生存報告みたいな頻度になってしまっていますが、よかったら読んで頂けると嬉しいです。
千恋*万花:??
サノバウィッチ:紬
DRACU-RIOT!:美羽
のーぶる☆わーくす:真琴
千恋*万花
??:『優しい嘘』
※4/1
「むぅ……そんな事を言う将臣さんは嫌いです」
顔を真っ赤にし、唇を尖らせながら少女は呟く。隣を歩く少年の謝罪の言葉はそっぽを向いて拒否するも、それでも互いに握りあった手が緩む様子はこれっぽっちも無い。
――くすっ、頑固で融通の効かないあの性格、一体誰に似たのでしょうね
やがて少年の苦労の甲斐あって少女は機嫌を直し、二人の間に暖かい笑顔が咲く。
こんな光景が、今日はあと何度も繰り返されるのだろう。
今日一日だけは、人を不幸にしない、人を笑顔にする嘘が許される日なのだから。
――ねぇ、コマ
隣に佇む白狛は言葉を返さない。けれど女性は言葉を続ける。
――私の嘘は、あの人を悲しませてしまったけれど……
その先は言葉にはしなかった。彼女にとって、全ては遠い遠い過去の事だったから。
しかしそれ以上に、その先は言葉にする必要が無かった。手を離す事無く、幸せ一杯に笑いながら歩く二人を見ていれば、その先に言葉は必要無かったから。
彼とその子らが生きて来た証である少女と、何処となく彼の面影を残す少年。
きっと、それだけで十分だったから。
――……ふふっ
春風が空へと舞い上がる、少年と少女の笑い合う声を乗せて。
季節外れの叢雲が輝く空は、それを優しく受け止めてくれた。
サノバウィッチ
椎葉紬:『乙女修行は千里の道』
それは、久しぶりに訪れた紬の部屋で起こった。
最初に断っておくと、オレは女性の、しかも彼女の部屋を物色するなんて失礼な趣味は持ち合わせちゃいない。ソレは部屋の中、ごく自然に目に入る位置に置いてあって、何の気なしに手に取ってみただけだ。これは本当に嘘じゃない。
……しかし、紬にとっては結構な想定外か、若しくはうっかりだったらしい、顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、声にならない焦りがあっちへこっちへと大騒ぎだ。
「うーむ……?」
今両手で抱えているのは、紬がいつも大事にしている、可愛らしいクマのぬいぐるみ……なのだが、何故だかソイツは今日に限って、その首にネクタイを巻いていた。
スーツ姿の社会人が身に着けるような、オシャレにしては全然飾りっ気の無い奴を。
「えと……あのね柊史くん、試しにそれ、着けてみてもらっても……いいかな?」
おかしな組み合わせの謎に頭を悩ませていた、そんな時だった。
ついさっきまで顔を赤くしていたはずの紬から届く、やけに落ち着いた声。
「えっ? それは……まぁ、別にかまわないけど」
不思議に思うが、別に断る理由は無い。ぬいぐるみからネクタイを外し、自分の首に巻こうとした所で……何故か紬の手がそれを静止する。
そのままオレの手からネクタイを取り上げた紬が、上目遣いでか細く呟いた。
「柊史くんが自分で着けちゃったら……ワタシが練習した意味、無くなっちゃうよ……」
DRACU-RIOT!
矢来美羽:『プライスレス』
※3/14
――私の恋人はどうしようもなく鈍感で、だけど妙な所は鋭くて。
「三倍返しには、少し届かないかもしれないが……」
そう言って佑斗が冷蔵庫から取り出したのは、知らないはずなのに何処か見覚えのある綺麗な箱。封を解けば彩り華やかな輝きが、洋菓子特有の甘い香りを纏って現れる。
……私達の様な存在がコレを手に入れる事がどれだけ大変か、私はよく知っている。なのに目の前の恋人の表情は平静で、そんな苦労をおくびにも出さない。
――私の恋人は普段はデリカシーに欠けるくせに、変な所で律儀で真っ直ぐで。
ゆっくりと手を伸ばして、箱の中から一つ、小さなカップを取り出す。
中身を口に入れると、まるで手のひらに触れた雪の様に溶けていってしまう。折角のプレゼントなのだから、もっとゆっくり味わいたいと言うのに……
だけど、それ以上に問題なのは……胸の中で溢れる温かい感情を抑える事に精一杯で、味を楽しむ余裕が全く無い事。
「喜んでもらえたなら、よかった」
そんな私の気持ちをつゆ知らず、佑斗はいつもと変わらない笑みを浮かべている。
――あぁ、だけどやっぱり、私の恋人は大馬鹿者だ。
だからきっと全く、少しも、これっぽっちも分かっていない。
今、私の手の中にある小さく柔らかくて甘い、一つ450円のささやかな夢。
こんな些細な事を覚えてくれていた事が、どれだけ嬉しいか……絶対、分かってない。
矢来美羽:『重ね合わせ』
視線でおやすみを交わしてから、同じベッドの上で二人一緒に瞼を閉じる。
心地良い倦怠感が全身を包み、晒した肌から漂う甘い香りが鼻をくすぐる。艷やかな長髪を撫でる指先から温もりを感じて、二人の吐息が重なる音だけが部屋の中に響く。
これ以上の幸せが、この世の何処にあるというのだろうか。
「すぅ……すぅ……」
そしてそれは、嬉しい事に美羽にとっても同じらしい。
瞼の向こう側から聞こえる安心しきった寝息が、その事を目一杯に教えてくれる。
「……」
普段の凛とした姿とも違う、二人きりの時のべったりと甘えた姿とも少し違う。
こんな時でないと聞く事のできない、無防備な声を聞いていたからだろうか。
ふと、無性にその寝顔が見たくなった。
(美羽は……もう眠った、よな?)
気配を殺して、ほんの少しだけ薄目を開ける。暗闇の中だろうと僅かな隙間であろうと、それらは俺達吸血鬼の視力の前では何の障害にもならない。
そう、何の障害にもならないのだ――それは俺にとっても、美羽にとっても。
「……くふっ」
まるで鏡写しの様に、全く同じ行動を取っていたお互いの姿を二人で笑い合う。
そうしてそのまま……お互いの唇までの距離も、二人で半分ずつ分け合った。
矢来美羽:『噂話』
息を切らし、気を抜いた瞬間もつれてしまいそうな満身創痍の足で、それでも精一杯に地面を蹴りながら、男は思い出していた。
喧騒と騒動の絶えない街、アクアエデン。騒がしくも平和な夜の裏、静かで暗い闇に隠れて蠢く自分たちの様な"悪人"の中で、最近流れているあるウワサ。
ソイツは、闇よりも暗い黒を纏い、血の様に赤い髪を靡かせて現れる。
美しくも冷たいその瞳に捉えられた悪は、決して――
「ッ!」
背筋を走った悪寒に、男は思わずその足を止める。
月の光を背に、その女は不敵な笑みを携え、赤い髪を夜風に揺らしながら立っていた。
「……そんなに怖がられるのは心外ね、私はそんな恐ろしい女じゃないわ」
頭が判断を下すよりも早く、生き残る為の本能が男の足に命令する。"逃げろ"と。
しかし、それは叶わなかった。
宙に浮かされたその体でいくらもがいても、文字通り虚しく空を切るだけなのだから。
「あら、もう逃げる必要は無いのよ?」
蛇に睨まれた蛙か、それとも猫に捕まった鼠か。
一切の抵抗の手段を奪われた男の脳裏に、再びあのウワサが思い浮かぶ。
「私の居るここが、貴方のゴールなのだから」
その瞳に捉えられた悪は、決して逃げることはできない。
のーぶる☆わーくす
三条真琴:『三条真琴ルートその5くらい』
女の子にとって、デートとは戦いである。
しかもあたしは、仮にもデザイナーとしてファッションの道を志す者。持てる知識を総動員した今日のコーディネートには、絶対に可愛いと言えるだけの自信と自負がある。
……でも、だからといって恋愛に関してもプロの卵……と言う訳では無い、んだよね。
「っ、へくちっ!」
気合いを入れて素肌を晒した太ももに、木枯らしが容赦なく突き刺さる。
可愛さを重視する余り、文字通り足元を掬われたあたしに季節は容赦してくれない。
「……大丈夫、ですか?」
「へーきへーき、オシャレに我慢は付き物だからコレくらいは、ね」
強がってはみるけれど、紳士の目は震えるあたしの体を見逃さず、放ってもおかない。
そうして背中から優しく被せられた温もりに、思わず心臓が跳ねる。
「……これじゃ、朱里君が寒いっしょ」
「いえ……少し、暑い位でしたから」
折角の可愛らしいスカートも、大胆に開いた首元も全部すっぽりと覆い隠してしまう。
そんな、あたしには不格好な大きさのコートに感じる……温もりと、男の子らしさ。
「……あたしの負け、かな」
体を覆う暖かさと、あたしの心臓の鼓動が生み出す暖かさの二つが合わさって。
さっきまで寒さに震えていたのが嘘みたいに、あたしの体がどんどん熱くなっていく。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
気付いたら美羽ばっかり書いてた…ドラクリはほんとに良い作品でした。
いやまぁ、ゆずソフトさんの作品は全部良い作品なんですが…自分の中ではRIDDLE JOKERに次ぐ位の勢いで好きです。