よかったらこちらも合わせて読んで頂ければと思います。
喫茶ステラと死神の蝶:栞那、涼音
RIDDLE JOKER:千咲
サノバウィッチ:美穂、和奏、めぐる
天色*アイルノーツ:シャーリィ
DRACU-RIOT!:梓
喫茶ステラと死神の蝶
明月栞那:『手のひらサイズに独り占め』
いつもの朝が始まるよりも、ほんの5分だけ早い時間。
目覚ましが鳴る前に目を覚ました私の瞳に映るのは、緩み切った表情ですやすやと寝息を立てる、可愛らしい恋人の姿。
「にひひ……まるで、大きな子供みたいですね」
起き上がる素振りも見せず、安らかな顔で眠り続ける昂晴さんを見ていると……思わず私も笑顔になってしまいます。
「……私もきっと、こんな幸せそうな顔をして眠っているんですよね」
だって、そうですよね。
好きな人と一緒に、お互いの温もりに包まれ合って眠る。
同じだけの幸せを、私と昂晴さんは一緒に共有しているんですから。
だからきっと、これは希さんも知らない、私だけが知っている昂晴さんの表情。
そう、私だけが知っている――
「……すいません昂晴さん、私、やっぱり欲張りなんです」
寝息で返事を返す恋人に断って、私はスマホのレンズをその寝顔に向けて、パシャリ。
そうして、希さんや愛衣さんに教わった方法で……今撮ったばかりの写真を、待ち受け画面に設定する。
「だから……こうやって、独り占めしちゃっても……いいですよね?」
無断で写真を撮ったお詫びに、頬にキスをしながら……私は小さく、そう呟いた。
喫茶ステラと死神の蝶
汐山涼音:『背伸びをしたいお年頃』
お店のドアから一歩外に出ただけで、冬の容赦ない風が私に襲い掛かって来る。
ただでさえ身を切る様な寒さなのに、いつも隣に居てくれる誰かさんの姿と温もりが無い分、今晩の風はよけいに寒く感じる。だけどその冷たさは、私の体と、頭と、心を急速に冷やして、冷静さを取り戻させてくれた。
「……はぁ」
人間生きていれば、何をやっても空回りばっかりで、上手くいかないなんて日もある。
ましてお客様相手のこういう仕事をしていれば、どれだけ頑張っても報われない事だって、思う様に行かない事だってある、それはわかっているつもり。
だけどそうして大人ぶったって、私も一人の人間だから……心は揺れるし、傷付く事だってある。だけど、こんな弱気な姿は絶対に昂晴には見せたくない。
だからあえて今日は"先に一人で帰ってて"って言った、そして冷たい夜風に慰めて貰いながら帰路に着くつもり……だった、だったんだけどねぇ……
「……どーして君は、年上の言う事を素直に聞いてくれないかなぁ」
冷え切った手から差し出された、冷たくなった缶コーヒーを受け取りながら。
ずっと待っていてくれたのであろう人影に、顔を見せない様にしながら問いかける。
「理由、言わなきゃ駄目ですか?」
「……ばーか、生意気」
そっぽを向いたままそう答える、今の私の表情だけは、絶対に隠し通したかったから。
RIDDLE JOKER
壬生千咲:『小さくて、眩しくて、愛おしい太陽』
暑い、ただひたすらに暑い。
手持ち無沙汰な俺は、持ち得る貧相な知識を総動員。様々な言葉を思い浮かべては頭の中でこね回してみるが、どんな言葉でも今日のこの暑さを適切に表せる気が全くしない。
そうしている内に、照りつける日差しはそんな事を考える余裕すら俺から奪っていく。
「正に夏本番、と言う感じではあるが……」
別に夏が嫌いと言う訳じゃない、と言うよりも、特に季節に拘りは持っていない。
それでも、立っているだけでも眩暈を覚える様なこの日差しは……昔の俺だったら部屋に引き籠って、何をするでもなくダラダラと過ごしていたに違いない。
少なくとも、こうして外で待ち合わせをして、誰かと一緒に出掛けるなんて事は絶対に無かっただろう。
「だが、まぁ……」
今は、少しだけ夏が好きだ。
照り付ける日差しも、騒がしい蝉の鳴き声も、うんざりする程に突き抜けた青空も。
何というか……そのどれもが、千咲に似合っている気がするから。
「あっ、せんぱーい!」
そうしている内に、俺を見つけた千咲が大きく手を振って駆け寄って来る。
夏の日差しに負けない、太陽みたいな眩しい笑顔を浮かべながら。
サノバウィッチ
因幡めぐる:『目を閉じたら』
濡れた髪が渇くのもそこそこに、ベッドへ体を放り投げる。
お風呂上りの体がひんやりと柔らかい感覚に包まれて、体から熱が抜けていく感じが気持ちいい、このまま目を閉じればすぐにでも夢の中へ行けそうだったけど、今日に限ってはその気分にはなれなかった。
「夏休み、もう終わっちゃうんだ……」
スマホを拾い上げて、ディスプレイに表示された時間を確認する、あと3分もすればこれだけ暑かった8月が終わり、同時にこれだけ楽しかった夏休みも終わってしまう。
センパイ達とまた学院で会えるのは嬉しいけれど……勉強は大変だし、何よりセンパイと一緒に過ごせる時間も減っちゃう事が、他のどんな事よりも辛くって。
「はぁ……明日なんて来なければいいのに」
このまま素直に眠ると、すぐに明日が来ちゃうのがなんだか癪で。
抵抗の意を示す為に少しでも夜更かししちゃおう、なんて思っていたその時。
「メール? しかもセンパイから……あっ」
そこに書いてあった一言を見た私は、直ぐに眠る支度を整え始める。
『明日はいつもの場所で待ってる、一緒に登校しよう』
早く寝ちゃおう、そして明日はセンパイより少しだけ早起きして、先に待ち合わせ場所で待って驚かせてあげよう、そんな事を考えながら。
あれだけ強敵だった明日は、センパイのたった一言であっさりと倒されてしまった。
サノバウィッチ
仮屋和奏:『溶けた境界線』※ちょっとえっち
クーラーの壊れた部屋の中で、真夏の暑さに逆らう術なんて人間は持ち得ていない。
だから当然、現在この部屋はさながらサウナの様な灼熱地獄の様相を呈している。
そして重ねて言う様に、オレ達はその熱に逆らう術なんて持っていないんだ。
「んっ……ちゅる、れるっ……ん、んんっ」
熱に浮かされて、なんて言葉は正にこんな状態の事を言うんだろう。
さながら肉を貪り合う獣の様に、オレと和奏は激しいキスでお互いを必死に求め合う。
押し付ける様に互いの唾液を交換し合うと、まるでそれが燃料にでもなっているかの様に、体の内側で燃える炎は大きく膨れ上がって、さらに体温は跳ね上がっていく。
二人ともこれ以上脱げる物なんてない、一番涼しい恰好をしていても……滝の様な汗も、汗とは違う液体も止まる事なく流れ続けて、全身から水分が零れ落ちて行って。
二人分の汗の匂いと、和奏の甘い香りだけが充満した部屋の中で、まるでグチャグチャになったお互いの体が溶け合って、一つになった様な幸福感に包まれていた。
でも。
「和奏……ごめん、これじゃあ足りないんだ、オレ」
それでも足りない。和奏の気持ちを、熱を、もっと感じたい。もっと欲しい。
余裕の無いオレの問いかけに、それでも和奏は柔らかに微笑んで答えてくれた。
「うん……アタシも、だからお願い柊史、……来て」
その声を聞いた瞬間、僅かに残っていた最後の理性は一瞬で蒸発してしまった。
サノバウィッチ
越路美穂:『ひだりてのくすりゆび』
「越路さん、どうしたの? その指」
アタシの指を見た戸隠先輩が、何の気なしにそう尋ねてくる。
一瞬、飛び跳ねた心臓をギュっと抑え込んで、アタシは努めて普段通りの声で答えた。
「あはは……昨日、料理をしてたら包丁で、ちょっと」
巻かれた絆創膏をさすりながら答えると、戸隠先輩は自分の片手を広げて、こちらに見せてくれる。
アタシと同じ手の、同じ指に、同じように巻かれた絆創膏。
「そうなの? わたしもほら、一昨日やっちゃったんだ」
知っている。
昨日の仕事中、こっそりとソレを見付けたからこそ、アタシはこうしたのだから。
でも、先輩は知らない。
アタシがどうして、本当は怪我なんてしていない指に絆創膏を巻いているのか。
「ふふっ……なんだか、お揃いだね♪」
そう思っていたのに、まるでアタシの気持ちを見透かしたかのような一言。
「っ……そっ、そう、ですね」
無邪気な笑顔を浮かべる戸隠先輩の言葉に、アタシはぎこちない笑いで答える。
――気付いてくれて嬉しい、でも気付かれたくなかった。
そんな抑えきれない恋心を、左手の薬指に巻いた絆創膏の裏に隠しながら。
天色*アイルノーツ
シャーリィ・ウォリック:『恋心』
書いて、消して、また書いて、また消して。
まるで迷路に迷い込んだみたいに、わたしの親指はディスプレイの上を行ったり来たり、定まらない行き先に向かってふわふわと漂うばかり。
そうして暫く彷徨い続けて……ついに音を上げたわたしは、握っていたスマホもろとも、体をベッドへと放り投げる。
「……はぁ……」
会いたい。声が聴きたい、透の笑顔が見たい。
もうすぐ日付も変わろうかと言う真夜中なのに、その気持ちだけがどんどん膨らんでいって、思わずパジャマのまま外へ駆け出したい衝動に駆られる。
最初は電話しようかとも思ったけど、もし寝ていたら起こしちゃうのはイヤだし……そう思って書き始めたメールだったけど……結局、それも諦めてしまった。
だって、どんなに頑張っても文字だけじゃこの気持ちを伝えきれないくて……逆にもどかしい気持ちだけが、どんどん積み重なってしまうから。
「どうしたら、全部伝えられるのかな……」
拾い上げたスマホを両手で包んで、胸の前で抱き締める。
わたしの心を、想いを、この熱を……全部、透へと伝えたい――そう思って目を瞑った次の瞬間。わたしのスマホから、着信を伝える音が鳴り響く。
はっとして確認した画面の向こう側に、困り顔で笑う恋人の笑顔が見えた気がした。
DRACU-RIOT!
布良梓:『Fact or Fiction』
「うにゅー……」
隣を歩く恋人は、あらん限りの声と表情を駆使して自身の不満を表現しようとする。
だけど可愛らしい唸り声と共にコロコロと表情を変える梓は、さながら拗ねた小さい子供の様だった。仕事中の凛とした姿を知っていても、その可愛らしさに思わず目を細めてしまう。
「やっぱり、不満?」
「だって私達、周りからみたら恋人同士に見えてないのかなって思っちゃうし……」
小学生に間違われる事1回、中学生が2回、極めつけは迷子の子供が2回。
折角のデートだったのに、逆に心を折られたかの様な梓の気落ちは相当の物だった。
だけどそれは、俺にとって不幸中の幸いでもある。今日一日ずっと探していた話を切り出す切っ掛け、それを手に入れた俺は緊張を目一杯飲み込んでから一言。
「それじゃあ……こうすれば、誰からも恋人同士に見えると思わないか?」
汗と震えの止まらない手で梓の左手を取って、その薬指にプレゼントを通す。
「……ゆーとくん、これって……」
そうすると、次は今度は梓が緊張で真っ赤になる番だった。
「……これじゃあ、今度は夫婦に間違われちゃうかも……しれないよ?」
うっすらと涙を浮かべる梓。その頭を撫でながら、俺は努めてきっぱりと告げた。
「いいさ、それだって……すぐに間違いじゃなくなるからな」
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
正直仕事やら何やらで色々としんどかったりはするのですが、まだ諦めたくないので書き続けたいと思います
あと、イベントで公布予定だったお話に関しては扱いが決まり次第お伝え致します、まだちゃんと決めてませんが今の所全部ここに乗せちゃうとかと思ってます。
…そもそもまだ完成してないですが。
更新すっぽかして、結局短編も更新できずの体たらくで本当に申し訳ありません。
ここまで見て頂いた方には本当に頭が上がらないです、重ね重ねありがとうございます。