暑いの苦手なのでどんどん涼しくなっていくのは嬉しいのですが、気付けばもう1年も終わりに差し掛かってると思うとちょっと憂鬱になります…
と言う訳で、9月分のツイッター更新分になります。
喫茶ステラと死神の蝶:ナツメ、愛衣
RIDDLE JOKER:七海、千咲
DRACU-RIOT!:美羽
喫茶ステラと死神の蝶
四季ナツメ:『ふぁいなるあんさー』
絶対に答えを間違えられない選択肢。
それなりの歳まで生きていれば誰しも、そんな場面を経験した事があるだろう。
「……問題です、この日は何の日でしょうか?」
しかし全然、全く、欠片も身に覚えが無い問題を、一体どう答えればいいんだろうか。
それに、わからない事はこれだけに収まらない。俺の家で飲もうと誘って来たのはナツメの方なのに、未だ一滴もお酒を飲んでおらず、それでいて不思議な位に上機嫌。
唐突に突き付けられた来年のカレンダーの、これまた唐突な日付に付けられた丸印。
極めつけは、抑えきれない笑顔の裏に感じる、真剣な雰囲気を纏ったプレッシャー。
……一つだけ確かなのは、こんな時俺が取れる選択肢は、たった一つきりと言う事。
「ごめんなさいっ」
不安を飲み込み、若干情けなくも頭を下げながらナツメの採点を待つ俺、しかし――
「くすっ……それじゃあ、正解も不正解も無いじゃない……でも」
返って来たのは意外にも笑い声。目を細めて笑うナツメの表情は何処か穏やかで。
「答えられなかった代わりに……ちゃんと責任取ってくれたら、許してあげる」
「……責任?」
そうして、まるで耐え切れなくなったかの様に、ナツメが俺の腕を抱き締める。
そのまま俺の手を、自分のお腹へと導いて……そうして優しく、自分の手も重ねて。
「そ、最後まで、必ず……パパとしての責任を、ね」
喫茶ステラと死神の蝶
火打谷愛衣:『『お嫁さん』』
「……それで、一体どうしてこうなったんだっけ?」
包丁を握る愛衣の手元を見張りながら、エプロン姿の愛衣に問いかける。
ステラでアルバイトを始めたと言っても、基本的に愛衣は料理に関して初心者だ。壊滅的と言う程ではないが、やや怪しい包丁捌きはしっかりと見守ってあげる必要がある。
「どうしても何も……こーくんが言ってくれたんじゃん。 "俺にできる事なら、なんでも手伝うから"って、しかもちょっとカッコつけて」
「確かに言ったけど……進路の話と、俺の好物を作る事に一体どんな関係が?」
言ったか言わないかと尋ねられたなら、確かに俺はそう言った、コタツで肩を並べながら、愛衣と他愛ない話をしていた時に。
だけどその時の会話の内容は、愛衣の学院で行われたと言う進路希望調査について、だ。俺の好きな料理の作り方の話なんて全く、これっぽっちも触れてはいない。
それじゃあ何故かと言えば、答えは愛衣が教えて欲しいと言って来たから。曰く"第一希望を叶える為に必要なのっ!"との事だが……
「と言うか……そもそもその調査、第一希望に何て書いたんだ?」
まずもってそれを知らない俺は、どうしてこれが必要なのか、がさっぱり分からない。
でもそれを尋ねる度に、愛衣からは同じ答えが返って来るばかりだった。
「……こーくんのばか、鈍感」
ほっぺたを膨らませて拗ねながら、でも何処か少しだけ、照れくさそうにしながら。
RIDDLE JOKER
在原七海:『手と手が繋がる距離で』
最初はその背中をがむしゃらに、ただ必死に追いかけていた。
居場所を見失う事が怖くて、縋りつく様な思いでただただ追い掛け続けて。
やがて時間が経ち、少しずつわたし達が家族に近づくにつれて、気付けば暁君はわたしの歩幅に合わせて歩いてくれていた。次第にわたしも、その後ろにくっついて一緒に歩いていく事を覚えた。
それからさらに時が経ち、やがてわたしはその背中を支えたいと思う様になった。反対を押し切って特班に入り、無二の相棒としてその背中を後ろから支え続けて……
「そして今や……かぁ」
気付けばわたしにとって暁君は、隣を並んで一緒に歩いていく存在になっていた。
それは家族としてでもあり、妹として、相棒として……そして恋人として。
もう、ずっと追いかけていたあの背中は見えないけれど……寂しさよりも、嬉しさの方が勝っているから。
「どうした? 七海、そんなに嬉しそうに」
「んー? 何でもないよ、お兄ちゃん」
さらに月日が経って、わたしと暁君がもう一度、新しい家族になって。
そしていつか、わたしと暁君が繋ぐこの手の間に立つ、新しい家族が生まれても。
「ただ……幸せだなって、思っただけ♪」
歩いて行きたい、このまま並んで、二人で同じ景色を見ながらゆっくりと、ずっと。
RIDDLE JOKER
壬生千咲:『命令なんです』
「それじゃあ、先輩はじっとしていて下さいね……」
恋人の部屋で二人きり、上半身裸の俺に迫る細くてしなやかな指先。
千咲の言葉に身動きを封じられた俺には、黙ってその指を受け止める事しかできない。
「~♪」
そうして、可愛らしい両手は淀みの無い動きでメジャーを操りつつ、鼻歌を交えながらテキパキと俺の体のあちこちを採寸していく。
冬服のコーディネートについて相談した時も、こうして採寸を取っている時も、好きな事に真剣に向き合う千咲の瞳は、吸い込まれる様な魅力を秘めていて好き、なんだが……
「……千咲?」
ふと気付く、さっきから千咲の視点が一点をずっと見つめ続けている事に。
その違和感について質問するよりも早く、千咲の華奢な体が動いた。
「……とぅっ」
晒した素肌にチクチクと刺さる前髪と、胸元にかすかに感じる吐息がくすぐったい。
そうして、突然抱き着かれ動揺した俺よりも、やはり千咲の動きの方が早かった。
「えと……これも採寸です、だから先輩はじっとしてて下さい」
「……了解だ」
そしてそう言われてしまえば、やはり俺は動く事はできないのだ。
DRACU-RIOT!
矢来美羽:『99点』
降り続ける雨音のBGMに混ざって、重なった二つの足音が静かに響き渡る。
女の子の私の歩幅に合わせて、寸分と違わない速度で隣を歩いてくれる。普段はちょっと抜けてる位なのに、こういう所は妙に気を遣うと言うか、紳士的と言うか。
でも、そんな自慢の恋人の自然な優しさが、ちょっと……ううん、凄く誇らしい。
「それで今日のデート、美羽の評価は?」
文句なんてあるはずもない。100点満点でも足りない位。
佑斗が私の為に、私と一緒に楽しい時間を過ごす為に考えてくれたデートなのだから。
だけど……一つだけ、欲張りな私の心が、ほんの少しだけ意地悪を囁く。
「そうね……99点、かしら」
私の恋人は、優しくて、肝心な時に頼りになって、でもちょっとだけヘタレで。
私の事を大切にしてくれている事がすごく伝わってくるのは嬉しい、だけど時々は、ちょっと強引でもいいから向こうから迫って来てくれてもいいのに……
「手厳しいんだな……残りの1点、何が足りなかったんだ?」
「足りないんじゃないわ……むしろ、余分なのよ……」
「ん?」
こうなってしまっては、減点の理由は直接体で教えるしかない。
そうして私は、手にしていた傘を閉じて、そのまま佑斗の腕に手を絡ませる。
「だから……傘、二本も必要無いって事」
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
季節の変わり目、体調を崩されない様にどうかお気を付け下さいませ。
自分はエナドリの飲み過ぎで体調をぶっ壊しました、自業自得ですね…