第一話 誓い合った者の旅立つ先は
前書き編集
『魔女の弾丸 未熟な魔女の凱歌は銃声と共に鳴り渡る』の下書き
本文編集
夕焼けに染まる海岸の砂浜で……多くの人影が激しく動き……騒めいている。
多くの者は怒号を叫び……手に握る何かを振りかざし――振り下ろし――
或いは勢いよく突き出し――火花を飛び散らし……甲高い金属音や――
断末魔の叫び声を幾重にも鳴り響かせている。
仮にその行為を見る者が、現代を生きる日本人だとしたら……真っ先に
合戦と言う言葉を思い浮かべただろう。
まさに戦国時代の合戦と呼ぶにふさわしい行いが、この夕焼けに染まる
海岸の砂浜で起きているのだが……全く日本の戦国時代と同じというわけではない。
そうここは――
日本どころか、二十一世紀の地球ではないのだから……
しかしながら……人間が戦っているのは間違いないようだ。
片方の勢力は、全身を銀色の西洋風の甲冑で覆い、その片手には剣や短槍が握られ、もう一方の片手には丸い金属製の盾が握られている。
盾の表面には雪の結晶のような模様が刻まれ、うっすらと赤く光り輝いている。皆、ほぼ同じ装備をしていることから、兵士なのだろう。
兵士達の数は百五十人近い編成だ。
陸軍の歩兵一個中隊に匹敵する編成といったところだろうか。
一方、完全武装の兵士達と戦う者たちは様々な――剣や――槍などで武装した革製の服などを着た軽装な姿ながらも――手練の戦士の様な動きをしている。彼らはまるで、ファンタジーな世界の冒険者を思わせる姿をした若い男達だ。
数は百名弱ほどで、少し戦況的にこちら側が劣勢な感じだろうか。
その劣勢な側には、三十名弱の少女達の姿がある。
少女達は横に列を組んで兵士達と距離を取り、両掌を兵士達に向け必死に何かを叫び――
両掌から何かを高速で撃ち出しているようだ。
それらは火球であり、氷の塊や……電撃を帯びた――青白い光球だったりする。
少女達は色とりどりの三角帽を被り、帽子と同色のローブを羽織っているようだ。両掌から色々と撃ちだす行為もそうだが、まるでファンタジーな世界の魔法使いの様な格好である。
ローブには様々な雪の結晶のような模様が刺繍されており、少女達がファンタジー世界の魔法のような攻撃を撃つたび、その刺繍は――強い輝きを放ち出す。
火球や氷の塊、電撃を帯びた光球を撃ち出す者が圧倒的に多いが……少女によっては青色に光り輝くビーム状のエネルギー兵器を思わせる攻撃を放つ者もいるようだ。
しかし、少女達の放つ攻撃は兵士達の盾に当たると瞬時に霧に変わり、霧散してしまう。どうやらこの兵士達は、この手の攻撃を効率良く防ぐように訓練されてきたのだろう。
しかも、それだけじゃないようだ。
兵士達は笑いながら――素早い動きで盾を動かし――
少女達の攻撃を霧に変えていく。しかも少女達の前衛として――
剣や槍を振るう先程の若い男達からの――太刀筋を捌きながらの――
余裕の動きである。
必死になって放つ攻撃が霧散する度に、少女達の表情は
焦りの色を強めていく……逆に兵士達の口元は――下劣な笑を含んだ形に
歪んでいく。
恐らく少女達を生け捕りにして、如何わしい行為に及ぶのを
考えているのは確かだろう。その証拠に兵士達の股間のあたりでは、何やら膨らみがモッコリとでき、内部で硬さと熱さも高まっているようだ。
兵士達は少女達に向かう歩みも、更に強めながら――砂上を進行していく。
一方の少女達の攻撃も決して無力な訳ではない。
稀にだが、兵士の防御動作より早く――顔面に少女達の攻撃が直撃する。
直撃を受けた兵士は下劣な表情のまま――派手に燃え上がり――眼球が弾けながら感電死――氷の塊の直撃で――首をゴキリとへし折られ――青白い閃光を放ちながら頭部が炸裂して――砂浜へと崩れ落ちていく。
しかし……少女達の顔には焦りが感じられる。
それは、遠くからでも確認出来る程に、下劣な笑みと股間の膨らむ、
兵士達から陵辱を受ける事を想像して、生じたものだろうか……?
少女達の前には剣や槍などで武装した――若かく、まだ恐れを知らない男達が――
「ヒャッハー!」
などと劣勢ながらも元気に雄叫びを上げながら、次々と兵士達と
火花を散らせているのだ。いくら劣勢であっても気弱過ぎるようにも
感じられるが……どうやら少女達は時折、自分達の斜め後方の砂上を
気にしているようだ……
時折、そちらに向ける視線には何かを強く焦っている……
いや、何かを強く願っている感じが、垣間見える。
一方、少女達が視線を向ける、少し斜め後方では対照的に
兵士達が――ガクガク震えながら砂浜にうつぶせで伏せていた。
この伏せた兵士の一団は……どうも数名の人影に対してかなりの距離を取り、これでも一応包囲している最中のようであるが……兵士達の周りでは
砂浜の砂が激しく弾け――砂煙を上げている。
どうやら遠距離攻撃を受けているようだ。
包囲されている人影の背後には、夕焼けに染まる
波の穏やかな海原が広がっている……砂浜の波打ち際には……何やら
青く光り輝き……回転を続ける大きな円状の……魔法陣の様なものが
浮かんで展開されている。
包囲されている何人かは、その魔法陣の様なものへと走り――。
飛び込み消え失せていく。
残った人影の中の一人は、兵士達に向けて黒い物体を構えている。
人影の攻撃は少女達の放つ、魔法のような攻撃とは違い、武器を使うようだ。
その物体は規則正しい乾いた金属音と一緒に、何かが激しく――弾け
空気を揺さぶる大音量も周囲に連続して鳴り響かせている。
黒い物体の上部はやたら激しく前後に動き――右側面からは煙を微かにあげ――黄金色をして片端の中心側付近に少し括れのある――金属製の小さな
円柱状の筒や――黒い金属製の小さな爪上の金具等を凄まじい――速さで――大量に吐き出し続け、辺りの砂上に散乱させているようだ。
兵士達に向けられた先端部からは――小さな炎が点火と消滅を
繰り返し、その先端を向けられている方向の兵士達はガクガクと震え、
砂浜に伏せている。
どうやら兵士達は、その先端から飛んでくる何かに極度に怯え
防御を強いられているのだろう。
一方、伏せている兵士達の前衛には対照的に、やけに目立つ
大柄なひとつの人影が――青い微かな残光の軌跡を残す――
物体を振り回している。
時折、黒い物体の放つ何かは極めて――高速で、その大柄な人影に
直撃するようだが――効果が無いようだ……
兵士達を怯えさせる何かは、大柄な人影に直撃する度に――
チィン! キキキキィン!
などと、甲高い音を生じながら……動きを止めその姿を顕にする。
それは……潰れた小さな――金属の粒だった。
力を失い潰れた小さな金属の粒は――ボトボトと
砂上にこぼれ落ちていく。高速で直撃する、金属の粒をその身に受けても、平気な大柄な人影の正体、其れは――
全体が青い大剣を握り締め構え――振りかざし、腰には茶色い皮製の腰巻を巻いただけの軽装で――スタイルのいい――
青い鱗で全身を覆われた長身の女である。
人間に類似した体躯を基本的にはしているが、明らかに
人間とは違う種族のように見える。
頭部には頭髪が生えているが、その色も人間とは違いすぎる。
真っ青な青髪のショートカットで瞳は――猫を思わせるような瞳をして――
口元では、不気味な笑みを浮かべている。
これで角が生えて、武器が金棒だったら日本昔話に出てくる
青鬼といったところだ……
そんな爬虫類な姿をした――好戦的な女は笑いながら――大剣で
目の前の敵に何度も――斬りかかる。
だが、女の敵は難なくと砂の上を――水上を駆けまるで――
ジェットスキーの様な高速機動で砂を巻き上げ、踊るように避けていく。
しかし……女の敵の姿はどこからどう見ても、この異世界な場では……
明らかに彼女以上に不自然な見た目をしている。
その姿はどう見ても――
デジタルパターンの迷彩柄の戦闘服を着込み――腕や脚の関節部に――
黒い樹脂製プロテクターを装着した――地球人。
それも黒髪で東洋系の青年のようである。
顔立ちは整った感じの小顔で、無精髭が少々目立つがなかなかいい男だ。
青年は左手に刀を握り、右太腿には拳銃用ホルスターを装着し、その中には45口径の大型自動拳銃を収めている。彼は爬虫類な女が振り回す斬撃を難なくと避けているが、その表情は何かを覚悟した重い表情で視線は鋭い。
青年は斬撃を避けながら、左手で握り締めた刀の刃の向きを素早く――
真上に変え、右手で――右太腿のホルスターから大型自動拳銃を素早く
抜き――連続して引き金を絞る。
パンパンパンパンパーン!
乾いた数発の銃声が砂浜に鳴り響く。
彼の撃ちだした銃弾は……爬虫類な女の胴を撃ち抜き、風穴を……
開けている……
爬虫類の様な女は顔芸のような表情をしながら……よろけていく……
一方、彼は……爬虫類な女めがけて――砂を波のように巻き上げ――
急突進して間合いを詰め――左手の刀を銃創めがけて――突き刺す――!
「ぐぎゃぁあああああ!」
爬虫類な女の凄まじい叫び声は、周囲にこだまする……
突き刺した刀を――グリグリねじり回しながら彼は――日本語を
大声で叫ぶ。
「このっ! 脳筋がぁああしつこいんだよぉおお! さっさと逝きやがれぇええ! マギサの邪魔はさせるかぁああ!」
彼は爬虫類な女の断末魔の表情を見ても――両目や口から吹き出す――
真っ赤な血を浴びても――刀を握る握力をさらに強め――血まみれな
刀身を――捻り回しながら必死に大声で叫び続ける。
「マギサぁあああ! 日本へ行――!?」
彼は駆けつけた、爬虫類な女の仲間の兵士達の短槍で串刺しにされる。
兵士達もただ震えて、砂浜に伏せていただけでは無いようだ。
反撃の機会を伺っていたようだ……
最後に彼は――右手で握り締めた――大型自動拳銃の銃口を
瀕死の状態の――爬虫類な女の眉間に――押しつけ引き金を数回絞る。
パンパンパンパンパンパンパーン !
爬虫類な女は頭部を銃弾で粉々に破壊され、彼と共に砂浜に
崩れ落ちていく。まるで昭和の任侠映画の死闘か、相手が大剣を振り回す
爬虫類な女だと、特撮かインディーズ映画の様な光景である。
しかし、その光景はフィクショの光景などでなく……紛れもない
現実の出来事である事実を見せつけられ――
ひとりの少女は絶叫する。
「いやぁあああああああ!」
絶命した彼の後方、約数十メートル先の砂上で……涙を流し崩れ落ちる
一人の少女がいる……絶叫を上げた少女だ。
少女は思い切り泣きじゃくり、錯乱状態のまま――串刺し状態の彼へと――駆けだそうとするが――背後から誰かに羽交い締めにされて、引きずられ――手を伸ばすが――確実に彼との距離は遠ざかり、少女は絶叫を
砂浜に鳴り渡らせ続ける……
そんな少女に必死な日本語の叫びが向けられる。
「マギサぁあ! ダメだ! 彼の思いを無駄にしちゃいけないよ! うっううちきしょうぉおお!」
その声は少女の名前を――マギサの名を呼ぶ声だった。
必死な青年の声はマギサの耳元に一番鳴り響いた。
何故なら彼は――錯乱状態のマギサを羽交い締めにして――
多くの命が、あの世へと羽ばたく戦場でなんとか、彼女が無念を抱えたまま、羽ばたかないようにギリギリのところで……この世に残れるように
繋ぎとめているのだ……
彼の格好も死闘を繰り広げ、戦死した彼とお揃いである。
デジタルパターンの迷彩柄の戦闘服を着用し、少し小柄でポッチャリ気味のメガネをかけた黒髪の日本人のようだ……
しかし、何故だろうか? 彼の頭部には黒い猫耳が生えている……
その猫耳は彼の感情の起伏に合わせるかのように――ピクピク動いている。
猫耳の彼はタクティカルベストを身につけ、腹部付近には大量の散弾が装填された――黒い金属製のボックスマガジンを入れている。
しかし……傍らには大きな衝撃を受け、銃身が大きく曲げられた
散弾銃が転がっている……発砲は不可能だろう。
猫耳の彼は暴れるマギサを羽交い締めにして、波打ち際で回転を続ける
魔法陣の様なものへ向けて引きずっていくが……時折悔しそうな眼差しで――徐々に遠ざかる、自分の壊れた散弾銃を見ながらも、自分に出来ることを考え――必死に行動している。
猫耳の彼が羽交い締めにして抱えても、尚暴れるマギサは――今や
絶叫を上げながら砂を耕す耕運機状態だ。彼女が生み出す凄まじい砂煙は、偶然にも煙幕を生じさせ、敵の進撃を遅らせているようだ。
暴れん坊な煙幕いや……最早小さな砂嵐の発生源を抱え、口の中まで
砂まみれで息苦しくとも、我慢して投げ捨てずに猫耳の彼は、少し砂丘状になっている部分に近づいていく。
そこでは……ひとりの青年が軽機関銃を構え――
ダダダダダダダダダダ!
「うぉおおおおおおお! 死にたい奴は立ちやがれぇええ! 直ぐに脳筋な上司と再開させてやるからなぁあああ!」
立ち上がり、叫びラ✖ボーな制圧射撃をしている最中のようだ。
実際、立ち上がった兵士は青年の宣言通り、蜂の巣にされているようで先程、死闘の末に死んだ爬虫類な女と、青年の亡骸の周りは即効で――
無慈悲な銃弾を浴びた兵士達の骸だらけである。
ラ✖ボーな制圧射撃をする彼だが、格好までラ✖ボーなら……
リスペクトし過ぎであるが、見た目は先ほどの青年達と同様の迷彩服の
上下で、その上には同じくタクティカルベストを着込んでいるようだ。
装備に若干の違いがあるのは、彼の趣味か実用性によるところだろうか。
目元には黒いサングラスタイプのシューティンググラスを装着、首元には黒地のスカーフが下げられ、腹部の大容量ポケットには――珍しい事に
サイドアーム用のロングタイプの黒い樹脂製スペアマガジンを大量に
ギッシリ収納して――背中には大きなバックパックを背負っているようだ。
そんな現代戦用に完全武装した彼は、険しい表情を口元に浮かべながら
兵士達を見て――思い出す。
彼がかつて……この世界に来る前に……自らが銃口を向けていた敵の――
姿を脳裏に鮮明に蘇らせ彼は――脳内麻薬のバルブを全開にして――
眼を見開き――怒りと――殺意を滾らせ――真っ直ぐに伸ばした――
人差し指を動かし――引き金を絞りきる!
「てめらぁあああ! 統合軍みたいでウザいんだよぉおおおお! 死にやがれぇえ!」
ダダダダダダダダーン! ガチッ
「ちっ! 弾切れか」
何やら、恨みに満ちた叫びを口にしながら軽機関銃による制圧射撃を終え
た彼は、役目を終えた軽機関銃を砂上に投げ捨てると……そこに近づいてきた、砂嵐の発生源を抱えた……砂まみれな猫耳な存在に激を飛ばす!
「おい猫耳! マギサを連れてさっさとゲートに飛び込め! うぉおお! 急げぇえええ!」
彼は右太腿のホルスターから――自動拳銃を素早く抜き構える。
彼が手にしているその自動拳銃は、改造を施しダットサイトを装着、マガジンもロングマガジンに変更したFN5,7ピストルであった。
狙いを定めた彼は引き金を絞る。
パンパンパンパンパンパーン!
「うぉおおおおお!」
彼は叫びながら一人、サイドアームで決死の制圧射撃を開始する。
弾を撃ち尽くすと彼は即座にマグチェンジ――射撃
そのサイクルを繰り返す。
足元の砂上には、サイクルが繰り返されるたびに、空のロングマガジンが――砂上に次々と墓標のように突き刺さっていく。
その横では猫耳と呼ばれた彼が、砂嵐の発生源と化したマギサを抱えて
引きずり続ける……マギサの服装は白とピンクを基調とした、フリフリの
ミニスカート仕様の服装であるが、どことなく、民族衣裳的な雰囲気も
醸し出している服装だ。
だが……胸元が元々大きく開いていたのだろう……彼女が耕運機並みに
暴れた影響で形の綺麗な、白く透き通る……きめの細かい肌をした
胸が……乳頭まで露出し揺れまくりである。
ただし、殆ど砂煙と言う天然のモザイクに守られ覆われているが。
そんなマギサの顔立ちは、その整った目鼻立ちからも美少女と言っても差し支えがない。髪は少し天然パー気味な綺麗なブラウンのショートカットで、あるが……眉毛もブラウンであることから自毛であることが伺える。
瞳は両目とも真っ赤な真紅の瞳で、その瞳からは涙が溢れ続けている……
半裸で涙を流しながら、砂嵐を巻き上げるマギサを抱え、砂まみれな猫耳な存在は、サイドアームのFN5,7ピストルで射撃を続ける彼に声をかける。
「矢島くんも急いでなんだな!」
サイドアームで射撃を続ける彼の名前は矢島というようだ。
「お前らがゲートに飛び込まないと急げないだろうが――!? うぉおおおお!」
矢島は敵と壮絶な死闘の末に相打ちした……
仲間の亡骸を視界に捉えると悔しさを抱く……
クソッ!
あの変態司祭、最後の最後に私兵を送り込んでくるとか……。
やはり……西ドルアの帝都で潰しとくべきだったな。
矢島は敵に向けて射撃を続けながらも、引きずられるマギサを
片目で見て思う……仲間が何人も戦死して……マギサが錯乱状態じゃなきゃ、ポロリは最高だが――ハッ!
先に戦場から羽ばたいた仲間が、毎晩あれで楽しんでいたのかと
思うと思わず……チッ! と舌打ちしそうになったが、砂が口の中に
入らない様に、堪えながらもマグチェンジをしてFN5,7ピストルを構えた瞬間――自身の首元に防砂用の装備があるのを思い出し、手を伸ばそうとして――背中に背負うバックパックの中身の重さを感じるのだった。
彼は重さを生じさせている中身の存在に気づき……
首元に伸ばした手の動きをピタリと止める。
射撃を中止、両膝を砂上にめり込ます。
急いで自分の背負うバックパックを降ろし――中から灰色の四角い物体と
黒い『d』状の断面をした物体を取り出し――
カチッ――ジャコッ!
その二つを装着、右膝を砂上につき――首元に下げていた……
防砂装備の……其れはどうやら、スカーフなどでなく……
人間の口元の白骨をプリントした……バラクラバだったようだ。
バラクラバを口元に上げて、戦闘態勢を整えた矢島は……
数十発近くのグレネード弾を装填した銃を……砂塵の舞う……
砂丘上で構える……
矢島が構える銃は……半月型の大容量ドラムマガジンを装着し……
ホロサイトをマウント部に装着したブルパップ型グレネードランチャーだ。
口元を不気味な白骨に変えた……その姿は宛ら……戦場で命を
刈り取る機会を伺う……死神の様である……
そんな火力の充実した矢島に……起き上がった兵士達が頭部を盾で
ガードしながら短槍を突き出し――
「うぉおおおおお!」
雄叫びを上げ、砂塵を巻き上げながら全力疾走で向かっていく。
兵士達を視認すると矢島は、左手をハンドガードに添えて――狙いを定め
「来いよ――」
ギリッ! 少し歯ぎしりをして――
ホロサイト越しの射線上に映る……仲間の亡骸を見て怒りを高め――
「――雑魚どもがぁああ! 喰らいやがれぇえええ!」
カチッ! 引き金を躊躇なく絞る。
ボシュ!
発射されたグレネード弾はジャイロ効果を伴いながら、時速数百キロで
飛翔し――最前列の兵士の構える盾に着弾――高温のメタルジェットを浴びせ――兵士に致命傷を与える……
成型炸薬弾のメタルジェットの直撃を受けた兵士は――手と顔面を
吹き飛ばされ――崩れ落ちていく。
突進中の兵士達は何が起きたのか分からず、一瞬……動きを止めてしまう。
しかし、矢島の動きは止まらず――その間も――
引き金を絞り続けグレネード弾を撃ちまくる。
ヒュン! ドカ! ヒュドドドドドドドドドドン!
「オラオラオラオラ! ぁあああざまぁあ見やがれ! クソ兵士どもがぁああ! お代わりいっとくかぁああああああ!」
兵士達は次々とグレネード弾を撃ち込まれ――瀕死の状態で砂浜に
崩れ落ちていく。一分もしない内に兵士達の陣形は崩れ落ち、そこに――
少女達の攻撃が殺到する。
少女達の攻撃は、兵士たちの頭部を次々に吹き飛ばしていく。
様々な炸裂音や、何かが潰される音が周囲に鳴り響く……
異世界の砂浜でひとり、射撃を続ける矢島はその光景を見て――
彼女たちに心の中で感謝する……
ナイスフォローだ! 魔法使いの嬢ちゃん達よ……
マギサと猫がゲートに飛び込むのを確認した矢島は、撃ち尽くし、煙を
上げるグレネードランチャーを投げ捨てる。
彼はFN5,7ピストルを拾い上げ、握り締めると全力で駆け――
波打ち際で回転を続けている、魔法陣の様なモノに――飛び込み
消え失せる。
彼が飛び込んだ直後、回転を続ける魔法陣の様なモノは――
回転を加速させ――ひときわ強く光り輝き――天を貫く青く光り輝く
光の柱を一瞬だけ生じさせ……綺麗に消滅する……
それを見た冒険者のような一団は、歓喜の雄叫びを上げ始める。
彼らや、少女達は士気を兵士達以上に高め、仲間の旅路を見送りながら
勢いを増して、戦闘を続けるのだった。
一方、敵の兵士達は士気を著しく落とし、敗走を始めている。
戦況は完全に逆転……いや、この戦闘における目的を達成したのだろう……
冒険者の様な彼らと、魔法使いの様な少女達が勝利したようだ。
先程までは、焦りに満ちた顔をしていた少女達からも、次々と歓声が
上がりはじめる。その中の一人の少女は涙を流しながら……
光の柱の消えた、夕陽に染まる空を見つめている……
涙を流す少女は、この世界では……彼女しか
話す者がいなくなった……日本語で叫びはじめる。
「マギサ……私もこの世界で戦うから……諦めないで――!」
海から強く吹く潮風は……喜び歓喜する少女達の三角帽子と……
纏うローブを空へと飛ばしていく。潮の香りに満ちた風は……
日本語で叫んだ少女の姿も顕にして……夕陽を浴びせかける。
彼女は両手に傷だらけの真紅の金属製の手甲を装着し――
其の身には茶色い、革製の冒険者用の衣服を纏い――
ハーフアップの髪型をした――この異世界で戦い強くなることを決め――
「――天下布武を!」
少女の故郷へと旅立ったマギサ達と共に……凱歌を歌う事を誓った
ひとりの日本人で……魔法使いになった少女の姿だった。
部分別小説情報
掲載日
2014年 11月01日 22時20分
最終更新日
2014年 12月26日 21時10分
第二話 蘇る鋼の老兵
本文編集
数多くある……戦火の絶えない……
とある世界線のひとつ……西暦二千十年代後半……
日本国……都内某市街地内……雑居ビル三階……
タタタタ……ターンターン……タタタタタ……
今日も相変わらず……遠くから鳴り渡る銃声をBGMにしながら……
自分は思う……こんな事になった原因は……なんだったのだろうか?
真っ先に思い浮かぶのは……昨年米国で発生した、全米規模での
大規模な暴動に端を発し……今も続く同国の内戦だろう。
さて……暴動の原因は何だっただろうか。
人種間の対立に起因する暴力事件か?
異常なほど拡大し……数百万人の国内難民を生んだ貧富の格差か?
いや、決定的なのは――
異常に多発する銃乱射事件を口実に……リベラルな大統領が米国民から
銃火器を強引に取り上げようと……同国の憲法を改正した事だろう。
原因が何れにせよ……米国での動乱は、世界中に致命的な影響を与え……
当然ながら、自分の住む日本も影響を受け無い訳がないのだが――
「ブラボーぉおおお! 残弾は!?」
ハッ!
冷たいコンクリートの壁に背を預けていた自分は隣のバディ、所謂
相棒からの焦りを含む呼びかけで……空腹と疲労で……
何処かに飛びかけていた意識を寸でのところで取り戻す……
チラッ……二本か。
腹部のマガズィンポーチの中身を確認すると……
弾層を一本……指でつまんでバディに手渡しする。
ガチャ……ジャキーン
5,56ミリ弾が入った30連マガズィンをバディが……折りたたみストック仕様の89式自動小銃に装着……スライドレバーを引き、初弾を薬室に送り込む。
荒れ果てた室内には……バディと一緒に、C4爆薬で壁をぶち抜き作った
銃眼と呼ばれる穴……ガンポートが二つあるが……室内が荒れているのは
決して我々が爆薬の量を間違えた訳では無い……多分、元から荒れていたのだろう……だってここは、戦場なのだから。
89式自動小銃にフル装弾したバディは、その一つに駆けていき――
タタタ! タタタ! タタタ!
銃声を奏で始める……室内に空気を激しく揺さぶる……
スリーバーストの旋律が鳴り響きだすが――
「おい……ベータ……そいつでラストだぞ!……セミオートに――」
「なにいってんだよ! ブラボー! 統合派の奴らテクニカル車両無しのゲリラだけだぜ……連中、殺るのに弾の出し惜しみは――お!」
カチッ ターン! ターン!
「ヒャッハー! お前も手伝えよ! クソッ……やけに数が多いな」
それもそうだ……連中を……統合派を殺す機会を……逃すのは惜しい。
自分も戦意と……殺意でグッと……空腹を押さえ込み、バディの隣の――
ガンポートへと走り――小銃を構えたまま片膝をつく……
腹部のポーチに残された最後のマガズィンを――
M4カービン銃に装着――チャージングハンドルを引き――
初弾を薬室に送り込む……
左手はフォアグリップをしっかり握り締め……
ストックをしっかりと右肩に肩づけ、マウント部に装着した……
ドットサイトを覗き……浮き出た赤いドットを敵に重ね……
引き金を絞る。
ターンターンターンタタタ――!
最早自分の体は……銃声を奏でるのに……躊躇いはないようだ。
自然と体が動いてしまう。
敵は頭部をダブルタップでぶち抜かれ、路上に倒れていく……
自分のドットサイトの覗きこむ視界には、数人分の敵影と自分が放つ――
タタタ! タタタ!
制圧射撃の銃弾を避ける為に敵は、AK系の小銃を構えつつ……
周囲の物陰へと散会していく姿が映る。
これで何人目だろうか……敵とはいえ生きた人間を殺すのは……
確認できた数は、本隊に報告を上げているが正直、数えたくないものだ。
しかし、『ホウレンソウ』報告、連絡、相談を自分の感傷で怠っては……
私だけでなく、共に戦う仲間まで……危険にさらしてしまい……
勝利は遠のいてしまう。
そうなれば我々や、我々の守るべき人達も敵に蹂躙されるだろう。
そんな事態だけは御免だ……まだ、そう思える。だからからこそ自分は
……正気を保ち、戦えるのかもしれない。
「おいブラボー! 統合派の連中、数が多いだけでありゃ……動きが素人だぜ! サバゲー上がりの俺らからしたら……いい的だぜぇええ!」
ガチャ ターン! ガチャ ターン! ガチャ ターン! ガチャ
「おっ! 泣いてやがるな……よちよち動くなよ……っと!」
ターン! ガチャ
「へっ! 売国奴の脳みそゾンビ共が! 舐めた真似するから――!」
ターン! ガチャ ターン! ガチャ ターン!
「脳みそ弾けさせて! 地獄行きになるんだよ! へっへっ!」
隣のバディは……銃をボルトアクションライフルの猟銃に持ち替えて……
狙撃を楽しんでいるようだ……統合派ゲリラを的にして……
統合派ゲリラ其れは――
統合軍に賛同している、主に元市民団体の成れの果てである。
いや、似非市民団体が野蛮な本性を現し社会へ牙を向けてきたのだ。
中には自らの意思で、抜け出すこともできず……銃を強制的に握らされ、戦っている連中もいるのだろうが……はっきり言って、同情の余地が無い単なる敵で的である。
隣のバディの射的の的にされるのも……自業自得といったところだろう。
さて、野蛮な似非市民こと統合派ゲリラが賛同する統合軍とは……
冷戦崩壊後に誕生した国際組織……正式名称、東アジア統合推進機構の
保有する常設の軍隊である。
同軍は日本の周りに存在する……ある特殊……よくネット上で
特定ナントカと呼ばれ一括りにされ、批判される近隣の数ヶ国が、東アジアの平和的な統合と平和維持推進を目的に創設した東アジア統合推進機構が、創設した国際軍事組織で正式名称は――
その名も……東アジア統合平和維持軍
一見名称だけを見たら、崇高な理念と理想を掲げた……
まともな国際組織のようにも見えるだろうが……その実態は日本の
近隣諸国の中でも、反日色の極めて強い国家だけが集まり組織した
連合体であり正直な所、日本にとっては冷戦後に海の向こうに出来た、迷惑極まりないだけの存在だったのだが……こいつらを日本に呼び込んだのは数年前……
この国に誕生し……昨年、消滅した極左政権だった。
巧みなメディア戦術と、一部の経済団体から強力な支持を受け、誕生した
極左政権は誕生と同時に、何もかも無視してそれこそ、治安の悪化や福祉コストの増大、日本国民との衝突など様々なデメリットや、欧州での移民政策で明らかになった、デメリットも完全に無視して――
凄まじい勢いで移民政策を進めていった。
最も移民してきたのは何故か……反日国家の国民が異常な程、多かったが……まず、手始めに同政権はアジアに近い九州北部と東京一極集中の
解消を掲げ、近畿に大規模な移民優遇特区を設置した。
しかも……現地の県や市町村を強引に解体しての設置であり、完全に
国民を無視したこの強引な行為に多くの国民は怒り……中には――
極左政権や移民優遇特区へのテロを実行する者達もいたが……
政権側はそれを口実にして、移民優遇特区への予算を増額、更に
移民優遇特区に対し、独自の警察司法権を認めるなどの改革を行い、同
特区を高度移民優遇特区へと改変した。
極左政権曰く、『アジアの成長力を集中的に取り込み、日本が
存続する為には至極当然の措置であり云々――』と……当時のマスゴ……
マスメディアは延々と垂れ流していたので、よく覚えている。
しかも、それだけでなく……独自の自衛組織の設置までも認可して
当時の防衛予算を大幅に削減してまで支援したのだ……流石に
最新鋭の兵器の配備は、自衛隊や米軍から反対されて自粛、自衛隊の
中古装備を近代化改装して、配備させるなどの配慮をしたが……
何故か米国は日本への批判と圧力を一層高めていった。
其れは何故か? 答えは簡単である……
高度移民優遇特区に創設された警察や自衛組織を日本人が構成して
運用するなら、米国も表立って批判や圧力を強力にしなかっただろう。
そう……完全に中身は、元隣国の人間が構成して運用を始めたのだが――
そのスピードは凄まじく――事前に来日していた――
明らかに軍人としか思えない連中が……大挙して現れ――銃を
手に取り――高度移民優遇特区の治安維持と自衛を開始したのだから……
しかもそいつらの運用費用は日本人の税金である……この時点で多くの
国民はヤバイと感じたのだろうが……
既に遅く……
特区内の日本人や、企業は身に覚えのない罪状で次々と
逮捕起訴され、財産を没収されていき……次第にその行為はその周辺の
県や市町村にも波及したが……従来の警察は上層部から、圧力を掛けられ
目の前でたとえ、婦女子が暴行を受け連行されても見て見ぬふりを続けた。
だが、遂に――
怒りを爆発させた、一部の警察官は命令を無視して、銃を手に取り――
また新興保守系団体も呼応するかのように武器を手に――
何度か強制排除を試みたが……その度に相手の軍隊並みの
火力に負けて、文字通り消されていったのだ……
流石に其の事態を見かねた、周辺の陸上自衛隊が超法規的に特区の
警察や自衛組織を粉砕した事もあったが、即効で指揮官は身柄を拘束され――即起訴――即裁判――即判決――判決死刑――法務大臣が即効でハンコを押し――執行や、部下に慕われていた者は、完全武装した部下の強襲救出で拘置所を命からがら逃げ出し、米軍基地に逃げ込み亡命していった者もいた……
その後、極左政権は『自衛隊の内部に著しい問題あり! 云々――』
として、文民統制強化の名目で制服組の大規模な公職追放を断行していき
更に……極左政権曰く……
『日本の安全を守るためには、日米安全保障条約以外にも枠組みを
広げ、集団安全保障の更なる充実が必須である云々――』として……
本来なら国会での審議と採決を経てからしなくてはいけない……東アジア統合推進機構への加盟申請を首相の独断で提出したのだ。
国内の世論は勿論、米国も猛反発したが……加盟国内の大国が
米国債の売却をちらつかせると、米国はダンマリ……そして日本は
加盟国の進駐軍と統合軍を特区に受け入れ……同時に統合軍の将校団を
強引に、自衛隊の幹部にスライドさせていき多くの自衛隊員がこれに反発し――集団で――銃火器等の装備を持って脱柵、要は……
脱走していったのだ……
この際に、米軍と繋がりの強かった海上自衛隊は――艦隊ごと
米国の勧めで、米国へ大規模に亡命していった……そして入れ替わる様に
進駐軍と統合軍は艦隊を日本周辺へ派遣――なんとか駐留している米軍と睨み合いを続けて……今日に至るのである。
この戦争は一年近く日本では続いている。
最近の海外の情報は、通信衛星や海底ケーブルが破壊されたようで
途絶えたままだ……米国の内戦はどうなったのだろうか……
しかし未だに、核兵器が我々の頭上で輝かないのはまだ人類に……
理性の残りし証だろうか? 或いは……征服の野心が残りし証かもしれない。
情報化社会に慣れきった現代人からしたら、ネットやマスゴ……
マスメディアから断絶した状況に、恐怖を覚えるのは決して……
自分やネット中毒者達だけではないだろう。
最も自分や仲間達にとっての一番の恐怖は、不確定な大量破壊に
関する憶測や情報などでなく……目の前に現れ銃を持ち……肉体と
殺意を持ったリアルな敵なのだ……
自分の所属する抵抗組織は……主に極左政権によって
公職追放された元自衛隊員や、脱走した自衛隊員、そして銃火器を戦時に
備え……海中に潜む潜水艦の様にひたすら隠し持っていた過激で……極めて実践的で実戦向きな、軍事オタクなどによって構成されている。
危機管理が本格的な欧米では、後者のような者達はプレッパーと
揶揄されているらしいが……この混乱の中、どれだけのプレッパーが
生き残れているのか……戦後が自分に在れば、知りたいところだ。
脱走した自衛隊員……彼らは統合軍から自衛隊に派遣された、将校団が
自衛隊幹部にスライドした事に猛反発して、基地から銃火器を含む装備等を持ちだし、いち早く脱走した――自衛隊法違反の凶悪犯罪者である。
しかし同時に……本気で日本を守ろうとする……戦いに慣れた
猛者達の集団でもある。
凶悪犯として扱われた彼らはその後、日本中で警察や進駐軍、そして
統合軍を相手にゲリラ戦を全国で展開していた……仮に彼らが基地から
持ち出した装備が銃火器だけなら……彼らはとっくに壊滅していただろう……何も彼らの持ち出した装備は銃火器だけではないのだ……そう
高性能の通信機器等も大量に持ち出していたのだ。
正直、これが無ければ現代戦では、敵から一方的に嘘を含む
致命的情報を流され……戦局を著しく不利にした事だろう。
彼らはゲリラ戦を展開しながら、其の戦闘を撮影し動画サイトに
投稿するのは勿論……ゲリラ的に地上波を余裕で電波ジャック、これまた
電波法違反を犯しながらも、お茶の間に少々……ドギツくグロテスクな
戦場の光景を、完全無修正のモザイク無しの状態で赤文字は勿論、虹色のデカ文字もデカデカとふんだんに使い、強引に中継を割り込ませ……極左政権や統合軍の情報操作をこと如く、問答無用で叩き潰したりしていたのだ。
最も……深夜アニメの時間帯や日曜の朝八時半頃に……
それらの映像を割り込ますと……激怒の上、発狂した一部のアニヲタや、おっきいお兄ちゃん達にネット上で潰されかけたりもしたようだ。
一部ではそんな深刻な? 衝突も少々、起きたが総じて――
特にネト✖ヨやひきニートなどと……馬鹿にされていた若者などは
率先して彼らを支持していき――中には自宅警備を放り出し彼らに
合流して共に戦い始めた者達もいたのだ。
其の中でも戦いをくぐり抜け、生き延びた者は立派な戦士へと
変貌を遂げていた……
自分の相棒も立派な変貌を遂げた……ひきニート其の類ではある。
引きこもる前は、サバゲーをしていたそうで……戦場で動けるだけの
潜在能力的なものは元々充分あり、それが戦場で開花したのだろう。
今でも彼の懐には、某美少女戦士の魔改造フィギュアこと……嫁さんが
ご同伴中のようで……自分にも熱弁をふるいながら、入門用にオススメ
だとして、別の嫁さんを御神体? と称した縞パンをセットで渡してきて
布教するなど、少々痛いところもあるが……戦えるので一応問題はないように思う。
因みに自分は参戦一年弱の……元は海外での射撃とサバゲー、FPS、ミリコス好きの元軍事ヲタクサラリーマンの成れの果てである。
自分が握り構えるM4カービン銃は、米軍基地に残されていた物で有効活用
させていただいている最中だ……決して和製プレッパーの皆様の様に床下や、色んなところに平時から、隠し持っていたのではない。
在日米軍の皆様も流石に、本国が内戦状態になり……本国に続々と撤退して今は……空母艦隊と亡命した海上自衛隊の一部を指揮下に置き、日本周辺に展開しているようだ……今の日本は既に一年近く無政府状態に近いのだが……まだ、幸いな事に日本と米国の利害関係が一致しているから、米軍を日本周辺で展開しているのだろう。
そういえば……丁度、米国へ内戦前に訪米していた保守政党の幹部が
三ヶ月程前に、亡命政府の樹立を宣言したらしいが、その後どうなったのだろうか……
正直……脱冊した自衛隊員や自宅から飛び出した……ひきニート、ネト✖ヨの超法規的で無謀……いや、勇気ある活躍がなければ、とっくにこの国は占領され、今頃はチベットやウィグルの様に男は殺され、若い女は犯される……民族浄化の渦中だった事だろう。
彼らが自らの犠牲を顧みずに法を超え……
戦い続けていたからこそ……隣国や……我が国の恥である
極左政権の軍事支援を受け、正規軍並みの装備を使用する
東アジア統合平和維持軍を相手にしても……我々はそれなりの
戦火を上げているのだ。
最も琵琶湖から東側は、米軍の航空支配下にあり、統合軍は
進行できないでいるので……自分達の抵抗組織は主に、統合軍に賛同する
統合派ゲリラの機関銃積んだテクニカル車両や、ゲリラを相手にするだけだが……まだ戦えるだけ状況なだけでも、西側よりマシなのだろう。
琵琶湖を挟んでほぼ、戦線ができていると言う話らしいが……
この状況は……最低か最悪の境界線が日本にくっきりと、出来上がり
つつある事でもある。以前入ってきていた西側の情報は主に……
ネット上のSNSや動画が多かったが……酷いものだった。
正に民族浄化の最中といった光景が、延々とUPされていき……
見るに耐えないものだった……まさに最悪の状況である。
だが、まだ最低な東側でもここ一年の戦闘の過酷さは凄まじく……
発狂して自殺した者、現実から二次元へと精神的に逃げ出し
戦闘不能になった者も少なからずいた……中には民間人や仲間をリアルに
襲撃して悦に浸る下衆もいたが……我々は其の度に引き金を絞り、悲しい
銃声を奏でながら生き延びてきたのだが――
「あぎゃぁあああ――!」
なんだ? 遂にバディが発狂したのか――
「――!? ぁあぎゃああああブラボーぉおお! タンクだぁあああ逃げるぞぉおおお!」
「なっ!」
自分は、バディのキーボードを破壊し尽くしそうなノリの叫び声を
間近で聞かされ、ガンポートから離れようとした時……バディに叫び声を
発せさせた――歩兵最大の敵をドットサイト越しに確認して――
恐怖を覚える……
陸戦の王者、戦車の御登場である。
それも皮肉な事に、其れは冷戦時代に日本を守ってきた鋼鉄の老兵……
74式戦車が……敵として登場したのだ。
しかも、リアクティブアーマーと呼ばれる、爆発反応装甲付の装甲強化改造型で尚且つ、砲塔部に市街戦用のRWSリモートウェポンステーションと呼ばれる、無人操作の機関銃ユニットを搭載して、バリバリに近代化改装が施された統合軍仕様のタイプだ。
最悪だ……敵は市街戦をやる気満々のようだ。
しかし……米軍の航空支配をくぐり抜けて……空と海の通過は、ほぼ
不可能だろう……唯一、ありえる手段としては分解偽装して、山間部を
静かに抜けて、東側にわざわざ持って来るしかないのだが……第一手間が
掛かりすぎるし、現実的では無い。それ以前に我々の組織の警戒網に引っかからない訳が無いのだが――!
まずい!
自分の視界には素早く旋回するRWSの動きが映り――こちらも
猛ダッシュで後方に駆け――相棒もほぼ同時に駆け出し――自分と相棒は
脱出用に壁を大きくぶち抜き、造成したロープを垂らす準備をした――
三番目の穴へとタッチダウンする――と同時に――
ダダダダダダ――!
室内の天井付近に機銃弾が豪雨の様に着弾――
ボトボトボト――パラパラパラ――
自分達が先程までいた、ガンポート付近は斜め下から、壁ごと
撃ち抜かれ天井を抉られている……間違いない12,7ミリ弾……
敵が74式に積んだ、RWSで建造物への掃討射撃を開始したのだ。
かなりまずい状況だ。
急いでこの建物内から脱出しないと、機銃弾で肉片になるか
74式改の戦車砲で焼け焦げ気味のひき肉になるか……或いは
捕虜になり……拷問のフルコースを味わい締めは銃殺――いや……
ブリーフィングで小耳に挟んだはずだ……たしか
東アジア統合平和維持軍は――! ハッ!
ゲイが多いと……ガクガクガク
ヤバイ! このままでは、ノンケをやめて第二の人生を歩まされる
可能性が極めて高い……実際、その手の戦利品? と化した元自衛隊員や我々の様な者がいるとの噂……真偽不明の動画や画像はネット上で
拾えるどころか……今でも延々とUPされているそうだ……自分は
色んな意味で怖くて見ていないが……腐女子のオカズは、ジャンルに
よっては枯渇せず不謹慎な事に、空前絶後の供給過多状態だそうだ。
しかし、出来る事なら……命だけでなく……ノンケとしても
生き残りたいものである……戦場では贅沢かもしれないが……
心のそこから自分はそう願うが――!?
「アッー! ブラボーぉおおお! 先に降りるぞぉおおお!」
「ア……ああ! 了解」
バディは戦車への危機感からだろうか、やけに必死な声色で声を発し、
先に……やけに手馴れた手つきでロープを使い……雑居ビルの裏口付近に
降下して着地、肩膝を地面について……小銃を構えながら……安全を
確保すると片手を挙げてクルッと回して――
「ブラボー! カモン!」
降下に支障無しの合図だ……多分……ブルブルブル
部分別小説情報
掲載日
2014年 11月03日 04時28分
最終更新日
2014年 11月13日 02時53分
第三話 戦火の行方
本文編集
「ブラボー! 行くぞぉおおお!」
「了解、慎重に抜けるぞ。ベータ」
それにしても今日は……バディがよく叫ぶ。
敵……それも戦車を盾にゲリラが迫っていたら叫びたくもなるか。
そんな吠えまくるバディは――
ビルの裏口、隣にある……まだローンが三十五年……数千万円は
残っていそうな一軒家へ……事前に用意していた退路用の脚立で不法侵入、というか、
74式改戦車から逃れる為……つまり緊急避難の為に仕方なく……自分も後に続いて脚立で登り……庭へと侵入する。
バディは玄関の方へ駆けていき――ハンドサインで敵なしとサインを送ってくる。
自分はその間に……脚立を片付け……素早く――バディの方へ駆けていく。
バディは89式小銃に06式擲弾……実弾を擲弾内部のストラップで受け止め
飛翔する方式のライフルグレネードを銃口に差し込み……装着していた。
どうやら……蘇った鋼鉄の老兵の裏に潜む……統合派ゲリラを撃破できないまでも
攻撃を加え、牽制する気だ。実に頼もしいバディ――おや?
「なぁ……ブラボー」
其れは意外な光景だった。先程まで、統合派ゲリラを猟銃で撃ち殺しながら
笑っていたバディが……大粒の涙を流し……泣いていたのだ。
おそらく、彼も自分同様……色々と戦いの中で銃を撃ちながら……
悩んでいたの――
「嫁をビルに落としてきたみたいだぁああああ! 戻っても――」
ブチッ
自分の脳内で思考回路が、ブチ切れる音が聞こえた気がしたかと――
「――ダメに決まってんだろうがぁあああ! 死に――」
自分で感じた時には、既に……バディを罵倒していたのだが――
……ん? 地響きか――
ズドン!
ドゴーォオオーン!
バラバラバラバラ…………バチバチ……
其れは……正に一瞬の出来事だった。
先程まで我々のいた雑居ビルの最上部三階付近は……バディの立てた揺るぎない、
フラグを一瞬で……回収……その余波で、吹き飛んでしまったようだ。
そう……疑うまでもなく、現役に復帰した74式戦車が……主砲を発射したのだ。
発射されたのは、建造物への攻撃にも使用される成型炸薬弾だろう……
残念ながら嫁の回収は、絶望的――まずい!
バディが――!
「あぁああああああああ嫁がぁあああ! 野郎ぉおおおおぶっ殺してやるぅううう!」
「この馬鹿がぁあああああああああ其れは――!」
デスフラグだぁああああああああああ!
バキッ! ズザァァアアアア……ゴチン!
あ……
やべぇえええ! 殴っちまった――へっ?
ボシュン! ヒュー……
危なかった……錯乱状態のバディを殴って……その勢いで
06式ライフルグレネードが……発射されてしま――!?
コチン……
パァーン……ダダダダダダ……ぎゃぁぁあ……
なんだろう……少し大きい炸裂音の後に続く……これは悲鳴か――まさか!
よろけながらも……立ち上がろうとする、バディに自分は駆け寄り――
「済まない! ベータつい! 殴ってしまって! 怪我は――」
「ブラボー……この音……どう聞いても連中に……」
バディは地面に座ったまま……06式ライフルグレネードが飛んでいった
上空に向けて――右腕をグイッと掲げ――ビシッと中指を突き出し――
「へっ! してやったぜぇええ! 糞ゲリラがぁあああっ――ゲホッ!」
まるで、某ガンアクション漫画に登場する、海賊に拉致された、サラリーマンっぽく叫ぶと……バディは少しばかり……息苦しそうに口の中に溜まった血をペッと吐き出し――
「素人共が……自分達の弾を自ら喰らいながら、死にやがれ……なぁブラボー」
なんだ? 一発やらせ……殴らせろ! とでも言うのだろうか?
「サンキューな……嫁の敵に一矢報いるの……手伝ってくれてよ……あのフィギュアさぁ……俺が実家を飛び出す時に、部屋から持ってきた……唯一のフィギュアだったんだ……」
どうやら彼にとっては……この戦場で唯一、家庭を思い出せる品だったのだろう。
感情的になるのも無理がない……ん? じゃあ自分に渡してきたこの嫁さんは――
バディに聞こうとした疑問の答えは、自分が聞くまでもなく……
簡単に答えてくれた……若干目を泳がせながら……だが。
「その娘は……拾い……そう――! 助けてあげたんだよ! オタク趣味に偏見を持った連中からのぉおお! 文化財への破壊行為からなぁあああ!」
バディの歯切れが余り……よろしくないが、彼の言っていることは……ここ一年間の
世の中の流れと一応……矛盾はない。何せ文化を革命の名のもとに、破壊し尽くす
実績と、ハイスコアをお持ちで、更新中の国と、同国の劣化コピー版の国が連合を組んで……
この国に軍を派遣して…………やりたい放題の最中なのだから。
しかも日本への敵意と、フィクションをふんだんに盛り込んだカルト宗教並の洗脳を歴史教育の名のもとに……支配者の都合で国を挙げて、民衆に対して何十年も延々と、幼少時から自国民に施してきたのだから……かなり質が悪い。正直な所、牙先を向けられる日本人としては、背筋に寒気を覚えずには……いられない現実だ。
バディが先程述べた、そういう文化財への大変許しがたい……破壊行為だけでも戦時下という状況と、東アジア統合推進機構勢力圏内の教育事情を併せて考えれば……数え切れない……件数になるだろう事は、火を見るよりも明らかだろう。
一番許せないのは、何よりも連中に日本人を蹂躙され、虐殺されている現実であるが……
「まぁ……そういう事にしといてやるよ。バディ……統合派を足止めできている内にずらかるぞ」
これ以上、深く追求しない方がいいだろう。命を預けるバディ同士……相互の
信頼関係の低下は、戦場で……其の身に降りかかる……死との邂逅を高めるのだから。
「了解……ブラボー……基地に帰るか……痛」
約二時間後……夕刻
都内……都市複合型マンション郡敷地内……
元々は……富裕層が住んでいたであろう……高い塀に囲まれた
高層マンション郡……恐らく数千万円では…………部屋どころか
玄関すら買えないと思われる物件だ。
かつて、大学の敷地だった土地を中心に再開発し……
商業娯楽エリアと居住エリアを備え、新たに私鉄の高架式線路を敷設
駅も直結させ……緑や住民用の菜園スペースなどもある……
なかなか魅力的なこの物件は、この危険な状況下において……
立て篭るには最適な条件を兼ね備え宛ら…………
中世ヨーロッパの時代に存在した、城塞都市と同様の機能を発揮していた。
日本の東側を占領する勢いで、今も尚勢力を増しつつある……
統合派ゲリラに抵抗する者達を中心に、この地には……
コミュニティが築かれていた。
そんな抵抗組織の拠点に帰還した二人は……直ぐに緊急ブリーフィングに参加するよう命令を受け、ブリーフィングルームに向かっていた。
【地下街最深部 ブリーフィングルーム内】
この街は建設当初から、ある施設と機能を秘密裏に備えていた。
其れは核攻撃に耐え…………長期間避難できる核シェルターの存在である。
かつて、その秘密を知っていたのは――
今はまだ…………戦火の及んでいない、豪州や南米に避難した
富裕層の住民達と……この都市複合型マンションを運営する
不動産会社くらいであった。
だが、一年以上前に極左政権で……最初にして最後の首相が官邸で
謎の自殺を遂げてから生じた……全閣僚と与党幹部の東アジア統合推進機構への亡命未遂事件以降……この国から、逃げ出せるだけの財力を持った
富裕層は、不動産を中心に資産を処分していた。
不動産価格は史上空前の大暴落……
だが、そこに目をつけた者達がいた。
其れは海外の投資ファンドなどでなく、危機に敏感で少しばかり
お金に余裕があり……逃げ出した富裕層よりは愛国心の強い……
プレッパーな若者達だった。
彼らは亡命未遂事件後に不動産を積極的に買収していく。
そして独自に管理を開始、同時に機能の低下した……
行政の目をくぐり抜け……銃火器の大規模な密輸を開始
脱走しゲリラ化していた自衛隊員を匿い、公職追放で失業中だった
元自衛隊員を積極的に自社で雇用して備え始める。
彼らの危機を見通した動きは、見事に的中して今日に至る……
ガヤガヤ……ガヤガヤ……
ブリーフィングルーム内では、硝煙の匂いをその衣服に染みこませた
多くの者達が集まり、パイプ椅子に座り……緊急ブリーフィングを行っていたが……
ガタガタン! ガタガタガタン! ヒュン!
内容は至って簡潔である…………米国の内戦終結と亡命政府を――
ドカッ! ガチャーン!
突如として皆、勢い良く立ち上がり……中にはパイプ椅子を
壁ドンして怒声を張り上げる者達が、現れ始め――
「ふざけんなぁああ! 認めないだと! ヤンキーがぁああ!」
「思いやり予算返せやぁああ!」
「まるでハルノートみたいな要求じゃないか! 飲めるかボケェ!」
そう、三ヶ月前に米国内で樹立を宣言していた、日本の保守政党中心の
亡命政府を米国政府が認めないと声明を出したのだ……しかも同国の
内戦集結と同時に発表である。
話はどうもそれだけでなく――
「それになんだ! 日本は政府が機能停止の無政府状態だからぁああ! 日米安全保障条約は機能停止しただとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! そもそも米軍が極左のバカ閣僚満載した政府専用機をぉおお撃ち落としたのが無政府状態の原因だろうがぁああ! 亡命政府を認めないとか――」
ガチャーン!
「舐めんなごらぁああああああああ!」
「結局米国は今でも……政府専用機撃墜は否定しているが……日本人を舐めてんのかぁああ!」
「この状況で日本周辺から艦隊を引き上げるとか、あの大統領は正気か!」
「あの大統領はポピュリストだからな……チッ! 生きてやがったか……」
「統合軍が日本を占領したら……統合軍が太平洋を自由に動き回るんだぞ! そのリスクを全く考慮していないな!」
かなり……日本に不利な事を海の向こうから、言ってきたようだが――
その後も、ブリーフィングルーム内では怒声が飛び交い――
数分後……
ブラボーとベータの二人が、ブリーフィングルームへと
到達したのだが――
キィー……
「失礼します――うぉ!」
「なんだ。こりゃ……」
二人の視界には散乱したパイプ椅子と凹んだ壁が映るが――
ポン!
「おう! 鬼沢と龍澤じゃないか。偵察ご苦労と……言いたいんだが――」
自分は陸自の迷彩服を着た……上官にポンと肩を叩かれTACネームのブラボーでなく、本名の鬼沢の方で呼ばれる。バディの本名の方は、名字が龍澤であるが――下の名前はなんだったか忘れた。
「温水三曹、一体何があったんですか」
自分の上官の温水さん……彼は元陸上自衛隊の三曹で、メガネをした45歳の丸刈り、筋肉ムキムキマッチョのコ✖ンドーみたいな人であるが……声もそんな感じだ。
極左政権時代に彼は拘置所にぶち込まれていた上官の若い三尉を
部下と共に強襲救出して脱柵した、猛者である。
因みにバツイチで娘が一人いるそうだ。
「まぁ、見ての通り大荒れさ……お前ら、飯は食ったか? 特に龍澤、お前よく食うからな」
「はっはい! 歩きながらカロリーバーをかじってましたが――」
ギュルギュル~
お腹の虫を盛大に鳴らしたのは……龍澤である。
「はっはっはっ! まぁこんな荒れたところで話もなんだ、食堂に行きながら話してやるよ。お前ら――」
そう温水さんは言うと、ポケットに突っ込んでいた……
A4サイズの折りたたんだ書類を数枚、我々に渡してくる。
「その書類に目を通して歩けよ。お前らまで暴れたら適わんからな」
コツコツ……コツコツ……コツコツ
それから自分達は、地下街の業者用の道路を歩きながら
現在は食堂になっている、大手ファミレスの地下街店舗に移動する。
道中、温水さんの説明も交え大体の事情は分かった。
米国の内戦は政府側が完全勝利
非合法な武装集団への容赦ない空爆と、それらを先導していた勢力の
特定に成功した米国政府は…………黒幕だったカルト宗教の拠点、それも
米国本土内の拠点へ向けて、戦術核を数十発撃ち込み勝利したこと。
戦術核兵器を使用した理由としては、カルト宗教が生物兵器の使用と
密造した核爆弾の使用も計画していたので、被害を阻止する為だそうだ。
同時に内戦終結の声明を発表する際に…………
現在はハワイに集結しているらしい、日本の保守政党幹部と真珠湾に
避難している海上自衛隊が、共同で樹立を発表した亡命政府を
米国政府が認めない趣旨の声明を出したこと。
更に我々や温水三曹の様に…………日本国内で武器を手に取り
統合軍を相手に独自に戦闘を継続している……陸海空自衛隊の残存部隊や
元警官、民間人の武装集団に対しての速やかな全面武装解除と
今月末までに統合軍への投降を呼びかける声明を発表したようだ。
流石に最後の部分には自分と龍澤もブチギレたが……
温水三曹は何故か……至って冷静だった。
よく人の話は最後まで聞けというが……正にその通りで、この話で
重要なのは――
「――つまり、来月の始めまで持ちこたえたらOKなんですね」
「そうだ。鬼沢、お前らは――まだ脳筋じゃないから助かるぜ!
いや、これほんとマジな! 流石に数年間も戦闘している連中は――どうも怒りっぽくて説明するのも大変だったわ」
温水三曹は笑いながらそう言っているが……
よく見ると手には傷ができている。
おそらく、興奮したメンバーを押さえ込む際に負傷したのだろう。
「あの鬼沢さん……」
ん?
「どうした? 龍澤改まって」
「どういうことでしょうか……米国は今月末までに、我々に武装解除と統合軍への投降を促してきたんですよね……なのに来月の始めまで持ちこたえたら、どうして我々の……」
「よく文面読めよ……今月中は亡命政府を認められないし、我々の様な独自に戦闘を継続している自衛隊や、武装した民間人の存在も今月中は認められないって事だ……どこにも来月以降も同じ認識と書いていないし――」
自分は先程、ブリーフィングルームで温水三曹に……もはや音楽と
動画を見るだけの道具に成り下がった、スマホにぶち込ませて頂いた……
米国政府の声明発表時の映像を龍澤に見せながら――
「言ってもいない……ほら、ここな……日米安全保障条約は機能を停止しているが……消滅とは一言も言っていないだろう。この報道官は、現在は日本の現状と詳細を確認中で来月以降の事は調査結果待ちだとか、なんとか言っているが……つまり」
ポン!
温水三曹は龍澤の肩を軽く叩くと――
「統合機構相手の時間稼ぎと連中への外交メッセージだよ! 龍澤くん! わかってくれたかな?」
「はい! 大凡ですが……」
おいおい……自分のバディの龍澤はホントに理解しているのだろうか……
少々不安であるが、温水三曹の話は続き――
「まぁ……豪州や南米に避難した富裕層の連中が、政情の安定している国の政府や、米国の在外公館相手にロビー活動してきた成果が、米国の内戦集結でジワジワ出始めたみたいだからな……しかし、まさかカルト宗教相手に戦術核使うとか超以外すぎだが……」
確かに戦術核兵器の使用も、その使用された対象も意外であった。
いや、米国の核攻撃が戦術核兵器の使用で、しかも国内に今のところ収まっているのは……奇跡的だろう。
しかし……
以前から危惧されていた中近東周辺諸国の衝突は……
最近復活した、衛星通信で最悪の結末を迎えている事が判明したそうだ。
米国の内戦が激化した頃に……衛星通信がダウンしたのはこの地域で
核が使われ……意図したのかしなかったのかは……もはや不明らしいが……核ミサイルの一部が宇宙空間で炸裂して、人工衛星を大規模に
破壊したのが原因らしい。
爆心地の軌道によっては、日本もEMPと呼ばれる電磁パルスで
コンピューター機器に致命的な打撃を受けたかも知れないのだ。
そうなれば、未だにパソコンの前にかじりついている、引きニートは終了だ。
しかし、本当に終了したのは核攻撃を受けた者達だろう。
米国の場合は、使用されたのがカルト宗教の拠点なので
同情の余地は無い……ただし、それが事実ならの話だ。
さて……
中東近東諸国では、軍事目標だけでなく…………
戦略目標……都市や宗教上の聖地なども核攻撃を受けたそうだ。
流石に敵国を焼き払う程の核は、互いに撃ち込まなかったらしいが
互の政府機能を完全に破壊するのには、充分すぎる破壊力だったようである。
今はその余波で……大量に誕生した数千万人の難民や――
武装難民が欧州になだれ込んでいる最中のようだ。
陸続きであるため、日本以上に凄惨な内戦状態でEUも……
その加盟国も崩壊寸前らしい。
英国は島国なので、若干マシらしいとのことだ。
しかし、かなり意外だったのがロシアの動きである。
北海道にロシアが、いつ侵攻して来るか、以前心配で
温水三曹に聞いたが笑いながら答えてくれた。
冷戦崩壊後のロシアにそんな揚陸能力は無い、それ以前に意思がないとも言っていたのだ。実際その通りで、この動きは意外だった。
しかし、ロシア国内では一部のナントカ原理主義者が武装テロを
多数実行したが……目つきの鋭さと独特の存在感で……日本でも一部
ファンがいる同国で長年に渡り指導者をしている御仁はそれに対して
……嘔吐と痙攣、呼吸困難を伴う非除に強力なガスをふんだんに
使用して……駆逐したそうダー!
まるでゴキを駆除するかのように……
ガタガタガタ……
民間人にもそれなりの犠牲者が出たが、遺族への保証を徹底して手厚く
行い……尚且つ
遺族と涙を流しながらハグする指導者……
テロの現場へ涙を流しながら花束を備える指導者……
軍や警察へ力強く演説をする指導者……
そんな映像を国内向けに何度もバンバン放送して…………
国難に立ち向かう、指導者像を全面に押し出し支持基盤強化の
プロパガンダに使いまくっているそうだ。
テロリストや、ついでにこれ幸いと言わんばかりに国内の不穏分子を
駆逐中で…………あまり変化が無いようだが、国内の引き締めに同国の
指導者は躍起なようである。
さて…………
他にも温水三曹の話では……今までは、上層部が伏せていたみたいであるが、我々の武器弾薬、燃料、食料や医薬品の一部は、戦争中も海外に避難した愛国心の強い富裕層の一部が支援してくれていたみたいだ。
他にもこの手のゲートコミュニティ型のマンション等を戦争が始まる前に
格安で日本に残る選択をした、統合軍への抵抗組織に格安で売却したりしていたそうで……海外に避難した金持ちの中にも……影ながら戦っていた者達がいたのは意外だったが――
「どうも海外連中の足並みが……米国の内戦集結前くらいから、乱れたらしい……戦後の復興を各々がもう、考えて動いているのだろうが……全く困ったよ」
やはり、人間には欲があるのだろう。
だが、其れは我々も同じだ。
欲があるからこそ、戦って来れた側面もある。
反対に欲が無ければ、とっくに特区に巣喰う統合軍の下僕に殺されるか
捉えられて…………何かに目覚めていただろうが。
コツコツ……コツコツ……コツコツ……キィー
上官と話しながら自分達は、硝煙をその身に染みこませ……
更に染み込ませる覚悟と死を覚悟した連中が……胃袋を満たし
躯を戦場へと羽ばたかせ、駆け回れるだけの……力を漲らせる場所へと
足を踏み入た。
一方その頃……
今や完全に米海軍の指揮下で動く……海上自衛隊護衛艦隊は
第二次大戦以来の熾烈な激戦を米海軍と共に…………
東アジア統合軍艦隊を相手に日本周辺海域で繰り広げていた。
そんな戦火に包まれた日本列島周辺から遥か遠くの海域…………
【沖ノ鳥島近海】
民間の商船が日本周辺での戦火を避けて……最近では航行をする事も
以前よりかなりある……この海域の上空は、頻繁に飛行する物体の数を
更に増しつつあった。
其れは米軍が飛ばしている、無人偵察機や哨戒機もその飛行物体の
範疇には含まれるのだが……米軍以上に飛行物体を飛ばしている……
勢力がいた。
その勢力は――――
船舶のレーダーにも、船員の瞳にも映ることもなく。
この海域の上空を我が物顔で飛行する米軍のレーダーやセンサー類にも……
補足されず……飛行物体を飛行させていた。
その勢力の活動範囲はこの海域の上空や、海中は当然ながら
地球全土は言うに及ばず、遥か上空の更に……その上に広ろがる…………
広大な黒き静寂の世界……宇宙空間にすら活動範囲を広げていた。
そう――この海域には――――
明らかに地球の科学技術を超越した勢力が活動拠点を置き
活発に活動している事を……この時はまだ――――
地球上の如何なる国家も全く気付いていなかった……
「ふぅ……もう起きる時間か…………」
一人の男が感慨深さに浸りながら言葉を漏らし……眠りから目覚める。
声を漏らした男は全裸である。
男は…………モダンなデザインをした灰色のソファーの上で
横になって――床も――壁も――真っ白な空間に一人ぼっちであるが――
彼の視線の先には――――正方形に区切られた青い……
雲一つない空が広がっていた。
男が目を覚まし、空を眺め出してから…………
一時間もすると青い空には――――何本も白い直線の飛行機雲が描かれ――――その雲の伸びる先には――彼の故郷――――
日本が存在していた。
男は思う。
この場所から見上げるこの光景は、井の中の……ナントカみたいだと。
ナントカの部分を思い出せないことに少々、イラつきを覚えた男は……
感情の微かな膨張に無意識に反応して、自分の気持ちを静かに吐き出す。
「もう戻って来て、どのくらいだ…………」
その言葉に応える……もう既に男が聴き慣れた存在の声が
すかさず――周囲に鳴り渡る。
『明確には現地時間で二年半と三日目です。』
その声は男性の声のような、低い音質の人工音声のようである。
「そりゃどうも……ところで、各工作の進捗はどうなっている? 報告せよ」
『はい報告します。豪州及び南米に避難した、日本人富裕層への資金面での支援工作は複数のタックスヘイブンを経由して資金洗浄を念入りに行い、現在順調に推移、まだ機能している各国政府、及び米国の在外公館を通じたロビー活動を行うには、充分な額を供給しています。また、東アジア統合推進機構加盟国の各相場への仕込みは現在、83,7%まで完了していますが……工作報告を一旦中止します――偵察報告、紀伊半島沖で作戦行動中の米海軍空母にミサイル着弾――画像を表示します――――』
人工音声は報告内容を切り替え、偵察報告を告げる。
ソファーで横になっている……男の視界から青空は消え去り――上空の
アングルから捉えた――船体中央から黒煙を上げ――――既に傾斜を始め――乗組員が海に飛び込み――――撃沈の渦中にある――――
米海軍原子力空母の動画が……リアルタイムで映し出される。
ソファーで横になっていた男は床に足を――――
ペタリと付ける。
彼の足は現在、裸足だ。
足の裏にはひんやりとした冷たさが伝わり、彼の意識を刺激する。
「クラウゼ! 全員をブリッジに招集しろ。それと俺の朝食も用意しておけ」
彼はそう、人工音声の主、クラウゼに命じると壁に向けて歩き出す。
その間もクラウゼは残りの報告を続けていく。
そして、彼が壁に到達して白い壁の一部に手を触れる。
ペタ……
彼の掌には冷たい感触が伝わり、次の瞬間――
カッ――――!
壁の周囲は青い線状に光り輝き――――
彼を囲む様に――――長方形を瞬時に構成――
左右に開いて――――出入り口が出来る。
『――――以上で各工作の概要報告を終わります。ですが――――』
クラウゼは最後に重要な事を彼に告げる。
『――――司令官矢島、既に皆様ブリッジにて、昼食を取りながら戦況をモニター中です』
司令官の彼…………矢島は寝坊していたのだ。
この瞬間、嫌な予感が彼の脳内を横切ったが一応、時間を確認する。
「今は何時だ……」
『PM12時05分で――マスターからメッセージです。【お前の飯カップ麺な】以上です』
そう矢島は自らの故郷へと……戻ってきていたのだ――――
数分後……
【ブリッジ】
ズル……ズルズルズル……カタッ
「ご馳走様でした」
そこには、黒いスーツの上下を着て
『カップ麺味噌バターホタテ満載版』なる
高カロリーそうなカップ麺を食べ終え、手前のデスクに
空の容器を置く……矢島の姿があった。
彼は先程自身がブリッジと呼称した、場所の最上段とでも
言うべき場所にいる。
今は床に固定された、高そうなリクライニングチェアに腰を掛け
目の前の――――
モニターというよりは……映画館のスクリーンくらいのサイズの
モニターに映し出される……映像に見入っていた。
そんな彼のいる場所から下には……合計で五段くらいの段が存在する。
ザワザワ……ザワザワ……
ピッピッピッ……
ザワザワ……カタカタ……
各段には数名の若い女性がチェアに腰掛け、手前の固定端末を
手動でタッチして操作している最中のようだ。彼女達が確認した
様々な情報は、上で食事を終えた彼女達の司令官……矢島にも
若い女性の声でマイクに入力され――――
矢島のそばのスピーカーに伝達されていく。
『米海軍 アーレイバーク級駆逐艦7隻撃沈! 海上自衛隊 あたご型、こんごう型護衛艦計9隻撃沈! 米海軍空母艦載機87機の撃墜と墜落を確認! 米海軍と指揮下の護衛艦隊は戦力の45%をロストしました! 現在米海軍と海自は紀伊半島沖から撤退中です――――統亜公共放送が統合軍連合艦隊が海戦に勝利と速報を流しています! まもなく上海の東アジア統合推進機構本部で報道官が緊急会見を開始――――』
『報告! 関西地区で工作中の第四魔女小隊が統合軍の交戦区域に展開完了! 攻撃の許可を求めています!』
矢島はすかさず、デスクの脇にあるマイクを取り――――
『攻撃を許可する。隠蔽工作は――――』
プルプル……プル……ギリッ
矢島はマイクを握る握力を更に……強める。
彼の見入るモニターには、見慣れた日本の市街地が映されていく。
ただし、黒煙と燃え上がる炎が大量に追加された状態だ。
モニターに映る統合軍の装輪装甲車が市民をひき殺す。
統合軍が民家を襲撃しているところも映し出される。
泣いて懇願する市民を、笑いながら撃ち殺す兵士が映った瞬間――――
彼の中で何かがブチ切れた。
『一切不要だぁああ! 遠慮せずに統合軍を吹きとばせ! 戦場に伝説を作ってこい! 以上だ』
『了解しました! 第四魔女小隊に告ぐ! 攻撃許可が――――』
クソッ! 異世界で戦ってきた俺から見ても地獄だぞ。
ん?
コツコツコツ……
ああ……やっと彼女のお出ましか。
黒いスーツを着た若い女性が下段から登ってくる。
綺麗なリズムを鳴り響かせ最上段に登りつめる瞬間。
カッ!
立ち止まる時は音を強くうち鳴らし止まるようだ。
そんな彼女は甘い声を……矢島にかける。
「どう、目は覚めたかしら? 司令官殿」
その声の主は、矢島のよく知る人物だ。
身長は160から165くらいの女性にしては長身の方だろう。
髪は真っ黒で肌は少し、白く透き通る感じである。
出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいるパッと見
美人な……大和撫子といったところの日本人女性のようである。
だが、彼は彼女が……日本人ではない事を知っている。
何故なら彼女は――――
「ああ……目が覚めたよ。しかし、背が伸びたなマギサ」
「まだ成長期なのよ……もう寝坊しないでよね。誰も起こしにいけないでしょう」
「なんで?」
剣と魔術が幅を利かす異世界の住民で魔女なのだから……。
「どうせまた、全裸で寝ているんでしょう?」
第四話 とある魔女の交戦と痕跡を見る者は
本文編集
紀伊半島沖で米海軍と海上自衛隊の艦隊が、統合軍艦隊に敗北した事実は
即座に東アジア統合推進機構の傘下に存在する公共放送局、統亜公共放送が
速報で流し、同機構加盟国本土では空前絶後の戦勝ムードに湧いていた。
加盟国本土内では警官隊が、米国大使館をはじめとした在外公館の焼き討ちを機銃掃射で防ぐくらいの民衆の狂乱ぶりである。
当然其の知らせは同放送局に吸収された、日本の公共放送も放送する事になり
統合軍に占領された西日本の地にも即座に知れ渡っていくのであった。
多くの日本人には希望を打ち砕かれた最悪の知らせであり、同時に
占領地に住まう多くの日本人には……地獄の始まりを告げる知らせでもあった。
【関西地区 高度移民優遇特区 近隣の市街地】
ターン……ターン……タタタ……
ガシャン……
ガヤガヤ……ガヤガヤ……ガヤガヤ……
キャァァ……ぃゃ……ンセー! デー……ング!
普段なら統合軍兵士や加盟国からの進駐軍兵士が市民を無言で威圧しながらも粛々と街頭警備をしていた市街地は、今やある種のお祭り状態であった。
其処らから聞こえるのは、渋滞気味に走行する車の走行音などの街の喧騒では無い。
女性の悲鳴に銃声……ガラスの割れる音……笑い声や雄叫びが複雑に混ざり合った音が、街の喧騒になり代わり盛大に奏でられている状況だ。
その狂った音色は勝者の側に歓喜と優越感を味あわせ、敗者には絶望と恐怖を味あわせながら死を告げる旋律が……見事なまでに成立しているようである。
その光景を見て恐怖以上に怒りを感じ……。
その身を震えさせる一人の少女がいた。
だが、少女はこの国の人間ではない。
其れは少女がイスラム教徒の女性が被る、ブルカとよく似た紫の生地に銀糸で紋章の刺繍を施したローブを被っている格好をしていることや、そのローブの隙間から微かに覗かせる金髪の髪……白い肌をしてスラリと伸びた手足からも十分に伺い知れるだろう。
今現在この少女は、歩道橋の手摺に仁王立ちして震えている。
ただし、少女は高所恐怖症ではない。
そもそも高所恐怖症なら、そんなところで危ない立ち方はしないだろう。
最も肉眼ではそんな格好をして、仁王立ちする少女が、存在する事は誰にも分からない。
この少女は少々特殊な方法で直接自分を認識できないようにしている。
ただそれだけの事だ。
だが……携帯かスマホのレンズを少女の方向に向けて、カメラ越しに
見ればその姿は容易に見られるが、少女のいる方向にレンズを向ける者は皆無である。
今この場でカメラを使っているのは、近場の通りに面したガラス張りのバーガーショップに並んでいる、統合軍や進駐軍の兵士達くらいだ。
ブルパップ型の自動小銃を店の前のガードレールに立てかけ
皆、余裕のある行動である。
一応周囲からは銃声や爆音も常に鳴り響く戦場なのに死ぬ危険を冒してまでハンバーガーが食べたいのだろうか?
彼らの表情は、両目は血走り口元の息は荒くえらい興奮状態だ。
因みに彼らは、昼食を食べに来ているのではない。
何故ならこの店内で――――
周辺のオフィスや学校から拉致してきた若い婦女子をレイプする為だ。
この列はその為の順番待ちの列であり、ガラスの向こうは既に満員状態で盛大に悲しい喘ぎ声が、BGMの音楽に代わり鳴り響いている。
レジの周りや厨房では、武装した兵士達が勝手にバーガーやポテトを作り食べ、コーラをガブガブ飲んでいるが……
ゴミ箱にケツ丸出しで、血まみれな男性店員の死体を押し込んでいることから、無銭飲食なのだろう。
兵士達は自分達が捉えた女にむしゃぶりつく前は、セ✖ズリをコキながらフルボ✖キ、汁男優並みにスタンバイしつつ、仲間がむしゃぶりついている『様々な』婦女子に携帯やスマホのカメラを向けて――――写メを何枚も撮って生臭い撮影会の最中だ。中には近隣の家電量販店から略奪してきた、8K画質のビデオカメラで記念撮影して仲間達から『こっちも撮影してくれ!』……と引っ張りだこのチワワみたいな顔をした、気弱そうな眼鏡の兵士もいる。
歩道橋の手摺で仁王立ちする少女の数十メートル先で、繰り広げられるこの下賎な振る舞いは例え――――この少女が
剣と魔法が幅を利かせ、モンスターが日常的に人を殺す……。
過酷な世界の住民であるこの少女の倫理感からしても絶対に許せないし、 見過ごす事の出来ない類いの光景であった。
そう……この少女の正体はマギサと同じく異世界の住民だ。
元の世界ではマギサと同じく魔女の通り名で呼ばれる、ある種族の女に生まれた彼女にとって姿を見せなくするくらい、造作もなかったりするのだが……今この場でその力は、彼女とその貞操を守るのに十分な力を発揮しているようである。
少女の世界でも人間同士の殺し合いや勢力間での戦争は存在する。
だがそれらの戦争行為は教会によって厳格に監視され、民に対して私欲に基づき殺戮や略奪陵辱を行えば教会の騎士が救済の名のもと駆けつけ……下賎な行いを行った者を粛清し裁きを下すのだ。
故に今更ながら痛烈に少女は思う。
あんな腐った教会でも世界の役に立っていたのだろう。
しかし――――
この世界には人間以外に知的な種族が、存在しない事は一応事前に聞かされていた。
どうせ人間の地方領主達が年中やっている、紛争のように兵隊同士で殺し合うだけの戦闘に駆り出されるだけの、楽な仕事なのだろうと考えていた。
だが――――これでは話が全然違うではないか……。
正直なところ、戦場に身を置いてからのここ数年専ら、主に人間の兵士達を相手に戦ってきたこの少女にとって、この手の連中との戦いは生理的に一番苦手だ。
何故なら少女の眼前で繰り広げられるその光景は、モンスターや野盗が人間の村を襲撃しているのと大差のない、殺戮と略奪陵辱のオンパレードであるからだろう。
とても少女の価値観基準からしたら、目の前で蛮行に及ぶ連中を兵や戦士いや、それ以前に――――こいつらを人としては認められない。
まるで……魔術ギルドが千年前に生み出した野蛮な新オークか……神代の時代より水辺に住み、新オークの様に他種族の雌を苗床にするわけでもないのに、人間やエルフの婦女子を集団で襲い犯し殺す……凶暴な水性ゴブリン共みたいな連中だ。
ホント反吐が出そう……。
少女はそう何度も痛烈に感じていた。
故に少女は待っていた――――自分の属する組織の上層部が命令を下すのを。
ピピピッ
「ん……」
少女は左耳に装着したインカムから着信音が流れるのを聞いた瞬間――――
白く細い腕を素早くローブからシュッと出すと……インカムに指で触れ通信をオンにする。
カチッ
『此方鬼頭、司令官が攻撃を許可した。統合軍や進駐軍を皆殺しにしていいそうだ以上』
少女の耳には若い男の声で鬼頭を名乗る人物から通信が入ってきたようだ。
「了解しました。鬼頭達は突入して敵を誘導してください」
少女は鬼頭と名乗った男に指示を出す。
『此方鬼頭了解した、全員配置についたら開始する』
少女の頭には先程の鬼頭の言葉が鳴り響く。
皆殺しにしていいそうだ以上――――
少女には今日ほどこの物騒な言葉が……喜びを与えてくれた事はなかった。そして――――今日ほどこんなに眼前の敵を仕留めるのに体が――――心が――――正義感が――――憤怒が――――侮蔑が――――何より――――闘争心と殺意が疼く事はなかっただろう。
バサッ!
そんな衝動を溜めに溜めた少女はローブを脱ぎ捨てる。
少女が脱ぎ捨てたローブは宙を舞いながら紫色の輝く霧に変わり……
消え失せていく。
その微かな輝きを目にした者達がいた……。
なにアレ……あああ!
「あっ……んんあ――――!」
ギシギシ――――グチョグチョ……
「――――っんせー! でーは――――ぃぐぅううう!」
無理矢理近くのガラス張りなバーガーショップのテナントへ拉致され、テーブルの上やソファーに押さえつけられ兵士達にレイプされている……彼女達だ。
もう死にたい。
誰か助けて……。
相反する感情に満たされた彼女達は……自分達に何回も挿入される粗末でおそらく……世界最弱なサイズの部類の異物を何回も陰部に挿入され、傷だらけで白濁の状態である。
一番兵士達の列が長いのは……店の一番奥のテーブルの上で、兵士達に正常位でレイプされている近年、絶滅の危惧が懸念されるポニーテールの髪型をした……巨乳の女子高生だろう。
その次に所謂若く美人な順に女子大生やOLにナースといった感じだ。
生臭い列が幾つもできているようである。
床には目を開いたまま……顎が外れ、息の絶えた……着衣やストッキングが破れ……魂が抜けて間もない……白濁塗れで、痣と傷だらけの亡骸が何体か無造作に転がっている。
「チッ! もう逝きやがったぜ! この和製肉便器ギャハハ!」
ゴトッ……
ああ……隣のお姉さん死んだんだ。
大人気のポニーテールな巨乳女子高生の視界には、初めは必死に抵抗していた
強気な感じの眼鏡美人でセミロングヘアーのOLの死体が、新たに床に転がされるのが映る。
最後の方は凄まじい悲鳴と言うか……喘ぎ声を自身の派手なピンク色のパンツを脱がされ……口に押し込まれながらも、張り上げていたのを……
彼女は印象として強く覚えている。
ギシギシ! ギシギシ!
「あっあああっ!」
「うぉおお――――っんせー!」
そんな彼女は眼鏡をした、豚みたいな顔をした油ギッシュな眼鏡デブにテーブル上でブヒブヒ犯され……喘ぎ声を漏らしながら、記憶の走馬燈で頭を満たされ……思い出す。
就職した兄の部屋を掃除していたら……出てきた古い猥褻なPCゲームの
パッケージに印刷されていた豚のような化物の姿を……
あの豚みたいな……化物の名前、なんだっけ……確かお――――
ニュポッ――――ヒュン――――!
「あっ……ん」
「あぎゃぁああ――――!」
ガシャン!
油ギッシュな眼鏡デブは……ビデオの巻き戻しの様に引き剥がされ壁に激突。
グシャ――――パーン!
ズシャ……
突如として、頭部と股間の粗末で世界最弱サイズのイ✖モツを破裂させ……死に絶え床に崩れ落ちる。
シュパーン!
その直後店内には一瞬、閃光と大音量が生じ――――
ボキュン! ボキュン! ボキュン!
店内に轟音が数回鳴り響く。
轟音の正体は単発射撃の銃声だろうか。
店内で腰を振りレイプ中の兵士達と――――並んでいる兵士達の頭部は轟音が鳴り響くと次々に吹き飛ばされ弾けていく。
「うわぁああああ!」
危険を察知し、まだ生きている兵士達は店から逃げ出しダッシュ――――
ガードレールに立てかけた、自動小銃目掛けて駆けていく。
ジャキーン!
店の外では小銃のスライドレバーを引く音が、幾重にも鳴り響く。
兵士達の大半はチ✖コ丸出しで銃を構え、散開して店を包囲するが――――
キィーン!
突如として甲高い音が周囲に鳴り渡る。
ブシャー! ボトボトボト……ゴロッ……
「ぎゃぁあああ!」
「うっうわわわわわわ!」
その直後、数名の兵士が後方から攻撃を受け首がアボーン。
血しぶきを上げながら路上に転がっていく。
恐怖に駆られた兵士達は銃を構えつつ、後方を向き――――
数十メートル先の歩道橋の手摺に立ち尽くす、セクシーな人影を視認すると銃口を向け――――
カチッ
一斉に引き金を絞る。
タタタタタタ!
数が減ったとはいえ、一個小隊規模の兵士達が一斉射撃を開始。
兵士達は不意を突かれたとはいえ各々、勝利を確信。
同時に引き金を絞った刹那の瞬間……色々な思いや欲望に満ちていた。
我々は敵を仕留めたのだ。
おそらく偶に自爆テロをしてくる右翼の残党だろう。
さっさと逃げればいいものを馬鹿な日本人だ。
あの人影は女か? ……我々の肉便器になっていればいいものを。
数年前から日帝軍国主義の亡霊とでも言うべき……悪鬼の様にゲリラ化した元自衛官達相手に死闘を繰り広げ――――生き残った我々が負けるはずがない!
大多数の日本人は、平和ボケした家畜以下の民族だ。
我々の様な偉大で強大な民族が負けるはずがない!
これからも日本人の男は殺し、女は犯すそれだけの事だ。
この後も――――
店の中に置いてきた肉便器に我々の偉大な子種を注ぐ楽しみが待っている。
戦後はこの地に残り、日本人の子供を洗脳する立場の教師になろう!
気に入った女子生徒には、問答無用で中出しをするのを楽しみに生きよう。
この戦争が終われば本国と違い、この新天地で更にやりたい放題だ!
略奪した金品をどうやって本国に持ち帰ろうか。
仲間達と住民達を殺し奪い……溜まり場にしてたアパートに監禁している性奴隷の女達はどう犯してから処分しよう。
中には……
みんながやるから仕方なかったんだ!
もうやりたくない……本国に帰って酒を飲んで忘れたい。
生き残るには仕方なかった……だがもう二度としないだろう。
仲間が敵以上に怖い……早く軍を満期除隊したい。
様々な後悔に苛む兵士達もいる。
どうせ日本人相手だからどうでもいい。
もっと犯したい!
まだ金品を略奪し足りない!
日本の男は射的の的! 日本の女はブス以外俺達の肉便器だ!
更に強欲を漲らせる兵士達もいる。
この刹那の瞬間、凄まじく強力な思いと願いがこの鉄火場に渦巻き……その多くを占めようとしていた。
だが……。
再び勢いを増した甲高い音が鉄火場に鳴り響き――――
キィキィキィキィーン――――!
兵士達が胸の内に懐くそれらの思いや願いは、彼らが銃口を向けた存在が、指一本を動かし生じさせた――――紫色に光輝く無数の光線が銃弾ごと刈り取る。
ブブブブブシャ――――! ボトボトボトボトボトボト……
残念ながらこの鉄火場には、兵士達以上の戦闘能力を持った者達の願いが――――
存在していたのだ。
其の願いは――――この場にいる野蛮な――――
統合軍と進駐軍将兵の『全員を殺す』事が願いだった。
兵士達の強欲や後悔は……彼ら以上に強力な力を持ち、躊躇わず行使する者達によって強欲や後悔を生み出し認識する、脳を粉砕され……或者は首元を斬られ……頭部は熟れた果実のように溢れ落ち……首元の切断面からは血を噴き上げ……戦場に咲く真っ赤な華へと早変わりしていく。
結局のところ、この兵士達は襲撃者に一発の弾丸を撃ち込むこともできず――――それどころか正体を知ることもなく、一方的に倒されていくのだった。
古今東西、戦場で己を見失い、快楽に溺れる者達が死神の目に映り……この世からテイクアウトされていくのは、どの時代も変わらない光景のようだ。
白いガードレールは血しぶきで真っ赤に染め上げられ、路上には血だまりがいくつもできていく。
出来たばかりの血だまりには、宙を舞った金色の薬莢が次々と落ちていく。
スタッ……
舞い降りたのは金色の薬莢『だけ』では無い。
戦場に真っ赤な華を生けた……金髪の魔女も舞い降りたのだ。
舞い降りた彼女は、路面スレスレの宙を浮きながら今や、真っ赤な華として生けられた、兵士達の花畑の上を舞い、生臭いバーガーショップへ入店していく。
さてと……どうしましょうか。
バーガーショップへ入店した魔女の視界には……頭部が吹き飛ばされた
チ✖コ丸出しの兵士達の死体やらが、飛び込んでくる。
同時に魔女の鼻腔には……戦場を構成する様々な『香り』が容赦なく流れ込んでくる。
それらはスタンダードな、血の匂いに始まり……精液や膣液の混ざった生臭く野蛮で悲しい、エロスを含んだ臭気に混ざり……微かに硝煙の匂いも混じっているようだ。
この香りは――――
戦場を生き延びた者が、嗅ぐ事を宿命づけられた『勝利の香り』でもある。
最も魔女である彼女の世界で硝煙は一部の『例外』を除き存在しないが……
そんな戦場の香りを嗅ぎながら、異世界の魔女は宙を舞いながら、歩みを進めていく。
それにしても――――
魔女は店の奥へ進みながら……床に転がる彼女達を見て思う。
あらら……可愛いのに殺されちゃって……かわいそう。
この子達は……人間だから歳は15から30くらいの間かしら?
まるで……この世界の戦場は、伝え聞く神話の世界や……ネリサ救済皇の時代……。
『あの子の』お母様……ネリサが戦った時代の戦場の様子と変わらないわね。
あらっ? 鬼頭達と……生存者かしら――――
「はい……機材がないので、代用できそうな物で対処しておきました。それと『ストレージ』の人体への蓄積率は、関西地区で異常なレベルです……了解しました――――」
ピピピッ
再び魔女である彼女のインカムに通信が入る。
『エルーナ、生存者の一部を連れて撤退するぞ』
魔女は自分の名前を呼んだ、『全身黒ずくめの』フルフェイスヘルメットを被った、ライダーの様な数人の隣へ移動。
スタッ……
微かに着地音を響かせ浮遊を止め歩き出す。
魔女エルーナは『全身黒ずくめ』の数人の内の一人に近づく。
エルーナが近づいた男は……身長180くらいの長身のようだ。
彼だけ唯一、他の数人と違い両手に何も持っていない事からリーダー格なのだろう。
他の数人は片手に大型拳銃の様な武器を所持して、周囲の警戒や生存者に話しけたりしているようだ。
「鬼頭……この地域の魔力汚染は深刻なようね」
エルーナは自分が近づいた男の名前を呼び話しかける。
鬼頭はヘルメットを被ったままエルーナの方を向き、スピーカーから若い男の声を漏らす。
「そのようだ。クラウゼが警戒レベルを最大値に引き上げた。生存者の中で魔力耐性のある『個体』を早急に救出せよとの命令だ……ゲートを開くぞ」
鬼頭は腰のポーチから円柱状の筒を一本取り出す。
其れは……全体が銀色をした小さなヘアスプレー状の缶のようである。
彼はその筒の片側を引っ張り青い穴を出すとエルーナに手渡しする。
「分かったわ。さっさとこんな物騒なところともオサラバしましょう」
「ああ、頼んだぞ。エルーナ」
エルーナは再び浮き上がり店の外に出ていく。
浮遊しながら路面に丸い円を筒から放出される、青い塗料状の何かでスプレーしながら描いていく。
やはり鬼頭から渡された筒はスプレーの一種のようだ。
彼女は円に両手を向けて、その周りをくるりと一周。
周り終えた……その刹那の瞬間……円は紫色に燃えるように輝きだす。
その直後、店内からは鬼頭達が、一部の生存者を連れて出てくる。
中には放心状態の女性もいるようで、『全身黒ずくめ』の者達におんぶをされて、運ばれていくようだ。
鬼頭達が燃え盛る様な円に入ると……最後にエルーナが、円の内部に入り輝きは一段と増していき、数秒で円の内部の存在を包み込むと……内部の存在ごと消え去るのだった。
路面には……ハリウッド映画のサイボーグ戦士のタイムスリップ時のような抉れた跡も無い……エルーナが描いた青く丸い円の痕跡も一切無い……どこにでもあるアスファルトの路面が存在しているだけだった。
一方その頃――――
魔女がいる現場の北部約10km先に位置する、統合軍と進駐軍が合同で駐屯する元は、自衛隊基地だった駐屯地から、猛スピードで駆け出す車輌郡があった。
車輌は主に軍用トラック8割、残りは四輪駆動車の装甲車で占められている。
同時に全ての車両には『MP』とペイントを施され、または横断幕が貼られ――――
真っ赤なパトライトを点灯して、サイレンを唸らせ――――猛スピードで市街地へ向けて走り抜けていく。
このMPの表記はミリタリーポリス、軍人の犯罪行為を取り締まる軍警察の略称だ。
統合軍や進駐軍はかなり遅いが、自軍の統制に乗り出したようである。
そんな猛スピードな車輌郡の先頭を走る、装甲車内では二人の男女が会話をしていた……。
一人はハンドルを握り運転をする、筋肉マッチョ、スキンヘッドの中年の男だ。
顔には切り傷が目立ちヤクザの様な顔つきだが、笑いながらハンドルを握っている。
車内では、彼の大声が満ちているようだ。
「がははは! 大尉! お見事でしたぞぉおお!」
助手席に座るのは、彼と親子ぐらい歳の離れた感じのする、ショートカットの髪型をした、若い女性将校のようだ。
そんな彼女は手にタオルを持ち――――顔に付いた返り血を拭い終え、首をコキコキ鳴らし……口を開く。
「あんな屑どもは、上官や同胞以前に女の敵だからな。始末して当然だ」
「ええ! 全くその通りです大尉! 見ていて清々しい限りでしたぞぉおお!」
大尉は血まみれのタオルを足元に転がし、タクティカルブーツでグリグリ踏みつけ……口元に笑を含んだまま、口を開く。
「曹長、現在関西地区で暴走中の統合軍と我が国の軍将兵だが……遠慮はいらんぞ」
曹長も微かに笑いながら口を開く。
「本当によろしいのですか大尉、連中は馬鹿ばかりですが、一応リン将軍直属の部隊ですぞ」
大尉はクスッと、少し笑うと……胸元のポケットから一枚の紙を取り出し、ヒラヒラさせる。
「だからこそだよ。曹長……先程本国から連中を反乱分子に認定したと、通信が届いたからな。これで堂々と連中を粛清できるぞ。牢にブチ込む手間が省けて幸いだ」
その後……。
自陣営の恥である『女の敵』を破竹の勢いで駆逐して、死体袋を軍用トラックに満載した女大尉の率いる部隊は、黒煙が立ち上り……銃声と悲鳴が鳴り響く市街地の中心部へ到達するが、遠目からでも……『明らかに異様な』現場を発見すると、大尉は指示を素早く出す。
『偵察班は下車して偵察開始、歩兵小隊は偵察班を援護しながら前進せよ!』
続いて曹長も指示を出す。
『各員に告ぐ。死体には触れるな! 爆発物が仕掛けられている可能性がある。馬鹿どもを詰めた袋は、そうだな……おっ! ちょうどコインパーキングがあるから集めて燃料をかけて燃やせ! 以上だぁあ!』
曹長は飛ばしている小型の回転翼型無人機のカメラが捉えた映像を……手元のモニターで何回もチラ見する……彼の額からは冷汗が生じ幾重にも垂れていく……冷や汗を片手で拭いながら、彼は声を漏らす。
「大尉……ここは戦場ですよね」
車内には偵察班が順調に進行している状況が、無線のスピーカーから流れている。
「曹長、ここでハリウッド映画の撮影が、あるとかいった知らせは聞いていないか?」
「いえ大尉……自分は聞いていませんが」
二人の前方数十メートル先には、歩道橋がある。
更にその先数十メートル先には――――真っ赤に染まったガードレールと、その周囲の路上の血だまりに転がる、兵士達の生首や体が数十体は確認できる。
その先には、数年前に腐ったチキンをふんだんに使用して経営危機に陥った挙句、統合圏内の大企業に買収されかけた、大手ファストフードチェーン店のテナントが入っているようだ。
店の入口には『肉汁滴る! モビアック肉バーガー降臨!』のぼり旗が寂しく立てられたままである。
店内にも死体が確認できるが、全裸や着衣の乱れた女の死体に混じって……
チ✖コ丸出しで、頭部が吹き飛んでいる兵士達の死体も転がっている状態だ。
「曹長、妙じゃないか」
「やはり、殺され方ですかね大尉」
「ああ、それもそうだが――――偵察班に告ぐ! 店内に民間人の生存者を確認した。発砲はするな。保護して衛生兵の到着を待て。死体は後で後続の部隊に処理させる」
大尉は曹長に残りの指示を出すよう命じる。
曹長は手馴れた感じで指示を次々と出していく。
戦場での経験も職業軍人としての経験も豊富なようだ。
「衛生兵は民間人の応急処置が完了しだい、トラックに民間人を搭乗させ、軍の医療機関に向かいレイプ検査を行え! 何人不名誉除隊が直属の兵から出るか~リン将軍閣下に――――」
チラッ
「我々の姫様が青筋立てて報告せねばならんからなぁあ! しっかり対応しろ!」
曹長が指示を出している間、大尉はモニターを見ながら思い出していた。
昔見た、前世紀末に作られた映画で、異星人の戦士が地球上の戦場に降り立ち武器を手にした人間を延々と狩り殺す映画を……。
しかし……あの映画のように敵が容易に姿を見せないのは同じ……だが――――
「大尉……死んでいる兵士達は路上で、軽く数千発は弾いてやがりますよ。それに――――壁の文字はどういう意味でしょうか?」
指示を出し終えた曹長が、モニターに映る店内の映像を見て声を漏らす。
経験豊富な職業軍人でもこの現場の惨状は、理解しがたいのだろう。
「アルファベットと……漢字で『参上』とあるから、組織名の略称だろう」
その文字を見た時……大尉は感じていた。
今後、『こいつら』とは長い付き合いになりそうだ……と。
軽装とはいえ、武装した兵士数十人を皆殺しにして、忽然と消え去る連中……連中は恐らく無傷だろう。
何せ……。
『NEET参上』などと血文字を書いて、消え去るくらい余裕なのだから。
部分別小説情報
掲載日
2014年 11月16日 03時27分
最終更新日
2014年 11月17日 23時41分
軌跡 若き魔女の参戦とイレギュラーな【Y】
本文編集
遥か昔の神々の生きた時代、神々は自らに似せて様々な【人】を創造していた。
その時代、神々は競うように多くの世界に自ら創造した人々を送り込み、他の神々の
創造した人々と競い、戦わせ喜びに満ちていた。
しかし神々の中にはその行いを是としない、【こころ優しい神々】もいたそうだ。
そんなこころ優しい神々は自らに似せて創造した人々を自らの住まう、楽園のような
喜びと幸せに満ちた世界に住まわせ、我が子のように愛でていた。
だが、こころ優しい神々に愛でられていた人々の中にはこころ優しい神々の
言いつけを守らず、別の神々の言葉に耳を傾け多くの知識を得ていきやがて
知恵を身に付けてしまう、非常に好奇心の強い賢き者達がいた。
其の者達の中からは、次第に神々の秘技であった【魔術】を扱う者達が誕生していった。
其の者達はこころ優しい神々の怒りを買い、こころ優しい神々の住まう
楽園のような世界から追放され、この地上に降り立ち【魔族】の始祖となった。
だが、こころ優しい神々は魔族の持つ知識と知恵、魔術を非常に恐れ、彼らの
住まう地上に自らの血を分けた存在、【人間】の戦士で構成された軍団を送り込んだ。
こころ優しい神々は魔族を滅ぼす決断を下したのだ。
しかし、その戦いを知った別の神々がいた。
魔族に知識と知恵を与え、魔術を使えるようにした【賢い神々】である。
賢い神々は魔族を助けるために自らに似せた様々な人々の軍団を地上に送り込んだ。
それはエルフ、竜人などをはじめとした大規模な亜人達の軍団であった。
戦いは激化し多くの血が流れ、その血の流れの源と同じ数だけ命が失われていった。
こころ優しい神々の世界も戦火によって焼き払われ、多くの神々が死に絶えた。
こころ優しい神々の生き残りは激しく後悔した。
そして、こころ優しい神々の生き残りは争いを鎮めるために一つの決断を下す。
それは人々の魂を覆う決して、目に見えることのない【黒き炎】の数と同じ数である
【108回】だけ等しく神々が各々の人々に予め定めた寿命の期間内であれば
生き返る機会を得る事が可能になる術であった。
こころ優しい神々の最後の一人である若き女神はその術を完成させるために
その身を【黒き炎】で焼き払い、女神の身から生じた光り輝く灰で地上を覆った。
それは新たな秩序を世界に組み込む、最後のこころ優しい神々の行いだった。
それ以降、地上では魔族以外の人々も神々の秘技である魔術を使えるようになり――
以後、若き女神が完成させた術を施される機会は【救済】と呼ばれるようになった。
私が歩きながら思い出しいていた話は一般的に、常識に分類される類の情報である。
この世界の歴史それも神話と呼ばれる類の話で軽く、数千年以上前の出来事だ。
しかし、その語り伝えられてきた全てが事実であるかは定かでない。
私は幼き日に母から聞かされた神話の概要を思い出しながら、その神話の舞台になった
場所の入口へと歩いている。道は綺麗に舗装された薄い灰色をした石畳の坂道だ。
道の両脇にはギッシリと商店が立ち並び、この地の特産品は勿論ながら
生活用品や食料、巡礼者の護衛をしている傭兵向けの武器、防具などを扱う店も並んでいる。
商店の多くは買い物客で賑わい活気に溢れているようだ。
私は丘の下の宿場町から私を含む、四名の仲間達とこの坂道を歩いている。
元々この地域は日差しが強い大陸内陸部の荒地に位置している。
私と仲間もこの地の住民が日常的に外出時に纏う茶色いローブでその身を覆っている。
しかし、この地の暑さは慣れないもので仲間たちも暑そうで汗をローブに滲ませている。
道すがら何人も私達と同じ様な格好をした者たちとすれ違っていく。
地元の巡礼者や世界各地からこの地に来た巡礼者達だろう。
その中でも身分の高い女性と思しき者は黒をベースとした布地に各々の家の紋章を
金糸や銀糸で刺繍したローブをその麗しき身に纏っている。
その手の高そうなローブには大抵冷暖房術式が組み込まれているものだ。
ローブの内部は快適そのものだろう。
残念ながら私達にそのような金銭的余裕はないので我慢するしかない。
その周囲は当然ながら、数名から多い者で数十人の屈強な護衛に囲ませている。
護衛は【魔斬撃】を放つ大剣や手軽に【魔力弾】を撃ちだす短槍、同じく
魔力弾を撃ちだすのには少々慣れが必要な腕に装着した【魔手甲】などで
武装した手練の魔法戦士や、人間や亜人の戦士達だ。おそらく傭兵の類が大半だろう。
その中でも一際、悪い意味で目立つ者達もいる。
護衛に多数の人工生物の【オーク】を使っている連中だ。
オーク達は其のたくましい筋肉質の身に革製の鎧を着用し素足だ。
手には片手用の剣や斧、棍棒を握り締め武装している。
そんなオーク達は薬漬けにした性奴隷の人間やエルフの娘を鎖に繋ぎわざわざ
民衆に見せびらかす様に露出のきわどい薄着で歩かせ時折、娘達の尻を触ったり
興奮した者は胸を強引に揉みしだいたり、その汚い舌で娘を舐め回したりしている。
そのような悪趣味を持つオーク達をわざわざ雇用する物好きで、理解ある雇用主は
冷暖房術式を組み込んだ、かなり値の張る天幕で覆った御輿をオークに担がせ
其の御輿に優雅に乗りこみ、両隣にオーク同様に奴隷の女を侍らせている悪趣味な
人間やエルフの貴族連中だ。
日陰になっている路地の裏では、そんな連中に雇用されているであろう
数体のオークが性奴隷の娘達を抱え、性交に興じながら休憩中のようだ。
性奴隷の娘たちは白昼堂々、喘ぎ声を張り上げる。
オークたちはその様子に興奮し、更に動きを激しくして彼女達を更に喘がす。
娘の大半はオークに両手でしがみつき、行為を徐々に楽しみだしている。
娘たちはその身を自ら揺らし、甘い声を漏らし始めている。
しかし――
「あっ……助けて、ぅあっ! ぅあんあん! ぁあぁあん!」
性奴隷にされて間もない人間のひとりの娘が通行人に助けを求める。
だが、その望みは強引な快楽の波に跡形もなくかき消される。
今後も彼女が助けを求めようと考える度に、強引な快楽の波は
何度も跡形なく、その考えをかき消していくことだろう。
先に性奴隷にされ、考える事を既にやめた周りの娘たちと同じように。
道行く人々は例え、同種族の者であっても彼女たちを決して助けようとしない。
貴族連中のオークに手を出せば殺されるからだ。最もオーク自体はそれ程強くない。
少し腕に覚えのある者なら、剣一本あれば余裕で殺せるのだから。
しかし、数十体となると勝敗は明白だ。
数は力なりという事だ。
人間の大国やエルフの国の一部地域でオークは古くから労働力として
重宝され、それなりの必要性がこの世界に存在しているのも現実であり、また事実だ。
「……ちっ!」
私の隣を歩く彼の口元がやはりイラつきを帯び、微かに舌打ちをする。
彼や後ろを歩く仲間はこの手の蛮行に昔なら憤慨し、オークたちをその手に持つ武器で
容赦なく皆殺しにしていただろう。それどころかその雇用主の貴族も容赦なく
その手で殺していたはずだ。救済ができないくらいに念入りに死体も潰してだ。
だが今の私達には成さねばならない目的があるのだ。
それを成さない事には、すれ違った性奴隷の娘の様な境遇の者達を本当の意味で
救えないのだ。
その現実を隣の彼や、後ろを歩く仲間は理解し私の仲間になったのだ。
故に皆耐えている。助けを求める者を見捨て、見て見ぬふりする度に生じる
無力感や罪悪感に何度も耐えている。一人ならきっと耐えられないであろう重圧に
それから暫く歩いて目的地の入口に到着した。
入口前で少しばかり巡礼者の列ができているので、私達は順番を待ちながら
最後尾で少し休憩中だ。
暫くすると人影がひとつ、入口の門から近づいてくる。
「……順番のようだな」
「そのようね」
入口の門の方から来たのはひとりの兵士だった。
隣の彼は兵士の接近に気付き、忍ばすように手にしている武器を使えるように操作する。
周囲には微かに何かが擦れる音が静かに鳴り響く。
それに続いて兵士が話しかけてくる。
この時代、この地は全ての種族から畏敬の念を込めて――
「ようこそ【救済教会総本部】へ。あなたも【第八次救済権争奪戦】への参戦者ですか?」
――【救済の地】と呼ばれる場所への入り口である。
私に近づき、話しかけてきたのは白銀の鎧を身にまとった、恐らく人間かエルフの兵士だ。
兵士がその身に纏うその鎧は、【対魔力弾及び魔斬撃対策】を念入りに施された
【教会工廠】製の特殊兵装の一つで冷暖房機能の術式を組み込んでいる優れ物だ。
他の国であれば騎士団や軍の精鋭が身に纏う高価な装備に分類される。
兵士の腰には同じく【教会工廠】製で強力な魔斬撃を行える剣が携えられている。
「ええ、そうよ。本殿はどちらになるのかしら?」
「こちらになります。自分の後にお続きください」
私は兵士の後に続き再び歩き出す。
直ぐ後方に控えていた私の仲間達も私を取り囲み、護衛する体制で動き出す。
他の仲間も先程の彼と同様の武器を装備している。
ふたりは宿での打ち合わせ通り後方を警戒するのが担当だ。
最も彼や彼女の仕草を見ても、後方を警戒しているようには見えないだろう。
ごく普通に前を向いて歩いている、だけなのだから。
『こちらヤマネコなのだな。本殿周辺に敵影や不審な熱源無し、僕はこのまま待機するのだな』
私の耳に装着した異世界の通信機械に聴き慣れた仲間の声が鳴り響く。
その言語は彼らの母国語だ。ヤマネコは私達とは別行動中である。
ヤマネコと自らを呼ぶ彼、当然ながら偽名だ。彼は私達を支援する為に
救済教会総本部を見下ろせる近郊の丘の廃墟に潜みながら
私達の周囲を他の仲間達と共に警戒してくれている。
『こちらO✖、異変があれば直ぐに報告を頼む』
『了解なのだな』
一応、私も彼らの母国語は理解できるので異世界出身の仲間との連携に問題はない。
念の為、通信には彼らの母国語で通信を行うようにしている。
万が一にも異世界の通信技術に使用される通信波を傍受解析される可能性が
完全にないとは言い切れないから、そこは警戒して彼らの母国語を使用している。
因みに私の生まれ育ったこの世界では【魔力波】を使い通信を行う。
故に異世界の技術を使用した通信機器を使い念入りに敵に動きを悟られない様にしている。
――数分後――
私達は兵士に案内され本殿の入口に到着する。
私がここに来るのは十数年ぶりだ。幼き頃母に連れられ、ここに来たとき私は
泣きじゃくり、母にしがみついていたのを覚えている。
本殿の外観は私の記憶と変わりなく大理石を使用した綺麗な白だ。
だが神殿の高さは私が成長したからだろうか、思っていたより低く感じる。
これが時の流れということなのだろうと私が感じていると――
一方、私の仲間は神殿の大きさに些か驚いているようだ。
「ほぉ、間近で見るとでかいな。マーシャ」
「ですね。コマンチさん……」
どうやら後ろの男女は観光モードに入って辺りを見渡しているのに没頭している。
因みに【マーシャとコマンチ】この呼び名はこの男女の本名ではない。
彼や彼女の世界の軍事組織は戦闘時に偽名を使う風習があるようだ。
ヤマネコやマーシャ、コマンチは偽名を戦闘時に使うが私の隣を歩く彼、O✖だけは
戦闘時も本名を使う。彼曰く使い分けが慣れないから嫌だそうだ。
「ここが本殿の【女神の間】に続く入り口でございます。門を開けます」
観光モードに入っていた後ろの二人も兵士の言葉を聞き我に返り、警戒を再開する。
私達を案内してきた兵士が白い門に左手で触れる。
その直後、門は地鳴りを上げながら静かに左右に開きだし、門の下に隠れていた床が
顕になる。その床には無数に刻まれた何かを打ち込んだ跡も顕になる。
そして本殿の中に大勢の【参戦者】がいるのが徐々に視界に映り出す。
その顔ぶれも人間やエルフに竜人、その他多くの亜人で満員状態だ。
当然ながら【参戦】なので参戦者達は武器を携え、護衛を連れている。
しかし、【ある種族】に関しては恐らく【まだ】参戦していないだろう。
「どうぞお進みください。どうか優しき女神のご加護を」
私は案内してきた兵士に謝辞を示す伝統的な指を使った動作を行う。
そして本殿内部へと歩き出す。その直後、すれ違うように本殿内の入り口付近に控えていた
数名の兵士が入口に駆けていく。私も仲間もその場に立ち止まり視線で兵士達を追う。
その内の一人が空に向かい宣言する。
「これにて! 第八次救済権争奪戦の参加を締切る! 女神の懐は閉じられた!」
「閉じられた! 閉じられた! 閉じられた!」
他の兵士達が続いて三回ずつ閉じられたと叫び終えると兵士達は皆
鞘から剣を抜き、入口付近に突き刺すと待機していた場所に駆け足で戻り
全身が【黒い槍】を持ち歩哨に立つ為に再び入り口付近へと戻る。
どうやら私達で参戦者は最後のようだ。
「大事な事を三回言うのはこちらも同じかぁ」
「ですねコマンチさん、入り口付近の床の傷跡、あの剣を刺した跡だったみたいですね」
「ああ、歴史を感じるな。マーシャ、ヤマネコにも生で見せてやりたかったな――?」
ヤマネコが通信を使いコマンチとマーシャの会話に割り込んでくる。
『二人から送られてくる映像でこちらでも見たのだな。生解説お疲れ様なのだな』
『だよな。で、マギサに同行するとかダダ捏ねていたお姉さまは?』
コマンチが笑を含んだ声色で言う人物は私の乳母であり、私にとって姉の様な存在の――
『【ミリサ】さんなら、隣で映像をご覧になって【ウリックス】師匠とご一緒に男泣き中で話しかけられないのだな』
ミリサや彼、ウリックスさんも心の底から喜んでくれているようだ。
私の通信機にも二人の泣き声が聞こえてくる。
私は参戦に間に合った事や仲間のおかげでここまでたどり着けた事に安堵する。
そして自然と少し目元が潤んでしまう。
「マギサ泣いているのか」
「ええ……感極まってね。先を急ぎましょう。O✖」
「ああ、そうだな。マギサ」
「行きましょう――!えっちょっと」
「急ぐぞ。マギサ」
「…うん」
彼は笑顔を私に見せ、私の片手を握り歩いていく。
だが私はそれを拒まない。
私の表情は隣にいる彼、O✖に見られていたようだ。
彼に出会った当初の私だったら、涙を悟られたら今みたいに肯定はしなかっただろう。
むしろ否定し、険悪な雰囲気を作り出したことだろう。
だが今の私は違う。
私は心臓の鼓動が高まるのを感じながら――
昔、母と共に歩いた神殿の床を彼と歩いていく。
最後のこころ優しい神々の生き残りである若き女神が、その身を黒き炎で焼き尽くし
今もこの地上で唯一、黒き炎が燃え盛る聖なる祭壇へと私はO✖と共に歩いていく。
ここはかつて、私の父と母が初めて出会い、歩いた場所でもある。
その時、手を握られていたのは母の時も一緒だったそうだ。
そしてその当時、母は今の私みたいに人間の青年、つまり
私の父に手を握られ参戦したそうだ。この話は私が母から聞かされた話だ。
ちなみ彼にはまだ話していない。彼に話す時が楽しみだ。
「やっぱりマギサは笑顔がかわいいな」
「えっ!」
「マギサはすぐ気持ちが顔に出るからな」
「もう……」
彼が笑顔で私に語りかけてくる。
彼が指摘する通り母と父の若き日の話を思い浮かべると私はニヤついてしまうようだ。
「お二人さんもうすぐ祭壇ですよ~マギサさん準備してください」
「あっ! ありがとうマーシャ」
マーシャがタイミングよく話しかけてくる。
私は参戦の契約を行うために仕方なくO✖の手を離す。
「マギサ、いよいよだな」
「ええ、でもこれからが本番よ」
「ああ、望むところだ」
私は彼と軽く会話を軽く澄ますと祭壇にひとり歩いて向かう。
会話の際、彼は笑顔だった。私の心は幸せに満ち歩みも軽やかだ。
祭壇の周りの区切られた空間には非常に身分の高い一部の参戦者たちが
椅子に座り居並んでいる。其者たちの周りは各国の騎士団や軍の精鋭が護衛についている。
彼らや彼女達は国家を代表して参戦する者や王家、その血筋に連なる者たちである。
他の一般参加者と違い参加は【義務】である。つまり選ばれし者達ということだ。
このように一同に会しているが――
この救済権争奪戦と呼ばれる行為は【戦争】である。
人によっては単に救済戦争、救済戦と呼ぶか単純に戦と呼ぶ紛れもない戦争行為だ。
最もこの戦争が発生するのは実に数百年ぶりであり、義務として参戦する者達は
実に運がなかったとも言えるだろう。この戦いがなければ優雅な一生を過ごせたのだから。
この世界の神代以降の人の歴史において、この戦争は各国の存亡を賭けた戦争だ。
この戦に負ければ文字通り国が消滅しかねないのだ。
そうして何度もこの世界の地図に描かれる国境線は何度となく書き換えられてきた。
例え、女神の残した救済の術があろうと、戦争の度に容赦なく無慈悲に変革していったのだ。
なぜなら、この救済戦争の期間中だけは【極めて】救済が行いにくくなるからだ。
まず、平民は確実に一度死ねばそれで終わりだ。そんな状態で人が死ぬ戦争を
延々と行えば国家が傾いたり滅びたりするのは必然である。
故に各国とも本気でこの戦に望む。
この期間の呼び名は教会や多くの国では、【女神の休息】と伝統的に呼称しているが
他の地域とりわけ、過去にこの戦争で多くの人々が死に絶えた地域や国では
【滅びの季節】と呼ばれる。地域によってこの期間の受け止めかたも様々である。
魔族はこの期間のことを伝統的に【女神の里帰り】と呼んでいる。
なぜそう呼ぶ様になったか、理由は不明だ。
私が気持ちよく軽やかな歩みを踏みしめながら色々とこの戦争に関する事を
脳裏に思い浮かべていると、視界にとある国の代表が映る。
彼女は確か、中央海域の島国の姫君で美人と評判の――!
「なっ……」
私は驚く。今し方脳裏で注目していた人物と視線が合い笑顔で微笑まれたのだから。
いや、どちらかというと向こうから私に視線を意図的に合わせて微笑んできた感じだ。
私の気にしすぎだろうか、などと感じながらも私は歩き祭壇の前に立つ。
私の目の前には黒く燃え盛りながらも光り輝く黒い炎がある。
明確には炎の様な姿かたちをした、全ての魔力の根源が具現化したとも
伝えられてきた未知の存在だ。私は両手を広げ、掌を上に向けたまま目の前の
黒い炎にそっと静かに入れる。炎と言われるが全く熱さは感じない。
今でも魔術を研究する者達はこの黒き炎の本質に対する答えを導き出せていない。
何故、炎のようなのに熱くないのか? 何故、数千年もここに存在しているのか?
何故、この黒き炎を死人に浴びせると生き返るのか? 何故、生き返る回数が108回に制限されているのか? 何故、この炎を維持するのに戦争が必要なのか?
多くの人が黒き炎に対して抱く疑問は多い。だがそのどれも人々が自らの力で
本質を解き明かし、未だに真実を導き出せていない。
唯一、真実に近いのは神々の足跡を残した神話くらいのものだ。
「ん?……ああ、これが」
私は突如重みを増した、両掌を静かに黒き炎から引き抜く。
それは母から聞かされていた通りの人の頭部くらいの大きな結晶だった。
その両掌に載っている塊を目にする事ができる角度にいる者達が次第に騒ぎ出す。
特に私の周りの選ばれし者達や、その取り巻きはかなり驚いているようで――
「そんな……青い【救済石】だと! しかもあの大きさは――」
「何をボケっとしている! 直ぐに本国に連絡を入れろ! あの参戦者は――!」
「馬鹿な……何故、参戦しているのだ! 奴らの本国は不参加を表明していたはずだぞ!」
本殿内は次第に騒がしくなる。そしてある種族の話題を交えながら
私とその仲間に皆、視線を注ぎはじめる。これはもう隠す必要もないかなと
思い始めると、透き通るような女性の美声が本殿内に力強く鳴り響く。
「静まりなさい! 勇気ある参戦者達よ! 女神の祭壇の前であるぞ!」
その声は祭壇のはるか真上、本殿内を見渡せるテラスから発せられた。
「おお……【救済皇】様がお言葉を発せられたぞ!」
選ばれし者達の周りからそのような言葉が漏れる。
次第に本殿内はざわつきだすが直ぐに静寂を取り戻す。
それだけ彼女の言葉と存在は人間をはじめとした各種族に重く
受け止められている事を分かりやすく示している。
私の周りでは信心深いと思われる選ばれし者達の取り巻きが、片膝をつき胸に手を当て
救済皇に向けて頭を深々と下げていく。中には涙を流しながら頭を下げる者達もいる。
その光景はどの国も、他の参戦者達も同じようで、感極まってすすり泣く声が
そこら中から静かに漏れだし鳴り響いている。
救済皇、救済教会の最高指導者が発した言葉で徐々にざわつきが収まりつつある。
因みに私は人の頭部程もある青い救済石を手にして立ち尽くしたままだ。
重さはそんなに思った程ないので、もう暫くは私でも持てそうだ。
『こちら○✖、マギサ【インカム】をオンにしているなら顎を動かせ』
彼から異世界の通信機インカムを作動させているか確認が入る。
私は彼の方を向いて事前の打ち合わせ通り無言で顎を軽く動かす。
彼の顔つきが凛々しくなっている。そんな時の彼の顔は最高だ。
『OKだ。マギサはまだ口を開くな。目立つからな……【レッドジュース】発生、以上』
「――!」
私は彼が伝えてきたレッドジュースの意味を理解し思わず口を開きそうになる。
レッドジュースこれは事前に決めた符号だ。その意味は【敵襲アリ】である。
既に本殿の入り口付近では歩哨に立つ兵士達が騒ぎ動き出しているようだ。
「貴様ぁあ! 止まれ! ここが何処だか分かっているのか!」
本殿入口で歩哨に立つ兵士達は手にした黒き槍を構える。
兵士達の視界には駆け足、いや――それ以上の速さで駆けてくる、ひとつの人影が映る。
其の身は明らかに暗殺者を思わせる、動きやすそうな黒装束で身を包み手には――
「気をつけろ! 【魔剣】を顕現させたぞ! こいつは――」
本殿に向けて駆け足で向かう暗殺者を思わせる者は素手だった両手に
高密度魔力で作り上げた高度な魔術に分類される魔力で構成された武器
魔剣を握り締め跳躍する。
その魔力剣は諸刃で全身が濃い青色だ。
刃の周りにはうっすらと光り輝く青い霧を帯びている。
跳躍した者は手馴れた動きで刃を兵士達に向けながら思う。
お前ら緊張感なさすぎ。門番失格だから――
「死にな!」
一言、最後に思った事を、力を込めて口にすると【彼女】は剣を数回振り終える。
青く光り輝く線が瞬間的に数回、兵士達に浴びせかけられ消え失せる。
兵士達の手前、上空数メートルに跳躍した彼女は兵士達の眼前に着地する。
そして自らが魔斬撃で切り刻んだ兵士達の血飛沫を着地と同時に微かに浴びる。
彼女の視界には祭壇付近に立つローブ姿の動く人影が映る。
その人影の見慣れた動きで彼女は確信する。そこに自分の敵がいるのだと。
敵がいると確信した彼女はその心の内から沸き上がる敵への凄まじい憎悪を
身に纏い真っ直ぐに敵に向けて凄まじい加速をして駆けていく。
「――!」
彼女は敵の攻撃を察して左の壁に向けて回避する。
次の瞬間、本殿内に連続した炸裂音が鳴り響く。
彼女の進もうとした床付近は敵によって撃ち込まれた攻撃の跡が無数に刻まれる。
この敵の攻撃で彼女は敵の正体を更に確信する。
彼女は更に殺意を沸き上がらせ戦意を高揚させる。
更に敵の持つ【黒い武器】の側面から金色の小さな筒が攻撃の最中飛び出るのが確認できた。
間違いない奴らだ。
「うらぁあああああ!」
戦意を凄まじく高揚させた彼女は宙を舞いながら、本殿内で叫び絶叫する。
彼女が壁に少し斜めで激しく着地した刹那の瞬間、彼女は凄まじい速さで壁を踏み潰しながら駆け始める。
彼女が駆けた軌跡には二本の青い光の筋が生じている。
その光の筋の源である彼女を追う様に、敵の攻撃の証である連続した炸裂音が本殿内に鳴り渡っている。
参戦者の多くはその炸裂音と迎撃する者が手に持つ武器を魔力弾を撃ちだす魔槍と判断し、身をかがめたり防御の体制を取るが
魔力弾の様に派手に炸裂しない事に驚いていたりする者も見受けられる。
その間も敵の攻撃は壁へと殺到する。
その攻撃は壁面を砕き破片を参戦者の頭上にパラパラと降らし、壁に無数の跡を刻み込んでいく。
先程までの歓喜に満ちた雰囲気は彼女によって、完全にぶち壊されていた。
本殿内からは野次や罵声が乱入してきた彼女に向けられる。
多くの参戦者は明らかな不審者が本殿内に侵入してきたのに反撃しない。
救済教会の総本部と其の周りに広がる市街地はこの世界で唯一の中立地帯だ。
特に教会内で自衛以外の戦闘を行えば、教会の精鋭騎士が駆けつけ瞬殺される。
手馴れた一部の参加者は、素早く武器に手を伸ばし反撃の体制を取る。
そんな中、彼女に狙われている者達の一人が母国語で叫ぶ。
「この野郎ぉおお! ゴキみたいな動きすんじゃね――! うぉおおお」
彼は自分の故郷の世界で恐れられている、昆虫同様に壁を素早く
駆ける乱入者をその名で吐き捨てながら、その手にした武器の先端を
乱入者に向ける。敵に向けた武器の先端では、攻撃の度に閃光が明滅を繰り返し、同じく炸裂音を本殿内に反響させている。
彼が乱入者に向ける武器はこの世界の武器ではない。
その姿形は全体が四角い感じであり、色は黒が多くを占めている。
真ん中からは溝の入った湾曲した灰色の薄い箱のような物が、地面に向けて突き出ている。
彼は両手でしっかりその武器を握り締め、武器の片側を右肩にしっかり当てながら
その武器の上に設置された黒い円柱状の筒を、両目を開いたまま右目で覗き込む。
彼はそこに浮き出る赤い点を乱入者に素早く合わせると、真っ直ぐに伸ばした
右手人差し指で、黒い小さな爪のような突起に触れ、引き絞る。
彼がその黒い爪のような突起を引き絞るたびに、その武器は炸裂音を鳴り響かせる。
それとほぼ同時にその武器の中央上部右側面からは、うっすらと煙を上げながら全体が金色で片端が細く、くびれた円柱状の筒が勢い良く続々と飛び出していく。
その黒い武器を扱う彼の脳内は驚愕に満ちている。
乱入者の異常な【防弾性能】に驚愕しているのだ。
「くそっ! ライフル弾が効かないだと……矢島ぁあ! スタンを用意、離脱するぞ!」
「そんな暇ないぞ〇✖! もう殺るしかない! それと交戦中はコマンチと呼べ!」
「了解した! 矢島」
「ああ! もうどっちでもいいよ」
コマンチこと矢島は仲間の応答に一応、呆れたぞとツッコミを入れ、射撃を再開する。
彼らが【自動小銃】で乱入者に攻撃を加えている間も乱入者は最早奇声に近い絶叫を叫ぶ。乱入者は壁を踏みつぶし、彼らに向けて壁伝いに駆けていき確実に距離を詰めていく。
壁の向きが変わる数歩手前で乱入者は思い切り壁を踏み込む。
乱入者である彼女は盛大に壁を砕き青い刃を宙に大きく伸ばし、敵の名を叫びながら
自らの敵に向けて勢いよく飛び込んでいく。
「マギサぁぁあああ! 死ねぇぇええ!」
揺るぎない盛大なフラグを立てる事も忘れずに彼女は飛び込んでいく。
乱入者に名を叫ばれたマギサは微かに微笑む。
マギサの周囲にいる選ばれし者達や、その取り巻きの一部はその名を聞き
明らかに表情を驚きへと変える。それは先程マギサへ意図的に笑顔を向けてきた
中央海域の島国の姫君も例外ではないようだ。
しかし他の驚く者達と比べて、姫君の驚きは何やら嬉しさを含んでいるようだ。
その事は彼女が笑顔で目を見開き、マギサへ熱い視線を向けていることからも
明らかだろう。
そんな熱い視線を向けられるマギサは静かに口を開く。
「……マーシャちゃんお願いね」
「はい! 了解です」
既にマギサの仲間は彼女の周りに布陣して彼女を守る体制だ。
マギサの後方に控えていたマーシャはローブを脱ぎ捨て宙に投げ捨てる。
参戦者は宙を舞う茶色いローブに一瞬注目するが、直ぐに
そのローブの主を視線で追う。
そのローブでその身を隠していた彼女は素早くマギサの前に立つ。
その着用した衣服はこの世界ではよく旅をする者が着用する丈夫な
茶色っぽい革製のジャケットと衣服の組み合わせである。
しかしその姿はこの世界では珍しい、黒髪でありサラサラとしている。
彼女の肌はこの世界の温帯地帯に住む人間やエルフの娘達のように
きめの細かい綺麗な色白の肌をしている。
それを見た周囲の選ばれし者達の男性陣の中からは勢い良く席から立ち上がり
瞳を見開き、歓声を上げ彼女を熱く見つめ始める者達が数名現れ始める。
そんな熱い視線をマギサ同様に、向けられる彼女は向かってくる乱入者に向けて
両腕を突き出すと掌を開く。その両腕には真紅の金属で作られた手甲が装着されている。
彼女は息を大きく吸い込むとこの世界の人間には存在しない瞳の色である
黒い瞳に力をいれる。乱入者を視界に捉えると彼女は力強く日本語で叫ぶ。
「こっちに来ないでください! ゴキ見たいな変態さん」
彼女がそう日本語で叫ぶと乱入者はまるで、映像を巻き戻したかのように
足場にしていた壁にズドンとYの字状にめり込む。
乱入者の魔剣は青い霧になって消え失せ、周囲の参戦者は唖然とする。
「うむ、見事な壁ドンである! 壁ドンマスター松沢よ」
「マーシャ! こいつには何を言っても無駄だ! 敵を【念力】で押さえ込め」
「了解です矢島さん! それと念力じゃなくて一応【魔法】ですから」
「お前もその名で呼ぶかぁああ!」
○✖と矢島はY字状に壁ドンした敵へのタコ殴り的な制圧射撃を緩めない。
既に二人の足元の床には十本近い弾倉が転がっている。
必然的に空薬莢は更にかなりの数が、床に大量に散蒔かれてしまう。
マーシャこと松沢、彼女はひとりの十代の日本人の少女として思う。
コマンチこと矢島は大変いじりがいがあるおっさんだ。
マギサの恋人であり同じ日本人の彼、〇✖は天然気味だが兄のような存在だ。
そして彼らとこの世界で出会ってからは毎回、こんなノリで多くの敵と戦い
未だに私達が生き残れている事に感謝を抱きながら彼女は敵を魔法で押さえ込む。
「うぎゃぁああ! マギサぁああ!」
乱入者ことマギサを殺しに来た暗殺者の彼女は激痛の中、マギサの名を叫ぶ。
松沢の目に見えない念力のような魔法による攻撃はかなり効果があるようだ。
その光景を見て矢島と○✖が銃口をY字な敵に向けたまま射撃を停止する。
矢島はニヤつきながらマギサに話しかける。
「もぅ~マギサさん、モテモテですね~」
「あんなのにモテたくないわよ。二人共続けなさい」
「了解コマンチ、エンゲージ!」
「もう矢島でいいだろう。〇✖、エンゲージ!」
「まだその名で呼ぶかぁあああ! なぜだぁああ!」
「めんどい、以上」
「ああ、ホントもうめんどいから矢島でいいよ!」
〇✖と矢島はマギサの支持に従い、松沢の攻撃で凄まじい叫び声を上げ続ける。
Y字状に壁ドンされたままの敵に向けて射撃を加え続ける。
○✖と矢島はその手に握るドイツ製の自動小銃、HK416の弾倉を
即座にマグチェンジする。二人は壁にYの字状に壁ドンした乱入者に向けて
射撃を再開、二人共セミオートで撃ちまくり銃弾で乱入者をタコ殴りにする。
徐々に乱入者の忍者の様な装束が破れ、その下に隠れた姿が顕になる。
その肌は青い鱗で覆われているようで、その鱗に命中する銃弾は何れも命中の瞬間に
青く微かに光り輝くとマッシュルーミングと言われる現象を起こし、キノコ状に潰れ
床へとボタボタと大量に落下していく。
「撃ち方止め!」
マギサが叫ぶ。
射撃を続ける二人は、狙いを鱗が顕になった敵に定めたまま
マグチェンジして射撃を中止する。
「【つかさ】ちゃん、片手で敵を押さえ込んでみて」
「もう! マギサさんまで悪乗りしないでくださいよ」
マーシャこと本名、【松沢つかさ】であると判明した少女は恥ずかしながらも
片手で魔法を敵に向けてかけ続け敵を締め上げ、更に悲鳴を搾り取る。
「うぎゃぁああ! ハァハァ!……マギ……サぁああああ!」
「つかさちゃん、そのままゴキを屋外に放り投げて」
「了解です!」
「ぁあああ!」
乱入者こと壁ドンされたY字状の最早、戦えないマギサの敵は突如
勢い良く宙に、Y字状態でつかさの魔法で強引に引き抜かれる。
つかさや矢島、○✖、日本人の彼らは思う。
ホラー映画でこんなシーンがあったなと。
そのままクルリと回転し救済皇の方を見上げさせると――
敵をペコリと一礼させてそのまま猛スピードで入口へ向けて飛ばす。
「ぎゃぁあああああ! てぇめぇええええ! おぼ――!」
敵は先程自身が切り刻んだ、兵士達の亡骸も越えてその先にある――
白い大きな壁に再び派手に壁ドンして気を失い、頭をダランと垂れる。
その直後、その周囲には体格のいい兵士達が駆けつける。
兵士達は乱入者の意識がないのを刃を向けながら慎重に確認する。
意識がないと判断したのだろうか兵士の一人が乱入者を壁から引き抜き
まず床にベタンと叩きつけてから、両腕を二人の兵士で持ち上げ身柄を確保する。
両腕を持ち上げ、足をズルズル引きずりながら何処かへ連行していくようだ。
その光景はまるで、諜報機関のエージェントに両腕を持ち上げられ
連行される写真で有名な宇宙人のようだと遠目に見ながら、地球出身の
三人の日本人は内心、笑いながら思うのだった。
部分別小説情報
掲載日
2014年 10月05日 20時19分
最終更新日
2014年 11月01日 23時06分
軌跡2
本文編集
第八次救済戦争の正式な開始により、救済教会総本部周辺の市街地に存在する
飲食街は多くの参戦者や、巡礼者によって賑わいを見せていた。
路上には屋台も多く出ているようで、同地の特産品である茶竜の串焼きや
世界各地の様々な食材を使用した料理やスイーツが飛ぶように売れ、通りには食欲をそそるいい匂いが漂い、多くの客で賑わいを見せている。
空が暗くなると、上空では色とりどりの魔力弾を使用した花火が上がりだし
幾重にも炸裂し輝き、多くの見物客が夜空を見上げている。
そんな中、とある酒場のテーブルにはマギサ達一行の姿があった。
酒場内は魔力を利用した照明で昼間のように明るい……
天井に設置した、一般家庭でも使われる発光術式で天井自体が照明と化しているようだ。
その中には○✖達、地球出身3人組以外にも数名の姿が加わっている。
その内のひとり、ピンク色の髪をツインテールにしている女性……
その女性の顔立ちはマギサとよく似ているが、大人びた顔立ちである。
彼女の表情は酒の酔いも回り、歓喜に満ちているようだが……
涙を流しながら向かいに座るマギサに話しかけている。
「マギサ様~参戦おめでとうございます! うっうっ……ミリサは嬉しゅうございます!」
ミリサは全体が黒いチャイナドレスの様な、微妙に露出が際どい服で身を包んでいる。
彼女が木製のジョッキに注がれた白い濁り酒を飲むたびに、その喉元が動きその度――白い豊満な胸元も合わせて揺れる。
男性客の多く、特に人間やエルフの男達は彼女をチラ見している。
「店員さん! 酒を樽ごとお願いします♪」
酔いが本格的に回りだしたミリサは無謀とも思える注文をする。
そんな彼女の隣で飲んでいる一際目立つ、姿をした者がいる……
その姿は全身を薄く、茶色い毛で覆われた、イノシシを人化させたような大柄な男、否……漢を連想させる、がっちりした獣人の男性だ。
彼は黒っぽい革製のズボンを履いているだけの軽装だ。
そんな彼は呆れた感じで隣のミリサに話しかける。
「ミリサ、飲みすぎだぞ」
「そんな~師匠だって飲んでいるじゃないですかぁ~」
「お前ほどじゃないぞ。そうだろ猫耳」
「そうなのだな~ウリックスさんは~」
猫耳とウリックスに呼ばれた彼は、黒髪をした典型的な――
日本人であった。
少しポッチャリして、度の強そうなメガネを掛けた感じで服装は他の参戦者や冒険者と大差無い革製の衣服を着ているが、その上から黒いタクティカルベストを着込み、ベストのポーチには無数の赤や青をしたショットシェルやハンドガン用のロングマガジンに
サバイバルナイフが差し込まれている。
彼の傍らにはイタリア製の戦闘用散弾銃スパス12が置かれている。
太腿にはレースガン仕様なダットサイトを装着し、ロングマガジンを装着した9ミリパラベラム弾仕様のガバメントクローンのカスタムハンドガンがホルスターに入れられている。
そんな地球出身を匂わせる彼の頭部には……何故か猫耳が生えている。
彼の頭部の猫耳は彼の感情に合わせるかのように、ピクピクと動いているようだ。
猫耳なる呼び名の由来はこの耳から来ていることが伺える。
彼もミリサや、ウリックスの様に酒を飲んでいるが――
「おい、猫耳よ……」
「う~ん♪ やっぱりウリックスさんの毛並みは~最高なのだな♪」
どうやらかなり酔いが回り、隣に座るウリックスの胸元に
満面の笑みでスリスリしているようだ。
猫耳はピーンと立ち、彼の満足感を表しているかのようだ。
「あー! 私も師匠~♪」
「……はぁ~」
ミリサもウリックスの胸元の毛並みに満面の笑みでスリスリし始める。
ウリックスの二人を見る眼は、まるでわが子を見るような優しげな感じの眼差しだ。
「ウリックスさん、二人のことをお願いします」
「うん? そうか、マギサ達はお姫さんに呼ばれているのだったな」
「ええ、流石に一国のお姫様を待たすのは気が引けるわ」
マギサは酔いつぶれ気味なふたりをウリックスに任せると、席から立ち上がる。
マギサの姿は白とピンクを基調としたフリフリな涼しげな服だ。
多くの男性客はミリサとマギサをチラ見している。
特に胸元や顕になっている、細く引き締まった白い太腿付近を舐めるように見ている。
そんな男達を惹きつける服装は分りやすくいうなら――
「いってらっしゃいなのだな~【プリキュンピンク】」
「いってきます~キュン♡ ちょっと何言わすのよ!」
マギサは反射的にウィンクをし、独特のポーズと語尾の返事を返してしまう。
それは彼女の体に染み付いた動作のようであり、公衆の面前でそのポーズとセリフをつい発した事で彼女は少し赤面しながらも店を後にする。
マギサの服装、それは彼、猫耳や日本のおっきいお兄ちゃん達が大好きな
ある深夜アニメに出てくるメインキャラのミニスカート仕様の服装だった。
そのアニメとは2010年代末の日本の某地上波深夜枠で絶賛放映中のアニメ
【喘げ! プリティキュンキュン 聖なる妹達VS淫らなお兄ちゃん達との戦い】
――の中でも非常に露出が多い! と好評なメインキャラのコスチュームだったりする。
マギサに続き隣に座る○✖や、矢島につかさも立ち上がる。
その服装は昼間と変わらず、茶色いローブで覆っているがその傍らには――
〇✖の傍らにはHK416自動小銃が昼間と同じく一丁
矢島の傍らにはサイドパーティ製のパーツで組まれ、銃身下部にM203グレネード弾発射筒を備えた折りたたみストック仕様のM4カービン銃が一丁
そして――つかさの傍らには、〇✖装備のHK416自動小銃によく似た銃が携えている。
「さて、行くか」
「ああ、行くか」
「行きますか。お姫様のところに」
各々の銃を手にした彼らはマギサに続いて酒場を後にする。
酒場の客達、とりわけカウンター付近で飲んでいる傭兵や参戦者達は
〇✖達の手にした武器の話題を口々に話している。
彼らのそばには使い込まれた大剣や、魔槍が無数に立てかけられている。
なかでも傭兵仲間と思われるエルフと竜人、人間などの若い男の集まりは、酔も程良く回り、時折、肉汁が滴る熱々な茶竜の串焼きを食べながら、その話題で持ちきりのようだ。
「あれって、噂になっている魔族の少女と旅している異邦人達だよな?」
「だろうな。あの武器、魔槍と違い連射が容易で射程も長いらしいぜ」
「威力は魔力弾程じゃないらしいが、逆に言えばそれが強みだよな」
「どういう事だよ?」
「魔力弾の余波で巻き添えの心配がないってことさ」
「そんな武器で戦えるのか?」
傭兵達の中で一番年長者と思われる、銀色の騎士風甲冑で首から下を包んだ
中年男性の人間に注目が集まり、彼は自然と口を開く。
「魔手甲使いや魔法使いが似たような攻撃をするが……そんな手練の連中は著しく少ないな。なんでも、あの武器は対魔力弾、魔斬撃対策を施した鎧を、金属の粒でぶち抜くらしいからな……しかも魔力を使わない。それが本当なら便利な武器だよ。どこの工房で作っているのか聞きたいぜ」
彼の話を聴いてカウンター付近では『オー』と少しばかり歓声が上がる。
その中でも酔いが回り過ぎた一人の若い人間の傭兵は、ふらつきながら口を開く。
「それなら、残っているお仲間に聞くかぁ~?」
彼はひとりふらつきながら、ミリサ達のテーブルへと向かっていく。
――店外――
「店に入る前より賑やかだな。マギサ」
俺の視界にはすっかり、日が落ち夜になった街並みが広がる。
屋台も入店前と違い多く立ち上がり、いい匂いを辺りに漂わせている。
通りには多くの種族の人々が行きかい賑わっている。
中には子供を連れた家族連れの姿も見える。
空には花火が幾重にも炸裂して夜空を輝かせ大気を揺さぶっている。
なんとなくだが、日本の花火大会と似たような雰囲気であると俺は感じていた。
しかし、この祭りは救済戦争の開始を世に知らしめる大規模なお祭りでもあるそうだ。
最も、ここ数百年は戦争と関係なく毎年やっているそうだ。
人が祭り好きなのはどの世界も変わらないようである。
正直、この地が中立地帯でありこの世界でも非常に強力な救済教会の軍事に守られた地で限りなく、戦火に巻き込まれる可能性が低い地とはいえ――
今日から世界大戦を行うのに祭りを行うのは如何なものかと思う。
しかし、それは俺がこの世界の外から来た異邦人だからだろうか……
或いは念入りに戦う事への拒否意識を叩き込まれてきた典型的な日本人だからだろうか……いや、それ以前に一度死んでも、回数制限や寿命の制約がるとはいえ、生き返ることができるこの世界とは真逆の一度死んだら終わりの非常に過酷な世界、【地球】から来たのがこの違和感の原因なの最たるものかもしれない。
などと考えていると、マギサが俺に話しかけてくる。
「そうね〇✖、【マウラーレ国】の館まで行きましょう」
マギサが俺に返事を返す。
今の彼女の服装は所謂、コスプレ用の衣装である。
はっきり言って観る側としては最高である。
特に自分の左腕に当てられている胸元の辺りは感触も眺めも最高だ。
「ああ、行くか。みんなインカムをオン、それと着剣して魔槍に偽装しておけ」
「了解」
「了解だ」
「了解です」
俺はインカムをオンにするよう指示を出すと同時に、この世界で一般的な飛び道具である
魔槍に銃を偽装する為に魔槍の穂先に似せた銃剣モドキの着剣を指示する。
こうすることで一瞬でも敵の対応を遅らすのが目的だ。
昼間はとある事情もあり、着剣は敢えてしなかった。
続いて、先行する形で前衛に壁ドンマスターのつかさを配置
後衛にM4カービン銃装備でフットワークの軽い矢島を配置する。
俺とマギサは真ん中で片腕を組みながら、イチャつかせて頂く算段だ。
暫くその配置で歩いているとインカムに矢島の声が流れる。
『こちら矢島、真ん中の腕組んでイチャついているお二人さん、道順はあっているのか、どうぞ』
『こちらマギサ、このまま通りを真っ直ぐに進んで左折すれば【マウラーレ王国】の大使館が見えるわ。矢島は後方の警戒をお願い』
『こちら矢島、了解だ。さっさと用事済ませて宿に戻ろうぜ』
『こちらつかさ、左折します……大使館が見えました。周囲には警備の兵士と――え!』
俺の位置からでも視界にも白い立派な屋敷の屋根は見える。
先行したつかさの報告では、館の周囲を魔槍で武装した教会の兵士や――
『マギサさん、市街戦用の【ゴーレム】を配備していますよ……罠じゃないですよね?』
つかさが驚きながら報告したゴーレムは、ずんぐりとした人型のシルエットの両腕に
数本の魔槍を束ね、装着した魔力弾の連射力重視のまさに、市街戦用の兵器である。
機関砲を搭載した歩兵戦闘車のような兵器だ。
正直、こいつを正面切って相手にするのは手持ちの武装では分が悪い。
オープンチャンネルで聞いた矢島がマギサに即で進言する。
『こちら矢島、マギサ、宿に戻ってハンドミサイルを持ってこようぜ』
その声色からは若干の焦りと緊張感を感じさせる。
『こちらマギサ、そのゴーレムは教会が救済軍に配備している兵器で通常の対応よ。各国に警備隊を指揮する権限は一切ないわ。警備隊は救済皇の直属だから敵対の危険はないから門番に私の到着を伝えなさい。以上』
『こちらつかさ、了解です。門番に接触します』
つかさの報告を待つ間も夜空には、まるで対空砲火の如く
魔力弾を使用した花火が無数に継続的に炸裂している。
花火の閃光や炸裂音と振動は、緊張と不安を煽り
銃を握る右手の握力を強めるような感覚を覚えさせる。
実際、この花火は救済ができるきっかけになった戦いの壮絶さを後世に伝える為に
当初は、戦死した者たちへの鎮魂と戒めの意味も込めて行われていたそうだ。
故に出来るだけ、人々に閃光や炸裂音や振動を伝える為に夕方から日の出までの間
延々と魔法使い達が総出で上空に向けて魔力弾を撃ちまくるそうである。
この話は、魔法使いの一人として実際に参加した隣のマギサから聞いた話だ。
彼女曰くこの祭りは、魔法使い達の腕試しの場でもあり、世界中の魔法使いの憧れる
お祭りでもあるそうだ。今年はマギサの後輩達が気合いを入れて撃ちまくっているそうだ。
彼女が参加した年は、彼女のライバルで同族の【魔女】と激戦を繰り広げ、魔法使いの間では語り草になっているそうだ……そういえば魔族の女性は古くからの慣習で他の種族から、魔女と呼ばれているそうだ。
彼女、マギサも魔族でありまた、魔女の一人なのだ。
俺が色々と物思いにふけっている間も隣のマギサは上機嫌で俺と腕を組んでいる。
その表情は、その身に纏うかわいい女の子なコスチュームによって色気も追加され
男としては最高である。
『こちらつかさ、姫様が大使館内でお待ちだそうです』
その後、俺達はトラブルもなくマウラーレ王国の大使館へと入っていった。
――その頃――
救済教会本部の牢屋の薄暗い一室では二人の人物が相対していた。
片方は所々破れた黒装束に身を包んだ――
昼間の暗殺者の彼女だ。
今現在、彼女は壁に両手足を鎖で固定され、再びY字状態である。
牢屋には時折、鉄格子の隙間から花火の色とりどりの閃光が差し込み
閃光の後にはズシンズシンと振動がしきりに伝わってくる。
そんな彼女はボソリと力なく呟く。
「……花火がうるさいな」
「……」
そんなY字状態の彼女を無言で見つめる者は、彼女に一歩ずつ静かに近づいていく。
時折、花火の閃光が照らし出すその姿は正に白銀の鎧で全身を包んだ
白銀の騎士というべき姿をした者だが……妙である。
白銀の騎士は丸腰であった。
白銀の騎士は両手を広げながら声を発する。
『いい加減、白状したらどうだ……【亜魔族】の娘よ』
その声は男とも女とも判別がつかない無機質な響きをさせる、魔力によって作られた合成音声だった。
「はっ! ひとを壁に張り付けて眺める変態野郎が! ようやく口を開きやがった」
「娘よ……白状する気になったか?」
白銀の騎士はY字な娘に変態扱いされながらも、歩む速度を変えずに彼女に近づいていく。
花火が一際激しく輝く。その後、微かに訪れた静寂の刹那、彼女は白銀の騎士を更に口汚く罵る。
「夜になって花火が上がりだしたから、オークみたいに興奮したのかい! この変態!」
「……」
白銀の騎士はピタリと歩みを止める。
そして数十秒と間を置かず、再び花火が激しく輝き振動が牢内へと伝わる刹那――
「ぐへっ! うげぇえええ」
――白銀の騎士は、彼女の腹に拳を数発打ち込んでいた。
彼女の腹はうっすらと青く光り輝いているようであるが……
決してノーダメージではないようだ。
白銀の騎士は震える左手で添えるように、彼女の喉元を握っている。
右手の拳も同じく震えたまま構えられているが、騎士は口を開く。
『やめだ……もうやめだ! 折角私が騎士らしく振舞ったのにオークだぁああ!』
「がはっ! げほっはぁ! はぁ!」
『この亜魔族風情がぁあああ!』
騎士は左手を喉元から素早く離すと、拳を構え彼女を殴り始めながら叫ぶ。
『貴様はぁああ! 朝まで私が相手をしてやるからなぁああ!』
牢屋内には青く光り輝くY字な者と、花火の閃光が照らす――
狂気に満ち、ひたすら拳をY字な者に打ち込む白銀の騎士がいるだけだった。
部分別小説情報
掲載日
2014年 09月14日 22時26分
最終更新日
2014年 11月02日 15時28分
???並行世界の世界地図を眺める者???
本文編集
2010年代後半
【霞ヶ関 地下某所】
「これが、○✖監視対象、マギサの故郷の世界地図だ……」
「……」
「里中捜査官、コーヒーでも飲みながら、その地形図を頭に叩き込んでおけ」
カツカツ……バタン。
私はこの時、上司から初めて……連中の情報を開示された。
やはり、連中は……この世界の人間では、なかったのだ。
ズズズ……
紙コップに入ったコーヒーを飲みながら、私はこの地図を眺め……思う。
何故連中は、わざわざ……。
並行世界で大金をばら撒き。
自分達の必要とする、人間を半ば強引に、スカウトしていくのか……。
それが判明するのは、公安の連中が拘束した、やけに装備の整った連中。
……ステルスな不審船に乗っていた、乗組員の協力次第だろう。
何れにせよ……
尋問の結果が出るまで私は、この部屋でコーヒーを飲むことに決めた。
ズズズ……
コーヒーと言えば、名古屋のムーバックスカフェで監視対象と話し。
その後消滅……もしくは、別のこ世界に消えた青年は、どうなっているのだろうか。
部分別小説情報
掲載日
2015年 01月28日 19時29分
最終更新日
2015年 01月28日 19時38分
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掲載日
2014年 11月08日 04時53分
最終更新日
2014年 11月14日 23時43分