※この作品はR-18です。

ハイスクールD×G~駒王町の規格外品   作:Tokaz

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アンケートにご協力して下さった皆さん、ありがとうございます。
協力して頂いて何ですが、話の都合上、今回はエロ無しです。
折角のアンケート結果を反映出来ず、申し訳ありません。

それでは、第6話をご覧下さい。



第6話 騎士の帰還

 

 

 ───堕天使コカビエル。

 

 聖書にも名前が載る大物中の大物。その男が地上に降り立ち、俺達を楽しげに眺めている。

 

「一兄!!」

 

 声のする方へ一瞬だけ視線を向けると、イリナとゼノヴィアがこちらに駆けて来るのが見えた。

 一輝()はコカビエルから視線を外さずに声をかける。

 

「二人共無事か? すまんな、突き飛ばして」

 

「ううん。おかげで砲撃に巻き込まれずにすんだわ。ありがとう」 

 

「そうだな。助かった」

 

 そう言って俺達の元へ到着した二人はコカビエルの方を見やる。

 

「あれが・・・・!」

 

「そのようだな・・・・お前がコカビエルだな!?」

 

 ゼノヴィアの問い掛けにコカビエルが答える。

 

「いかにも。我が名はコカビエル。堕天使の幹部に名を連ねる者だ。ようこそ、リアス・グレモリーの下僕に教会の聖剣使い達よ」

 

「お前が奪った聖剣エクスカリバーを返せ! さもなくば───」

 

「さもなくばどうする? この俺を滅するのか?」

 

 コカビエルは面白そうにこちらを見つめている。こいつ、楽しんでる?

 

「おうよ! 私達は元よりその為に派遣されたのだからな!!」

 

 ゼノヴィアがそう啖呵を切ると、コカビエルは肩を震わせて笑い出した。

 

「ククク、クハハハハーーーーッ!! お前ら如きがこの俺を滅する? そう言う台詞は手にした武器に相応しい腕前になってから言うべきだぞ。あまりに滑稽だ!」

 

 コカビエルは暗にゼノヴィア達の未熟さを嘲笑う。その言葉に憤慨したゼノヴィアは、

 

「言ったな! ならば聖剣の力、その身で確かめろ!!」

 

 【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】を構え、コカビエルに突撃する。何て無茶な!

 

「ちょっ、ゼノヴィア!?──ああ、もう!!」

 

 相棒(ゼノヴィア)を放っておく訳にもいかず、イリナは懐から取り出した紐のような物を振ると、それは一本の刀へと変化した。

 【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】。イリナは自らの聖剣を手にゼノヴィアの後を追う。

 

「フッ、来るがいい。教会の小娘共よ」

 

 コカビエルは両手に光の剣を作り出すと、二人を迎え撃つ。

 悪魔程ではないが、堕ちた存在である堕天使にとっても聖剣の聖なるオーラは毒になる筈。だがコカビエルは聖なるオーラを輝かせ自らを滅しようとする聖剣を物ともせず、余裕綽々で二人の攻撃を凌いでいる。

 

「そらそら、どうした、この程度では俺を滅するなぞ到底出来んぞ!?」

 

「くっ! これ程とは!?」

 

「こっちは二人がかりなのに!?」 

 

 二人はコカビエルに圧倒されていく。

 

「くっ! このままじゃ・・・私も行きます、一輝先輩!」

 

「な!? 待て祐美!!」

 

 このままでは埒が明かないと感じた祐美は、俺の静止も聞かず魔剣を創り出すと、コカビエルに向かって行く。

 だが祐美も加わった三人の攻撃も効果はなかった。いや、寧ろ祐美という不協和音が加わったせいでイリナ達のコンビネーションが崩されて、さっきより酷い状況になっている。

 

「邪魔をするな、木場祐美!」

 

「邪魔してるのはそっちよ、ゼノヴィア!」

 

「ああもう! こんな時にケンカしないでよ!」

 

 と、まあこんな風に敵を前にして呑気に喧嘩しているのだ。流石にコカビエルも呆れたのか、光の剣を振り、三人を吹き飛ばした。

 

「「「きゃああああっ!!」」」

 

 コカビエルに吹き飛ばされ三人は俺の所まで転がって来る。

 

「邪魔しないで! ゼノヴィア!!」

 

「な!? それはこっちの台詞だ!!」

 

「もう! 二人共いい加減にしてよ!!」

 

 この期に及んで喧嘩を続けるこいつらにいい加減俺も切れた。

 

 ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!!

 

「あっ!」

「いっ!?」

「うう~~っ? な、何するんですか一輝先輩!?」

 

 拳骨を喰らい、涙目で抗議する三人を俺は怒鳴りつけた。

 

「やかましい、このアホ娘共が! 敵を前にして呑気に喧嘩なんかしやがって!!」

 

「「「うっ!・・・・・・」」」

 

「もういい! 後は俺がやる。お前らは引っ込んでろ!!」

 

 俺はそう言うとコカビエルの元に歩みを進めた。

 

「ほう・・・・中々良い殺気を放つではないか。小娘共よりは余程ましだな」

 

「あんなアホ共と一緒にするな」

 

「ククク、それは失礼した。で? お前は俺を楽しませてくれるのか?」

 

「その前にひとつ訊きたい。何故この町に来た?」

 

 俺は手を伸ばせば届く距離まで近付き、コカビエルに訊ねる。

 

「・・・・どういう意味かな?」

 

「この町は魔王の妹であるリアス・グレモリーの領地だ。この町でお前のような大物が事件を起こすというリアスの手に余る事態になれば、必ず魔王が出て来る。お前は三大勢力の均衡を崩し、戦争をおっ始める気か?」

 

 俺がそう言うと、コカビエルは満面の笑みを浮かべた。

 

「戦争? そう、戦争だ! 俺は戦争がしたいのだよ!! あの大戦から随分と永い時が過ぎた。その間にどいつもこいつも腑抜けてしまった。ミカエルも、サーゼクスも、アザゼルもだ! アザゼルの奴め『もう二度と戦争をする気はない』などとほざきやがった! ふざけるな、ふざけるな!ふざけるな!!」

 

 コカビエルの言葉は段々と熱を帯びていく。

 

「あのまま戦争が続いてたら俺達が勝てたかもしれないんだ。大勢の仲間を殺されておきながらなぜ矛を収める必要がある!? 中途半端に終わらせて何も得る物がなければ、死んでいった仲間達の恨みは何処へいけばいいのだ!?」

 

 俺はコカビエルとそっくりの言葉をつい最近聞いた覚えがある。他ならぬ祐美が言った言葉と良く似ているのだ。

 

「・・・・つまりお前の目的は戦争を起こす事そのものなのか」

 

「そうだ! 俺は再び戦争を起こす。天界、冥界、人間界、全ての世界を巻き込んだあの大戦を今再び、この俺が起こすのだ! フハハハハーーーーッ!!」

 

 哄笑を上げるコカビエルの目には狂気が宿っていた。

 かつては死んだ仲間達の仇を討ちたいという純粋な願いだったかも知れない。だが永い時を経てその願いは歪み、捻れ、狂気に染まってしまった。今のコカビエルには戦争を起こす事、それだけが目的であり、その為ならば誰がどうなろうと、おそらく自分ですらどうなっても構わないのだろう。

 

「・・・・哀しい奴だな、お前は」

 

 俺がそう言うとコカビエルは激怒した。

 

「貴様如きが俺を憐れむな!!」

 

 コカビエルは光の剣を俺に向けて振り下ろす。俺は一歩前に出て奴に密着し、拳を胸に当てた。

 

「!?」

 

 次の瞬間、コカビエルが吹っ飛んだ。だが奴は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「・・・・驚いたな。何だ、今のは?」

 

「【虎砲】が効いてないのか?」

 

「ふん。俺クラスになると膨大な魔力が自然と防御フィールドを作り出すのだ。俺に攻撃を入れるにはまず俺の防御フィールドを破らねばならんぞ」

 

 成る程。流石というべきか、厄介だな。コカビエル(こいつ)は全力でなければ倒せない。俺は切り札を切る決意をした。

 

 その時、コカビエルの元にフリードから念話が届く。

 

《もしもーし、聴こえますか、ボス。バルパーのジジイが準備OKだそうなんで、さっさとこっちに来てくれって言ってますけど?》

 

「ちっ、面白い所で・・・・分かった、すぐに行くから待っていろ」

 

《ういーっす。ジジイに言っときまーす》

 

 相変わらずのふざけた口調でフリードの念話は切れた。

 

(ふん。下品で口も悪く到底好きにはなれん奴だが、使える駒が少ない今はやむを得まい。それよりも今は───)

 

 コカビエルは一瞬で俺の前から姿を消した。俺は咄嗟に振り向いて、祐美達に警告する。

 

「みんな散れーーーっ!!」

 

「「「!!!?」」」

 

 俺の警告と同時にコカビエルが祐美達の背後に現れた。と、同時に放った光の剣の一撃を祐美とゼノヴィアは何とか回避したが、一瞬反応の遅れたイリナはその身に受けてしまった。

 

「きゃああああっ!!」

 

「「イリナーーーーーッ!!」」

 

 俺とゼノヴィアの叫びが木霊する。

 ゼノヴィアは倒れたイリナに駆け寄り、俺は二人を守るようにコカビエルとの間に立ち塞がる。だがコカビエルは俺達に目もくれず、イリナが落とした【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】を拾った。

 

「こいつは貰って行く。本当は青髪の娘の聖剣も欲しい所だが、まあ四本もあれば充分であろう」

 

「貴様! 聖剣(エクスカリバー)をどうする気だ!?」

 

 ゼノヴィアが相棒の聖剣を奪われて激昂する。

 

「【エクスカリバー】と言えば最も有名な聖剣だ。それが何本もあるなんておかしいと思わんか?」

 

「な!? まさか聖剣(エクスカリバー)をひとつにしようと言うのか!?」

 

 コカビエルはゼノヴィアの言葉にニヤリと笑う。

 

「まあ俺はどうでもいいんだが、バルパーが拘っていてな。という訳でこれは貰っていくぞ」

 

 そう言うとコカビエルは翼を広げ、宙に舞う。

 

「待て、コカビエル!!」

 

「お前達の相手はこいつらがする。生き残れたら駒王学園まで来るがいい・・・・無理だと思うがな」 

 

 いつの間にかコカビエルの周りには黒い翼を羽ばたかせ、七人もの堕天使が現れていた。

 

「全員殺せ。ああ、あの青髪の娘の聖剣を回収するのを忘れるなよ」

 

「ハッ!」

 

 コカビエルは堕天使に指示を出すと、そのまま飛び去った。

 残された堕天使達は敵意を剥き出しにして俺達を睨んでいる。

 

「ゼノヴィア、イリナを頼む。祐美、後を追いたいだろうがこいつらを片付けるのが先だ。いいな」

 

「分かった、任せろ」

 

「・・・・はい」

 

 ゼノヴィアはしっかりと、祐美は不満げに返事をする。

 

 堕天使達が攻撃する前に俺と祐美は左右に散る。一瞬どちらを攻撃しようか迷わせればこっちの物だ。

 

「ハッ!!」

 

 ゼノヴィアの【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】から衝撃波が疾り、堕天使達を分断する。後は俺と祐美が混乱している間に仕止めるだけだ。

 俺はジャンプして手前にいた堕天使に右ストレートを放つ。顔面への一撃を堕天使はガードしたが、それが狙いだ。俺は拳を止められた勢いのまま右腕を折り曲げて、肘撃ちを胸に叩き込んだ。

 

「グハッ!?」

 

「不破圓明流【蛇破山(じゃはざん)】」

 

 蛇破山を喰らい落下する堕天使を踏み台にして、すぐ側にいた堕天使へ後ろ廻し蹴りを放つ。そのまま連続で近付いて来た堕天使に廻し蹴りを放った。

 

「グッ!?」

「ガッ!!」

 

 二人の頸骨が砕けた感触がして、そのまま落下していく。

 

「不破圓明流【(つむじ)】」

 

 ここで俺は翼を広げて滞空する。少し離れた所にこちらを見ている堕天使がいる。瞬く間に仲間を三人殺られて呆然としてるが、戦場でそれは愚行だ。

 俺はその堕天使に向かって猛スピードで飛ぶ。

 

「ヒイッ!?」

 

 堕天使は悲鳴を上げるがもう遅い。俺はそいつの頭を掴むと猛スピードで地面に叩き付け、そのまま膝を落とした。頭がグシャリと潰れた感触がする。

 

「不破圓明流【巌颪(いわおろし)】」

 

 これで四人。残りの三人は───

 

「はあっ!」

 

「グワアッ!!」

 

 ちょうど祐美が最後の一人を斬り捨てた所だ。俺はイリナの容態を確認しようとゼノヴィアの元に向かう。

 

「ゼノヴィア、イリナの容態はどうだ?」

 

 俺が訊いてもゼノヴィアは呆然としたまま、こちらを見てる。

 

「ゼノヴィア?」

 

 再度声をかけると、ようやく俺に気付いたようだ。

 

「お前、一体何者だ!? あれだけの堕天使を、しかも素手で倒すなんて・・・・」

 

 ゼノヴィアがそんな事を訊いてくるが、今はそんな事どうでもいい。

 

「それよりイリナは?」

 

「! あ、ああ。かなり深い傷で血が中々止まらないんだ。早く病院に連れて行かなければ」

 

 イリナは背中をバツの字に斬り裂かれ、そこから今も血が流れている。意識を失いながらも苦悶の表情を浮かべていた。

 俺は制服の上着を脱ぐと、包帯代わりにイリナの傷口に当てて、腹の方で袖をきつく縛り付けた。これで少しでも血が止まってくれればいいんだが・・・・

 

「駒王学園に行こう。コカビエルが向かったならリアス達が相対している筈だ。アーシアならこの傷を治せる」

 

 俺がそう言うと、ゼノヴィアは顔を曇らせ、気不味げに視線を反らす。

 

「いいのか? 私はアーシア・アルジェントを『魔女』と罵ったのだそ?」

 

 俺はゼノヴィアの発言に呆れ、思わず声を荒げる。

 

「アホか! アーシアはそんなつまらん事を気にして目の前の怪我人を放っておくような心の狭い娘じゃねーよ! あんまりうちのアーシアを馬鹿にするな!!」

 

「!・・・・そうか、すまない」 

 

 ゼノヴィアは良く知りもせずアーシアを侮辱した事を後悔しているのか、唇を噛み締める。

 

「悪いと思うならイリナの治療が終わった後で誠心誠意謝るんだな」

 

「うん・・・・そうする」

 

「よし、分かったなら行くぞ」

 

 俺はゼノヴィアの手を借りてイリナを背負う。

 

「待たせたな祐美、行こう」

 

 俺がそう言うと、祐美は返事もせずに走り出した。どれだけ気が逸ってるんだか。だが俺は祐美に言わねばならない事がある。

 

「祐美。訊いてもいいか?」

 

「・・・・何ですか?」

 

 走りながら訊ねる俺を見ようともせず祐美が応える。俺はどう話そうかと一瞬悩んだが、どうせ口下手なんだから思ったままに話を切り出す事にした。

 

「さっきのコカビエルを見て、どう思った?」

 

「・・・・どう、とは?」

 

「俺には今のお前の行き着く先が奴だと思えたよ」

 

「!?───どういう意味です?」

 

 祐美が聞いた事のないドスの効いた声で訊ねる。流石にコカビエル(あれ)と同類扱いされるのは心外なのだろう。

 

コカビエル()が言ってたよな。『死んでいった仲間達の恨みは何処にいけばいいのか』って。俺は最近あれと良く似た言葉を聞いた覚えがある・・・・祐美。他ならぬお前が言った言葉だよ」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 一輝先輩に指摘されるまで気付かなかった事に、祐美()は愕然とした。

 

「お前がゼノヴィアに負けて、リアスの元を去る時に言った言葉だ。覚えてるよな」

 

「・・・・・・はい」

 

 大恩ある部長に背き、決別した日の事だ。忘れる訳がない。

 

「で、あれが復讐者の末路って訳だ。お前はあんな風になりたいのか?」 

 

「なっ! 違います! 私はあんな風にはなりません!!」

 

 一輝先輩の言葉を懸命に否定する。だけど、

 

「どうかな? 奴とて最初はああじゃなかった筈だ。戦力を整え、いつか再戦する日を夢見ていたんだろう。だがその日が来ない事を知って狂ったのかもしれない。祐美、お前の復讐はどうすれば終わる? バルパーを殺せば? 聖剣を全て折ったら? 聖剣計画なんてものを推し進めた教会関係者全員を殺せば終わるのか? 教えてくれ、祐美」

 

「わ、私は・・・・・・」

 

 私は一輝先輩の詰問に何も答えられない。

 

「バルパーを殺すのはともかく、聖剣七本の内の一本は行方不明だと言うし、教会関係者に手を出せば天界との間に軋轢が生じる。その責任は主であるリアスに行く事になるが、お前はそれでいいのか?」

 

「わ、私は既に眷属を抜けた身です。部長の迷惑には・・・・」

 

 既に眷属を抜けた事を主張するも、先輩は現実を突き付ける。

 

「リアスが認めればな。彼女は情愛深いと云われるグレモリー家の直系だぞ。お前が抜けるのを許す訳ないだろう。そもそも俺がここにいるのがその証拠だ」

 

「あっ・・・・・・」

 

 そうだ。一輝先輩がここに、私の側にいる事こそ部長が私を見捨てていない証になる。

 一輝先輩は眷属になって日は浅いけど、既に部長の懐刀として皆から認められている。その一輝先輩を私の側に遣わした事が部長の心情を物語っている。

 

「部長・・・・」

 

 散々命令に背き、眷属を抜けるとまで言った私を未だに見捨てずにいてくれる。そんな部長の情愛深さに涙が滲んで来る。

 

「祐美。俺はお前の復讐を否定する気はない。だが少しだけ考えてくれ。お前の仲間達は本当に恨みだけを残して死んでいったのか?」

 

「───え?」

 

 一輝先輩が何を言いたいのか良く分からない。

 

「彼らが死の間際、恨みだけを残して逝ったとは俺には思えない」

 

 思わずカッとなり、気付けば私は足を止め、怒鳴っていた。

 

「ふざけないで! 貴方に私達の何が分かると言うの!?」

 

 怒りの籠った視線を一輝先輩にぶつける。だけど先輩はただ哀しそうな目で私を見つめ返す。どうして、どうしてそんな目で私を見るの!?

 

「祐美。逆に考えて欲しいんだが、お前じゃない別の子が助かって、お前が死んでしまうとするなら、お前は最後の瞬間、その子に自分の復讐を望むのか?」

 

「!!」

 

 言われて初めて気付いた。私ならその子に自分の分まで生きて、幸せになって欲しいと願うだろう。

 

「わ、私・・・・・・」

 

 身体がガタガタと震える。私がそう思うなら、優しかった皆もそう思ったかもしれない。勿論全く恨みがないとは言わないけど、でも、だとしたら私の復讐は間違っていたの? 皆の想いをねじ曲げて自分の復讐心を満たそうとしていたの? だとしたら私は───!

 

「落ち着け、祐美」

 

 パニックを起こしかけた私をそっと包む優しい温もりがあった。

 間近で聞こえた一輝先輩の声に顔を上げると、先輩は片手で私を抱き寄せ、そっと頭を撫でてくれていた。

 

「・・・・・先、輩?」

 

「ごめん。少し突っ込みすぎた。俺はただ、彼らが死の間際に恨みだけを残して逝ったと思えなかっただけで、決してお前を動揺させたかった訳じゃないんだ。本当にごめん」

 

 抱き寄せられ、先輩の熱さが伝わって来る。私を本当に心配してくれてるのを肌で感じる。戦闘の後だからか先輩は少し汗臭い。でも嫌な感じは全然しない。トクントクンと鳴る先輩の鼓動と、今まで感じた事のない男性の温もりに包まれて、私の心は不思議と落ち着いていった。

 

「祐美?」

 

「・・・・大丈夫です先輩。落ち着きました」

 

 私は顔を上げて先輩に笑顔を見せる。それを見て、先輩はようやく安心してくれたみたい。

 

「・・・・みんながどう思っていたのか今では知る事は出来ません。でも私もみんなが最後に残したのが恨みだなんて思いたくありません。・・・・私の復讐心は一人生き残った事に対する罪悪感から来てたんですね・・・・それでみんなの想いをねじ曲げて、復讐しなきゃと思い込んでたなんて、私って何て馬鹿なんだろう・・・・」

 

 私は自嘲の笑みを浮かべる。

 

「でもそれに気付けたなら、まだ間に合うさ」

 

「はい。・・・・先輩、私はこの町の平和を乱すバルパーやコカビエルを許せません。だから私は戦います。仲間達の復讐の為ではなく、リアス・グレモリーの眷属、『騎士(ナイト)』として」

 

 私は決意も新たに宣言する。一輝先輩は優しい目をして私の欲しかった言葉を言ってくれた。

 

「お帰り、祐美」

 

「はい!!」

 

 私は先輩と見つめ合い、微笑みを交わした。

 

 

 

 

 

「あの~、そろそろいいだろうか?」

 

 声のした方を見ると、ゼノヴィアが所在なさげに佇んでいた。

 

「いたの? ゼノヴィア」

 

「いたのか、ゼノヴィア」

 

「な!? 酷いぞお前ら!!」

 

 癇癪を起こすゼノヴィアを尻目に私達は走り出す。

 部長、勝手な事ばかりしてごめんなさい。朱乃さん、いつも見守ってくれてありがとう。アーシアさん、心配かけてごめんね。そして小猫ちゃん、イッセー君、二人は復讐にかられた私を何の得もないのに助けてくれた。一緒に町中を捜し回っていた時、とても心強かった。「いなくならないで」と小猫ちゃんに言われた時、涙が出そうな位嬉しかった。私の帰る場所は、帰りたい場所は眷属の元(ここ)なんだとはっきり分かった。

 帰ったら皆に精一杯謝ろう。そして目一杯叱られよう。私は沢山迷惑も心配もかけてしまったんだから。

 

 だから、今帰ります。皆の仲間として、リアス・グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』として───

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

自分の中では祐美のCVは戸松遥さんをイメージしています。

次回は皆さんお待ちかねの本番ありの予定です。
果たして一輝の初めてのお相手は誰になるでしょうか。お楽しみに。

ゼノヴィアはどうするべきか?

  • 一輝のハーレム入り
  • イッセーのハーレム入り
  • イリナと共に転生天使に
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