニンジャスレイヤーは姿を消していたけど、今でもあの憎悪に満ちた眼差しは印象に残っている。
あのニンジャへの憎悪に満ちた死の化身をアタシは一生忘れることがないだろう。
・エピローグ
夜中の五車町で美羽は空を見上げていた。
あれから三か月。
多くの事が変わってしまった。
身体の方は治療を受けて元通りだが、結局精神の方はそうもいかずいまだに美羽は療養中だ。
自分より体格の良い男が近づくと恐怖心を抱くし、当時の事を思い出すからか手首に何かを巻くことができないうえに夜電気を消して眠れない。
対魔忍として前線に立ち続けるのは無理そうだと自分でも思う。
今日だって夜中に悪夢を見て飛び起きて、夜空を眺めている。
周りは心配してくれているが、これからの未来が悩ましい。
「でも、生きているんだよなぁ……」
後日聞いたところによるとあの施設にはシンスレッドを含め3人ものニンジャがいたが、ニンジャスレイヤーが皆殺しにし、さらに奪った端末で五車に情報を伝えたのだという。
おまけに元から美羽たちが調べていたヤクザや関連組織も彼によって壊滅したとか。
美羽は想う。
囚われた対魔忍の末路は悲惨だ。
恐らく比喩ではなく豚の餌か良くて闇カネモチの彫刻にされる。
そんな末路が本来ならば美羽にはあったはずだ。
けれどニンジャスレイヤーという存在がその呪われた未来を断ち切ってくれた。
恐らく美羽たちを助ける為ではなくニンジャを殺す為に来たのだろうが、彼に救われた事は確かだ。
少なくとも五体満足で生きている美羽は、今は自由な体を動かし魔都東京の方角を見つめる。
東京を中心にあのニンジャなる存在は増加を続け、対魔忍に対してもかなりの被害を出しているらしい。
そして奴らを殺すニンジャスレイヤーの姿も幾度なく目撃された。
今もなおあの都市でニンジャの跳梁跋扈と、ニンジャスレイヤーの無慈悲な殺戮は続いているのだろう。
もう、リタイヤした自分には関係ない話だが。
ただそれでも美羽は思う。
もし今度ニンジャスレイヤーに会うことが出来たならば。
「何も言えなかったから、お礼ぐらいは言いたいな」
少なくとも惨劇の後も、生きている少女はそう思った。
◎登場人物
・シンスレッド
カイコ・ニンジャクランのグレーターソウル憑依者。
気取った態度で陰惨な犯罪を重ねるサイコパスであるが、ニンジャスレイヤーによってなすすべなく殺された。
・十河美羽
学生対魔忍だったが任務中シンスレッドと遭遇し、その後の凌辱によりPTSDを発症。
現在療養中であるが回復の兆しを見せている。
・ニンジャスレイヤー
この世界にも表れたニンジャを殺すニンジャ。
その正体はかつて妻子持ちのサラリマンであった男でも、幼馴染を失ったオリガミアーティストでもないようだ。