1月に書いた物が多いので、今となっては季節外れ感もあるお正月ネタとか入っていますが…読んで頂けたら嬉しいです。
喫茶ステラと死神の蝶:涼音
RIDDLE JOKER:千咲
サノバウィッチ:めぐる
天神乱漫:佐奈
サノバウィッチ(発売6周年記念):?????
喫茶ステラと死神の蝶
汐山涼音:『あっと言う間に』
あっと言う間に、気付けば正月休みも最後の夜を迎えていた。
と言ってもそれ自体は……百歩譲ってまぁいいとしよう、問題なのはその内容だ。
「何もしてねぇ……」
二人して適当な時間に起きて、二度寝して、昼間っから酒を飲んでごろごろして、気が向いた時に面倒臭くない範囲で食事を済ませて、また酒を飲んで、寝て。
見事なまでに絵に描いた様な寝正月……いやこれはもう、それ以上の怠けっぷりだ。
「……いや、何も無かったって事はないでしょ?」
そんなだらしない年末年始を振り返りながら、それでも俺達は酒を飲み交わす。
「そうでしたっけ? ……いや、でも何も思い出せないんですけど」
「キミとずっと一緒に居られたじゃん」
「……まぁ確かに、今年は年越しからずっと一緒に過ごせましたけど」
「十分十分。私はそれだけで嬉しかったし、十分特別な日だったと思うよ……っと」
そう言うや否や、唇に感じる暖かい柔らかさ。不意を突かれた俺とは対照的に、お酒と照れで顔を赤くした涼音さんが、それでも余裕たっぷりににやりと笑う。
「……今はまだ、ね♪」
そうして、グラス同士でも軽いキスを交わしてから、俺達は再び飲み明かす。
……いつしか、こんな風に二人で過ごす風景が特別じゃなくなる日が来るのだろうか。
二人で過ごす忙しい日々なら、それもあっという間だろう。ふと、そんな気がした。
RIDDLE JOKER
壬生千咲:『寝ても冷めても』
真夜中の静寂をかき分ける様に、しかし極力音は立てない様に。
目一杯に急いだお陰で早鐘の様に暴れる心臓を押さえ付けながら、ようやくたどり着いた目的地。逸る気持ちを強引に押し留めつつ、ゆっくりと窓枠に手を掛ける。
「ふぁっ……あっ……おかえりなさい、先輩♪」
普段のパジャマの上にカーディガンを羽織った千咲が、うたた寝から目を覚ます。手に持ったマグカップの内側はとっくに渇き切っていて、きっと待ちくたびれていたに違いない筈なのに……そんな事はおくびにも出さず、目一杯の笑顔で俺を出迎えてくれる。
「……済まなかった」
言葉より早く動いた体が、そんな千咲の体を抱き締めた。冷え切ったその小さな体に少しでも熱を伝えられる様に、少しでも埋め合わせになる事を願いながら。
「いいんですよ、先輩。……それよりもほら、息が上がってますよ?」
千咲はそう言って、テーブルの上に置いてあったもう一つのマグカップに手を伸ばす。カップ一杯にコーヒーが注がれたそれを胸の前に持ち、申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。
「といっても、もうすっかり冷めちゃってるんですけど……」
「千咲のせいじゃない、それに……このままこうしていれば、十分暖かいさ」
「……いひひっ♪」
抱き締める片腕の力を緩めず、もう片方の手でそれを受け取って、口元で傾ける。
ブラックコーヒーの苦みすら暖かく感じる。そんな幸せを腕の中に抱き締めながら。
サノバウィッチ
因幡めぐる:『こたつとみかん』
「センパーイ、まーだでーすかー?」
「はいはい、ちょっと待ってて」
冬のコタツの前では人類皆平等、この魅力に抗える者など存在しない。
まるで溶けた餅みたいに、オレの膝の上でだらけきっためぐるの姿を見ていると、しみじみとそう感じられる。
「あーむっ……」
小さな口を広げて待ち構える恋人の口元に、皮を剥いてあげたミカンを献上する。
だらだらと咀嚼した後はまたあーんと口を開いて、その度にオレは甲斐甲斐しく、その口元へミカンを運び続ける。
仮屋辺りが見たら若干引きそうな光景ではあるが……全身をべったりとオレに預けて、油断しきったその姿から感じる全幅の信頼と親愛は、正直悪い気はしない。
「指ごと食べないでくれよ?」
「ん-……それは保証しかねます、あむっ」
言ったそばからの甘噛み、少しばかりドキっとさせられた事を隠す様に、指先でめぐるの舌をくすぐって反撃する。顔を上げためぐるは、呆れ顔でオレを睨んでいるが……
「と言いつつ、めぐるも咥えたまま離さないんだな」
「ふぇんはいらって、うれひいふへに」
他の誰にも見せられない様な姿を晒し合いながら。二人だけの時間は流れていく。
天神乱漫
千歳佐奈:『灯火』
押し寄せた人々の塊が改札を通り、散り散りの粒になって暗闇へと消えていく。夜も更けてきた帰宅ラッシュの駅前では、まるで波が大きな岩にぶつかって飛沫を散らす様に、そんないつも通りの日常が繰り返されている。
その人の海の真ん中で少女はただ静かに、流れに逆らう様にじっと立ち止まっていた。
「……」
人波は、ただ改札の一点のみを見つめ立ち続ける少女を避けようとも交わろうともしない。まるですり抜ける様に、無関心に通り過ぎていくだけ。
その光景は、少女に遠い昔の記憶――行く宛もなく、一人ぼっちの世界でゆらゆらと漂い、沈んでいくだけの孤独を思い起こさせていた。
しかし少女の目には、あの時の様な涙は浮かんでいなかった。
「……あっ、兄さーん!」
何度目かの人波の中に、少女は待ち焦がれていた姿を見つけた。抱き着きたい気持ちを隠して走り寄ると、青年は何のかんのは言いつつも、苦笑いでそれを受け入れる。
「この人混みの中で、よく見つけられたな」
目を丸くして問いかける青年の声に、少女は首を横に振ってから答える。
「兄さんが、私を見つけてくれたんです」
まばゆい笑顔で答えながら、少女は青年の手を握る。大好きな温もりを確かめる為に。
溺れてしまいそうな孤独の中から自分を救い上げてくれた。あの時と同じ温もりを。
サノバウィッチ(発売6周年記念)
?????:『今までも、今も、これからも』
遠慮がちにドアを開いたその人物の視線が、おそるおそる店内の様子を伺う。
店の中は、どうやらパーティーか何かの準備の真っ最中の様だった。楽しそうに騒ぐ少年少女たちの喧騒の中、カウンターの向こうに立つ女性が人影に気付き、手招きをしていた。
「いらっしゃい」
女性の導きに従い、その人物はカウンターに腰を下ろす。テーブルの上に差し出されたコーヒーに手を付けようとして躊躇すると、女性は困った様に笑っていた。
「自分は場違いではないか、なんて顔をしているね」
心の奥底まで見透かしているかの様な、しかし包み込む様な優しい、澄んだ瞳。
女性はその視線を一度、テーブルの方へと振った。視線の先には右へ左へと忙しなく動き回る若者たち。
その一団の中、それは見事な銀髪を靡かせる少女を見て優しく微笑むと、エプロン姿の女性はこちらへ向き直ってそっと口を開く
「そんな事はない。確かにこれは彼らと、彼女達の物語だが……物語と言う物は、ただソコに存在するだけでは成り立たない物なんだ」
女性は言葉を続ける。いつの間にか用意していた椅子に座り、自らの分のコーヒーを口に運びながら。
「紡ぐ者、語り伝える者……そして何より、それを見る者がいるからこそ、物語は物語足りえる。……例えば、そのコーヒーの様に」
彼女が指差す先、ソレは湯気と共に優しい香りを立ち昇らせていた。
「誰かが飲んでくれなければ、そのコーヒーだって存在していない様な物だろう? ……しかもそれは、君にしかできない行為でもある」
カウンターに座る人物は、手元に置かれたカップを手に取って思う。
これまで、このコーヒーを飲んだ沢山の人達が居た。
今、このコーヒーを飲もうとする自分がここに居て。
そしてこれから先、このコーヒーを飲む沢山の人達へと。
そうやって、まるで大きな大きな魔法の様に繋がっていって。
物語は語られ、これからも続いていくのだろう。
生み出された物語は、そうやって皆の心に想いを残していくのだろう。
今までも、今も、そしてきっと、これからもずっと。
カップを持ち上げ、静かに口に付ける。その動きには今度は躊躇は見られない。
「そしてキミも、その一人と言う訳だ」
エプロン姿が妙に似合う女性はそれを見て、ふっと微笑んだ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
最近練習で三人称視点を書く頻度を増やしているのですが、長いお話を書くならこっちの方がいいのかな、とか思ったり。
残念ながらゆずオンさんもコミケも延期になってしまいましたが、本の方も引き続き少しずつ頑張っていきます、お見せできるまで形が整うのはもう暫く掛かりそうですが…
今プレイしているExEがそろそろ終わりそうで、後はぶらばんをやればゆず作品も全てプレイ済みになる事もあり、勉強も兼ねて他のメーカーさんの作品も触ってみようなんて考えてます。
とりあえすWHITE ALBUM2と金色ラブリッチェを買ってきましたが…他にも何かおすすめがあれば、教えていただけると嬉しいです。