仕事の日は3時間、休みの日は20時間寝るみたいな生活を続けていたら本格的に体にガタが出始めました…
あとお布団敷かずに床で寝るのはほんとに体に良くないので、これを読んだ方はしないように気をつけて下さいませ。
喫茶ステラと死神の蝶:涼音、希
RIDDLE JOKER:千咲
サノバウィッチ:美穂、???
天色*アイルノーツ:夕音
喫茶ステラと死神の蝶
汐山涼音:『スケスケでミエミエ』
傘を取りにステラへ戻るにはやや遠く、かと言って無視してマンションまで走るにはちょっと無理がある。仕事上がりの涼音さんと二人、逃げ込んだ屋根の下で自身の間の悪さを呪ってみても、自分勝手な雨は夜中のアスファルトを叩いて騒ぎ散らすばかり。
不幸中の幸いなのは……どうやらこれは通り雨らしく、そう長くは続かないということ。
「まぁ明日は休みですし、止むのを待ってゆっくり帰りましょう、か……」
言いながら隣に立つ涼音さんへと視線を向けた所で、俺の息が止まる。土砂降りの湿気と蒸し暑さが生み出した汗と、夏に向けて薄着になる衣服。二つが重なった時にだけ見ることのできるこの時期特有のイベントに、否応無しに視線を吸い込まれてしまう。
しかし問題はそれだけじゃない、うっすらと透けて見えるソレは、涼音さんが普段使っているような機能性重視のデザインではなかった。可愛らしさと大人っぽさを備えていて、女性の魅力を目一杯に強調していて……一言で言えば、エロい。
そんな俺の熱視線に気付いた涼音さんが、唇の端を吊り上げながら笑う。
「そうだねー、どうせ
服の首元をつまみ上げて、ぱたぱたと扇ぐ。勿体つけるように大げさでゆっくりなその動作は。汗ばんだ胸元に空気を送り込む行為……と言うには扇情的過ぎて。
「焦らず、ゆーっくりと帰ろっか♪」
余裕と色っぽさたっぷりの挑発的な視線は、俺の心を一気に煽り立てる。
しかしそんな俺の焦る心はお構いなしに、気まぐれな雨はまだ止みそうに無い。
墨染希:『ふたり専用プロトコル』
改札を出た俺の目の前に広がっているのは、突然の雨に足止めを喰らう人々の姿。
折りたたみ傘が乾くのを待つのも間に合わない、そんな梅雨時にはよくある光景だ。しかし、だからこそ傘を、それも2本も持って佇む女の子の姿はよく目立つ。
ましてやそれが、最愛の彼女ならなおさらだ。
「あっ、昂晴くーん!」
見慣れた笑顔を携え、希がこちらへ駆け寄ってくる。しかし俺の口から最初に飛び出たのは感謝の言葉ではなく、疑問の問いかけだった。
「……俺、傘忘れたって言ったっけ?」
「ううん、言ってないよ?」
「それに俺、この時間に帰るって連絡してたっけ?」
「それも言ってないよ? もー、そういう連絡はちゃんとしてよね? 昂晴君」
……俺の記憶が確かなら、今日は俺が希にメッセージを送った事も、その逆も無い。
なのに、さも当然のように迎えに来てくれた希の姿に、思わず苦笑いが溢れる。
希がそれを疑問に思っていない事も、俺自身がそれを疑問に思わない事にも。
「ありがとう、希」
片手で差し出された傘を受け取って、代わりに俺が持っていた物をその手に握らせる。
改札を出る前に買っておいたファンテオレンジの缶、その2つの内の1つ。
それを希は、やっぱり当然の事のように笑顔で受け取ってくれるのだった。
RIDDLE JOKER
壬生千咲:『一生モノのお買い物』
手に持ったメジャーをまるで生き物の様に操りながら、千咲が朗らかに笑う。
千咲に体を採寸してもらい、二人で俺の服を買いに行く。いつからかずっと続いている俺達二人のルールだが、体を晒すこの気恥ずかしさだけは未だに慣れることがない。
もう何年も何度も、生まれたままの姿を晒し合い、触れ合っているとは言え、だ。
「と言ってもこの歳になるともう、大きい変化は無いんじゃないか?」
「甘いですよ先輩、買った後にサイズが合わなくて、後悔してからじゃ遅いんですよ?」
ちょっと心配性な気もするが、千咲のその言葉自体は本当にその通りだ。だから。
「……ちょっとそのメジャー、貸してくれないか?」
「えっ? もしかして先輩が、わたしの服を買ってくれるんですか?」
「あー……いやまぁ、買うと言っても服……では、ないんだが」
本当は千咲に気づかれないよう、こっそり調べたかったが……こうなったら勢いだ。
「左手を出して欲しい。指をちょっと開いて」
頭の上に『?』を浮かべながら、それでも千咲は何も言わず、俺の声に従ってくれる。
そうして差し出された細く綺麗な指の一本に、優しくメジャーを一周巻き付けた。
……そこで千咲も意図に気付いたらしい。その顔がどんどん真っ赤に染まって――
「……買った後で後悔、しません、か……?」
「する訳ないだろ」
残りの一生全部を賭ける、その覚悟で測った薬指なのだから。
サノバウィッチ
越路美穂:『白夜』
手を伸ばせば何にでも届きそうな、羽根があれば何処までも飛んで行けそうな。
そんな気持ちを起こさせる程に、今日の青空は突き抜けるように広くて、綺麗で。
月並みだけど……先輩の卒業を祝う特別な一日に、これ以上なく相応しいと思う。
「ほらほら、泣かないで?」
涙を流す後輩に囲まれながら、その一人ひとりの頭を撫でて、優しくあやしてあげる。
少し離れた場所でその光景を眺めるアタシはきっと……上手く笑えていた、はず。
「ふぅ……」
気持ちの整理が着いたなんて言っても、0と100をを完璧に切り替えられる訳じゃない。ただ時間と言う名前の薬が、少しずつその痛みを鈍くしていってくれるだけ。
だからきっとこれからも、ふとしたきっかけでリフレインした思い出が、アタシのカサブタをチクチクと痛めつけるんだと思う。例えば、こんな綺麗な青空を見る度に。
その事が憂鬱で……同時にほんの少しだけ嬉しと思う自分に、今更驚く事は無い。
「……ホンット、アタシって……ハァ」
明けない夜は無い、なんて使い古されたフレーズはしょっちゅう聞くけれど。
それなら終わらない朝なんて物も存在しないのだろうか。そんな似合わない思考を巡らせながら、アタシは目一杯に手を伸ばす。この青空で一番に輝くあの星に向かって。
一直線に伸びたアタシの手はそれでも空を掻くだけで、決してあそこまで届かない。
だけど、いつまでもそうであって欲しい。何故だかふと、そんな風に思った。
???:『太陽と二人並んで』
喜びと呼ぶには違和感がある、だけど恐怖と言うのも少し違う気がする。
名状しがたい感情が渦を巻いて、私の胸の中で混ざり合う。そんな感情に名前を付けるとするならば……それはきっと"信じられない"と言う言葉になるのかな。
そう、私はまだ信じられていないんだ。こんな日が本当に来たんだって事を、このドアを開けた先に待っている未来を。
だってそれは、もうどれだけ望んでも叶うことは無いと思っていて。
それでも、心の一番奥で絶対に離すまいと握りしめていた、そんな大切な願いだから。
「……いって、きます」
ゆっくりと、噛み締めるように開いたドアの向こう側で、その子は待っていてくれた。
太陽の光の中で佇むこの子の事を、私は他の誰よりも良く知っている、だけどその子は、私が見たこと無い位にオシャレに着こなした制服姿で、私を待ってくれていた。
そう……ずっと、ずっと待っていてくれた。
「……あっ、ぁ……!」
瞬間、溢れ出した涙を止めようともしないまま、私の胸に飛び込んで来た一番の親友。
目一杯にくっついてくれるその温もりを懐かしいと思える事が、ただただ幸せで。
爆発しそうになる感情をそれでも抑え込みながら、私は言葉を紡ぐ。
「ただいま、めぐちゃん」
ここからもう一度、二人一緒に歩いていく為に。
天色*アイルノーツ
天霧夕音:『策士恋に溺れる』
夕音との部活が終わり、片付けも終わり、ついでに着替えも終わり。
後は帰路に就いて、一日の終わりを迎えるだけ……という所でピタリと、ボクの夕音の足が並んで止まってしまう。
その理由は、突然に降り出したこの雨と……それの他に、もう一つ。
「んふふ……どうかされましたか、先生?」
視線を横にズラす。隣に佇む夕音は実に楽しそうに笑いながら、ボクの方を見ていた。
その手の中には一本の傘。女の子の夕音が普段使っているものよりも大きい……と言うか、普段ボクが使っている傘が何故か握られている。
対するボクの手は、さっきから鞄の中を行ったり来たり。確かに今朝、鞄に入れておいたはずの折りたたみ傘を探して右往左往し続けるも、一向に見つかる気配は無い。
「……全く、キミって子は」
その理由を薄々察したボクは、降参の意を込めて再び視線を夕音に移す。
対する夕音は、普段通りの……いや、普段以上に爽やかな笑みでボクの抗議の視線を受け流す。その瞳は期待に輝いていて……つまりはまぁ、そういう事なのだろう。
「……傘が一本しか無いんじゃ、仕方ないね」
「はぁい、仕方ありません♪」
開き直って肩を寄せ合い、一本の傘を二人で持ちながら、二人の足跡を重ねる。
……職員室に戻れば置き傘がある事を、ボクは最後まで夕音に黙っている事にした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
そろそろゆずソフトさんの新作が発表されないかな…なんて思う反面、自分がまだステラで短編を書いてない事実に頭を抱えてしまう…