連続投稿の最後になります。
まだ読んでない方は第29、30、31話を先にご覧下さい。
突然
私を庇うように広げていた腕が力なく落ちる。
違う。庇うようにじゃない。実際庇われ、守って貰ったんだ。
彼女の流した血が私の視界を赤に染める。
いつも自信に満ち溢れ、美しかった彼女。そんな彼女は自分に自信が持てない私にとって、密かな憧れだった。
生きていてくれて、再会出来て嬉しかった。
でも再会した彼女はかつての彼女と違って自信を失っていた。まるで初めて会った頃の私のように───
色々誤解もした。少しも恨んでないと言えば嘘になる。けど私達は再会した。これから新しい関係を築けたら、そう思っていたというのに───
何故貴女の身体が冷たくなって行くのを、私は感じてるの───!?
「大丈、夫・・・・? 無事、よね、アーシ、ア・・・・・・?」
「ッッ、イヤああああーーーーーっ!? レイナーレ様ぁーーーーーっっ!!!」
自分が出したとは思えない絶叫が響いた。
一体何が起きたのか
イッセーとアーシアが無事を喜び合う姿をぼんやりと眺めていたら、突然レイナーレが二人に覆い被さった。と思ったら上空から放たれた光がレイナーレの身体を貫いたのだ。
光を受けたレイナーレの傷は酷いものだった。左脇から腰までがごっそりと抉られ、大量の血が流れ出ていた。
あれは致命傷だ。辛うじて生きてはいるが時間の問題だろう。折角打ち解けて来た所だったというのに・・・・
とは言え敵がまだいるなら戦わねばならない。アーシアの絶叫が響く中、私達は空から降りて来る男を睨み付けた。
「フム、赤龍帝と治癒の聖女を一緒に消すチャンスだったというのに、カラスに邪魔されるとは・・・・いやはや運のいい奴らだ」
軽鎧を身に着け、マントを羽織った悪魔の男が言った。何だ、この底冷えのするような冷たいオーラは!?
「誰なの?」
「お初に御目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ」
リアス部長が訊ねると、男──シャルバが名乗りを上げる。先程のクルゼレイ・アスモデウスと慇懃無礼な態度がそっくりだ。旧魔王派にはこんな奴ばっかりか!?
「お前が今回の首謀者なのね?」
「いかにも。・・・・ディオドラやクルゼレイの姿が見えんな。もしかしてやられたのか?」
「そうよ。二人共死んだわ」
「やれやれ。所詮は偽りの魔王の血族、私が力を貸してやったというのにこのザマとはな・・・・クルゼレイまでやられるとは、奴も魔王の器ではなかったようだな」
「・・・・仲間が死んだっていうのに随分冷淡ね?」
「フ、旧魔王派と言ってもカテレアやクルゼレイは個人の感情を優先してばかりで、所詮魔王の器ではなかった。力こそあれ人間の血が混ざっているヴァーリにも資格はない。結局私だけなのだよ。真に魔王と呼ばれるに相応しい者は! 四大魔王? 何故魔王が四人もいる? 魔王とは真に優れた悪魔、そう、私だけでいいのだ!!」
シャルバの身体から凄まじいオーラが立ち昇る。途轍もなく強大で冷たいオーラに、身体が凍てつくような錯覚を覚える。大口を叩くだけあって、恐るべき力だ。だが、
「くだらんご託は終わったか?」
明らかに怒っている、殺気混じりの一輝センパイの声が響いた。
イッセーとアーシアを庇って重傷を負ったレイナーレ。いや、重傷どころじゃない。これはもう致命傷だ。今もアーシアが治療をしているが、おそらく無駄だろう。
それを救ってくれたのは、原作ではこの場にいない筈のレイナーレ。でも代わりに彼女が致命傷を負ってしまった。
気を抜かず、警戒していれば防げた筈なのに、悔しさと同時に自分に対する怒りが込み上げて来る!
「くだらんご託は終わったか?」
気付いたら声を上げていた。くだらないお喋りを続けるアイツが鬱陶しくて仕方ない!
「すまんレイナーレ・・・・見ていてくれ。アイツは必ずブッ潰すから」
「・・・・・・」
レイナーレはもう返事も出来ない。でも微かに口角が上がった気がした。
「アーシア、後は頼む」
「はいっ!!」
必死に治療を続けるアーシアにレイナーレを任せ、俺は宙に浮かぶシャルバを睨み付けた。
「何か言ったかね?」
ご高説を邪魔されたシャルバが不快そうに睨む。
「お前の主張なんてどーでもいい。そんなに不満ならサーゼクス様なりセラフォルー様に直接喧嘩を売ればいいだろ?」
「それではつまらん。私は魔王を騙った奴らに絶望を与えたいのだよ。その為に奴らの妹を殺す。さすれば──「嘘だな」──何っ?」
「お前本当はサーゼクス様やセラフォルー様には敵わないって分かってるんだろ? だから直接挑もうとせず、妹のリアスにちょっかいを出してるんだよな? 全く、真の魔王が聞いて呆れるぜ」
俺が言い切ると案の定、シャルバはキレた。
「貴様! この私を愚弄するか!?」
だがキレてるのはこっちも一緒だ!
「そのくだらん企みで俺の仲間を傷付けた貴様を絶対に許さん!──ガイバーーーーー!!」
俺は殖装すると続けて思念波を送る。背後に『サナギ』が出現すると同時に俺は叫ぶ。
「ガイバーーーー【
『サナギ』が展開し、
「真の魔王に楯突いた事を後悔するがいい!!」
「やってみろ!!」
俺とシャルバは空中で激突した。
「どうして!? どうして治ってくれないの!?」
【
「レイナーレ様!?」
「・・・・・・・・」
レイナーレはアーシアさんの手を掴むと、もういいとばかりに微かに首を振る。アーシアさんは愕然とした表情を浮かべると、力なく肩を落とした。
イッセー君が慰めるようにアーシアさんの肩に手を置いた。
「アーシアさん、レイナーレが何か言ってるわ」
私の声にアーシアさんは顔を上げ、レイナーレの口元に耳を寄せる。
「・・・・アー、シア・・・・ッセー君と、幸せ、に・・・・・・」
微かに聞こえたアーシアさんの幸せを願う声。それを聞いた途端、アーシアさんは涙を溢れさせ、絶叫した。
「主よ! 力を貸して下さい! 彼女を救う力を、どうか私に! お願いします、どうか、どうか・・・・・・!」
だがアーシアさんの叫びに応えてくれる
その時、打ちひしがれるアーシアさんの肩を祐美さんが掴んだ。
「アーシアさん、神はもういない。いくら祈ったって応えてくれないわ」
「おい祐美!」
追い討ちをかけるような祐美さんにイッセー君が非難の声を上げる。だが、それに構わず祐美さんは言葉を続ける。
「だから今、彼女を救えるのは貴女しかいないの!『
「私の想いの、全てを・・・・・・」
祐美さんの激励にアーシアさんは暫し両手を見つめると、再び顔を上げた。そしてもう一度『
「絶対に助ける! だからお願い、私の想いに応えて、【
私はこの日、奇跡とは神が起こすのではなく、人が起こすものだと初めて知った。
その時、【
「「アーシア!!?」」
その勢いにイッセー君と祐美さんがアーシアさんから手を離す。エメラルドグリーンの光はアーシアさんを中心に半径10m位で止まった。外側から見れば私達はエメラルドグリーンの光の柱の中にいるように見えただろう。
この現象を起こしたのは間違いなくアーシアさんだ。私は中心にいるアーシアさんの姿を見て驚きを浮かべた。
「アーシアさん・・・・その姿は・・・・?」
そう、黄色いコートを羽織っていたアーシアさんの姿が変わっていた。
ノースリーブにミニスカート丈の白い鎧、額には
「て、天使化した!?」
「いいえ、違うわ・・・・これはアーシアの『
驚く私を祐美さんが否定する。これがアーシアさんの禁手! 私はその効果に驚愕した。
「・・・・傷が、治っていく───!」
「傷だけじゃないわ。魔力も回復していく・・・・」
「身体に力が入る・・・・体力まで回復してるのか!?」
リアスさんやイッセー君が驚きの声を上げる。どうやらこのエメラルドグリーンの光の中では傷が治り、失われていた魔力や体力までもが回復するらしい。しかも、
「見て! レイナーレが!?」
致命傷を負っていたレイナーレの肉体が時間を巻き戻すように再生されていく! レイナーレの肉体は見る見る内に再生され、紙のように白くなっていた顔色に血色が戻る。虫の息だった呼吸が穏やかになり、やがてレイナーレはうっすらと目を開いた。
今までのアーシアさんでは欠損部位の再生は出来なかったのに、桁違いの回復能力だ。
「・・・・・・アーシア? 私は・・・・?」
「良かった、レイナーレ様・・・・!」
アーシアさんはレイナーレに慈愛に溢れた微笑みを向けた。レイナーレが気付いたからか、周りを覆っていたエメラルドグリーンの光が消え、それと同時にアーシアさんの禁手が解除された。
「これは・・・・貴女が治してくれたの?」
レイナーレは身体のあちこちに触れて、致命傷だった傷が全快している事に驚いていた。
その時、力を使い果たしたのか、アーシアさんが微笑みを浮かべたままレイナーレの胸に倒れた。
「「「「アーシア!!?」」」」
慌てて皆が駆け寄り、黒歌さんが容態を診る。
「黒歌、アーシアは!?」
「・・・・大丈夫、気の流れは正常にゃ。力を使い果たして眠ってるだけにゃん。あれだけの力をいきなり行使したんだから無理もないにゃあ・・・・」
そう聞いて私達は安堵の表情を浮かべる。良かった、アーシアさんもレイナーレも無事だ。
「完全回復能力・・・・それがアーシアの
「凄まじい力ですわ。これからはアーシアちゃんのガードに一層気を付けないといけませんわね」
リアスさん達の言う通りだ。これ程の力、どの勢力も欲しがるだろう。私の立場上ミカエル様に報告しなきゃいけないんだけど、どうしよう・・・・でも今は皆の無事を喜ぼう。
後は一兄の勝利を待つのみ。私は轟音が轟く空を見上げた。
突然エメラルドグリーンの光が消えた。
皆の様子はセンサーで窺っていたので、皆無事なのは分かっている。
「くそっ! 何なんだ貴様は!?」
さっきからあらゆる攻撃を仕掛けているシャルバだったが、ガイバー・ギガンティックのバリアーに阻まれ、俺には一切届かない。
こいつにはただ勝つだけじゃ済まない。徹底的に恐怖を叩き込んでやる。
「もう終わりか?」
「馬鹿な!? 事前にガイバーの能力は調査していた。
“オーフィスの蛇”で前魔王クラスにまで引き上げられた私の力なら確実に倒せる筈なのに、調査していたガイバーのスペックを超越してるではないか!?」
それは当然だ。今までガイバー・ギガンティックを見せたのはサーゼクス様と手合わせした時だけなんだから、こいつらが知る筈がない。
「リサーチ不足だったな。今度はこっちの番だ」
俺はシャルバに向かって突撃する。
「フン、舐めるな!!」
シャルバは何重もの防御障壁を張るが、その程度で止められると思うな!
ガイバー・ギガンティックの
「───グギャアアアアッ!?」
【グラビティ・ナックル】をまともに喰らい、シャルバはもの凄い速度で地表に落下した。
巨大なクレーターの中心で呻いているから、まだ生きてはいるようだ。咄嗟にガードしたとは言え、骨の砕ける感触がした。片腕、もしくは両腕が砕けているだろう。
「バカな・・・・この私の障壁をいとも容易く・・・・」
シャルバは信じられないように呟くが、俺からすれば当然だ。
「結局お前もカテレアと同じだ。“オーフィスの蛇”
でいくら魔力を引き上げたとしても、使いこなせなければ何の意味もない」
プライドの高いこいつの事だ。力を使いこなす為の訓練などした事はないだろう。
「大方“オーフィスの蛇”を得て、強くなったと錯覚してこんな暴挙に及んだんだろうが、借り物の力なんて所詮こんな物だ。俺にも敵わないお前がサーゼクス様や他の魔王様に勝てるとでも思ってたのか? おめでたい奴だな、お前は」
「──ッ!? ギ、ギザマ゛~~! この私を愚弄するかーーーーッ!!」
激昂したシャルバは折れた腕で構わず魔力弾を放とうとする。全く、往生際の悪い!
ザンッ!!
「!? ウギャアアアアーーーーーッ!!」
魔力弾が放たれる前に【高周波ソード】でシャルバの両腕を斬り飛ばした。俺はそのままシャルバを踏み付けて動きを封じる。
「カテレアやクルゼレイが待ってるぞ。俺達を敵に回した事を後悔しながら地獄へ落ちろ」
「ヒ、ヒイィーーーーッ!?」
シャルバの顔が恐怖に歪む。俺はトドメを刺そうとシャルバの眼前に左手を翳した。
左手にパワーが集まり、【
『Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!!』
集まっていたパワーが掻き消された。こんな真似が出来る奴は一人しかいない。
「悪いわね、そいつはまだ死なせる訳にはいかないのよ」
全く悪びれずに八枚の光翼を広げた女が空から降りて来た。
「復活したのか、ヴァーリ・・・・!」
背後に二人の仲間を引き連れた白龍皇ヴァーリ・ルシファーは、端整な顔に楽しげな微笑みを浮かべていた。
「ヴァーリ! その化け物を倒せ!! いや、俺を連れて逃げろ! 早く、早くぅ!!」
「オメエは大人しくしてろぃ」
シャルバが見苦しく喚いたが、美猴が如意棒で突いて
「・・・・何のつもりだヴァーリ?」
「言ったでしょ? シャルバは
確かに面倒くさいな。直接俺達を狙うのならともかく、全く無関係な駒王学園の生徒とかに手を出されたら始末に負えない。
「そーいう連中に今のシャルバを見せれば嫌でも分かるでしょ? 旧魔王派は終わりだって」
「成る程な。殺して敵討ちの対象とするよりも、生かして俺達に敵対した者の末路を知らしめようって訳か」
突然背後からアザゼルの声がした。どうやら救援に来てくれたようだ。
「アザゼル先生」
「よっ、お疲れさん一輝。それと、久し振りだな、ヴァーリ。・・・・いいだろう。シャルバの身柄はお前に預ける」
「いいんですか、先生?」
俺は訝しげに訊ねる。
「悪いな一輝。この場は俺に預けてくれ。・・・・ヴァーリ、お前の本当の狙いは旧魔王派を潰して
「・・・・・・」
アザゼルにそう言われ、ヴァーリの表情が消えた。奴ってまさか・・・・!?
「一輝先輩! アザゼル先生!」
その時、イッセーの声がしたので振り返ると、皆が駆け寄って来た。
轟音が止んだ。一輝先輩とシャルバの戦いに決着が着いたようだ。先輩が負けるなんて1mmも思わないが、それでも心配だ。部長が走り出したのを見て、
意識を失っているアーシアを背負い走っていると、
《気を付けろ相棒、白いのが来ている》
突然ドライグに警告された。ヴァーリが来ている。もう一波乱あるかもと気を引き締め、俺はスピードを上げた。
現場には一輝先輩とヴァーリの他に気を失っているシャルバ、ヴァーリの仲間らしき中華風の鎧の男──確か美猴だったか──と、スーツを着た金髪眼鏡の美男子、それとアザゼル先生がいた。
「一輝先輩! アザゼル先生!」
俺が声をかけると先輩達が振り返った。その時、ヴァーリと目が合った。
「ヴァーリ・・・・!」
「やあ、イッセー君。・・・・・・ふぅん、禁手に至ったのか・・・・また強くなったみたいだね。ライバルとして嬉しいよ」
ヴァーリはそう言うが、こいつもまた強くなってやがる。
禁手に至ったとは言え、俺はまだヴァーリに及んでない。見てろよ、必ず追い付いてやる!
「・・・・何でお前がここにいるんだよ?」
そういった複雑な思いを隠して訊ねる。
「シャルバの回収と、そろそろかな? 見てなさいイッセー君」
ヴァーリが視線を空に向ける。すると、
バチッ! バチバチッ!!
放電するような音を立て、空間に穴が開き、巨大なナニかが姿を現した。
「あれは───!?」
それを見て誰もが唖然としていた。現れたのは真紅の
『
『黙示録』に記された『真龍』と称される偉大なドラゴンで、ヴァーリはいつかアレと戦い、勝利する事で『真なる白龍神皇』になるのが目標なのだそうだ。
「グレートレッド、久しい」
突然俺のすぐ側に黒髪黒ワンピの幼女が現れた。
誰かと思って目を丸くすると、ヴァーリが苦笑しつつ答えた。
「『
───! こ、この娘が敵の親玉!? 何しに来たんだ? まさか俺達と戦いに来たんじゃないよな!?
「我は、いつか必ず静寂を手にする」
そう言ってオーフィスはグレートレッドに指鉄砲を撃つ真似をした。
そのままグレートレッドが小さくなって行くのを見送っていると、不意にオーフィスから視線を感じた。
「・・・・・・・・」
こ、怖っ! ナニこの娘、さっきからジーッと俺を見てるよ! ムッチャ怖え!!
「我は帰る」
「待て、オーフィス!!」
やがてオーフィスはアザゼル先生の制止を無視して、来た時と同じく唐突に姿を消した。一体何だったんだ・・・・?
「私達もそろそろ行くわ」
気付けば美猴が空間に裂け目を入れてシャルバを放り込んでいた。
「イッセー君、私を倒したい?」
裂け目を潜る寸前でヴァーリが訊ねて来た。
「勿論だ。けど俺が超えたいのはお前だけじゃない。すぐ側に目標としてる人がいるんだよ」
「私も同感。私にも君以外に倒したい者がいるわ。私達は赤と白の宿命の対決よりもお互い優先する目標がある。そう考えると私達はおかしな赤龍帝と白龍皇なのでしょうね。でも───」
「ああ───いつか必ず決着を付けよう」
俺はヴァーリに向かって拳を突き出した。それを見たヴァーリが楽しそうに微笑んだ。
「その時を楽しみにしてるわ。強くなりなさい、イッセー君」
そう言い残してヴァーリは裂け目に身を投じた。
「木場祐美君、ゼノヴィア君。私はアーサー・ペンドラゴン。かのアーサー王の末裔で、聖王剣コールブランドの所有者です」
スーツ姿の金髪眼鏡──アーサーがそう言うと、祐美やゼノヴィアだけでなく、部長を始めとした皆が顔色を変え、一斉にアルトリアさんを見た。
「ほう・・・・・・」
何故だろう、アルトリアさんは迫力のある笑顔を浮かべていた。
「同じ聖剣の使い手として戦える日を楽しみにしていますよ。では」
アーサーはさわやかな笑顔を残して、空間の裂け目へと姿を消した。
何故だろう、居たたまれない空気が俺達の間に流れていた。
「ま、まあ取り敢えず片は付いたわ。色々と報告しなきゃいけない事もあるし、帰るわよ、皆」
部長が空気を換えるようにパンパンと手を叩く。そうだ、
「今度こそ帰ろう、アーシア。俺達の家へ」
俺は背負われたまま眠っているアーシアに話しかける。眠ったままのアーシアが微笑んだような気がした。
目を覚ますと、自室ではない豪華なベッドに寝かされていました。この部屋はグレモリー邸で
「私・・・・どうしたんでしたっけ・・・・?」
確かレイナーレ様を治そうとして、それで・・・・
「あら、目が覚めたのですね、アーシアさん」
「グレイフィアさん・・・・」
良く思い出せないでいると、扉が開いてグレイフィアさんが入って来ました。
「身体の具合はどうです? 何か違和感は?」
「はい。少し怠い気はしますけど、それ以外は問題ないです」
「そうですか。良かった」
「あの・・・・イッセーさんや他の皆さんは・・・・?」
グレイフィアさんは私がどうして眠りに就き、その間何があったのか教えてくれました。
レイナーレ様を助けたいという私の想いが禁手を発動させ、その力でレイナーレ様と皆の傷まで癒したそうです。
【
その後私は力を使い果たし、五日間も眠っていたそうです。
その後一輝さんがシャルバ・ベルゼブブを倒したり、白龍皇が現れたり、グレートレッドという大きなドラゴンや『禍の団』のトップであるオーフィスまで現れたりと色々あったのですが、取り敢えず皆無事に帰還しました。
皆は学園があるからと後ろ髪を引かれつつ駒王町へ戻り、放課後には様子を見に来てくれるそうです。
私達と同じく魔王様方やシトリー眷属も襲撃されたそうですが、返り討ちにしたらしく皆無事だそうです。襲撃に参加した悪魔達はほとんど討ち取られ、それ以外は降伏、あるいは逃亡したとの事。旧魔王派のトップであるシャルバ・ベルゼブブは一輝さんにより重傷を負わされ、これまで通りには動けなくなり、求心力を失った旧魔王派はほぼ瓦解したようです。
アスタロト家は『禍の団』に関与してなかったそうですが、時期当主候補であったディオドラの裏切りにより、一切の信用を失いました。現当主は解任され、位も公爵から子爵へと落とされ、少なくとも向こう百年は政治権力に関わるのを許されないとの事。
アスタロト家出身である魔王アジュカ・ベルゼブブ様にも責任を追及する声が上がったそうですが、他の魔王様三人の擁護とアジュカ様の技術を惜しむ声もあり、退位などにならずに済んだそうです。
驚いた事にアルトリアさんの正体はかのアーサー王その人でした。一輝さんが異世界から連れて来たからこの世界のアーサー王と関連性は分かりませんが、あの
「ふわぁ~、色んな事があったんですね・・・・」
グレイフィアさんの話を聞き終えた私は、淹れてくれた紅茶で喉を潤しました。
「それでアーシアさん、この後はどうしますか?」
「どう、とは?」
「具合が悪いようでしたらお勧めしませんが、大丈夫なようでしたら・・・・」
「あっ!? 体育祭───!!」
そうです! あれから五日も経っているという事は、今日は駒王学園の体育祭の日です! 今何時でしょうか!?
「落ち着いてアーシアさん。まだ十一時前です。今から行けば出番には間に合いますよ」
グレイフィアさんはそう言って、着替えを渡してくれました。それは駒王学園の体操着。きちんと「2-Aあーしあ」と名札も付いてます。
「それで? どうしますか?」
「───行きます!!」
午前中最後の競技、「男女混合二人三脚」が始まった。今は三年生が競技中、
グラウンドから歓声と怒号が上がる。何事かと思ったら部長と一輝先輩、そして朱乃さんの三人がスタートラインに並んでいた。
何故二人三脚に三人で出場してるのかと言うと、二人三脚で一輝先輩と組もうとした部長と朱乃さん。
空砲が鳴り、部長達がスタートした。速え、息ぴったりだ。部長と朱乃さん、二人の爆乳がブルンブルンと揺れる度に腰砕けになる男が増えていく。学園の二大お姉様にぴったり挟まれた一輝先輩には、皆の恨みの隠った視線と
ああ、部長と朱乃さんのおっぱいサンドイッチ、何て羨ましい~! 一度でいいから俺も味わってみたい!!ってな事を妄想していた時、
「イッセーさん!!」
ずっと聞きたかった声が俺の耳に飛び込んで来た。
「アーシア! こっちだ!!」
手を振り、こっちへ走って来るアーシアに俺もまた手を振って応えた。
「ハア、ハア、お待たせしましたイッセーさん」
「大丈夫なのか、アーシア?」
「はい。この競技だけは絶対一緒に走りたいですから」
アーシアは晴れやかな笑顔を見せる。恥ずかしいから見惚れてしまったのは内緒だ。俺はしゃがんで二人の足首をヒモでしっかりと結んだ。
立ち上がりアーシアと見つめ合う。それだけで心が満たされる気がした。そして、いよいよ俺達の番が回って来た。
空砲が鳴ると共に、一斉にスタートする。
俺達の息はぴったり。絶好のスタートを切った。
「行っけえーーー! イッセー、アーシア!!」
「二人共頑張ってえーーー!!」
「二人共必ずトップを取りなさい!!」
「負けたら承知しねえぞ!!」
「行けえーーー! ブッちぎれーーー!!」
皆の声援が聞こえる。嬉しくて、つい顔が緩んでしまう。それに───
「アーシア、あれ」
「え?・・・・あっ♪」
ゴール付近にカメラを構える父さんと声援を送っている母さんがいる。
「イッセー、アーシアちゃん、もう少しよ! 頑張ってーーー!!」
高校生にもなって恥ずかしい気もするけど、素直に嬉しい。ありがとう父さん、母さん。息子と娘の晴れ姿、目に焼き付けてくれ!
「アーシア、もうどこへも行くな。俺達はずうっと一緒だ!」
「───はいっ! ずうっっと一緒です!!」
アーシアは涙を滲ませながら、最高の笑顔を見せてくれた。
俺達は二人一緒にゴールテープを切った。
読んでいただきありがとうございます。
連続投稿はこれで終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。
本作ではアーシアがここで禁手に至ります。
モデルは「防振り」のメイプルの「身捧ぐ慈愛」ver。
アーシアは元々金髪なので、変化を付けたくてエメラルドグリーンになりました。
名前もそれに合わせて少し変えてあります。
原作6巻のエピソードはこれで終了。
振り返ってみればほとんどエロがない事態に。
その反動もありますが、次回からエロ満載の閑話を数回に渡ってお送りします。
皆さんがお待ちのグレイフィア回もありますので、お楽しみに。
レイナーレ、今後どうなる?
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イッセーのヒロイン化
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一輝のハーレム入り
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アザゼルの嫁
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バラキエルの後妻
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誰とも結ばれず、メイドになる