※この作品はR-18です。

ハイスクールD×G~駒王町の規格外品   作:Tokaz

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続けて第2話を投稿します。
ご覧下さい。


第2話 ライザー・フェニックスの挑戦

 

 

 今朝は遅刻ギリギリで3年A組の教室に駆け込んだ。自分の席に座ると、リアスさんと姫島さんがこっちを見ていた。俺が目礼をすると、彼女らはニッコリと微笑んでいた。

 

 

 

 

 その日の授業が終わり、放課後となった。詳しい話は明日と言ってたが、どうすればいいのだろう? そんな事を考えてる俺の元に姫島さんがやって来た。彼女は俺の耳元に唇を寄せると、

 

「不破君、私と一緒に来て下さい。部室にご案内しますわ」

 

 そう呟き、ニッコリと微笑んだ。

 

「ああ、分かった」

 

 彼女の後に続き教室を出る俺の姿にクラスメイト達は唖然としていた。

 

 

 

「あ~、姫島さん?」

 

 聞きたい事があったので声をかけたが、彼女は唇に指を立てて黙るように示した。

 しばらくして、旧校舎に入ると彼女は立ち止まり、こちらに振り向いた。

 

「ここなら大丈夫。人払いの結界が張ってあるので普通の人は入って来れませんわ。悪魔の事は出来るだけ聞かれないようにしませんと、ね?」

 

 そう言われて気付いた。彼女は学園の人気者だ。どこで誰が彼女の事を見ているか分からないんだから気をつけなくては。

 

「すまない。迂闊だった」

 

「うふふ。次から気を付けてくれればいいんですのよ。それで、何かしら?」

 

「ああ。というかもう分かった気がするが、姫島さんもやはり・・・・・・?」

 

「ええ。私も貴方と同じ転生悪魔ですわ。リアス部長の『女王(クイーン)』を務めていますの」

 

 成る程。確かに彼女はいつもリアスさんと一緒だった。親友同士だと思っていたが、王とその眷属、それも女王というなら納得であった。

 

「ってリアス部長?」

 

「ええ。リアスはオカルト研究部の部長を務めています。私達眷属は部に所属し、彼女の事を普段は部長と呼んでいます。貴方も今日からオカ研に所属して貰いますわ」

 

「成る程。俺もそう呼んだ方がいいのか?」

 

「おそらくそうなるでしょう。では参りましょうか」

 

 そう言って彼女は歩みを進める。俺達はやがてオカ研部室の前まで来ると、彼女が扉を開けて言った。

 

「ようこそオカルト研究部へ」

 

 

 

 

 部室に入ると五人の男女がいた。男が一人、女が四人。俺達が中に入ると、一番奥の大きな机に座っていたリアスが立ち上がった。

 

「良く来たわね一輝。あ、一輝と呼ばせて貰うわね。貴方は私を部長と呼びなさい」

 

「はい部長」

 

「よろしい。それでは貴方の仲間である私の眷属を紹介するわね」

 

 リアスが目配せをすると、最初に姫島さんが口を開いた。

 

「ではまず私から。三年の姫島朱乃です。リアス部長の『女王(クイーン)』です。朱乃と呼んで下さい。よろしくお願いしますわ、一輝君」

 

 次にソファーに座ってお菓子を食べていた小柄な娘が立ち上がる。

 

「一年、塔城小猫。『戦車(ルーク)』です。よろしく一輝先輩」

 

 次に真新しい制服を着た金髪の娘が立ち上がる。

 

「えと、えと、わ、私はアーシア・アルジェントと言います。『僧侶(ビショップ)』の、二年生です。私も眷属になったばかりなんです。新人同士仲良くして下さい、一輝さん」

 

 次にこの場にいる俺以外の唯一の男が立ち上がった。

 

「二年、兵藤一誠。部長の『兵士(ポーン)』をやってます。俺以外の男が入ってくれて嬉しいっす。よろしく一輝先輩!」

 

 イッセーにそう言われて俺は疑問を感じた。あれ? 俺以外の男? 木場は? あのイケメンはどこに行った? そんな俺の疑問に答えるかのように、この場にいる最後の一人が立ち上がった。  

 

「二年、木場祐美です。リアス部長の『騎士(ナイト)』を務めています。気軽に祐美と呼んで下さい。よろしくお願いします、一輝先輩」

 

 美しい少女だった。亜麻色の長い髪と深い蒼の瞳。整った顔立ちの、制服の上からでも分かる抜群のプロポーションをした魅力的な美少女だ。って木場?祐美?何で女になってんの!?・・・・そう言えば何巻かは忘れたが、女体化した木場のイラストがあった。確かにそれそっくりだ。俺は原作との大きな違いに驚きを禁じ得なかった。

 

「・・・・俺は三年の不破一輝。故あってリアス部長の『兵士(ポーン)』になった。皆これからよろしく」

 とにかく俺は、驚きながらも表面上は平静を装って、皆に挨拶した。こうして眷属との対面は終わった。

 

 

 その後、新人悪魔である俺とアーシアは悪魔稼業の説明を受けた。悪魔も客を取らねばならないとは世知辛い世の中だ。とは言え給料が貰えるのは有難い。これならバイトを辞めても生活出来そうだ。

 こうして俺は新たな人生(悪魔生?)をスタートさせた。

 

 

 

 

 

 それから、契約を取る為に色々な人に呼び出されたり(俺とアーシアは問題無く魔方陣を使えた。イッセーがチャリで移動してるのを見て、悪いが笑ってしまった)、皆で戦闘訓練をしたり、はぐれ悪魔や堕天使を討伐したりして時は過ぎていった。

 

 俺は前世の記憶を思い出したせいか、以前よりリアス部長に魅力を感じなくなっていた。

 彼女は原作ではイッセーがいなければ眷属が全滅していた場面がいくつもある程、王として未熟な所が多かった。今の彼女にもその片鱗が見て取れる。おそらく幼少時から出来が良くて、大きな失敗をした事がないのだろう。そんな人特有の自信過剰な所が彼女にはあった。

 だから俺は彼女を王と認め、命を預ける気にはなれず、訓練でもはぐれ悪魔の討伐でも本気を出す事はなかった。幸い俺は駒消費一の兵士。眷属中最弱と見なされていたので、特に何も言われなかった。

 

 

 

 

 

 ある日の放課後、掃除当番で遅れて部室に行くと何だか不機嫌そうな部長と、その傍らには笑顔ながら妙にピリピリしている朱乃さんと場違いなメイド服を着た銀髪の美女がいた。あの女性(ひと)は確か───?

 俺はこの雰囲気に居心地悪そうにして固まっている皆に声をかけた。

 

「何やってるんだ、皆して?」

 

「一輝先輩。それが、その・・・・」

 

 俺が訊ねると祐美が言い難そうにしていた。

 

「ふうん? まあいいや。あの美人のメイドさんは?」

 

「あの人はグレイフィアさんと言って、グレモリー本家のメイドさんです」

 

 ああ、そうだった。彼女はグレイフィア・ルキフグス。確か魔王ルシファーの妻でありながら何故かグレモリー家のメイドをしているという、正直どう扱っていいのか分からない『最強の女王』と呼ばれている女性(ひと)だ。

 因みにリアス部長の義姉だった筈。いかんな、前世の記憶がすっかり薄れている。まあ原作を読んでから二十年近く経っているんだから仕方がないか。

 

「グレモリー本家のメイド? 何でそんな人が?」

 

「それは・・・・・」

 

 そんな事を話していると、部室の床に魔方陣が描き出された。でもそれはいつも見ているグレモリー家の魔方陣じゃなく、

 

「───フェニックス」

 

 祐美がそう呟いた。フェニックス家。グレモリー家と同じ72柱の上級悪魔の名門だ。その魔方陣から二十代前半の、どこか軽薄なホストのような雰囲気のイケメンが姿を現した。

 

 その男はライザー・フェニックス。フェニックス家の三男で、リアス部長の親同士が決めた婚約者だそうだ。だが部長はこの縁談を断固拒否しており、言い争う二人に部室内は次第に険悪な雰囲気になっていった。

 この雰囲気を破ったのはグレイフィアだった。彼女は最後の手段として、リアスとライザーのレーティングゲームで決着を着ける事を提案した。

 

 

 

 ───レーティングゲーム

 

 

 それは王たる上級悪魔が自らの眷属を率い、あらゆるルールの元に競い合う冥界独自の競技。元々は眷属を損なう事なく実戦訓練をする場であったが、後に様々な種目が考案され、今では冥界屈指の娯楽として冥界全土に放送される程の人気があるという。

 ゲームの種目により、戦闘力だけでなく、知略やスピード、技術(テクニック)、果ては運すら必要となる王たる者の裁量が試される競技なのだ。その為、現政権ではゲームの成績が王たる悪魔の評価に反映されている。

 

 

 

 本来未成年の部長にゲームの参加資格はないが、純血悪魔同士であれば非公式になら参加出来るらしい。尤もその場合は今回のように揉め事を解決する為が多いらしい。

 とは言え、渡りに船とばかりに部長はゲームを受けてしまった。これってグレイフィアさんの筋書き通りじゃないのか? ライザーは成人。既にゲームを何戦もしていて、白星の方が多いらしい。更に眷属も十五人全員が揃っている。

 対するリアス部長は未成年でゲームは初めて。眷属は六人しかいない。これで勝てると思う方がおかしくないか? 案の定ライザーに食ってかかったイッセーがライザーの眷属の娘にあっさりと返り討ちに合っていた。

 ともあれ、ライザーの温情でゲームは十日後に行われる事になり、俺達グレモリー眷属はその日に向けて修業する事になった。

 

 

 

 

 

 魔方陣でとある山中に転移した俺達はグレモリー家所有の山荘を拠点として、修業を開始した。

 祐美による剣術修業。朱乃さんによる魔力修業。小猫ちゃんによる格闘修業。部長による基礎力アップ等々。俺とイッセーは徹底的にしごかれた。イッセーはヘロヘロになっていたが、俺は祖父とここより険しい山の中で育ったので、苦にならなかった。

 

 この修業で俺は魔力による身体強化を身に付けた。一口に身体強化といっても、腕力や脚力だけではなく、極めれば視力、聴力、内臓や神経までも強化出来る、大変便利な能力だ。俺は新たな能力を得た事で自信をつけていた。

 

 逆にイッセーは自分の弱さを痛感して、落ち込んでいた。【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】という伝説級の【神器(セイクリッド・ギア)】を持っていたとしてもイッセー自身はごく普通の一般人だ。祐美や小猫ちゃんは勿論、俺にまで模擬戦で負けた事がショックだったらしい。

 確かに【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】は十秒毎に力を倍加するという恐るべきものだが、だったら速攻で倍加する前に倒してしまえばいい。俺が身体強化で近付き、目の前で拳を止めた時も全く反応出来ず、呆けた顔をしていた位だ。倍加するまでの十秒間を今のイッセーは凌げないのだ。

 加えて祐美や小猫ちゃんとの模擬戦で、自分が手も足も出なかった相手と自分より弱いと思っていた俺が渡り合うのを見て、自分が一番弱いと自覚しショックを受けていた。

 

 修業で自信をつけるどころか、自信を失っていたイッセーをどうするべきかと思っていたら、翌日修業前に部長がイッセーと祐美に模擬戦をやるよう命じた。それもイッセーに2分間力を倍加させてからだ。

 結果は引き分け。イッセーは祐美の攻撃に耐える耐久力や、山を吹き飛ばす程の魔力を見せた。部長はイッセーに自信を付けさせる為にこの模擬戦をさせたようだ。

 確かに今のイッセーには自信を付ける事と今の基礎練習が無駄ではない事を示す必要があった。だが、二分間力を増大させてこれなのだ。それだけの時間をイッセーに与えてくれる敵が果たしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 十日後、修業を終えた俺達はライザー眷属とのレーティングゲームに挑んだ。

 魔方陣に乗って行き着いた先は、見慣れたオカ研の部室だった。ここはゲームの為に駒王学園を模して作られた一種の仮想空間であるらしい。本物と寸分違わぬ出来に初めて見た俺とイッセー、アーシアは驚いていた。

 

 ゲームの内容は駒王学園を舞台にした遭遇戦。俺達は旧校舎のオカ研部室、ライザー眷属は新校舎の生徒会室を本拠地として、互いの王を倒すまで戦い続けるというシンプルなルールだ。このルールも、俺達に地の利がある駒王学園を舞台にしたのもゲーム初心者である俺達に対するハンデなのだろう。

 尚、このゲームはグレモリー、フェニックス両家の当主並びに四大魔王の一人、ルシファー様が観戦するという。因みに魔王ルシファー様は部長の実のお兄さんとの事だ。その事を聞い部長は妙に張り切っていた。

 

 

 キンコンカンコーン!

 

 

 聞き慣れたチャイムが鳴り、ゲームが開始された。祐美がどこからか出したのか学園の全体図を広げ、作戦会議が始まった。

 会議の結果、敵本拠地のある新校舎への足掛かりとして、体育館を占拠する事になった。一先ず本拠地防衛の為、祐美と小猫ちゃんが森にトラップを仕掛けに行った。他のメンバーは二人が戻るまでここで待機。その間イッセーは部長に膝枕して貰い、号泣していた。それを見たアーシアが頬を膨らませている。ゲーム中だというのに緊張感のなさに呆れていると、

 

「羨ましいですか?」

 

 いきなり朱乃さんに耳元で囁かれた。俺が驚いて目を向けると、

 

「よろしければ私の膝をお貸ししましょうか?」

 

 耳元にかかる甘い吐息に誘われ、ついその気になりかけたが、俺は何とか耐えた。

 

「魅力的なお誘いだが止めておくよ。緊張感を切りたくないからな」

 

 俺がそういうと、朱乃さんは蠱惑的な笑みを浮かべる。

 

「ウフフ、残念。フラれてしまいました」

 

 そう言って俺から離れていった。彼女は時々ああして俺を揶揄ってくるから心臓に悪い。と、そうこうしている内に祐美と小猫ちゃんが戻って来て、作戦開始となった。

 

 配置はイッセーと小猫ちゃんで体育館を占拠。俺と祐美は遊撃、朱乃さんは独自の判断で参戦を許されている。部長とアーシアが本拠地に残り、指示を出す。俺達は各々走り出した。

 

 途中、体育館へ向かう二人と別れ、俺と祐美は運動場へ向かった。その途中、

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)三名、戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

 と、アナウンスがあった。体育館組は上手くやったようだ。俺と祐美は笑みを交わす。だが、次の瞬間、

 

『リアス・グレモリー様の戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

 とのアナウンスにその笑みが凍り付いた。小猫ちゃんがやられた。撃破した直後の隙を狙われたのか、さぞ悔しかっただろう。イッセーが怒り狂ってるのが目に浮かぶようだ。

 いずれにせよ、ただでさえ少ない人数が減らされて喜んでいられなくなった。俺達は気を引き締めて運動場へ向かった。

 

 運動場には見回りをしているのか、三人の人影があった。どうやら俺達には気付いてないようだ。

 俺と祐美は顔を見合わせ頷き合う。三人が俺達の前を通り過ぎたその時、祐美が騎士特有のスピードで襲いかかった。瞬く間に二人を打ち倒すと、突然の事に反応出来ないでいるもう一人を俺がボディブローで眠らせた。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)三名、リタイヤ』

 

 敵兵士三人を撃破したすぐ後でイッセーが合流した。イッセーによると、小猫ちゃんは敵の女王にやられたそうだ。今、その女王は朱乃さんと一騎打ちの最中らしい。

 イッセーの報告を聞いていると、運動場の真ん中で「正々堂々と戦え!」と宣う敵騎士が現れた。その誘いに祐美が乗った。名乗りを上げ、剣を交わす騎士二人。俺とイッセーは二人の戦いを見守っていたが、そこへ敵僧侶一人と、戦車が現れた。

 イッセーは「あの戦車は俺が。先輩は僧侶を頼みます!」と言うと、【赤龍帝の籠手】を具現化して戦車に立ち向かった。

 残された俺はやる気のなさそうな僧侶に声をかけた。

 

「で? 君はどうする。()るのか?」

 

「お断りですわ。実際私、戦う気なんてありませんもの」

 

 西欧のお姫様が着るようなドレスを着た、金髪縦ロールの美少女僧侶はそう言った。

 俺は彼女の言葉が真実だと感じ、隣でイッセーと祐美の戦いを観戦していた。

 

「いいのか? 主の結婚が掛かった大事なゲームなんだろ?」

 

「それは貴方も同じでしょう? 私は、まあオブザーバーのようなものですから参戦はしませんわ」

 

「オブザーバー?」

 

「申し遅れました。私はレイヴェル・フェニックス。ライザーの妹で、『僧侶(ビショップ)』を務めています」

 

 ああ、そう言えばいたな、そんな娘。

 

「ご丁寧にどうも。俺はリアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』、不破一輝だ。よろしくレイヴェルさん」

 

「よろしく。私もそうですけど、貴方からもやる気が感じられませんわね。リアスさんがお兄様と結婚してもいいのですか?」

 

「これは純血の悪魔を絶やさない為の政略結婚だろ? 悪魔社会の為には寧ろいい事だと言える。政略結婚なんて貴族の義務の内だし、彼女だってそういう教育を受けて来た筈だ。正直リアスがあそこまで結婚を拒否する理由が分からないんだよなあ」

 

「・・・・貴方変わってますわね。以前リアスさんから聞いた話ですが、彼女は恋愛結婚に憧れているそうですわ」

 

「え? それがこの騒動の理由?」

 

「だと思いますわよ」

 

「──クク、」

 

「?」

 

「クク、アハハハッ!」

 

 俺はレイヴェルの話を聞いて思わず笑ってしまった。たかだか恋愛結婚したいが為にこんな騒動を引き起こすとは。

 

「ククク、リアスは分かってるのか? 負ければ即結婚の上、無謀な戦いを挑んだ愚か者として、勝っても貴族の義務を放棄したワガママ姫として、どちらにしても自分の『(キング)』としての評価はガタ落ちだって事に」

 

「おそらく気付いてないでしょうね。今のリアスさんはお兄様と結婚したくない一心なのでは?」

 

「だろうな。いやはや『(キング)』失格だな」

 

「随分はっきりと言いますわね、貴方」

 

「『(キング)』には苦言を呈する者も必要だろ? うちの眷属はイエスマンばかりだからな」

 

「確かに。貴方中々面白い方ですわね」

 

「そうか? まあ誉め言葉として受けておくよ」

 

 そんな風にレイヴェルと話していると、イッセーが『洋服崩壊(ドレスブレイク)』という新技を炸裂させ、戦車の彼女の服をバラバラに弾き飛ばした。

 俺達の間に居たたまれない空気が流れる。

 

「何と言うか、うちの馬鹿がすまない」

 

「・・・・・・最低ですわね」

 

 イッセーはその隙に戦車を撃破。あいつはハーレム王になりたいとか言ってるくせに、女から嫌われるような技を編み出してどうする!? 味方ながら頭が痛くなって来た。すると、

 

「来たようですわね」

 

 レイヴェルが呟くとその背後に四人の人影が。兵士二名に騎士と僧侶一名ずつ。女王を除いた残りのライザー眷属が全員集合してしまった。

 そして告げられる最悪の事態。部長がライザーの誘いに乗って、王同士の一騎打ちを受けてしまったそうだ。何考えてるんだあの人は! 王自らが戦場に出てどうする!? 最早一刻の猶予もない。俺はイッセーに指示を出した。

 

「イッセー行け。部長を守るんだ」

 

「一輝先輩!? でもこの人数相手じゃ」

 

「『(キング)』を取られたら終わりなんだぞ。優先順位を間違えるな」

 

 未だ迷いをみせるイッセーに祐美からも言葉が飛ぶ。

 

「一輝先輩の言う通りよイッセー君。ここは私達に任せて早く!」

 

「くっ、二人共すまん!!」

 

 祐美の言葉に背中を押されて、イッセーが走り出した。

 ライザー眷属は余裕をみせて、イッセーを追おうともしない。俺達を片付けてからでも間に合うと思っているらしい。

 

「フフ、「ここは任せて先に行け!」ですか。物語なんかで良くあるカッコいい場面ですけど、すぐにやられては意味がありませんわよ?」

 

 レイヴェルが見下したように嘲笑(わら)う。

 

「そのつもりはない。俺も祐美もお前らを倒してイッセーを追いかける」

 

「そう。言っておきますけど、一対一なんてしませんわよ。全員でフルボッコですわ」

 

 レイヴェルがそう言い終える前に、騎士の前に一瞬で移動した俺は、拳を軽く彼女に当てる。

 次の瞬間、騎士が吹き飛んだ。

 

『ライザー・フェニックス様の騎士(ナイト)一名、リタイヤ』

 

 みぞおちの辺りに拳大の陥没跡を付けて騎士が退場する。一瞬の出来事にライザー眷属は全員目を丸くしている。

 

「な、何をしたの!?」

 

「不破圓明流【虎砲(こほう)】」

 

 祖父から教わった不破圓明流の技。魔力による身体強化を加えて放った一撃は敵騎士を撃破するに至った。俺は未だ呆然としている獣娘の兵士に襲いかかる。

 

「ニャッ!?」

 

 俺の放った左回し蹴りに反応して、逆方向へ飛ぶ彼女。だが、その方向には俺の右回し蹴りが既に飛び、カウンターで彼女に命中した。

 

「不破圓明流【双龍脚(そうりゅうきゃく)】」

 

 本来双龍脚は圓明流の技ではなく、主人公のライバルの技なんだが、俺を転生させた女神様がアバウトだったらしく、圓明流だけでなく『修羅の門』全般の技を使えるようにしてくれたらしい。現に祖父からは圓明流の技として教わっていた。

 

「よくもやったニャッ!!」

 

 相棒をやられたもう一人の獣娘が、怒りのままに頭上から襲いかかる。俺は拳を頭上に置いて、タイミングを合わせて飛び上がる。拳が当たった瞬間、アッパーの要領で更に拳を叩き込んだ。

 

「不破圓明流【浮嶽(ふがく)】」

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)二名、リタイヤ』 

 

 アナウンスが流れる。三名の敵眷属を撃破するのに約二十秒。辺りに沈黙が流れる。味方である祐美ですら呆然として俺を見ていた。それらの視線を無視して、俺は残る僧侶に向けて走り出す。

 

「ひっ!」

 

 次の標的が自分だと覚ったのか、ひきつりつつも魔力障壁を張る僧侶。だが遅い。俺は走りながら拾った石を投げる。強化した腕力で投げた石は弾丸のように一直線に飛び、僧侶の魔力障壁を破壊した。

 俺は前方宙返りして、左右の踵落としを叩き込む。

 

「不破圓明流【斧鉞(ふえつ)】」

 

『ライザー・フェニックス様の僧侶(ビショップ)一名、騎士(ナイト)一名、リタイヤ』

 

 見ると、祐美も相手の騎士を倒したようだ。これで残るはレイヴェルを除けば女王とライザーのみ。

 

「・・・・貴方一体何者ですの? とても駒消費一の『兵士(ポーン)』とは思えませんけど?」

 

「生前、武術をかじった事のあるただの『兵士(ポーン)』だよ」

 

 レイヴェルの問い掛けに俺はそう答えた。その時、

 

『リアス・グレモリー様の女王(クイーン)、リタイヤ』

 

 朱乃さんの敗北を知らせるアナウンスが流れる。次の瞬間。俺は祐美に抱き着いた。

 

「祐美!!」

 

「え? きゃあああっ!!」

 

 さっきまで祐美のいた場所に凄まじい爆発が起こる。一瞬遅れていたら、祐美が撃破されていた所だ。

 

「危なかった。大丈夫か祐美?」

 

「は、はい。ありがとうございます、一輝先輩」

 

 頬をほんのり染めて祐美が言った。今の攻撃は間違いなく、

 

「『女王(クイーン)』・・・・!」

 

 空中には残念そうな顔をした敵女王が浮かんでいた。

 

「チッ、逃げられたか」

 

 あいつ、小猫ちゃんと同じ要領で祐美を撃破しようとしてたらしい。同じ手を食うかっての。

 

「先輩。ここは私に任せて行って下さい」

 

「祐美・・・・?」

 

「相手は不死身のフェニックスです。イッセー君だけでは部長を守りきれないかもしれません。だから先輩も行って下さい」

 

 暫し祐美と見つめ合う。彼女の真摯な瞳に俺は決心する。

 

「分かった。あれは任せるぞ」

 

「はい! 部長を、私達の『(キング)』をお願いします!」

 

 俺は頷いて、走り出した。

 

 

 

 

「まだ戦りますの?」

 

 フェニックスの炎の翼を広げ、レイヴェルが隣を飛んでいた。

 

「素質は認めます。数年後ならば貴方達が勝つでしょう。でも、今回は私達の勝ちですわ」

 

「何故そう言い切れる?」 

 

「これまでの戦いで貴方達の体力は限界の筈。いくら元聖女の『僧侶(ビショップ)』が傷を癒やせても、体力まで戻せないでしょう?」

 

 彼女はそう言って懐から小瓶を取り出す。

 

「【フェニックスの涙】。我がフェニックス家の特産品ですわ。その効果は如何なる傷をも瞬時に回復させる事が出来るんですのよ」

 

 つまりこれがあるから自分達の負けはないと言いたいらしい。その後フェニックス家が如何に裕福かを自慢気に話していたが、無視して加速した。後方から金切り声が聞こえた気がしたがこれも無視した。

 

 新校舎に到着した俺は非常階段を足掛かりに飛び上がり、一気に屋上へ到達した。

 そこで俺が見たのは、ボロボロになってもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 ライザーとの一騎打ちを受けて、リアス()とアーシアは新校舎の屋上へ移動した。

 私に宿る滅びの力。これならば不死身のフェニックスをも倒せると思っていた。だけど、滅びの力を宿した魔力弾をいくら放っても悉く再生するライザーに私も打つ手を失くしかけていたその時、

 

「部長ォォォォッ! 兵藤一誠、只今参上しましたぁぁぁッ!」

 

 イッセーが来てくれた。彼は不思議な子。どんな絶望的な状況だろうと、彼がいれば何とかなる。そんな気にさせてくれる、眷属のムードメーカーだ。

 勝負はまだこれから、仕切り直しだ、と私はそう思っていた───

 

 これまでの戦いで身体を相当酷使して来たのだろう、イッセーの体力は既に底を突いていた。彼は悪魔に転生して日が浅い。戦いなんて縁のない生活を送っていたのだ。そんな彼が戦場へ身を置けば、その緊張感から体力や精神力を疲弊させるに決まってる。持ち前の元気とスケベ心で何とか持たせていたが、それも限界だった。

 【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を具現化して力を何倍にして攻撃してもライザーには効かなかった。最初は嘲笑っていたライザーも途中から憐れみの視線をイッセーに向けていた。

 ライザーの炎を食らう度、アーシアに癒されて、また立ち向かう。その様は最早幽鬼のようだった。そして、とうとう力尽き、イッセーは倒れた。それでもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿に私の心は遂に折れた。

 ああ、私は大切な眷属達に何て事をしてしまったんだろう。私のワガママに付き合わせて、こんなに傷だらけにしてしまった。朱乃、祐美、小猫、アーシア、一輝、そしてイッセー。ごめんなさい。駄目な王である私を許して。私は全てを諦め、敗北を認める言葉を口にする。

 

投了(リザイン)───」

 

 その時、腕を誰かに掴まれた。

 

 

 パンッ!

 

 

 乾いた音と共に左頬が熱くなる。顔を上げると、そこには見た事のない険しい表情をした一輝がいた。

 

「一輝・・・・?」

 

 どうして彼がここにいるのだろう。イッセーによれば彼と祐美はイッセーをここへ向かわせる為に残りのライザー眷属全員を相手にしていた筈。彼がここにいるという事は───?

 

「何をしようとした?」

 

「え?」

 

「今、何をしようとしたのか聞いてるんだ。答えろ、リアス・グレモリー」

 

「・・・・・もういいのよ、一輝。このゲームは私達の負けよ。私はもう眷属の皆に傷付いて欲しくないの・・・・」

 

 私がそう呟くと、一輝は怒りのままに私の襟首を掴み上げた。

 

「ふざけるな! アンタのやろうとしてるのは眷属(俺達)全員を侮辱する行為だと分からないのか!?」

 

 どうして? 私はもう諦めたんだから、それでいいじゃない。こんな思いをするなら大人しく婚約を認めるべきだった。

 

「それが嫌だから戦う事を選んだんだろう。まだ眷属(俺達)が諦めてないのに、アンタが真っ先に諦めてどうする!?」

 

 でも、ライザーは強いわ。いくら攻撃しても再生する。不死身のフェニックスには敵わないのよ。

 

「ならアンタは面と向かってあいつに諦めろと言えるのか? 目を見開いて良く見てみろ!」

 

「え?」

 

 一輝にそう言われ、私の目に映ったのは、ボロボロになってもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿だった。

 

「い、イッセー!?」

 

 イッセーは呼吸も荒く、身体中血と汗にまみれている。力が入らないのか、身体がフラついているが、それでも目だけは光を失わず、真っ直ぐにライザーを見つめていた。

 

「あいつは馬鹿でスケベで、だけど真っ直ぐな奴だ。アンタが諦めるというのは俺達に、そして何よりあいつに対する裏切りだと思え」

 

「ああ───!」

 

 何という事だろう。私はまた間違える所だった。私が諦めるという事はここまで戦ってくれた皆に対する裏切りに他ならない。私は皆の『王』なのだ。他の誰が折れても私だけは折れてはいけない。私が始めた戦いに私は責任を取らなくちゃいけない。私は強くならなくちゃいけない。もっと心を強く持たなくちゃいけないんだ!

 

「ごめんなさい一輝、そしてイッセー。私が間違っていたわ。私はもう諦めない。このゲーム必ず勝ってみせるわ!!」

 

 涙を拭いて、リアス・グレモリー()は再び立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 一輝()は立ち上がろうとしているイッセーの肩に手を置いた。

 

「イッセー、聞いたか? 俺達の『(キング)』が復活したぞ。もういい。後は任せろ」

 

「か・・・ずき、せ、ん、ぱい・・・・?」

 

「ああ」

 

「・・・・後、は・・・頼、・・・す・・・・」

 

「イッセー!?」

 

「大丈夫、気を失っただけだ。アーシア!」

 

「は、はい!」

 

 気を失ったイッセーを抱えて、アーシアを呼ぶ。

 

「イッセーを頼む」

 

「はい!」

 

 イッセーをアーシアに預けると、俺は部長に訊ねた。

 

「部長。教えて欲しいんだが、何故ライザーとの結婚をそこまで嫌がるんだ? これは政略結婚であり、悪魔社会には必要な事だと理解してるんだろ?」

 

「それは・・・・・」

 

 果たして何と答えるだろうか。やがてリアスは顔を上げ、キッパリと言い放った。

 

「だって・・・・だって私、ライザーみたいな節操のない女たらしは嫌いだもの!私は私が好きになった人と激しい恋愛の末に結ばれたいの!それが子供の頃からの夢なの!文句ある!?」

 

 あろう事か何の脚色もなしに、自分の本心を言い放った。この場で聞いていたライザーもレイヴェルも、アーシアさえ言葉を失っていた。おそらくこの試合を観ている両家の当主と魔王様、退場した両眷属も同様だろう。

 

「───プッ」

 

 静寂が支配するこの場で、

 

「ククク、アハハハハッ!」

 

 俺の笑い声が木霊した。

 

「な、何よう・・・・」

 

 呆気に取られていたリアスは羞恥なのか怒りなのか分からないが、顔を真っ赤にして、ちょっと涙目になっていた。

 

「まさかレイヴェルの言った通りだとは。大当たりだぞ、レイヴェル」

 

 レイヴェルは宙に浮かんだまま、額に手を当てていた。

 

「ククク、なあリアス。アンタこのゲーム、勝っても負けても自分の評価はガタ落ちだって気付いてるか?」

 

「え!?」

 

 気付いてなかったようだ。俺は先程レイヴェルと話した事を説明する。リアスは「あっ!」と口走り、呆然としていた。

 

「あ~笑った。で、どうする? まだやるか、それともやめるか?」

 

 リアスはプルプルと震えていたが、やがて意を決したように吼えた。

 

「やるわよ! どうせ評価が落ちるなら、勝って結婚を回避しなくちゃ何にもならないもの!」

 

 涙目で吼えるその顔を、俺は不意に可愛いと思ってしまった。

 

「了解だ、我が『(キング)』」

 

 俺は愕然としているライザーに向かって歩みを進める。

 

「部長」

 

「・・・・何よ」

 

「皆は呆れるかもしれないが、俺はいいと思うぞ」

 

「え?」

 

「好きな人と恋愛結婚したい。女の子なら誰だって夢見る事だ。なら貫けよ。貫いて好きな人を見つけて恋愛すればいい」

 

「一輝・・・・・」

 

「『(キング)』としての評価なんて後からいくらでも取り戻せる。だからアンタは想いのままに真っ直ぐ進めばいい。その為の力に眷属(俺達)はなる」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 リアス()はライザーと対峙する一輝の姿を見つめる。その大きな背中に自分の心臓が早鐘を打つのを感じながら───

 

 

 

 

 

「よう、フラれたな色男」

 

 ライザーの真正面で声をかけると、ライザーがようやく正気を取り戻した。

 

「くっ、貴様ァ、よくも舐めた口を──!?」

 

 ライザーの台詞の途中で俺は【虎砲】を撃った。

 

「ガハッ!?」

 

 血反吐を吐いて吹き飛んだライザーだったが、次の瞬間、炎が巻き上がると無傷のライザーがそこに立っていた。

 

「舐めた口だあ? 俺の仲間(イッセー)をズタボロにしておいて、ほざくなよ。お前もズタボロにしてやるから覚悟しろ」

 

 殺気を振り撒きながら、俺は宣言する。

 

「ぐっ、そうか・・・・貴様格闘家だったのか」

 

 ライザーは心臓の辺りを擦りながら言った。俺はライザーの様子を観察しながら訊く。

 

「これがフェニックスの再生力・・・・死ぬ程の攻撃を受けると自動的に再生されるのか。しかし、痛みは感じるんだろう?」

 

「ふん! だからどうした!!」

 

 ライザーが両手に炎を纏わせ殴りかかる。当たればかなり熱いんだろうが、その動きは何の訓練もした事の無い素人の動きだった。これならば正直眷属の娘達の方が強い。俺はライザーがフェニックスの不死性のみを頼りに戦って来た奴だと確信した。

 ライザーのパンチが伸びきった所で、俺はクロスカウンターの要領で腕を叩き付け、肘を折った。

 

「グアアッ!」

 

「不破圓明流【獅子吼(ししこう)】」

 

 肘を折られた事などなかったのだろう。痛みにライザーがのたうち回る。だが暫くして炎が巻き上がると、無傷のライザーがそこにいた。

 

「ほう。自分の意志で再生する事も可能なのか。ならば地道に痛みを与え続けるべきか?」

 

「貴様アア!!」

 

 ライザーが激昂する。だがライザーは怖くない。怖いのはフェニックスの不死性だけだ。確かに地道に痛みを与え続ければいずれ心が折れるだろうが、時間がかかりそうだ。

 

「おのれ! 地獄の業火に焼かれて骨も残さず朽ち果てるがいい!!」

 

 炎の翼を広げて、ライザーが空へ舞い上がる。その両手に魔力が集中していく。

 

「この俺を本気で怒らせた事を地獄で後悔しろ!!」

 

 紛れもない全力の魔力砲撃が俺に向けて放たれる。

 

 こればかりは今の俺には防げない。このままではライザーの言う通り、骨も残さず朽ち果てるだろう。

 だから喚ぶ。時空を越えて届けとばかりに、もう一人の自分というべきモノを、俺は喚んだ。

 

「ガイバーーーーーーッ!!」

 

 俺の喚び声と共に、ライザーの炎の魔力砲撃が着弾した。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通り木場が「木場祐美」にTS化しました。
イラストで見て一目惚れした結果、こうなりました。
もう一人重要キャラがTS化する予定です。
誰になるかはお楽しみに。

エロシーンは毎回必要?

  • 短くてもいいから毎回入れて欲しい
  • エロはいいからストーリー重視で
  • 早く本番が見たい
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