取り急ぎ10、11月分のツイッター更新分になります。
RIDDLE JOKER:茉優
千恋*万花:芳乃
サノバウィッチ:めぐる、紬、和奏
DRACU-RIOT!:美羽
RIDDLE JOKER
式部茉優:『冷めない愛をアナタに』
カップの中に広がる黒一色の世界に、静かに注がれる琥珀色の液体。
普段のコーヒーと比べても、色味はそう変わらない様に見える。しかしそこから立ち昇る香りは嗅ぎ慣れたソレとは違い、しっかりと大人の香りと雰囲気を漂わせていた。
最後に生クリームを添え、完成したカップをそれぞれ片手に並んでベッドに座る。二人同時に口を付けると、コーヒーの苦みに混ざって、確かに感じる独特の風味。
「ふふっ……暁君もとうとう、オトナの味を楽しめる歳になっちゃったかぁ……」
しみじみとそう呟きながら、茉優先輩が目を細める。
「でも、アイリッシュ・コーヒーを知ってるなんて……暁君、お酒に興味あるの?」
「そうでもない、ただ折角、茉優先輩と初めて一緒に飲むお酒だからな」
だから、どうせなら俺達らしい物を……と思って調べた結果、コレに行き着いた。
コーヒーのカクテルがあるなんて、調べてみるまで全く知らなかったが……俺と茉優先輩にとって、これほどしっくりくる物もないだろう。
「そうだね……うん、一番アタシ達らしくて、でも……ふふっ」
「?」
「ある意味では、アタシ達には一番相応しくないのかも、って」
言葉の意図が掴めずに困惑する俺を尻目に茉優先輩は体を寄せ、俺の肩に頭を委ねる。
首筋にかかる吐息、頬が赤みを帯びているのは、もしかしたらお酒以外の要因も……
「だってアタシと暁君はまだまだ……ううん、ずーっとアツアツでラブラブだもんね♪」
※アイリッシュ・コーヒー……カクテル言葉『暖めて』
千恋*万花
朝武芳乃『少年少女A』
少年と少女を乗せて、自転車はゆっくりと進んでいく。
山間の町と言う事もあり、穂織には坂道が多い。加えて道路もそこまで広くない上、人の往来もそれなりにあるから、自転車で移動するには若干不向きな町と言えるだろう。
だからペダルはゆっくり、歩くのとほとんど変わらない程度の速度で車輪は回る。
そうして少年と少女を乗せた自転車は、夕暮れの穂織の町中を静かに進んでいく。
「……将臣さん」
秋風に流されてしまいそうな位にか細い声を、少年は背中でしっかりと受け止める。
「その……少しだけ、寄り道をしていきませんか?」
一度口を噤んでからためらいがちに、けれどはっきりと少女が告げる。
そのたった一言に含まれる申し訳なさ、恥ずかしさ、期待と不安、ペダルを漕ぐ少年にはきっとそれぞれがどの位の割合で含まれているのか、手に取る様に分かるのだろう。
だからこそ、少年はハンドルを少しだけ傾けた後に、背中に抱き着く少女に答えた。
「……そうだね、少しだけ」
風が少女の銀髪をしなやかに靡かせる。二人の笑い声が小さく、夕暮れの空に響いた。
少年と少女を乗せて、自転車はゆっくりと進んでいく。
それは宿命を背負った巫女姫でも、宿命に立ち向かった御神刀の担い手でもない。
ごくごく普通の、何処にでもいるありふれた恋人同士の、ありふれた日常の光景。
サノバウィッチ
因幡めぐる:『赤裸々』
「すんすん……すんすん……んー……」
まるで流水の様に揺れる黒髪の先端が、オレの横顔をチクチクと刺激する。
そんな間近に戸隠先輩の顔があれば、鼓動が早くなってしまうのは男として当然の事……だけどオレの心臓を本当に焦らせているのは実の所、それとは別の要素であって。
「すんすん……んー?」
オレの髪の匂いを確かめた戸隠先輩が、今度はめぐるの横で同じ行為を繰り返す。
めぐるも努めて冷静に振る舞おうと、頑張ってみてはいる、けれど……駄目だろうなぁ。耳まで真っ赤になっちゃってるし、完全にテンパっちゃってるし。
「……♪」
そんなめぐるの態度も合わさって合点が行ったのだろう。戸隠先輩は実に楽しそうな笑みを浮かべながらオレに近寄って来て、耳元で囁く。
「一緒に入ったの?」
「……ノーコメントでお願いします」
「むふふ、隠さなくてもいいのにー♪ ……でも、次からシャンプーは別々にした方がいいんじゃないかな?」
先輩からのささやかなアドバイス、だけどそれは、めぐるの方に言ってあげて欲しい。
"センパイの匂いに包まれてるみたいで……だから、こっちの方がいいです"
そんな台詞を再びめぐるに言われたら……やっぱりオレは、断れないだろうから。
サノバウィッチ
椎葉紬:『1/2+1/2』
時計の針が進むリズムに合わせて、黙々と両手を動かしていく。
それはここ最近、毎晩寝る前の日課になっている作業。まだまだ慣れない手の進みはあんまり早いとは言えないけれど、それでも何とかここまで辿り着く事は出来た。
そうして編み上げたマフラーを、試しに自分の首に巻いてみる。市販品には程遠い出来栄えではあるけれど、柔らかな暖かさがしっかりと首元を包んでくれるのを感じる。
「これなら……柊史くんに丁度いい位の長さ……かな?」
去年プレゼントした手袋とお揃いの柄のマフラーは、気付けばワタシの体だとちょっと持て余す位の長さにまで成長していた。
これならきっと、柊史くんの体格でちょうどピッタリ位のはず……
「……えへへっ」
マフラーの端っこを、ぎゅっと握り締めながら思い描く今年のクリスマス。
二人っきりのクリスマスデート、一緒に歩く雪の降る帰り道、隣の柊史くんの首元にそっとマフラーをかけてあげる。そして、そのまま――
「ちょっと大胆かもだけど……柊史くんならきっと、喜んでくれるよね……?」
そうして暫く幸せに浸ってから、ワタシは再びその両手を動かし始める。
まだまだ先は長い、クリスマスに間に合わせるには、余裕たっぷりとは言えないから。
「だって、まだ――」
完成まではあと半分、今やっと折り返し地点にたどり着いたばかりなのだから。
サノバウィッチ
仮屋和奏:『甘くて甘い毒の味』
閉じたカーテンの、ほんの少しの隙間から差し込む朝日に二人揃って目を細める。
ついさっきまで窓の外で輝いていたはずの月の優しい光とは違う、眼に突き刺さる光。刺激から逃れる為にカーテンを閉め切ると、部屋の中は再び薄暗い静寂に包まれて。
二人分の吐息だけしか聞こえない世界で、自然とお互いの唇がお互いを引き寄せ合う。
「んっ……ちゅ、れろっ……」
体を重ね、絶頂を迎え、余韻にまどろみながら再びキスをして、それの繰り返し。
そんな愛情表現を文字通り一晩中繰り返し続けていても、体の芯から湧き上がる熱は全く収まる気配が無い。相思相愛と言う言葉では済まされない程に、お互いがお互いにどっぷりと沈んでいる気がして、流石に危うさを覚えてしまう程だ。
「……激しくし過ぎないって言ってたのに、柊史の嘘つき」
腕の中で抱き締めている和奏から聞こえる、気だるげで不満そうな声。
でもそれが本気の抗議じゃない事は、その潤んだ目を見れば一目で分かる。
「嫌だったか?」
「……ばかっ」
分かっていても離れられない、いくら求めても求め足りない。
快楽に溺れ、堕落し切った朝を迎える事に抵抗を覚えていた頃が、もはや懐かしい。
「まだ足りない、から……キス、して欲しい……」
そうして結局、今日も朝の来ない部屋の中で二人きり、オレ達は限界まで求め合う。
DRACU-RIOT!
矢来美羽:『待ち焦がれ』
行き交う人々の波を見つめながら、両手に白い息を吹きかける。手袋越しに少しだけ感じ取れた暖かみは、だけど冬の空気が容赦無く奪い去ってしまう。
駅前は、そんな寒さを誤魔化す様に早足で歩き去る人で溢れ返っていた。私の様に立ち止まって、人波を眺めながら寒さと戦っているのは、当たり前だけど少数派。
「佑斗ったら、女の子をこんなに待たせるなんて……」
デートの待ち合わせには定番の、使い古された台詞。けれどもそんな台詞が自分の口から零れた事に、思わず頬が緩んでしまう。
同じ寮に住んで、同じ学院に通い、同じ職場で働く。
生活の殆どを一緒に過ごせる幸せに対する、とても贅沢な代償……思えば今まで、外で佑斗と待ち合わせてデートに行くなんて経験、した事が無かった。
それがどれだけの幸せなのか……身を切る寒さと一緒に、目一杯に噛み締める、でも。
「だけど……悪くない、かも」
雑踏の喧騒に身を委ねながら、人混みの中に恋人の姿を探す……すると不思議な事に、どんどん鼓動が早くなって行く、体の奥から気持ちが湧き上がって来る。デートの経験ならもう、何度も佑斗と重ねてきたはずなのに。
「あっ……」
そして、見間違うハズない笑顔を見付けた途端に体中を巡る、心臓が跳ねる位の喜び。
恋焦がれる、なんて言葉の意味が、ほんの少しだけ分かった様な気がした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
色々悩んだり考えたりもしましたが、また頑張って更新していこうと思いますので、よかった読んでやって頂けると嬉しいです。
ひとくちの方はともかく、短編はほんとにずっと書いてなくて申し訳ありませんでした。
その分も頑張って、今月中はあと2つ短編を上げる予定です。
一つは美羽のえっちなやつ、もう一つは…どうしよう、何も決めてない。