アンケートの協力、ありがとうございます。
アンケートの結果、なのはとSAOが僅差となりましたので、五人共眷属とする事になりました。
どのような登場をするかお楽しみに。
それでは第37話をご覧下さい。
間もなく【北欧神話】と【日本神話】の会合が行われる。
会合に参加するオーディン様とアザゼルは、会場である都内の高級料亭で【日本神話】の代表が現れるのを待っている。
当初と予定を変更して会場の警備と警護をソーナ達シトリー眷属が担当し、
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
とは言え両チームの雰囲気は険悪そのもの。その原因はヴァーリチームのアーサーなのは周知の事実だが、ヴァーリチームは
この雰囲気に俺は溜め息を吐きつつ、気になる事を片付けようとヴァーリに声をかけた。
「ヴァーリ、彼女は本当に大丈夫なのか?」
俺の視線の先には今日の夕方になって合流したヴァーリチームの四人目、ロールのかかった長い金髪の、長身爆乳の美女が映っていた。
「心配ないわ。彼女仕事には誠実だから。ね、オリアナ?」
ヴァーリが声をかけると、彼女──オリアナは俺を見てフッと微笑んだ。
オリアナ・セーレ。
『
セーレ家の特性は転移。軍勢や物資を一瞬で目的地に輸送出来るそうだ。ヴァーリが彼女を推薦して、シトリー眷属に代わって彼女が
「ええ。全員転移させればいいんでしょう? なら問題ないわ。それよりヴァーリ、本当に私、戦闘に参加しなくていいの?」
「ええ。貴女は貴女の仕事をしてくれれば充分よ」
「オッケー。ならお姉さんに任せなさーい♪」
オリアナは微笑んで手を振るが、その笑顔に油断のならない気配を感じる。やはりただの綺麗なお姉さんじゃないようだ。
・・・・それにしても凄い格好だな。彼女はグレーの作業服を着ているんだが、胸のボタンひとつだけ留めていて、深い胸の谷間もセクシーなお臍も丸見えで、黒歌に優るとも劣らない色気を発している。さっきからイッセーが鼻の下を伸ばしてアーシアに尻をつねられているが、夢中で気付いてないみたいだ。
ヴァーリが太鼓判を押すなら大丈夫だろう。後は、
「イリナ」
俺は後ろから彼女の肩を叩く。
「一兄? どうしたの?」
イリナはいつもの明るい笑顔を向ける。俺は耳元に口を近づけ訊ねる。
「いや、身体は大丈夫かと思って。どうだ?」
するとイリナはカーッと顔を真っ赤にして俯き、恥ずかしそうに俺の袖を摘まむ。
「もう、戦闘前に思い出させないでよ・・・・一兄のエッチ」
そう言って恥ずかしがる姿が無茶苦茶可愛い。だがまあ、身体は大丈夫みたいだな。
「悪かったな。・・・・イリナ、祐美とゼノヴィアに注意していてくれ」
「一兄・・・・分かったわ。任せておいて」
イリナは力強く頷く。俺はイリナの背中を軽く叩いてその場を離れた。
俺が次に訪れたのはリアスの所だった。
「いつまでむくれてるんだリアス。いい加減落ち着け」
「だって一輝・・・・」
リアスは口を尖らせる。
「だってじゃない。
「・・・・先に手を出したのはあっちだもん」
そう言って頬を膨らませ視線を逸らす。全く、そんな顔も可愛いんだが、そんな事言ってる場合じゃない。
「王のお前がいつまでもその調子で、眷属が同調したらどうする? フェンリルはグレモリー眷属だけじゃ対処出来ない相手だ。ましてや俺やイッセーもロキに掛かりきりでいないんだぞ。お前は眷属を死なせる気か?」
「そ、それは・・・・!」
リアスは情愛深いグレモリー家の直系。故に眷属が傷つく事を極端に嫌う。それは主としては素晴らしいが、王としては時に欠点となる。王とは時に眷属を犠牲にする覚悟も必要になる。アザゼルからも散々言われているが、非情になりきれないのがリアスの最大の弱点だ。
厳しいかもしれないが命賭けの戦いの前だ。皆が生還する為なら、俺は鬼にでもなろう。
「・・・・ごめんなさい、一輝の言う通りだわ。私ったらこんなに時に・・・・情けないわ」
でもリアスは分かってくれたようで、反省するように頬に手を当て、溜め息を吐く。
「分かってくれたのならいい。俺は誰一人欠ける事なく皆と再会したい。リアスだってそうだろ?」
「勿論よ! 私の眷属、いいえ、この戦いに参加した者全員生還させてみせるわ!!」
うん。いつものリアスに戻ったな。これなら大丈夫だろう。
「よし、その意気だ。・・・・じゃあ俺は配置に着くよ」
「分かったわ。一輝、貴方も気を付けて」
俺はリアスと軽く唇を交わして踵を返した。
「イッセー、ヴァーリ、行くぞ」
二人に声をかけて俺は歩き出した。
「ブエックションッ!!」
「あら風邪、イッセー君?」
「随分夜冷えて来たからなぁ」
くしゃみをするイッセーにヴァーリと俺がツッコむ。
「いや、違うって。これはきっと・・・・そう、アーシアが俺を想ってる証拠ッスよ!」
「そうよねえ~、何とかは風邪を引かないって言うものね?」
「んだとコラア!?」
「・・・・ハア」
俺達三人は会場近くの高層ビルの屋上にいた。対ロキ用の戦力としてここで待機しているのだ。
それはいいんだが、さっきからヴァーリがイッセーを揶揄って遊んでいる。熱くなり易いイッセーはヴァーリのいい玩具らしく、うちに滞在中も暇を見ては同じような事を二人は繰り返していた。
「ちっ! まあいいさ、今の内に好きなだけ揶揄ってろ」
「あら、いいの?」
ヴァーリが意外そうに首を傾げる。
「ああ、
「・・・・・・」
ヴァーリが揶揄うようなニヤニヤ笑いをやめ、目を細めてイッセーを見つめる。イッセーもまたヴァーリから目を逸らさず、真剣な表情でヴァーリを見つめ返していた。
「俺は必ずお前を超えるぜ、ヴァーリ」
「!!」
イッセーが力強く宣言する。
始めはキョトンとしていたヴァーリだったが、言われた意味を理解すると、今まで見た事のない位嬉しそうに笑った。
「ええ、貴方が私の所まで上がって来るのを楽しみにしているわ。・・・・初めて会った時は何の才能もない『史上最弱の赤龍帝』に失望してたけど、キミは今までの赤龍帝とは違う成長をしている。ドライグと対話しながら力を使いこなそうとしている赤龍帝なんてキミが初めてじゃないかしら?」
「そうなのか、ドライグ?」
『そうだな。歴代の赤龍帝は最初から強い奴ばかりだった。皆思いのままに力を振るい、その力に溺れ、戦いの中若い命を散らして逝った。──だがお前は違う。お前は最初泣ける位弱かった。だからこそ強くなる為に色々と考え、俺と対話し、力に溺れる事なく成長している。そんな赤龍帝はお前が初めてだ』
ドライグがどこか嬉しそうに語る。
「それにキミには不破一輝がいた。すぐ側に目標とするべき自分より強い相手がいる。だからこそキミは曲がらずに真っ直ぐ成長出来た。私からすれば羨ましい限りよ」
いきなり俺を持ち上げるヴァーリ。
「まあ俺は先輩みたいに強くなりたいと思って訓練を続けて来たからな。でも、正直縮まらない差を目の当たりにし続けるのって結構キツいんだぜ」
『だがその度にお主は諦めず立ち上がって来たのだろう? そういう奴が実戦で相手をするには一番厄介なのだ』
弱音を溢したイッセーをフォローしたのは、あろう事かアルビオンだった。
『珍しいじゃないか、白いの』
『ふん、私とて兵藤一誠の成長は認めているという事だ』
茶化すようなドライグの声にアルビオンが答える。
「そういう事。だから待ってるわ、イッセー君。キミと本気で戦える日を」
ヴァーリとイッセーの視線が交錯する。
「ああ、待ってろ」
イッセーが拳を突き出すと、ヴァーリは同じように拳を突き出し、コツンと軽く拳を打ち合わせた。
何だかんだ言ってこの二人、いいライバル関係を築いているようだな。
「ホッホッホ、ええのう、これぞ青春じゃのう~!」
惚けた声に振り向くと、ここに
おいおい、どうして爺さんがこんな所に? 今頃は会合の準備をしている頃だろ?
「何でいるんです、オーディン様?」
「いやなに、若者と触れ合いたくての。ついつい抜け出してしもうたわい」
爺さんの発言に一輝先輩は呆れたように空を仰ぐ。これ匙達が今頃捜し回ってるんじゃ・・・・
「しかし、今代の二天龍は珍しいのう。今までの二天龍はみーんなただの暴れん坊でな。好き勝手暴れ回り、周りの山や島を吹っ飛ばす程の激闘をした挙げ句・・・・勝手に死におった」
溜め息混じりに爺さんは言う。
「片やとんでもないスケベ、片や戦闘狂のテロリスト、危険極まりない二天龍じゃが、出会って即殺し合いにならんとは、本にお主らは変わっておるわい」
スケベで悪かったな! でも
「フ、戦闘狂大いに結構。歴代の白龍皇なんて関係ない。私は私の
ヴァーリが不敵な笑みを浮かべながら言い切った。ちくしょう、美人だからキマってやがる。
爺さんはそんな俺達を見て目を細める。
「やはり若いもんはいいのう。儂は今まで自分の叡智があれば、どんな事態も解決出来ると思っておった。じゃがそれは年寄りの傲慢じゃった。真に大事なのはお主らのような若いもんの可能性じゃ。最近その事が分かって来てのう、己が如何に愚かじゃったか・・・・そのツケをお主らに払わせてるとは、情けないわい」
爺さんは悲哀に暮れた目をして俯く。何でそんな目をしてるかなあ? 偉い人の考えは良く分からん。俺は一輝先輩やヴァーリと顔を合わせ、
「良く分かんねえけど、一歩一歩前に進めばいいんじゃねえの?」
「そうだな。それにまだ終わってないんだから、悲嘆に暮れるのは早いと思います」
「嘆く暇があるならさっさと行動なさい。全く、これだから年寄りは・・・・」
俺達は三者三様に答えを返す。爺さんは暫くポカーンとすると、突然「ホーッホッホ」と大爆笑した。何だ? とうとうイカれたか?と事を思っていると、
「・・・・若さはいい。いつも年寄りを刺激してくれる。ああ、そうじゃな。お主らの言う通りじゃ」
うんうんと何度も頷く爺さん。その目にはさっきまでの悲哀はなく、どこか満たされたような光があった。その時、
「「「「!!?」」」」
突然強大なプレッシャーが俺達を襲う。この気配、間違いない!
「時間通り。来たわね」
ヴァーリが不敵に嗤う。俺の視線の先では空間が歪み、強大な敵が現れようとしていた。
空間が歪み、中からロキとフェンリルが姿を現し、
「何だ、先日とほとんど変わらないではないか。たったこれだけで私とフェンリルを止めようとは・・・・舐められたものだな」
私達を眺めながらロキが嘆息する。
「神ロキ、退いては貰えぬか」
本作戦の指揮官であるバラキエル殿が代表して訊ねる。
「やれやれ、その辺の意志確認は先日終わらせたと思ってたがね。──今宵私はオーディンを殺す。邪魔をするなら貴様らもだ」
「「「「!!!」」」」
凄まじい殺気が私達に向かって放たれる。何て殺気! 正直逃げ出したいけど、王である私が逃げる訳にはいかない。足に力を入れて何とか堪える。
「そうか・・・・残念だ。──オリアナ殿」
「了かーい。お姉さんに任せなさいっと」
ロキを中心にセーレ家の紋章の魔方陣が疾る。大きい! たった一人でこれだけの魔方陣を展開するなんて、やるわね彼女。
眩い光に包まれたと思ったら、次の瞬間、私達は荒野に立っていた。うん、これだけ広ければ一輝達も存分に力を振るえるわね。でも転移に抵抗しないだなんて、ロキは何を考えてるのかしら?
「意外だな。転移に抵抗しないとは」
バラキエル殿も同じ考えを抱いたみたい。
「なに、貴様らを始末してからゆっくりオーディンを・・・・何だ、いるではないか」
ロキの台詞に私はギョッとして振り向く。視線の先には一輝、イッセー、ヴァーリの側で誤魔化すように頭を掻くオーディン様がいた。
「な!? 何でいるんですオーディン様!!」
ロスヴァイセが絶叫した。
「いやあ~、転移に巻き込まれちった。メンゴ」
((((メンゴじゃねーよ、このジジイ!!))))
今皆の心がひとつになった気がするわ。でも、
「どうなってるの、オリアナ!?」
「ええ~、知らないわよ。お姉さんは魔方陣内にいる全員を転移させただけだもの」
私が訊ねるとオリアナは不服そうに答える。
「ククク、アーハッハッハ! 主神殿、どうやら私に殺される気になったようだな。では望み通りに殺してやろう。フェンリル!!」
ロキの号令にフェンリルが咆哮する。
アオオォォォーーーーンッ!!
その咆哮に心臓が掴まれたような恐怖が生じ、身体が動かなくなる。不味い! このままじゃあ──
動けなくなった私達を放置してフェンリルが駆ける。だが、その前にフェンリルの咆哮に屈しなかった戦士達が立ち塞がった。
『Welsh Dragon Balance Braker!!』
『Vanishing Dragon Balance Braker!!』
「ガイバーーーーー【
赤い光の中イッセーが、白い光の中ヴァーリが、紅い光の中で一輝の姿が変わる。光が収まると赤い全身鎧を纏ったイッセーと白い全身鎧を纏ったヴァーリ、ガイバー・ギガンティックに殖装した一輝の姿があった。
「イッセー、ヴァーリ、お前達はロキを!」
「「了解!!」」
一輝はバリヤーを展開してフェンリルに突っ込む。電車が衝突したような凄まじい音を立てて、ガイバー・ギガンティックとフェンリルが激突し、
「ウオオオオーーーーッ!!」
ガイバー・ギガンティックがフェンリルを跳ね飛ばした。
「うわあ~」
思わず声が洩れる。ガイバー・ギガンティックは三m弱、でありながら全長二十m以上のフェンリルを跳ね飛ばすなんて・・・・我が恋人ながら一輝の規格外振りには呆れてしまう。でもこれでフェンリルをオーディン様から引き離せた。
「今だ! 全員攻撃開始!!」
バラキエル殿の号令に、私達はフェンリルに攻撃を開始した。
後衛の私、朱乃、黒歌、バラキエル殿、ロスヴァイセが得意の魔術を放つと、前衛の祐美、白音、ゼノヴィア、イリナさん、アルトリア、美猴、アーサーが一斉に襲いかかる。夕麻はアーシアの護衛として最後列に控えていた。さあ、やるわよ皆!
「これは素晴らしい! このロキを倒す為に二天龍が手を組むか! 面白い。赤と白の競演、特等席で観せて貰おう!!」
ロキは嬉々として右手を翳すと北欧式の魔方陣が現れ、そこから幾筋もの光がレーザーのように俺達を襲う。
回避しても追尾して来るレーザーを、ヴァーリは板野サーカス張りの空中機動で回避しまくる。スゲエ! 俺にはとても真似出来ねえ。
おっと、感心してばかりもいられねえ。俺はといえば、鎧の防御力を倍加して当たるも構わず、最大加速で突撃する。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
「行っけえーーーーッ!!」
渾身の右ストレートがロキに迫る。ロキが左手で防御魔方陣を展開するが構うもんか!
パリィィィンッ!!
鏡が割れたような音と共に防御魔方陣が消失した。今だ!
「喰らえロキ、【
前方に突き出したヴァーリの両掌から絶大な魔力が迸る。まるで龍の
「─────!!」
ヴァーリの放った光はロキを呑み込み、凄まじい轟音と衝撃、そして高熱を発生させた。
危ねえ~、もう少しで巻き込まれる所だったぜ。しかし、
「なんつー威力だよ・・・・」
俺は周囲の惨状を眺めて思わず呟く。光の消えた跡には直径三十m位の大穴が開き、底が見えない位深く抉られている。高熱で穴の周囲は熔解し、陽炎が揺れていた。
『あれが
え? それってアルビオン本人のブレスと同等の威力をヴァーリが放ったって事かよ!? 何て奴だ!
「なあドライグ。俺にも撃てるか?」
胸に沸き上がる羨望と憧憬を隠し、ドライグに訊ねる。
『さぁて。
ドライグが面白そうに言う。普通じゃなくて悪かったな! でもまあ可能性はあるんだ。だったら頑張ってみるか。
『・・・・チッ、腐っても神だな』
ドライグの忌々しげな呟きに前を見ると、赤い煙りを立ち上らせてながら、愉しそうな笑みを浮かべたロキが穴の底から浮上して来た。
『大したダメージは無さそうだな。流石は神、という所か』
「いいんじゃない? これで終わってたら興醒めよ」
感心するアルビオンにヴァーリが益々戦意を昂らせる。ったく戦闘狂め。
「ククク、これが白龍皇の
一方ロキも目を爛々と輝かせ、心底愉しそうに嗤う。こいつも戦闘狂かよ!? 俺が呆れたように嘆息すると、
「ギャウンッ!!」
フェンリルの鳴き声が聞こえて来た。
───話は少し前に遡る。
「くっ、この!!」
「チッ、何て硬さだ!?」
動きの素早いフェンリルは中々捕捉出来ず、出来たとしても硬い体毛が攻撃を通さない。
「くっ、何て厄介な・・・・」
「やはりまずは動きを止めないと、どうにもなりませんわね」
朱乃の呟きに苛立ちながらも私は頷く。
「黒歌、準備は!?」
「いつでもOKにゃん」
「よし、祐美!!」
「はい!
私の合図で祐美がフェンリルの周りに散りばめていた魔剣から雷が疾り、フェンリルを囲む檻と化す。今のフェンリルには上しか退路はない。でもそこにはすでに、
「ここから先は通しません!」
ロスヴァイセが結界を張り、退路を断つ。今だ!
「黒歌!!」
「戒めの黒き光を──【
黒歌の妖術【黒縄】が発動。大地から幾条もの黒い光が伸びて、フェンリルの身体に巻き付き、動きを封じる。フェンリルは黒縄を引きちぎろうとするけど、そこに忍び寄る白い影が───!
「───覇ッ!!」
カァン、と乾いた音が響き渡る。白音の“気”が通った証しだ。この一撃の為に白音はずっと気を練る事に集中し、戦闘に参加しなかったのだ。
「ギャウンッ!!」
鳴き声を上げてフェンリルが倒れる。やった! これでフェンリルはもう動けない。後は集中攻撃で仕止めるだけだ。
私が号令を掛けようとしたその時、
「おやおや、どうした息子よ! そのような連中に倒されるとは情けない。」
やたらと芝居掛かった口調でロキが嘆く。でも口元には笑みが浮かび、まだまだ余裕を感じさせる。
「多少スペックは落ちるが仕方がない。出でよ、我が孫達!」
マントを翻し、両手を広げるロキ。するとロキの左右の空間が歪み、プレッシャーを放ちながら二頭の獣が現れた。
大きさはフェンリルの半分以下、けれども放つプレッシャーはフェンリルにひけを取らない白銀の魔獣。
「「ウオォォォォーーーーーンッ!!」」
フェンリルそっくりの魔獣が高らかに咆哮する。
「紹介しよう。スコル、そしてハティだ。親程のパワーは無いが諸君の相手には充分だろう。───やれ!!」
ロキの号令で二頭の子フェンリル──スコルとハティが私達に襲いかかる───!
フェンリルの子供──スコルとハティが
部長や朱乃さん、ロスヴァイセさんら後衛組が魔術を放つが、二頭は怯む事なく突き進む。マズい、あのままじゃ部長達が! とその時、
「イッセー!!」
一輝先輩の声に前を向くと、ロキの放ったドデカい魔力弾がすぐそこに迫っていた。
「うおおっ!?」
間一髪回避したが、かすった部分の鎧が欠けている。危ねえ~、もう少し遅かったら直撃してたぜ。
「集中しろイッセー!
「そうよイッセー君。私達がすべきは一刻も早くロキを倒す事よ!」
「お、おう!!」
先輩とヴァーリの言う通りだ。こっちにだって余裕はないんだ。俺は力を倍加してドラゴンショットを放った。
激しい撃ち合いは俺達に分があった。先輩が【ブラックホール】を展開してロキの魔術を防いでくれるので、俺とヴァーリは攻撃に集中出来る。ロキも次第に防戦一方になって来た。今がチャンスだ!
「ここで決めるわ!」
ヴァーリも同じ考えに至ったのか、隙を突いて飛び出す。俺はドラゴンショットを撃ち援護する。その時、
「貰ったぞ、ロキ!!」
一瞬でロキの背後に回ったヴァーリはそのまま手刀を振り下ろ───
バクンッ!!
───す前に横から突然現れたフェンリルに食い付かれた。
「ガハッ!?」
バキバキと不吉な音を立てて、ヴァーリの鎧が砕かれる。マスクの下からは鮮血が飛び散り、白い鎧とフェンリルを赤く染めた。
何でフェンリルが!? 仲間達を見ると、黒歌が血を流し倒れていて、すぐ側に爪を赤く染めた子フェンリルがいた。あいつ、親を解放する為に術者の黒歌を狙ったのか!?
「ンフフフ、まずは白龍皇と黒猫が退場か。さぁて、次は誰が退場するかな?」
不敵にロキが笑う。それを合図にスコルとハティが動き出す。
「この野郎! ヴァーリを離しやがれぃ!!」
美猴が如意棒で、アーサーが聖王剣でフェンリルに襲いかかる。
「ぐう! うああっ!!」
だがフェンリルはヴァーリを咥えたまま口を突き出し、二人の前でゆっくりと力を加える。
「ぐっ、こいつ・・・・!」
「これは参りましたね・・・・」
こいつ、何てズル賢いんだ。あれじゃあ美猴達も手出しが出来ねえ! どうする?どうすればいいんだ!?
「イッセー君・・・・」
歯噛みする俺にヴァーリの声が届く。ヴァーリは息が苦しいのか、マスクを収納して素顔を曝している。ヴァーリの奴、顔が真っ青だ。大丈夫なのか!?
「油断した・・・・けど醜態を曝した責任は取るわ・・・・この親フェンリルは私が責任を持って葬る・・・!!」
ヴァーリの声に力が籠る。こいつ、そんな状態で何をする気だ!?
「ククク、クハハハーーーッ!! いくら白龍皇とて、そんな状態で何が出来る!? 出来るというなら見せて貰おうか!!」
嘲笑するロキにヴァーリが凄絶な笑みを向ける。
「神ごときが天龍を、このヴァーリ・ルシファーを舐めるな!!」
ヴァーリの咆哮に呼応するように鎧の宝玉が光を発し、ヴァーリの全身が白銀の光に包まれる。
「我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし、二天龍なり──」
ヴァーリの唇から呪文が零れる。
「無限を妬み、夢幻を想う──」
それに呼応し、凄まじい魔力がヴァーリの身体から溢れ出す。何だこれ? あまりの凄まじさに寒気がする。まさかこれが──!?
「我、白き龍の覇道を極め、汝を無垢の極限へと誘おう───!」
これが『
『Juggernaut Drive!!!』
視界が白い光で埋め尽くされる。圧倒的な力をヴァーリから感じる。それこそロキやフェンリルに匹敵する程の力だ。これがヴァーリの【
先生から聞いた事がある。ドラゴン系の神器の暴走状態、それが【
ヴァーリは寿命の代わりに膨大な魔力を払う事で暴走しないそうだが、あの怪我で本当に大丈夫なのか?
「ぐうぅ!? ううぅぅぅ・・・・」
『ヴァーリ!? いかん、魔力を抑えろ!! このままでは───』
突然アルビオンの切羽詰まった声が響く。
「うぅぅ・・・うああああーーーーッ!!
ヴァーリの絶叫がフィールド中に轟く。その凄まじい衝撃に身体が吹き飛ばされる。
「「「「きゃああああーーーーッ!!」」」」
仲間達の悲鳴が聞こえるが、眩い白光で何も見えねえ!? ちきしょう、ヴァーリの奴どうしたんだ!?
『・・・・相棒、良く見ておけ。ヴァーリ・ルシファーは暴走状態に陥った』
何だって!?
『いくら奴が歴代最強と云われても、あの傷での【覇龍】は無謀だったようだな。気を付けろ相棒。奴は敵味方関係なく暴れ回るぞ』
白光が次第に空の一点に集束していく。
「あ、あれがヴァーリなのか・・・・」
そこには鎧の各部がより鋭角的に変化し、より禍々しさを増したヴァーリの姿があった。
「ガアアァァァーーーーッッ!!」
まるで怪獣のような雄叫びを上げて、ヴァーリが
「皆、散れーーーーッ!!」
バラキエルさんが叫ぶが既に遅く、祐美が、ゼノヴィアが、イリナがヴァーリの攻撃で傷付き倒れていく。
更にスコルとハティを跳ね飛ばし、ロキやフェンリルにも攻撃を加える。
「ギャンッ!!」
「ぬおお!? ハハハ、まさか白龍皇の暴走状態が観れるとは・・・・だがこれはちと計算外だな」
あのロキすら焦っている。これじゃあ戦力どころか脅威が増えただけだ。
「焦るでない不破一輝。お主はこういう時の為に授かった物があるじゃろ?」
「オーディン様・・・・! そうか!!」
いつの間に側に来ていたのか、オーディン様に言われ、俺には暴走を止める手段があった事を思い出した。預かってからずっと使わなかったので、すっかり忘れていた。アホか俺は!
「儂も手を貸そう。今は白龍皇の暴走を止めるのが先決じゃ」
「はい!!」
俺はヴァーリに向かって飛翔しながら、俺は聖句を唱える。
「其は聖なる刃、万物を断ち斬る龍殺しの
虚空が歪み、そこから一本の大剣が姿を現す。かつてミカエル様から預かった龍殺しの聖剣、アスカロンだ。
「ずっと使わなくて悪かったな。ようやくお前の出番だ。力を貸してくれ、アスカロン!」
アスカロンは一度抗議をするようにブルッと震えるたが、その後は大人しくなった。どうやら許してくれたらしい。
「よし、行くぞ!!」
アスカロンを鞘から抜き放つ。眩い銀光が周囲を照らすと、龍殺しのオーラを察したのか、ヴァーリが動きを止めた。
大剣のアスカロンはガイバー・ギガンティックには丁度いいサイズだ。俺はアスカロンを手に突撃する。
「ガアアアアッッ!!」
「ウオオオオッッ!!」
空中でヴァーリと激突する。ヴァーリは手刀を振り下ろすが、アスカロンの刃はヴァーリの手刀を斬り裂き、鮮血が宙に舞った。
「ギャウッ!?」
アスカロンを脅威と見たのか、ヴァーリが距離を取ろうと飛翔する。
「逃がすか!!」
俺もヴァーリを追うが、空中機動は奴の方が上だ。徐々に距離が離される。ある程度離されてヴァーリがこちらを向いた時、俺は戦慄した。ヴァーリの掌に絶大な魔力が集まり、俺を狙っていたのだ。
(マズい! ブレスが来る!!)
理性のある状態であれだけ威力があったのだ。暴走状態の今なら果たして───!?
「ガアアアアッッ!!」
ヴァーリがブレスを撃った。ブラックホールは間に合わない。ならば───!!
「断ち斬れ、アスカロン!!」
俺はバリヤーを全開にすると、アスカロンを翳し、迫り来るブレスに突っ込んだ。
「!!?」
ブレスを断ち斬りながら俺はヴァーリに突進する。手応えあった! 見るとアスカロンがヴァーリの右肩に突き刺さっていた。
「ギャアアァァーーーッ!!」
「今です、オーディン様!!」
今がチャンスとオーディン様に合図する。
「任せい! 戒めの鎖よ在れ、【グレイプニル】!!」
【北欧神話】でフェンリルを捕らえたという魔法の鎖グレイプニル。それがヴァーリに巻き付き地上へと引きずり下ろす。
「ガアアッ!?」
地上に落下したヴァーリは、もうもうと舞い散る土煙の中で苦悶の叫びを洩らす。
「いい加減大人しくしろ!!」
地上に倒れたヴァーリに向かって、俺はアスカロンを突き刺した。
「ギャアアアアーーーーッッ!!」
断末魔の絶叫を上げてヴァーリの動きが止まる。すると鎧が元に戻って行き、禁手が解除された。ぐったりしているが息はある。
「無事なの一輝!?」
無事だったリアス、イッセー、ロスヴァイセ、アルトリアが駆け寄って来る。他の皆はヴァーリの暴走に巻き込まれ、アーシアの治療を受けていた。
「何とかな」
「ふむ、どうやら元に戻ったようじゃの。暫くすれば意識も戻るじゃろ」
オーディン様の言葉にリアスはホッと胸を撫で下ろす。俺はヴァーリからアスカロンを抜いて鞘に納めると、持っていた『フェニックスの涙』をヴァーリに振りかけた。
俺はこの時一瞬気を抜いてしまった。まだ戦いは終わってない、まだ敵は残っているというのに、戦場で気を抜いてしまったのだ。その結果、
「油断したな主神殿。やれ、フェンリル!!」
ロキの命令を受け、倒れていた筈のフェンリルがオーディン様に喰い付いた。
「グワアァァァッッ!!」
オーディン様の鮮血が飛び散り、
「オーディン様?・・・・・・い、嫌ぁーーーーッ!!」
ロスヴァイセの絶叫が戦場に木霊した。
読んでいただきありがとうございます。
ヴァーリチームの新顔オリアナ。
モデルは「とある」のオリアナ・トムソンです。
黒歌の代わりに加入した悪魔で、転移魔法のスペシャリストという設定です。
ヴァーリのブレスはかめはめ波、覇龍はスーパーサイヤ人化を想像して下さい。
ご覧の通り原作とは違う展開となりました。
次回からは数回に渡ってオリジナル回の北欧編をお送りします。