ステラのお話を書く前にとうとう次の作品が出てしまった…
パルケのお話は書くとしてももう暫くは書かない予定です、と言うよりもまだプレイできていないので書けないが正しいのですが…
喫茶ステラと死神の蝶:涼音
RIDDLE JOKER:茉優、七海
千恋*万花:芳乃
サノバウィッチ:紬
DRACU-RIOT!:梓
喫茶ステラと死神の蝶
汐山涼音:『色気と食い気とノロケ』
例えばりんご飴にヨーヨー、ベタな所でチョコバナナ辺りだろうか。祭りの夜、浴衣姿の女の子の手に似合う物の定番と言えば、まぁだいたいそんな所だろう。だが……
「ん~イケるイケる♪ ほら昂晴、んー……」
隣ではしゃぐ涼音さんにとって、その辺りのお約束はお構いなしらしい。さっきからその右手に持つのは焼き鳥、牛串、イカ焼き……可愛気云々の前に、全体的に茶色い。
当然、そんな色気もへったくれも無い状態でおねだりしてきたのもキスではない、それが分かってる俺は左手に持ったビールを、涼音さんの口元へと甲斐甲斐しく運ぶのだ。
「んぐっ……ぷはーっ! ……何? どしたのその目は」
「……涼音さんのビールで手が塞がってるから俺、何も買えないなぁ、と」
「気にしない気にしない、男の子はこういう時、女の子のワガママを聞くものっ」
「いや、涼音さんがコレ自分で持ってくれればいい話ですよね?」
気は進まないが一応、そんな質問を投げかける。すると涼音さんは上機嫌に笑って。
「あははっ、私の両手はもう予約一杯で埋まっちゃってるからねー♪」
真っ赤な顔を隠しもせず、力いっぱいに言い切ってくれるもんだから。
……この人には敵いそうもない、つくづくそう思い知らされる。
「わかりました、お供させていただきます」
「よろしい♪ そんじゃ次は――」
まぁ、今日のところは仕方がない。
なにせ自由に使える手が
「俺だってこの手、離したくはないしな」
涼音さんも俺と同じ気持ちでいてくれた事が、何より嬉しかったから。
RIDDLE JOKER
在原七海:『終身名誉お兄ちゃん』
「おやすみ、七海」
二人で一緒に眠るには少し手狭なベッドに潜り込むと、体をずらしてわたしの分のスペースを作ってくれる。不器用だけど優しかったあの頃との違いに月日の流れを感じながら、わたしは大好きな腕の中に飛び込み、その温もりを全身で堪能する。
「おやすみなさい、お兄ちゃ……あっ」
「……まぁずっとそう呼んで来たしな、俺は別に構わないが」
「暁く、っ……さ、暁さんは良くても、わたしが良くないのっ」
訂正、やっぱりこの人は鈍感だ。頭に超が付く程に鈍感だ。
「その分だと暁さん、わたしが昨日式を挙げることに拘った理由、わかってないでしょ」
……その日は世間で妹の日と呼ばれていて、わたしが妹でいられる最後の日にぴったりだと思った。だから昨日、9月6日をその日に決めた。悲しい訳ではないけど……気持ちのけじめというか、わたしなりの想いと、覚悟があったのに。
「無理に変えなくていいだろ、七海はずっと七海のままなんだから。」
そんなわたしの想いなんて知らない風に、この人はぶっきらぼうに言い切っちゃう。
……それなのに、わたしの背中に回された腕は言葉とは反対に、優しくわたしの体を抱き寄せてくれる。この人のこういうところ……本当に、ズルい。
「……うん、お兄ちゃん」
ずっと変わらない温もりと優しさに包まれながら、わたしは観念してそう答えた。
RIDDLE JOKER
式部茉優:『唇に愛の酒』
穏やかに降り続ける雨が、全身を包む気だるさを更に加速させていく。
起き抜けの体に感じるのは、昨夜の交わりの燻りと心地良い倦怠感。雨によって世界から切り離された部屋中を満たすのは、恋人の甘くて甘い匂い。
……煙草を吸う姿が絵になりそうな雰囲気だな。なんて似合わない言葉がふと頭の隅によぎる。が……いざ自分のそんな姿を想像してみると、そのなんとも言えないちぐはぐさに、今度は思わず苦笑いが溢れる。
「んっ……ぅん」
そんな似合わない事を考えていると、ようやく先輩が目を覚ましてくれたらしい。
「おはよう、茉優先輩」
もはやモーニングコーヒーと呼べるかも怪しい時間だが、俺は用意していたカップを先輩に差し出す。煙草の匂いよりも俺達にお似合いの香りが、鼻先を心地良くくすぐる。
……が、先輩はカップに手を伸ばさず、代わりに寝ぼけ眼をもう一度閉じて。
「んっ」
まるで甘える子供のような仕草で、無防備に差し出された唇。俺はカップの中身を一口含んでから、そっと唇を重ねる。コーヒーの香りと、先輩の香りが溶けて混ざり合う。
「っぷは……ふふ、ごちそうさま♪」
「……いや、それは俺のセリフだな」
そしてそのまま、二人の体の境界線も再び混ざり合っていく。
千恋*万花
朝武芳乃:『耐水性のハートを添えて』
冷蔵庫の中央に整列しているのは、いかにも高級な雰囲気を纏ったプリン達。しかし分からないのはその内の一つにだけ、フタの所に控えめに書かれた『芳乃』の文字。
その意味は、偶然通りがかった安晴さんが小さく笑いながら答えてくれた。
「以前、将臣君が間違って芳乃の分のプリンを食べてしまったことがあっただろう?」
「あぁ……あまり思い出したくはないですが」
後に知ったのだが、あれは芦花姉が試作として採算度外視で作った、渾身かつ希少な力作だったらしい。小さな不幸とカン違い、そして俺のやらかしによってそれを食べ損ねてしまった芳乃の怒りは凄まじく、暫く口をきいてくれない程だった。
「それで昨日の夜、僕が芳乃に提案したんだよ。絶対に人に渡したくない大切なものには、きちんと名前を書いておくべきじゃないかなってね」
「……成程」
少し子供っぽいかもしれないけどね、と笑う安晴さんの言葉を遠くに聞きながら。
ようやく合点がいった俺は自分の右手を開いて、手のひらをゆっくりと見つめる。
「? どうしたんだい、将臣君」
「あっ……いえ」
急いで右手を握って隠してから、俺は努めて冷静に、いつも通りの声で答えた。
「どうせなら、もう少し目立たない所に書いてくれれば良かったのにと思いまして」
それに利き手の手のひらだと、何度か手を洗ったら消えてしまいそうだし……
サノバウィッチ
椎葉紬:『最愛最強の魔法』
足を止めた人波は思い思いに夜空を見上げ、もうすぐ打ち上がる花火を今か今かと待ちわびている。色とりどりの浴衣姿がひしめく中で、オレと紬も指を絡めながら、その時を楽しみにしていた。
「それにしても海道くん……ふふ、すごくびっくりしてたね」
地元の夏祭りともなれば当然、見知った顔に遭遇する事だって一度や二度じゃない。一人寂しく彷徨っていた海道が、女の子らしい姿の紬を見てオレに随分な嘆きと僻みをぶつけて来た事を思い出し、つられてオレの顔も綻ぶ。
「でも、海道の驚きも解るよ。何ていうかまるで……魔法みたいだから」
今日のデートの為に用意してくれた淡いピンク色の浴衣は、紬の可愛らしさを丁寧に引き立たせるだけに留まらない。落ち着いた色合いと下ろして一纏めにした髪は大人びた美しさも兼ね備えていて、まだオレも知らなかった紬の新しい魅力を教えてくれる。
服や髪型が変わるとここまで印象が変わるのだから、本当に魔法みたいだ。
「えへへ……ねぇ柊史くん、ワタシはもう魔女として魔法は使えないけど……でも、女の子なら皆が使える魔法が一つだけあるって、知ってる?」
問いかける紬の声に引かれて、星を見上げていたお互いの瞳が静かに絡み合う。
「それはね……大好きな人に、もっともっと好きになってもらう魔法なんだよっ♪」
瞬間、花火が空に舞い上がる。幻想的な光が、見上げる者全てに一夏の魔法をかける。
もっともっと強い魔法を唇で伝え合っていた、ただ二人を除いて。
DRACU-RIOT!
布良梓:『誤差0.0001秒』
一つ、二つ、声をかけようとする間にもう一つ。その体には不釣り合いであろう大きさの銃を見事に使いこなし、梓はコルク製の弾でどんどん景品を撃ち抜いていく。いつの間にか出来ていた浴衣姿の人だかりはその度に感嘆の声を上げ、最初は景品を根こそぎ取られ始めて慌てた屋台のおじさんすら、今ではその輪に加わっている程だった。
「……容赦無いな」
「佑斗くんの先生として、恥ずかしい姿は見せられないからね」
そんな軽口を飛ばしながら放たれた弾は、吸い込まれるように標的の正中線を射抜き続ける。目ぼしい景品の中で残るはとうとう、中央に鎮座するクマのぬいぐるみのみ。
「あれは流石に無理じゃないか?」
「そうだねー、一発じゃ威力が足りないかも……だから、はいっ」
そう言って渡されたもう一丁の銃を受け取り、二人同時に銃口をクマの額へ。
「合図は……どうしようか?」
「いいよ、俺が梓に合わせる」
視線は標的を見据えたまま、ゆっくりと息を吐いて吸う、言葉にすればたったそれだけの所作で、所要時間は僅か一呼吸分。
それだけあれば、俺達にはもう十分過ぎる。
『……っ!』
重なった銃声から数秒遅れて広がるギャラリーの歓声が、それを証明してくれていた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
7.8月分といいつつ9月のお話が混ざってたりして申し訳ない限りですが…元気が戻ってくるまでもう少しお時間をいただけたらと。