風邪を引いた暁くんの看病をしてくれる羽月のお話になります。
本編のネタバレは特にありません。
(6/12ワンドロお題)
「はい、暁、あーんっ」
「あーん……むぐむぐ……うん、美味いよ羽月」
「ふふっ、暁に褒めてもらえるのは、何回目でも嬉しいものだな」
休日の昼下がり。
いつもなら二人でデートにでも繰り出して、イチャつきながらお昼ご飯を楽しむような時間帯だ。
だが、ここは俺の部屋で。
加えて俺は、ベッドの上で起き上がるのが精一杯の状態だった。
「ゴホッ……すまない羽月……折角の休日なのに」
「気にしないでくれ、どんな形であれ、ワタシは暁と一緒に居られて嬉しいんだ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが……」
「それに、夫がこんな状態なんだ、妻として、看病するのは当然の事じゃないか」
「……羽月、まだ妻じゃない、まだ」
「ま、まぁ細かい事は置いておいてだなっ」
そう言って、羽月は手作りのおかゆを再び俺の前に差し出してくる。
「とにかく、風邪を治すにはしっかり栄養を取らねば、と言う訳ではい、暁っ」
「……」
「ん? どうしたんだ暁? もしかして食欲が出ないのか?」
「いや……嬉しくはあるんだが、ちょっと、と言うかかなり恥ずかしくて」
彼女が看病しに来てくれて、お手製のおかゆを食べさせてくれる。
男子としては非常に嬉しいシチュエーションではあるのだが……やはりこう、気恥ずかしさと言うか、照れくささが凄い。
「おかゆを食べる位なら一人でもなんとかなるし、そこまでしてくれなくても大丈夫だぞ?」
「何を言ってるんだ暁、こぼして火傷でもしたら大変だろう」
そう言って、むすっとしながら俺の方を見つめる羽月。
「それに……だな、こう、彼氏の看病と言うのには、少し憧れがあってな……」
「憧れ?」
「あぁ……何せ彼氏の看病は、全乙女が夢見る☆ラブシーンシチュエーションにもランクインしてる位、女の子の憧れなんだぞっ」
……あのランキング、ちょっと趣向が偏ってないか?
それにこれ、ラブシーンに数えていいものなのか?
……いや、考えるのはよそう、より一層謎が深まるだけだ。
「つまりは遠慮は不要だ、と言う訳で暁、はい、あーん」
「……あーん」
まぁ、何はともあれ
羽月のこんなに嬉しそうな笑顔を前にしたら、俺には断れるはずもなかった。
「と言うか羽月、気持ちはとても嬉しいが、あまり長居はしない方がいいんじゃないか?」
「えっ?」
おかゆを食べ終え、片付けをしてくれている羽月に向かってそう言うと、羽月の顔がみるみるうちに不安に染め上げられていった。
「暁……もしかして、ワタシは迷惑だっただろうか……?」
「いやそんな事は全くない、嬉しい、羽月が居てくれるのはすごく嬉しいんだ」
「じゃあ、どうして……?」
「大切な羽月に、風邪を移すような事があっちゃならないからな」
おかゆだけではない。
朝の早い時間から俺の部屋に来てくれた羽月は、薬や水枕の準備、濡れタオルの交換、果ては洗濯まで、献身的に世話を焼いてくれている。
ただ、ずっと俺につきっきりで看病してくれてる分、羽月に風邪を移してしまわないかが不安だった。
「なんだそんな事か……それなら、ワタシは全然気にしないぞ」
「そう言われても……俺が気にすると言うか」
「それに……だ」
「ん?」
「もし……もし暁の風邪が私に移って、ワタシが寝込んだとしても……」
少し気恥ずかしそうに、羽月の顔に赤みが増していく。
「……暁が私の事を看病してくれるなら、それはそれで……いいかなって」
「……」
……それは卑怯だろう。
そんな事を言われたら、俺は何も言えなくなってしまう。
「まぁ、確かにそうなったら、一日中でも側にいるつもりだが……」
「暁だってそう思うだろう? ワタシも同じ気持ちなんだ、だから暁の傍に居させてくれ」
そう言って、羽月は笑みを浮かべて。
「さぁ、食事も取ったし薬も飲んだんだ、少し眠って体を休めるといい」
「あぁ……そうしたいのは山々ではあるんだが」
「?」
「ちょっと頭痛が酷くて、眠るのは難しそうだな……」
「む、そうなのか? それじゃあ……」
そう言うと、羽月の手が俺の頭に触れる。
そのまま、俺の頭を羽月の手が優しく撫でてくれた。
「これで……どうだ?」
「あ、あぁ……」
母親にあやされる子供のようで、気恥ずかしさはあった。
だけどそれ以上に、羽月の温もりと優しさが感じられて、温かい何かに包まれているような、そんな気分になっていた。
「ありがとう羽月、これで少し眠れそうだ……」
「それならよかった……夜には晩御飯を準備しておくから、ゆっくり休んでいるんだぞ」
「……あぁ、楽しみに……してる」
羽月の優しさに包まれながら、まどろみの中に俺の意識は落ちていく。
(……もしもの時の為にも、おかゆの作り方、勉強しておかないとな)
薄れゆく意識の中でそんな事を考えながら、俺は眠りへと落ちていった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
羽月はリドジョヒロインの中でも乙女っぷりが可愛くて、ついついシナリオ何週も振り返っちゃいます。
あとOPムービーの、傘でこう一閃!ってした後にニコッてなる所がすごく好きです。