※この作品はR-18です。

ハイスクールD×G~駒王町の規格外品   作:Tokaz

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第19話をお送りします。ご覧下さい。




第19話 黒歌の真実☆(祐美)

 

 

 SS級はぐれ悪魔、黒歌の捕縛を命じられてから数日が過ぎた。

 黒歌と美猴は冥界入りを確認された後、姿をくらませており、現在魔王直轄の諜報部隊が二人の行方を捜していた。

 一輝()の出番は黒歌を捕らえる時なので、見つけ次第連絡が来る手筈になっている。それまでは眷属の訓練相手を務める事にして、皆の様子を伺っていた。

 

 

 

 

 

 クチュクチュと湿った音が室内に響く。

 

「はあ、はあ、んん・・・・はぁん! せ、先輩、そこは・・・・」

 

「ん? ここがどうした?」

 

「んん! そんなにされられたら、私・・・・んん、ああぁ」

 

 俺はベッドに腰掛けた祐美の背後から彼女のスカートに手を入れて、下着の上から割れ目に沿って指を動かしていた。 

 

「ほら、訓練はまだ始まったばかりだぞ。頑張れ祐美」

 

「ふ、くぅん・・・・だ、だって先輩が・・・・」

 

「俺が?」

 

「先輩が、私のアソコをクチュクチュするからぁ・・・・あぁん!」

 

 祐美の下着は溢れた淫蜜を吸い重くなって、既に下着の役目を果たしていなかった。その下着をずらすと指を二本、祐美の秘穴に挿入した。

 

「んはぁぁぁんんっっ!!」

 

 祐美は身体をビクリと震わせ、動きを止めた。それと同時に右手に握っていた聖魔剣の禁手(バランス・ブレイカー)状態が解除され、元の魔剣に戻った。

 

「三十分か・・・・これじゃあ駄目だな」

 

「ハア、ハア・・・・だって、こんなの耐えられっこ無いですよぅ・・・・」

 

「何があっても禁手を解除しない。これはその為の訓練だぞ。耐えなきゃ駄目だろ?」

 

 俺達はただ祐美の身体をまさぐっていた訳じゃない。禁手状態を維持する訓練の手助けをしていたのだ。本当だぞ。

 

「・・・・だったら、加減して下さい。先輩、激しいんだもん・・・・」

 

「何言ってんだ。加減したら訓練にならんだろう。ほら、続けるぞ」

 

「はぁい・・・・あ、ちょっと待って下さい」

 

 祐美はそう言うと立ち上がり、淫蜜を吸って重くなった下着を脱いで、濡れた股間をティッシュで拭いていた。

 俺の所からは後ろ姿しか見えないが、あの祐美が自分でスカートを捲り上げ、がに股になって股間を拭いてる姿はそそるものがあるな。

 

「お待たせしました・・・・・・いきます、禁手化(バランス・ブレイク)!!

 

 祐美は精神を集中し、禁手【双覇の聖魔剣(ソードオブビトレイヤー)】を顕現させる。

 

「よし、今度は一時間は持たせろよ」

 

「ん・・・が、頑張ります・・・・ふう、あぁ・・・・」

 

 室内に淫らな水音と祐美の喘ぎ声が再び響くまで然程時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 次の日の朝、小猫ちゃんが倒れた。

 原因はオーバーワークによる過労。アザゼルに渡されたメニュー以上のトレーニングを自分に課して倒れたのだ。

 怪我ならばアーシアに治療して貰えるが、過労ではそうはいかない。ゲームまで日がない事と自分の力不足を感じて焦っていたようだ。様子がおかしい事には気付いていたが注意を怠った自分が恨めしい。

 

 小猫ちゃんの様子を見ようと部屋を訪れたら朱乃とイッセーも来ていた。

 ベッドに横たわる小猫ちゃんの頭には普段は隠している猫耳がピョコンと可愛く生えていた。

 

「イッセー、戻ってたのか?」

 

「あ、一輝先輩。先生に小猫ちゃんが倒れたって聞いて、つい・・・・」

 

 仲間思いのイッセーらしい。俺は労るように肩を叩くと、聞き役をイッセーに任せて朱乃の隣に立った。

 

「倒れたって聞いて心配したよ。具合はどう?」

 

「・・・・・・」

 

「色々聞いたけど身体は労らなくちゃ駄目だよ」

 

「・・・・なりたい」

 

「え?」

 

「強くなりたいんです。先輩達みたいに心も身体も。私は『戦車(ルーク)』、戦う事しか出来ないのに、私が一番弱くって・・・・このままじゃ本当に役立たずになっちゃいます・・・・」

 

 小猫ちゃんは目に涙を溜め、猫耳を伏せて呟いた。

 

「けど本性を晒け出せって言われても内に眠る力を、猫又の力を使うのは・・・・・・使ってもし姉さまみたいになったら・・・・怖い、あんなのはもう、イヤなんです・・・・」 

 

 自分の胸の内を吐露して小猫ちゃんは一雫の涙を零す。感情を滅多に表わさない彼女の涙は酷く胸に響いた。

 彼女の姉黒歌は彼女の目の前で力を暴走させて主を殺害、彼女を置いて去ったらしい。その姿が小猫ちゃんの脳裏に今も焼き付いているのだろう。彼女から怯えを拭い去るには姉と対峙して乗り越えなくてはならない、そう思えた。

 

「イッセー君、後は私達が付いてますから」

 

「そうだな。お前はお前の成すべき事を成せ」

 

「朱乃さん、一輝先輩・・・・」

 

 小猫ちゃんに掛ける言葉が見付からないのか、イッセーは悔しそうに拳を握り締め、何かを決意したように立ち上がった。

 

「朱乃さん、一輝先輩、俺行きます・・・・小猫ちゃん、俺は自分の成すべき事を成すよ」

 

 そう言ってイッセーは部屋を出て行った。

 

「さて、俺も行くか。それじゃあ小猫ちゃん、お大事に」

 

 イッセーに続いて俺も部屋を出る。・・・・さて、俺も用事を片付けるとしようか。 

 

 

 

 

 

 数年振りに見た妹の姿に、黒歌()の胸に様々な想いが湧き上がる。

 本音を言えば直接あの娘に会いたい。でも、やむを得なかったとは言え、まだ小さいあの娘を置き去りにした私がどの(ツラ)下げて会えるというのだろう。

 元気、とはいかないが、一目顔を見られただけでも良しとしよう。そう思って塀から飛び降りたその時、

 

「覗き見とは悪趣味だな。───お前何者だ?」

 

 降りた先にいた黒髪黒瞳の男に声を掛けられた。ビックリしたけど今の私は黒猫の姿、誤魔化せる筈だ。

 

「ニャ~~オ☆」

 

 猫撫で声を出して男の脇を通り抜けようと試みる。けど、

 

「無駄だ。いい加減本性を顕せ」

 

「・・・・・・チッ」

 

 誤魔化せなかったか。私は舌打ちして声を上げた。

 

「にゃんで分かったのかにゃ?」 

 

「あのなぁ、お前みたいな気配の猫がいるかよ」

 

 返事が返って来るとは思わなかったが、その男は呆れたように返答した。

 

「気配って・・・・しっかり消してたと思うんだけど?」

 

「確かにな。だがお前みたいに気配を消してる猫なんて逆に怪しいだろうが」

 

 ・・・・盲点だった。今後は気を付けよう。

 

 

 

 

 

 ボンッという音と共に黒猫が消えて、代わりに長い黒髪に猫耳を生やした妖艶な美女が姿を現した。と同時に瞬時に結界が張られる。速度といい強度といい朱乃を上回る、見事な物だ。

 

(──写真と同じ顔。間違いない)

 

「SS級はぐれ悪魔、黒歌だな。お前には魔王から捕縛命令が出ている。無駄な抵抗はせずに大人しく捕まれ」 

 

 一輝がそう言うと、黒歌は警戒の度合いを深める。

 

「ふぅん、お前刺客か。何者にゃ?」

 

「リアス・グレモリーが眷属、『兵士(ポーン)』不破一輝」

 

「!・・・・そう、アンタが噂の【ガイバー】」

 

 ヴァーリを倒した相手の登場に黒歌が一気に戦闘態勢に入った。紫色のオーラが立ちのぼり、身体中に闘気を漲らせる。

 それを見た一輝もまた、構えを取り戦闘態勢に入る。

 

「シャアアアッ!!」

 

 素早い動きで黒歌が迫る。伸びた爪による鋭い爪撃が一輝を襲うが、間一髪で回避に成功、髪が数本宙に舞う。予想以上の速さに一輝は舌打ちする。

 

()ッ!」

 

 反撃とばかりに足を刈ろうとローキックを放つが、黒歌は軽やかに宙に舞い、着地する。

 

(流石猫又、敏捷性が高いな)

 

「・・・・お前がホントにヴァーリを倒したガイバーにゃのか? 思った程じゃないにゃ」

 

 黒歌は不敵な笑みを浮かべる。一輝はふうっと息を吐くと、

 

「言ったな。ならばっ!」

 

 一輝は身体中に闘気を漲らせた。炎のように燃え上がる強大なオーラに黒歌は目を見張った。

 

(───こいつ、闘気を操れるのか!?)

 

 闘気を身に纏い、戦闘力を上げるのは彼女のような仙術使いの奥義。それを自分以上のレベルで使う一輝に黒歌は戦慄を覚える。そして次の瞬間、一輝が目の前に現れた。 

 

「!!?」

 

 一瞬で距離を詰めた一輝の回し蹴りが炸裂する。

 

「ぐ、うぅっ!?」

 

 咄嗟に腕でガードしたが、それでも黒歌は吹き飛ばされる。

 

「くっ、化け物め! これでも食らうにゃ!!」

 

 黒歌は掌に闘気を集中し闘気弾を作ると、一輝目掛けて撃ち放った。迫る闘気弾を一輝は避けようともせず、腰を落として迎撃する。

 

「ハッ!」

 

 気合と共に【虎砲】を放つ。闘気弾は【虎砲】と激突すると、その場で雲散霧消した。

 

「にゃにっ!?」

 

 驚愕する黒歌。一輝は追撃しようと足を踏み出し──その場に崩れ落ちた。

 

「ぐっ!? これは・・・・?」

 

「ふふ、やっと効いて来たみたいね。この霧は悪魔や妖怪にだけ効く毒霧にゃん」

 

 いつの間にか辺りには霧が発生していた。この霧に晒された一輝の身体から力が抜け、息が苦しくなる。

 

「ヴァーリを倒したアンタは危険にゃ。悪いけど今の内に始末させて貰うにゃ」 

 

 黒歌は跪く一輝に向かって爪を突き出した。だが一輝は間一髪の所で黒歌の腕を掴み、辛うじて貫かれるのを防いだ。

 

「まだそんな力が残ってるの? でももう終わりにゃん!」

 

 ジリジリと黒歌の爪が食い込み、一輝の胸元から血が零れ落ちる。絶体絶命の危機であるのに一輝は薄く笑った。

 

「流石SS級、一筋縄じゃいかないな・・・・」

 

 黒歌の腕を掴む一輝の力が徐々に強くなる。ミシミシと嫌な音を立てる腕を引き抜こうと黒歌は必死になる。

 

「───こいつ!? は、離せ!」

 

「誰が離すか───ガイバーーーーー!!

 

 黒歌と密着した状態で一輝はガイバーを喚ぶ。

 

「ウニャア───ッ!?」

 

 強殖装甲を殖装する際、装着者の周囲の邪魔な物体を吹き飛ばすバリアが発生する。その衝撃は並の悪魔や堕天使を容易く消滅させる程で、それをまともに受けた黒歌は── 

 

「───ゲハァッ・・・・・・」

 

 バリアの衝撃と吹き飛ばされた時、樹木に激突してボロボロになっていた。

 闘気によって身体強化していたから耐えられたが、黒歌は元々術主体で戦うウィザードタイプ、肉体は然程鍛えていない為、既に満身創痍、意識を保つので精一杯だった。

 

(───不味い、逃げなくちゃ・・・・でも身体が動かない・・・・)

 

 仙術で治療しつつ立ち上がる黒歌の元に、足音を立てながらガイバーが近づいて来る。強殖装甲が完全に防いでいるのか、その足取りはしっかりしていて、毒霧の影響を感じさせない。

 

「くっ、こうなったら奥の手にゃ!」

 

 黒歌は右手に妖術、左手に仙術と異なる力を集中させ、一挙に放出した。

 黒歌が放ったのは触れただけで生物の命を奪う呪殺弾。黒歌にしか使えない彼女の切り札たる一撃は、螺旋を描きつつ混じり合い、ガイバーに迫る!

 だがガイバーが左手をかざすと、呪殺弾は左手に吸い込まれ、跡形もなく消滅した。

 

「! そんなバカにゃっ!?」

 

 自分の切り札たる呪殺弾をあっさり無効化され、黒歌は愕然とする。

 

「ば、化け物・・・・」

 

 その場にへたり込む黒歌の目の前にガイバーが立ち塞がり、右腕の【高周波ソード】を伸ばして振り被る。

 黒歌にはそれが死神の鎌に見えた。

 

(ああ──これまでかにゃ・・・・・・)

 

 ここに来て黒歌は観念した。ガイバー(一輝)には敵わないと自分の心が認めてしまった。

 

(思えば碌でもない人生だったにゃあ・・・・)

 

 黒歌の胸にこれまでの人生が走馬灯のように浮かんでは消える。両親や元の主、ヴァーリ達今の仲間、中でも最も強く浮かんだのは──最愛の妹、小猫(白音)だった。

 

(グレモリー眷属・・・・ガイバー(こいつ)ならきっと白音を守ってくれるかな?・・・・ごめんね白音、辛い目に合わせてばかりで・・・・悪いお姉ちゃんの事なんて早く忘れて、どうか───)

 

「幸せにね、白音───」

 

 ガイバーが【高周波ソード】を振り降ろした。

 

 

 

 

 

「幸せにね、白音───」

 

 白音に別れを告げ、最後を受け入れようとした黒歌()だけど、いつまで待ってもその時が来ない。不思議に思った私がそっと目を開くと、

 

「!!?」

 

 ほんの数㎝先で紅の刃が止まっていた。その事に思わず私は息を飲む。

 

「どう、して・・・・・・?」

 

 思わずそう漏らすと、ガイバーは変身を解除した。紅の躯が異次元に消えていくのを不思議そうに見つめる私に奴が尋ねる。

 

「黒歌・・・・お前本当に力に溺れて主を殺したのか?」

 

 今まで何回も真実を話したけど、誰も信じてくれなかった。所詮こいつらには真実なんてどうでもいい。こいつらが望むシナリオ通りの悪役──力に溺れた愚かな転生悪魔が欲しかっただけ。だから私は真実を告げるのを諦め、奴等のシナリオを受け入れた。

 そんな私に何て意味のない質問、私は呆れつつ、嘲笑を浮かべて答えた。

 

「本当にゃん。確かにあのクソ主は私が殺した。どう? これで満足?」

 

 だけど奴は私から視線を逸らさず、じっと見つめている。その視線に居心地の悪さを感じ、私は吐き捨てるように言った。

 

「まあ今更どうでもいいにゃん。私はもう動けないから好きにすればいいにゃん。それとも──動けないのをいい事に犯すつもりにゃ? ふふ、いいにゃ。お姉さんのテクで天国に連れてってあげるにゃあ❤」

 

 挑発するように着物をはだける。肩を露出させ、胸も上半分が丸見えになる。それでも奴はじっと私の目を見続ける。そして、

 

「確かにお前が主を殺したのは事実だろう。だが俺が聞きたいのはその動機だ。何故お前は主を殺したのか──誤魔化さずに真実を話せ」

 

 ハッキリそう言い放った。

 

 

 

 

 

「ふざけるにゃ! 今更私が真実を語って何の意味があるんにゃ! お前等は貴族の権威を守る為なら簡単に真実をねじ曲げる! そんな奴等に真実を語って、一体誰が信じるって言うのにゃあ!?」

 

 黒歌が怒りを込めて叫ぶ。それは虐げられ、理不尽に運命を歪められた怒りと哀しみを含んだ魂の叫びだった。 

 成る程、誰も彼女の言葉に耳を貸さず、ただ貴族の権威を守る為、彼女に「力に溺れたはぐれ悪魔」というレッテルを貼り付け、始末しようとしたのか。

 何とも酷い話だ。だからこそ一輝()は彼女──黒歌に言ってやらねばならない。

 

「俺が信じる! お前の言葉は俺が全て信じてやる! だから諦めるな! 諦めないでお前が本当にいるべき所に帰れ!!」

 

「───な、にゃにを・・・・・・?」

 

 俺の剣幕に圧され、黒歌は呆然とする。

 

「・・・・何で? どうして私を信じてくれるにゃあ?」

 

「・・・・お前の最後の言葉だ。死を受け入れた瞬間、お前は妹の、小猫ちゃんの幸せを祈った。死の間際に他人を思いやれるのは力に溺れてない証拠だ。本当に力に溺れた者ならば最後まで自分の事しか考えないからな」

 

「・・・・そんな事で」

 

「俺にとってはそれで充分だ。だから黒歌、話してくれないか?」

 

 俺が改めて尋ねると、黒歌は深く息を吐いた。そして、

 

「分かったにゃ。私は───」

 

 それから黒歌は自分の身に何が起きたのかを話してくれた───

 

 

 

 

 

 黒歌は人間の研究者であった父と猫又の母の間に生まれた。父は研究にしか興味が無く、生まれた娘を認知すらしない男だった。

 実験中の事故により両親を亡くした黒歌は幼い妹を育てる為、父の伝手を頼り上級悪魔ナベリウス家を訪れた。そこで会った男から眷属の誘いを受けた黒歌は、妹の白音に手を出さない事を条件に契約を交わし、男の眷属──僧侶となった。

 だが黒歌の主は眷属を強化する為なら非道な手段も厭わない男だった。

 黒歌は猫又の力を覚醒させ、順調に力を伸ばしていたが、眷属の中には妙な実験を受け、命を落とす者さえいた。

 やがて実験は眷属のみならず、その家族にまで魔の手を伸ばすようになる。そして主は白音に目を付けた。まだ幼い白音に契約を無視して死の危険のある仙術を使わせようとしたのだ。

 それを知った黒歌は妹を助けようと実験場に乗り込み主を殺害、間一髪で白音を救出した。だが白音を連れて逃げようとした所で邪魔が入り、黒歌は一人で逃げるしか無かった。

 黒歌が事情を説明しようとするも追手は黒歌の言葉に耳を貸さず、捕縛ではなく抹殺しようとして来た。いつしか黒歌は弁解する事を諦めた。そして、迫り来る追手を始末する内にSS級はぐれ悪魔として指名手配されていた。

 唯一気掛かりだった白音は姉が主を殺した責任を取らされ処分されそうになった所、グレモリー家に引き取られ、次期当主リアス・グレモリーの眷属になったと聞いた。

 行く宛も無くさ迷っていた時、『禍の団』からスカウトされた。そこでヴァーリと出会い、現在に至る───  

 

 

 

 

 

 話を聞いて俺は呆れた。聞いてた話とはまるで違う。黒歌は力に溺れて主を殺したのでは無く、妹を助ける為にやむを得ず殺してしまったのだ。しかも悪いのは明らかに主の方だ。「悪魔は契約を重んじる」──俺はリアスからそう聞いた。契約違反を犯したのなら殺されたって文句は言えないだろう。

 原作知識で黒歌が力に溺れた訳じゃないと分かってはいたが、細かい事情までは忘れていた。とにかくこの件は色々おかしい。果たして魔王(あの人)は知っているのか? 下手をすれば魔王(あの人)自身が黒幕という事もある。でも───

 

「・・・・なあ黒歌、お前妹の──小猫ちゃんの力になる気は無いか?」

 

 俺は黒歌の肩に手を置き、まっすぐに見つめる。

 

「私が妹の──白音の力に・・・・?」

 

 黒歌の金色の瞳が不安気に揺れている。

 

「ああ、あの娘は今、過去に囚われ前に進めずにいる。お前の助けが必要なんだ」

 

「・・・・白音が私を・・・・本当かにゃん・・・・?」

 

「あの娘が秘めた力を使いたがらないのは、力に対する恐怖が心の奥底に根付いているからだ。その恐怖を払拭出来るのは原因であるお前しかいないと俺は思ってる。上手くいけばその後も姉妹一緒に暮らせるようになるかもしれない。全てはお前次第だ。───どうする?」

 

 黒歌は一旦目を瞑ると、決意したかのように再び目を開いた。

 

「分かった。お前を信じるにゃ、ガイバー」

 

「OK、交渉成立だ。それと俺の名は不破一輝だ。一輝と呼んでくれ」

 

「分かったにゃ、一輝!」

 

 黒歌の金色の瞳は強い意志を宿し、もう揺れてはいなかった。

 

 

 

 

 

 不思議な気分だった。

 あんなにも恐ろしく、一時はこの命を諦めた死神のような存在だった筈なのに、今ではその黒い瞳で見つめられるだけで、何故か胸騒ぎがする。

 思えば今まで誰かに信じて貰った事が黒歌()にあっただろうか? 長い逃亡生活の中、他人を信じず、欲望や打算に塗れた視線にすっかり慣れっこになって、他人なんて利用するものだとばかり思っていた。

 『禍の団』の誘いに応じたのは身を隠すのに都合が良かったからだし、ヴァーリのチームに入ったのも強い者の側にいれば生き残れるだろうという打算からだった。

 でも一輝は違った。信じるという言葉と真っ直ぐ見つめる瞳からは強い意志が感じられた。誰かに信じて貰える、それがこんなに嬉しいなんて私は知らなかった。 

 絶大な戦闘力を持つといっても、一輝は所詮転生悪魔、権力の前には何も出来ないかもしれない。そんな事分かっているのに私は何故一輝を信じたのだろう?

 今は分からなくてもいい。せめてその理由が分かるまでは付き合ってやるとするにゃん。

 

 

 

 

 

 翌日。一輝()は再びサーゼクス様の執務室に来ていた。

 

「忙しい所お時間をいただきありがとうございます」

 

「構わないよ。今日はどうしたんだい、一輝君?」

 

「黒歌の件でナベリウス家の再調査をお願いしたいんです」

 

 サーゼクス様は仕事の手を止め、姿勢を正す。

 

「詳しく説明して貰おう」

 

「はい。先日黒歌と接触して彼女の話を聞いたのですが、どうも最初に聞いた話と食い違う点があるんです」

 

「それで再調査か・・・・黒歌は何と?」

 

 俺は黒歌から聞いた話を伝える。

 

 

 

「・・・・ふむ。一輝君、君は彼女の話を信じるのかい?」

 

「はい。俺は黒歌を信じます」

 

「我々政府の調査より犯罪者の言葉を信じると・・・・何故かね?」

 

「俺は黒歌と直接話をして、彼女の話に嘘は無いと感じました。それに、俺は冥界上層部に不信感を持っていますから」

 

「・・・・・・」

 

 サーゼクス様は何も言わない。続きを促してると感じ、俺は話を続ける。

 

「先日行われた若手悪魔の会合、トップである魔王様方はともかく、他の方々からは会合に参加した若手全員を嘲る気配がありました」

 

 そう、下級悪魔や転生悪魔を対象としたレーティングゲームの学校を作ると言った会長──ソーナは勿論、魔王になると言ったサイラオーグやゲームの王者を目指すと言ったリアスまで、奴等は「出来る訳無い」と高を括り、内心嘲笑っているのが見え見えだった。

 

「黒歌の話では主が契約違反をして、妹の小猫ちゃんに危害を加えようとしたのでやむを得ず主を殺害したそうです。そんな醜聞を貴族(あの連中)がそのまま発表するでしょうか? 寧ろ転生悪魔との契約など守る必要無いと思ってるんじゃありませんか?」

 

「・・・・・・」

 

「更に黒歌の追手は問答無用で彼女を殺そうとしました。本来なら彼女を捕縛して尋問すべきなのにです。これはナベリウス家が事件を揉み消そうとして動いた為だと思われます。ですからナベリウス家の再調査をお願いしたいのです」

 

 俺は言うべき事を言ってサーゼクス様の沙汰を待つ。

 

「やはりそうだったか・・・・・・一輝君、黒歌は今どこに?」

 

「俺が保護していますが・・・・」

 

「彼女に会わせて欲しい。確かめたい事があるんだ」

 

 何やら真剣な表情でサーゼクス様が迫る。暫し考え、俺は虚空に向かって声をかけた。

 

「という事だが、どうする黒歌?」

 

『・・・・分かった。今行くにゃ』

 

 俺の声に応えて着物を着崩した猫耳の美女──黒歌が虚空から現れる。彼女は虚空に身を隠し、俺達の会話を聞いていたのだ。

 空間を操る術は高等技術、それを自在に使いこなす黒歌にサーゼクス様は目を見張った。

 

「何と・・・・君が黒歌か。私は四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーだ。以後よろしく」

 

「・・・・黒歌にゃ」

 

 サーゼクス様の挨拶に黒歌は短く答える。

 

「うん。単刀直入に聞こう。君は元の主との契約書をまだ持っているかい?」

 

 「悪魔は契約を重んじる」──その言葉通り、通常眷属になる時は主と契約書を交わす。その時契約書を二通作り、主と眷属がそれぞれ保管するのが習わしだ。俺も後からではあるがリアスと契約を交わしている。 

 

「・・・・あった、これにゃ」

 

 黒歌が虚空に手を突っ込み、一枚の羊皮紙を取り出した。

 それは黒歌がナベリウス家の一員であった元の主と交わした契約書。だが通常黒一色で書かれている契約書は主の名が赤く染まり、全体に大きく×印が浮かんでいた。これは・・・・

 

 黒歌も契約書の変化に気付かなかったらしく驚いている。

 

「サーゼクス様、これは一体・・・・」

 

「一部の上級悪魔しか知らない事だが、悪魔の契約書にはある細工が施してある。契約に違反した時、違反した者の名が赤く染まり、契約が無効になった証として全体に×印が浮かび上がるんだ。これによってどちらが契約を破ったか明らかになる」 

 

「ではこれは十分な証拠になると?」

 

「うむ。・・・・実を言うとこの件は以前から疑惑があってね。ナベリウス家の不正の証拠を探していたんだ。そこで黒歌が契約書を持っていれば証拠になると考え、彼女が冥界に現れたのを機に君に捕縛を頼んだんだよ」

 

 聞いてない裏の事情を聞かされ、俺は天を仰ぐ。

 

「教えて下さいよ、そう言う事は!」

 

 下手をすれば黒歌を殺してしまう所だった。

 

「ハハハ、いやあ、すまない。こちらにも事情があってね。──とにかく黒歌、君の身柄を私に預けて欲しい。流石に無罪放免とはいかないが、かなりの減刑は出来ると思う。どうだろう?」

 

 良かった、これで魔王の保護を受けられる。だが黒歌はピタリと俺に寄り添い、条件を付けた。

 

「・・・・一輝が一緒ならいいにゃ」

 

「黒歌!?」

 

 俺の出番は終わったとホッとした矢先で驚いたが、黒歌の不安気な顔を見て覚悟を決めた。

 

「サーゼクス様、このまま黒歌の護衛をさせて下さい。俺には彼女の行く末を見届ける責任がある」

 

 サーゼクス様は寄り添う俺達を見て、笑みを浮かべる。

 

「分かった。ではお願いしよう」

 

 

 

 

 

 一輝君と黒歌を別室で待機させ、部下に色々手配しているとノックの音がしてグレイフィアが入室して来た。

 

「どうでしたか、一輝さんは?」

 

 開口一番に訊ねるグレイフィアにサーゼクス()は微笑んだ。

 

「予想以上だったよ。与えられた情報を鵜呑みにせず、黒歌の証言を得て事の真相に辿り着いた。

これで一輝君が戦闘力だけの男ではないと証明出来るだろう」

 

 これで近年黒い噂の絶えないナベリウス家に司法の手が入れられる。その切っ掛けとなったなら、アジュカもファルビウムも納得するだろう。

 元より一輝君の力は最上級悪魔に匹敵する。その力を遊ばせておくのはあまりに勿体無い。

 

「───では?」

 

「ああ。少し早いが彼にはその実力に相応しい地位へと上がって貰うとしよう」

 

  

 

 

 

 

 

 

 




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