短くてもいいから定期的にお話を書く練習として、Twitterの方で500字程度のお話を書き始めました。
折角なので、まとめてこっちにも乗せておこうと思います。
今回はサノバウィッチ5ヒロイン。
共通テーマは『もっと一緒に居たい』です。
だいたい500文字×5ヒロイン分なのでボリュームは普段よりさらに控えめですが、お楽しみ頂けたらと思います。
(和奏ちゃんだけちょっと長いですが、試験的に色々試してた影響です)
ネタバレはあんまり無いですが、シナリオクリア後の方が楽しんで頂けると思いますので、
未プレイの方はご注意下さい。
ひとくち短編中 サノバウィッチ
因幡めぐる:『空っぽのミルクティー』
いつもと同じ遠回りの道、いつもと同じセンパイとのおしゃべりの時間。
……それなのに、時間の進み方だけが、いつもの何倍もの速さに感じてしまう。
”もう少しだけ、もうちょっとだけ”
さっきからそう祈り続けちゃうのは……やっぱり、センパイの事が好きって、気付いちゃったからなのかな。
「……因幡さん、時間は大丈夫?」
「えっ……あ、もうそんな時間なんですね……」
ミルクティーの空き缶をゴミ箱に捨てながら、ためらいがちにセンパイが呟く。
ココに着いた時にセンパイと一緒に買った私のミルクティーも、中身はとっくの昔に飲み終わって、空っぽになっていた。
でも、私は中身の無い空き缶を両手で包みながら、できるだけゆっくりと口元に運ぶ。
「それじゃあ……コレを飲み終わったら、行かなくちゃですね」
「……うん、そうだね」
きっと、コレを捨ててしまったら、今日はもうお別れしなくちゃいけないから。
あと少しだけでもいいから……まだ私は、センパイの隣に居たいから。
「……ふぅ」
”もう少しだけ、もうちょっとだけ”
空っぽのミルクティーを飲みながら、私はまた、同じ願い事を祈り続けていた。
綾地寧々:『お別れの言葉』
エントランスを通り抜け、エレベーターに乗って上階に昇り、カギを差し込んでドアを開いて……見慣れた寧々の部屋には上がらず、オレは玄関で踏み留まる。
靴を脱いだ寧々と、靴を履いたままのオレの唇が、静かに、ゆっくりと近付いて――
「んっ……」
今日最後のキスを交わし、おやすみを伝えてドアから外に出る。
それが合図、そうしたら楽しかった今日のデートも、とうとう終わりを迎えてしまう。
「……それじゃ、おやすみ、寧々」
「あっ……」
ゆっくりと離した唇からは、我慢しないと本心が漏れ出てしまいそうになる。
だから、オレはあえて特別な事は言わず、飾り気のない言葉でおやすみを告げた。
「……寧々?」
だけど寧々は、そんなオレの服を指でつまんだまま、離そうとしてくれなかった。
「……あの、ここでおやすみ、を言うんじゃなくて……」
真っ赤な顔、潤んだ瞳だけでも、オレの理性を揺らすには十分過ぎたのに――
「おはようを……言いませんか……?」
一瞬でその言葉に理性を溶かされたオレは、靴を脱いで片手で寧々を抱きしめる。
本当は気の利いた言葉で返したかったけど、こんな熱い頭じゃ何も思いつかない。
だからオレは言葉で答える代わりとして、空いている手で玄関のカギを閉めた。
戸隠憧子:『ごちそうさま』
明日は休日、これから向かうのは恋人の部屋、待っているのは彼女の手料理。
となれば足取りが軽くなるのも当然の話だ。両手いっぱいの買い物袋はズシリと重たいが、それしきの事は何の苦にもならない、ならないけれど……
「……でも憧子さん、晩御飯にしてはちょっと量が多くないですか?」
隣を歩く憧子さんに問いかけると、むふふ、と笑いながら。
「実はね、明日のお昼の分も一緒に買っちゃったの」
「それって……」
満面の笑みで答える憧子さんの言葉に、思わず心臓が跳ねる。
晩御飯を御馳走してもらう上に、明日の分の用意までしてくれている、それはつまり”今夜はずっと一緒に”と言っているに他ならない。
「……あれ? でもそうしたら、明日の朝ご飯の分は?」
浮き足立つ頭の中で、それでも浮かんだ新しい疑問を、憧子さんへ投げかける。
ちょっとした疑問、だけど聞くや否や、憧子さんの顔が急激に赤く染まり出して……
「えっと……朝ご飯は、要らないかなって」
「えっ?」
「だって……わたしもシュウ君も、きっと起きるのはお昼になっちゃう、でしょ……?」
俯いたまま小声で、確かめる様に呟いた憧子さんの言葉。
オレがその意味を理解したのは……その夜、憧子さんの部屋の、ベッドの上でだった。
椎葉紬:『たった5分のシンデレラ』
『ほら、ネクタイ曲がってるよ?』
慌てて靴を履く旦那様を制しながら、首元に手を伸ばして素早く結び直す。
スーツの襟を整えてから、ワタシはその手を、保科君のほっぺたに添えて……
『それと……いってらっしゃいのキスも、忘れてるよ……?』
そうして、ワタシと保科君の顔が、徐々に近付いて――
「……んぅ……? ふぇ? あ、あれ?」
開いた瞼の向こう側に広がるのは、保科君の顔じゃなくてワタシの部屋の天井。
混乱するワタシの頭を、目覚まし時計のベルの音が激しくノックし続けていて……
「……も、もしかしてワタシ……今、とっっても恥ずかしい夢を……」
朝の涼しさが頭の中を冷やしてくれる代わりに、顔がどんどん熱くなってくる。
こんな夢を見ちゃったら……今日、学院でどんな顔して保科君に会えばいいのか、わからないよ……
「……で、でも……」
時計をちらりと見る。普段通りなら、もう学院に行く準備をしないといけない時間。
だけどワタシは目覚まし時計に手を伸ばし、5分後に再びベルが鳴る様にセットする。
……それはシンデレラの魔法よりも短い、本当にほんのちょっぴりの時間。
「それでも……キ、キスだけなら、きっと間に合うよね……?」
自分自身にそう言い聞かせながら、ワタシは再び、ベッドの上で目を閉じた。
仮屋和奏:『放課後の世界』
頂点を迎えた熱が少しずつ下がるにつれて、混ざり合った二人の意識が解きほぐされて、現実が徐々に戻って来る。
「……大丈夫か? 和奏」
「……うん、へーき」
椅子に座るオレと、その膝の上に跨って抱き着く和奏。
はたから見れば、放課後の誰も居ない教室で恋人同士がイチャついてる様にしか見えないと思う……けれど、もし誰かにもっと近くで見られたなら、きっと感付かれてしまう。
教室に差し込む夏の夕日だけでは説明できない量の汗も。
全力疾走した後の様な荒い息遣いも。
透き通る様な和奏の肌が紅潮している事も、女の子の匂いを発している事も。
そして、スカートに隠された部分が、どうなっているのかも。
「……柊史」
「ん?」
「……んっ」
蕩けた瞳に吸い寄せられる様に、唇を重ね合う。
そうすると、一度は収まった熱が再び燻り出し、徐々に大きな炎へと変わっていく。
時計の音がカチカチと鳴っているのに、1秒と100秒の区別が付かない。
窓の外から聞こえる放課後の喧騒も、次第に聞こえなくなっていく。
腕の中にある和奏の熱だけが、確かな現実を感じさせてくれる。
……そうして、そのまま再び、二人で溶け合って――
「……あっ」
しかし、再び混ざり合いかけた意識は、けたたましく鳴り響く下校時刻のチャイムによって、無理やり引き剥がされてしまった。
「……そっか、もうそんな時間なんだ」
名残惜しそうに呟く和奏は、だけど逃がすまいと、抱き着く腕にさらに力を込める。
「……そうだな、そろそろ帰らないと」
「うん……でも」
言葉とは裏腹に、和奏はオレの胸に頭を押し付けて、離れまいとばかりに密着してくる。
「……もう少しだけ、こうしてたい」
「……うん」
いつの間にか夕日も沈んだ、静かで真っ暗な教室の中。
それでも、お互いの熱だけを頼りに、オレ達は気持ちを伝えあっていた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
付き合い始めた後のおねだりとか、付き合い始める前のワガママとか、
その辺りの女の子のモジモジを可愛く書ける様もっと精進したいです。
これだけでなく、短編集の方も並行して書いていきますので、完成したらそちらもよろしくお願いします。
あと、気付いたら投稿を初めて1年経ってました。
読んで下さっている方、感想を投げて下さる方にはいつもいつもやる気を頂き、励みになってます。
本当にありがとうございます。
次の1年はコミケサークル参加+本を作るを目標で…