めぐると柊史君がだらだらとモン猟で遊ぶお話になります。
個別ルートのネタバレがあるので、ルートクリア後に読んで頂けたらと思います。
正面からの突進を紙一重で躱して、すぐさま反転。隙だらけの背後に向けて穂先を突き出す。
振り返ったモンスターが自慢の前足を思いっきり振り下ろしてくるが、これは落ち着いて盾でガード。
そのまま、攻撃後の硬直を狙って、弱点の頭へカウンターを――
「……あっ」
そう思って繰り出したオレの武器は、見事なまでに虚空を切り裂く。
隙を晒したオレの目の前に迫るのは、バックステップから勢いを乗せた渾身の突進攻撃。体力ゲージの残りを考えるとキャンプ送り確定の、回避不能の一撃。
……でもそれは、オレ一人だけで戦っていたら、の話だ。
「……もしかして、予想してた?」
「~♪ 何のことですかー? センパイ♪」
「むぅ……」
麻痺弾に動きを止められたモンスターの攻撃はオレには届かず、逆にシビレ状態で大きな隙を晒すことになる。
にやりと笑うめぐるを見る限り、どうやらオレが攻撃を避けられなさそうなタイミングを狙って援護してくれたみたいだ。
……さっきから同じ攻撃を何度か喰らっていたから、確かに助かったけど……避けられないのを見抜かれていたみたいで、ちょっと複雑な気分ではある。
「それよりもセンパイ、今のうちですよ、今のうち」
「あぁうん、わかってる」
そうして無防備に晒された弱点へ、二人でありったけの攻撃を叩き込む。
やがて大きな断末魔と共にモンスターが倒れて、画面に表示されるのは『クエストを達成しました』の文字。
「……めぐるの援護がなかったら、ちょっと危なかったかも」
「ふふーん、もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
まるでご褒美を待つ子猫の様に、めぐるがオレの真横にくっついて来る。
感謝の気持ちを右手に込めて、そのまま頭を撫でてあげると……目を細めて、もっともっと、と言わんばかりに頬を摺り寄せて来てくる姿はまるで、尻尾を振って甘えてくる子犬のそれに近い。
画面の中では凛々しく格好よくウナジを助けてくれたラビーさんだったが、中の人はそれとは対照的に、べったり無防備にオレに甘えてくれている。
そうしてひとしきりオレの感触を楽しんでから……ふっと思い出したように、めぐるが呟いた。
「でも……センパイ、どうして急にこのモンスターなんです? この素材って、槍だとあんまり使わないですよね?」
「それは……丁度いいかな、ちょっと待ってて」
ここまでめぐるには内緒にしておいたけど、ようやく準備は整った。
一旦集会場を出たオレは、ようやく揃った素材をつぎ込んで念願の武器を作成。こっそり用意しておいた鎧に着替えてから、再び集会場へ。
さっきまでとは雰囲気が違うオレの装備を見たラビーさんの中の人は、予想通りのリアクションで応えてくれた。
「銃? センパイって銃も使ってたんですか?」
「いや、これが初めて」
お披露目したのは、オレ自身も初めて背負う銃装備一式だ。
「へー……しかもこれ、めぐるもちょっと欲しかった鎧じゃないですか、素材集めるの大変じゃなかったですか?」
「そこはまぁ、めぐるを驚かせようと思って、こっそりとね」
とは言え実際、めぐるに内緒で一人で集めるのは結構な苦労だった。
突進からの壁ハメで3乙して、何度も枕を濡らしたことは絶対めぐるには内緒だ、恥ずかしいから。
……しかも結局、集められたのは鎧の分だけで、武器の分はこうして頼ってしまう辺り、ちょっと情けないけど。
「でも、どうしていきなり銃を? 槍とは全然勝手が違いますよね?」
「それは……何と言うかほら、たまには毛色の違う武器も使ってみたいなって」
「あー、ありますよね、そういう時」
本当は、それ以外にもちょっとした理由がある。
だけど、もっともらしい理由でそれを隠したまま、オレはめぐるにある提案を持ちかけた。
「それでさ、たまにはめぐるも違う武器を使ってみない?」
「なるほど……了解です、ちょっと待っててくださいね」
言うや否やラビーさんの姿が集会場から消えたかと思うと、手短な着替えを終えてすぐに戻って来た。
普段よりちょっと露出は少な目だけども可愛らしい鎧姿、そして背中に背負った武器には、これまた何処か既視感があって……
「めぐるは……かぎ爪?」
「ですです、寧々先輩を見てたら、自分も久しぶりに使ってみたくなっちゃいまして」
久しぶり、と言う割には整った装備を見る限り、今急いで準備したって感じはしないけど……めぐるが銃以外の武器を使ってる所を見た事はないから、その腕前は完全に未知数。
めぐるの事だし、初めて使うって訳ではないだろう……となると、オレの目標が叶えられるかどうかは、オレ自身の腕次第、と言う訳だ。
「それじゃあ早速、行ってみようか」
「そうですね、センパイは行きたいクエとかありますか?」
「うーん、それじゃあ……」
初期装備の銃で練習はしていたけれど、本格的なクエストへの挑戦はこれが初めて。
だけど今までずっとめぐると一緒に戦ってきたから、なんとなくどうすればいいかは頭に入っている……大丈夫、後はオレの腕次第だ。
こうして、お互いいつもとは違う武器で初めて挑んだクエストの結果は――
「それじゃセンパイ、モンスター転ばせますね」
「えっ……あ、うん」
センパイに合図してから、右足に向けて乱舞を叩きこむ。
蓄積値の計算通りに転倒したモンスターに追撃を入れて、弱点の頭とセンパイの間の射線を確保して……
「もう一回、今度は逆側行きますね」
暫く暴れた後、やっと立ち上がったモンスターの、今度は左足にも乱舞。
流れる様に再び転んだモンスターに、続けて攻撃をヒットさせれば……
「クエストクリアー♪ ……ってあれ、どうしました? センパイ」
「違う、そうじゃないんだ」
「へ?」
何故かそこには、頭を抱えてうずくまるセンパイの姿が。
「違うって、どういう事ですか?」
「いや……ほんとはもっとこう、前で戦うめぐるの事を、後ろからかっこよくサポートしたかったんだ……」
「あー……」
銃を選んで来た時、なんとなくそんな予感はしてたけど……槍しか使っていないセンパイにとって、それはあまりにも難易度が高過ぎる。
武器を変えて変化するのは攻撃方法だけじゃない、モンスターと自キャラの位置取りや回避のタイミング、他にも色々と勝手の違う部分はあるし。いきなり全部を覚えるのはいくら何でも無理な話だし。
「センパイ、それは流石に甘く見過ぎです、色々と」
「……言葉もありません」
結果として、普段よりさらに被弾の増えたウナジさんを援護する為に、モンスターの注意を引いたり、回復アイテムを使ったり……
前衛と後衛の位置は変わってたけど、結局いつもの狩りと同じように、私がセンパイのサポートをする形になってしまった。
……もうちょっと、さりげなく助けられればよかったかな。
「と言うかめぐる、上手過ぎない? 久しぶりって言ってたけどほんとはこっそり使ってたとか?」
「かぎ爪ですか? そんな事ないですよ、昔はちょくちょく使ってましたけど……」
「えぇ……信じられない……」
「なんだかんだ言って自分、モン猟歴は長いですから」
そう言って、私の持ってる装備をセンパイに見せてあげる。
メインの銃、今使ったかぎ爪だけじゃなくて、大斧や弓、最近練習してる笛、センパイと一緒に使おうと思ってこっそり用意したお揃いの槍。
ソロとは言え、伊達にやり込んでいる訳では……って言うのは、自分で言っててちょっと悲しくなって来る、けれど。
「オレは槍しか持ってないからなぁ……めぐるを見習って、もっと色々触ってみるべきかも」
「そうかもしれませんね、センパイの立ち回りはちょっと盾に頼り過ぎですし」
「ずっと使って来たからか、どうにも盾がないと落ち着かなくて……」
そう言って、センパイはウナジさんの装備を見慣れたいつもの槍に戻して。
「うん、やっぱりいつも通りが一番落ち着く」
「ですね、何だかんだ言って自分も、センパイの援護してるのが一番楽しいですし」
私もそれに合わせて、いつも通りのラビーの装備に着替え直す。
「……そう言えば、めぐるってさ」
「はい?」
「色々使えるのに、銃以外って滅多に使わないよね、かぎ爪も今見たのが初めてだし」
「あー……そうですね、センパイと一緒の時は、いつも銃しか使ってないかも」
「やっぱり、一番使いやすいから?」
「それもありますけど……それだけじゃなくて、この武器には思い入れがあるので」
センパイの何気ない質問に、含みを持たせた答えを返す。
すると当然センパイは、次の質問を私に投げかける。
「それって、最初に協力プレイした時の事?」
「それもありますけど……それ以外にも色々、ですね」
「色々って?」
「それはですね……」
そうして、私は思い出す。
センパイと出会うずっとずっと前の事を。
今でも私の中に、大切に残っている思い出を――
『武器にも色々種類があるんだよ! どれが使ってみたい?』
『めぐると同じ奴? ううん、駄目じゃないけど、かぎ爪は最初はちょっと難しいかも……そうだっ!』
『代わりにめぐるがこっちの銃を使うね! 後ろから色々サポートしてあげる!』
『だから一緒にやってみよ! 大丈夫、めぐるがしっかり――』
「――ナイショです♪」
「そう言われると、もっと気になるんだけど……」
「まぁまぁ、細かい事は気にしない気にしない、それよりセンパイ、他に行きたいクエストとか無いですか?」
「それなら……実は今やってる期間限定の奴が、ちょっと難しくて……」
「あー、前の天馬の時と一緒でちょっと槍と相性悪いですからね、アレ」
初めてセンパイと一緒に行ったクエストを思い出す。
お礼を言おうとして、立ち止まって被弾して……優しいのに不器用で、たどたどしくて。
……今思うとあの姿、ちょっと似てたかも。大切な思い出の中の、あの記憶に……
「と言う訳で、お願いしてもいい?」
「任せて下さい、あの時みたいにセンパイが吹っ飛ばされても、すぐ回復してあげますからね」
「ぐっ……悔しいけど言い返せない……お願いします」
そうして、二人揃っていつもの装備で、私達は次のクエストへ出発する。
センパイの後ろから、私がセンパイを支えるこの装備で。
「大丈夫ですよ、めぐるがしっかり――」
まだまだ不器用で頼りない画面の中のセンパイに、ちょっとだけ、あの頃の事を重ねながら。
「めぐるがしっかりサポートしてあげますからね、センパイ♪」
『めぐるがしっかりサポートしてあげるからね、ちーちゃん!』
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
めぐるの武器、現実のモンハンならライトボウガンっぽいけどソロ向けの武器ではないよなー……なんて思って色々考えた結果、こんなお話になりました。
ファンディスクでめぐるアフター、お待ちしてますゆずソフト様
ちなみに自分は4とXシリーズをちょっとだけやってました、ソロで、おおむねソロで。
140ギルクエ右ラー?理想発掘?知らない子ですね…