これも全部残業って奴が悪いんだ…
今回は千恋*万花から4ヒロイン。
共通テーマは『結婚(式)』です。
ジューンブライドに引っ掛けて書いてみました。
申し訳ありませんが、レナと小春はシチュが思いつかなかったので抜けてます。
ネタバレがちょこちょこあるので、未プレイの方はご注意下さい。
あと、最後におまけが1ヒロイン分あります。
天神乱漫を未プレイの方はちょっことご注意ください。
常陸茉子:『1ページ分の背伸び』
6月の日差しに照らされて、純白のウエディングドレスが煌びやかに輝く。
光の中で佇む茉子の姿は、幻想的で、とても綺麗で……予め考えていた褒め言葉の数々は、頭の中から一瞬で蒸発し、消えてしまっていた。
「……将臣さん?」
「えっ? あ、うん、えっと……」
持ち得る知識を総動員して褒めようとして、それでやっと絞り出した言葉がコレと言うのは……我ながら情けない気持ちで一杯になる。
けれど、茉子は気にする様子もない。悪戯っぽい笑みを浮かべながら。
「……ワタシ、綺麗ですか?」
そう問いかける茉子の姿、それは初めて見るはずの光景なのに、何処か既視感を感じて……少しだけ冷静になった頭は、今度はその答えを導き出してくれる。
それは、茉子が教えてくれた、茉子のお気に入りのマンガの……憧れの1シーン。
『でも……ワタシは、ヒロインではありませんから』
忘れられる訳も無い、大切な思い出のあの日、茉子が呟いたその言葉を一瞬だけ噛みしめてから、俺は茉子の言葉に続く主人公の台詞を思い出す。
目一杯に凛々しくなる様にかっこつけた表情を、後で茉子は笑うかもしれないけれど……今日ぐらいは、それでも背伸びさせて欲しい。
世界中でたった一人の、大切なヒロインの為なんだから。
ムラサメ:『嬉し涙』
普段は静寂に包まれている穂織の夜も、今晩は楽しそうな声がそこかしこから響き渡り続けていて、まるで真昼のお祭りみたいな様相を呈している。
……一部では今日を穂織の記念日にして、本当にお祭りを、なんて声もあるらしい。
結婚記念日を町の祝日にされるのは流石に恥ずかしいけど、同時に凄く嬉しい。だってそれは、ムラサメちゃんがそれだけ穂織の人たちに愛されている証拠でもあるから。
でもそんなお祭り騒ぎの中、俺とムラサメちゃんはこっそりとソコから抜け出す。
『来て欲しい者がおるのだ』
ナイトウエディングを提案したムラサメちゃんに理由を聞いた時、彼女が笑顔でそう言ったのを思い出しながら……俺達二人はゆっくりと、喧騒から離れる様に歩いていく。
そして、花嫁衣裳の恋人に手を引かれて辿り着いた先……静寂と、優しい月明りに包まれた二人だけの境内の空で、そいつは静かに待ってくれていた。
「お主には、いつも泣き顔ばかり見せてしまっておるの……」
眩しいばかりに煌めく夜空を二人で見上げると、ムラサメちゃんが涙声でそう呟く。
「じゃが、見てくれ……吾輩は今、こんなにも幸せじゃ……!」
泣きじゃくるムラサメちゃんの頭をゆっくりと撫でながら、俺は彼女の頬を伝う涙を拭わずに、あえてそのままにして……夜空で優しく輝く満月に向かって思う。
見て欲しいんだ、500年以上ずっと、悲しみの涙を見守ってくれたお前にこそ。
女の子の、一生に一度の晴れ姿と……止まらない、彼女の嬉し涙を。
馬庭芦花:『きっと、ずっと』
嬉しい事があっても太陽は変わらず昇るし、悲しい事があっても変わらず月は沈む。
要するに、日常は待ってはくれないと言う事だ。それはつい数日前に念願の式を挙げ、晴れて夫婦となった俺と芦花姉にとっても変わらない。
余韻に浸る暇もそこそこに、日常は俺達の背中をグイグイと押してくる。
例えば俺達にとってのそれは、今までと変わらない、田心屋での慌ただしい日々――
「……十分、変わったと思うけどなぁ……」
「えっ? 何が?」
「何? って……お兄ちゃん、もしかしてそれホンキ……?」
若干呆れ顔の小春からのジト目に対し、視線を逸らして誤魔化してみるが効果は薄い。
しかしそこに、厨房から芦花姉の声が割り込んで来る。
「アナター! ちょっと来てくれるー?」
「りょーかい! ……悪い小春、行ってくる」
そう言って、そそくさと厨房へ逃げ込む俺の背中から聞こえてくる、小春のため息。
「……ほら、ノロケ度が上がってる」
……小春の言いたい事は分かる、それに実の所、俺も結構恥ずかしかったりする。
まぁでも、気にしないでおこう。当の芦花姉は凄く楽しそうだし……それに、これからもずっと、この日々は続いていくのだから。
そうすれば、いずれはこの呼ばれ方もきっと、日常の一部になる日が来るだろうから。
朝武芳乃:『幸せを探す旅へ』
三脚に乗せた慣れない機械に戸惑いながら、しっかり角度を調整して……ファインダーの中にきっちりと、恋人のちょっと恥ずかしそうにしている姿を捉える。
動かさない様に慎重に、タイマーをセットしてから……俺は小走りで芳乃の隣へ。
"きっと、これからの君達にこそ必要な物だからね"
僕にはもう必要ないから、そう言って安晴さんが俺に託してくれた物。
それは、かつて安晴さん自身が使っていた……ちょっとだけ年季の入った、沢山の思い出が詰まっているであろうカメラだった。
それを見た時、ふと思ったんだ。アルバムを作ろうって。
新しいスタートを切る今日この日から、二人の思い出を余すことなく残そうって。
そしてこれから撮るのは、記念すべきその為の最初の一枚目、と言う訳だが……
「そう思うと、妙に緊張すると言うか……」
なんて不安そうに呟く俺をくすくすと笑いながら、芳乃が微笑む。
「将臣さん」
ガチガチに緊張した俺の表情を一瞬で解きほぐすのは、恋人の穏やかな声。
「折角の最初の一枚なんです、目一杯笑って下さい……あの写真に、負けない位に」
自然と顔が綻ぶ。そして次の瞬間、シャッターの音が部屋に鳴り響く。
芳乃にも負けない俺の笑顔は果たして間に合ったのか、ちょっと不安ではあるけれど。
写真の出来栄えを見るのは……今日この後、結婚式が終わった後のお楽しみにしよう。
天神乱漫
千歳佐奈:『永遠を誓う言葉』
晴れ渡る空の下、沢山の祝福の言葉に包まれながら。二人でゆっくりと……ウェディングドレスの裾を踏まない様に、一歩ずつ踏み出して。
隣を歩く兄さんが私の手を優しく握るぬくもりが、この夢みたいな光景が夢じゃないって教えてくれて……幸せ過ぎて、思わず視界が滲んでしまって……
だから私は涙が零れない様に、咄嗟に空を見上げました。
そうしたら、目の前に広がる青空は何処までも澄み渡っていて、何処までも続いていて……まるで、兄さんと私の未来みたいに思えて。
これからも兄さんと一緒に居られる、そう思うと、余計に涙が溢れてきて――
「……嬉し涙は、ノーカウントでいいんだぞ?」
「私が嫌なんです、だって……兄さんとの大切な約束なんですから」
月日が流れて変わる事もあれば、それでもずっと変わらない事もあります。
例えば私と兄さんの関係の様に、兄妹から恋人になって、そして今日、夫婦へと変わっていく事もあれば、昔からずっと変わらない、兄さんのぶっきらぼうだけど優しい言葉みたいに……それは私と兄さんにとって大切な、ずっと変わらない約束ですから。
「私は泣きません……だから、兄さん」
愛の誓いとは別に交わす、私と兄さんと、二人だけの特別な誓いの言葉、それは――
「これからも……ずっと一緒に、いて下さいね」
これからもずっと変わらない、大切な……大切な家族の絆、その証なの。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
少しずつ書く速度も上がってきているので、今後はこっちだけじゃなく平行して短編の方もやっていきたい…いや、やっていきます。
同時にイベント参加に向けた本の作成も進めて…あれ?これ時間足りなくない…?